Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう)   作:因幡inaba

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こんばんは。
自分もいつか独白のような話を書くんだな、と考えていると、この物語はその機会が多そうでいいですね。自分のボキャブラリーが広がっていくのをハッキリ感じれます。使い方は下手なんですけどね……


27話 学園都市第一位

  

 

 

 ──面倒だな。

 

 心の底からそう思った。

 

 人は誰しも『未知』というワードに引かれるものだ。それが勉強だろうがスポーツだろうが、様々なバラエティーでその言葉はその魔力を遺憾なく発揮する…………と思う。

 

 もっとも、

 

()()()──という条件付きではあるが。

 

 当然だが、知ってからその分野に更に興味を持つ場合だって当然ある。『未知』のモノに触れ、更に興味を持ち、それを究めたいと思う。

 それが『好きなモノ』の形。趣味とも言えるが、趣味=好きなモノで括っても何ら問題はないだろう。

 

 例えるなら、『魔法』という分野は俺にとってのそれである。

 

 

 では知ってから嫌いになる場合。

 勉強、スポーツ、飲食物、娯楽など。その一から十まで、初めから嫌いだという人はいない。誰もが一度知ってからその好悪を判断する。

 

 そしてその選考で『嫌い』にカテゴライズされると、もうとことんそれが嫌になる。

 

 今俺はそんな気持ちになっている。

 

 ──ロズワール邸での一幕をどう乗り越えるか。

 

 今抱えているあらゆる疑問はこの問題の過程でしかない。

 

 極論、その過程の全てをすっ飛ばして問題解決に走る方法もある。

 

 前回の要領で手土産だけもらい、本気でここから逃亡することもできる。

 もしくは手っ取り早くマイナス要因を排除してしまおうか。

 

 そんなことを考えてしまう。無理だと分かっているのに。

 

 出来たらとっくにやっている。逃げることも、レムを殺すことも、やろうと思えばできるのだ。

 

 その選択肢を外さざるを得ないのは、それができないと分かってしまったからだ。

 

 まず前者は論外。ここにきてエミリアから離れるという選択をスバルは取らない………………俺もだ。

 

 後者は一度はやろうとした……が、できなかった。物理的にできないのではない。

 

 ──どうしても脳裏を掠めるのだ。

 

 戦闘中、レムに近づき、目が合い、触れようとする度に、まるで走馬灯のように目の前に浮かぶ光景は、俺にとって初めての思い出だった。そこで俺は必ず門前払いをくらう。足がすくみ、その先に踏み出すことができなくなる。

 俺が過ごしたレムとの時間。その分どころか、それが何倍にもなって俺を止めようとするのだ。様々な『感情』という形でもって。

 

 ──鬱陶しい。やかましい。馴れ馴れしい。煩わしい。…………………………楽しい。

 

 

 

 結局俺には過程を飛ばすことなどできやしない。その細部まで徹底的に詰め、誰もが納得する結果に導く。それができてやっと終幕だ。

 

 ──あァ、本当に面倒だ

 

 テストや受験で悩む学生のような心境だ。どうにもこうにも、

 

 

 

 『好きなモノ』を得るには、『嫌いなモノ』をやる必要があるらしい。

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 これまでの人生でストレス発散といえば、コンビニで新しい銘柄の缶コーヒーを買い占めることだった一方通行。

 一つの銘柄を商品棚に並んでいる数だけ買い、そのどれもを最初は「気に入った」といって数日同じ物を飲み続ける。やがて飽きが来れば、新たな銘柄を求めてコンビニに出向く。 

 

 それが彼の趣味であり、貯まったストレスを発散する唯一の娯楽だった。

 

 だが今夜は違う。

 

 丑の刻も後半に差し掛かろう頃、前回魔法の鍛練をしていた平野に訪れた一方通行。

 

 今宵彼がここに訪れた目的は魔法の鍛練などではなく、

 

 

 

「ウ"ゥゥゥオ"ォア"アァァァァァーー!!!!」

 

 

 

ドッゴォォォォーーーーーーン!!

 

 

 獰猛な獣の咆哮のような声。同時に鳴り響く轟音は、爆音、雷鳴、風音、地響きといった騒音が不協和音となったものであり、ここで起きた惨状を如実に表している。

 

 『鬼が魔女教に滅ぼされた』この事実を知ってから何の進展もないまま、既に四日の時が流れた。分からないことが多すぎる状況に、白旗を上げるしかなかった。

 スバルの臭い、レムに対する違和感、ベアトリスの言葉、何一つ納得のいく回答が見つからないまま過ごす日々は苦痛でしかない。それがついにここにきて爆発したのだ。

 

 立ち込める煙が晴れた時、一方通行を中心に巨大な円を描くようにクレーターができていた。

 

 廃れているとはいえ、枯れかけの植物や不規則な凹凸があった辺りは、その一部分のみ更地と化していた。

 

「ハァ……ハァ……ンァ? ちょっとハリキリ過ぎたかこりゃァ?」

 

 一方通行の()()()()激しいストレス発散による衝撃は、地面にクレーターを生むだけに止まらず、周囲の木々や地面にも影響を与えていた。

 

 

 利用できるベクトルを盛大に破壊するために使った一方通行は、満足したようにフゥー、と深い息を吐くと、溜め込んでいたモノを吐き出す。

 

「クックク、クハハ……! ヒャハハハハッ! アーッヒャッヒャッヒャッ!!」

   

 自分の額に手を置き、体全体を震わせ、少しの間狂った様に笑い続けた。

 

 

 そしてひとしきり笑い終えると、満足したようにため息を吐き、

 

 

「ハァーー……──忘れるとこだったぜ」

 

 そしてそこで一拍入れ、続ける。

 

「学園都市に七人しか存在しないlevel5。その中でも、突き抜けた頂点と云われるこの俺に、できねェことなンざねェよなァ!!」

 

 ここに訪れた時の曇った顔つきではなく、吹っ切れたような晴々しい表情で叫ぶと、自らの力を誇示するように巨大な二本の竜巻を背中に接続し、それを翼のように使い、いつもの何倍ものスピードで館へと帰った。

 

 あらゆる迷いを断ちきり、完全に何時もの調子に戻った一方通行。

 

 

 運命の分岐点まで、残り一日。

 

 

 

 

 

 




お疲れ様です。
今この活動が本当に楽しいです。自分で作る楽しさと見てもらう楽しさに目覚めてます。皆様いつもありがとうございますm(_ _)m

ちなみに今回色々エフェクトしたんですけど見易いですか?

あなたの推しキャラ

  • エミリア
  • レム
  • ラム
  • ベアトリス

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