Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう)   作:因幡inaba

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こんにちは。
お試し投稿ってないのかな。皆に見てもらって分からないとこを指摘してもらい、それを修正する、みたいな。
っていう前書きから分かる通り今回地獄回です。分からないとこがあったらドンドン言ってください。


30話 VSロズワール·L·メイザース ①

 

 

 

「『エル·ゴーア』」

 

 

 ロズワール邸の広い庭園。

 その上空で、二人の男の詠唱が重なり、二つの炎弾が宙を舞う。

 

 両者の中間でぶつかり合う火属性の魔法は、そのまま豪快な爆発音とともに煙となって消える。

 

「ふむ。先程はまさかとは思ったけぇれど、本当に使えるんだねぇ」

 

 奇妙なピエロの化粧を施した男が興味深そうに言う。

 

 対する白髪と紅い瞳を持つ男は、その発言の意味に気付くと、やや目を細めた。

 

「知ってやがったか」

 

「私にすれば、他人のゲートの状態を見極めることなど造作もない」

 

「一々嫌味ったらしい野郎だ。そのフザけた顔面ごと叩き潰してやるよ」

 

 一方通行はそう宣言すると、翼を一度はためかせロズワールへと接近。そのままの勢いで蹴りを繰り出す。

 

 それに対してロズワールは両手を交差し、防御の体勢を取る。 

 

 当然だが一方通行の能力による直接の攻撃はガード不可。どんな体勢だろうが、直接受ければ確実にダメージを負ってしまう。

 

(砕けろッ!)

 

 ここで変に目標を変えるより、まずは両手から破壊しようと正直に突っ込み、蹴りをヒットさせる。

 

 だがやはりロズワールも歴戦の猛者。

 攻撃を受ける刹那の見切り。一方通行の足が自分の腕に当たった瞬間に異常に気付き、全力で後ろに飛ぶ。その速度は迫る一方通行を凌駕し、その場に置き去りにした。

 

 更に負傷した両腕を回復魔法で一瞬のうちに治すと、反撃に出る。

 

「『ウル·ゴーア』」

 

 先程よりも一回り大きい炎弾がロズワールの手元から放たれる。

 

 一方通行は正面から迫る炎弾を右に飛ぶことで回避。だが炎弾は一方通行の後を追うように方向を変える。

 

(ホーミング? いや、遠隔操作か…………チッ!?)

 

 更に逃げた先から迫るもう一つの炎弾が一方通行を挟み撃ちにする。そこで左右の逃げ場を失った一方通行は上方へと飛ぶが、そこには既にロズワールが待ち受けていた。

 

 流れるような動作で回し蹴りを放つロズワール。当然その攻撃は一方通行を前に反射されるが、足の方に大したダメージは入っていないようだ。

 

(ッ……ヤロォ!)

 

 その意味はすぐに分かり、体勢を崩したロズワールの胸倉を掴んで真下、つまり二つの炎弾へと投げる。

 

 しかし炎弾はロズワールが当たる直前で再び曲がる。ロズワールを囲むように左右に散開し、更にバナナのような軌道で真上の一方通行を狙った。

 

「チィッ!」

 

 やむを得ず、魔法陣を展開し、二つの『ウル·ゴーア』で相殺した。

 

 合計四つの『ウル·ゴーア』が爆発し、大規模な煙が一方通行を飲み込む。

 

 地面にゆっくりと着地したロズワールは、先ずダメージを負った足を回復魔法で治し、空に浮かぶ煙の塊を見上げる。

 

 数秒後、広大な煙の一部分が飛行機雲のように突出して伸び、その先端に煙で所々煤の被った一方通行がいた。

 

 煙から逃れた一方通行は上空で静止。

 地面から余裕の表情でこちらを見上げるロズワールを睨む。

 

(……なンつー野郎だ) 

 

 一瞬の違和感で一方通行の能力に勘づき、自らの魔法の遠隔操作で誘導。わざと力を抑えた蹴りで確信へと導くその魔法技術と分析力。

 

 更には回復魔法による自己再生。攻守において完璧な立ち回りを見せるロズワール。

 

 一方通行は二連続の『ウル·ゴーア』によって失った体力を回復させるため、地面に降り立ち、ロズワールを正面で見入る。

 

「まだ種切れってわけではないだろう。地上戦がお好みかぁな?」

 

「一つ聞かせろォ」

 

 一方通行は対話による時間稼ぎを謀る。

 ただしそれには確実に相手が興味を持つ内容で、かつ長引かせるように会話する必要がある。

 

 だが、これまで幾度と世界を繰り返した一方通行。そんなネタは幾らでもあった。

 

「オマエは今日唯一、レムが死ンだのだけが想定外で元々俺とスバルは殺すつもりだった。違うか?」

 

 ピクッとロズワールの耳が跳ねる。

 

 動揺、というより驚いたという様子だ。

 

「面白い事を言う。たぁしかに、エミリア様を王にしたい私にとって君らの存在は邪魔そのものだ」

 

 頷きながら言うロズワール。彼はそのままの調子で続ける。

 

「徽章は王選候補者の証。盗まれたという事実はそれだけで致命傷になる。実際本格的な口封じも考えなくもなかった」

 

 不敵に笑い、人差し指を口の前まで持っていく。

 

「がしかし、エミリア様や大精霊様の言葉、そして私自身の人を見る眼を信じた。それがこんな形で裏切られるとはねぇ」

 

 チラッと館を見るロズワール。

 一方通行は一瞬否定しようともしたが、考えるべきはそんなことではない。

 

 今一質問の答えになってないのだ。

 色々並べていたが、結局ロズワールはハッキリと否定してはいない。一方通行はそこに何かがある気がした。

 

「……ロズワール。俺は今回レムを見たとき何故か頭ン中に違和感が生まれた。細かく話すのは無理らしいから簡単に言うが、俺がレムに見たのは静かな悪意。二度も見落としていた、眠れる悪意だ」

 

 二度目の世界を経て、レムに対し疑心を持ったおかげで気付いた事実。あの悲劇の後だからこそ持った違和感だ。

 

 ロズワールは口を挟まない。

 色々曖昧なこの話。突っ込み所は幾らでもあるはずだが、自分にも心当たりがある、ある点に意識が向いたのだ。

 

「いや、ほとンど感じさせなかっただけで、それはラムにも当てはまるハズだ。レムとラムは双子、互いを想う気持ちに大した差はねェ」

 

 一方通行の中に蠢いていたピース。それらが形となっていくのを感じる。  

 

「だが二人の間には()()()()()がある。最初言われたときは何一つ分からなかったが、今のお前の言葉で確信した」

 

「ふむ、それは?」

 

()()()、だ。レムはラムに関することで自分を抑えることができない。何かしらの不安要素があれば例えオマエやラムに御されていても動いてしまう。オマエにも心当たりがあるハズだ」

 

「魔女の残り香、だぁね」

 

「さっきハッキリと違う、と言わなかったのはお前側の人間で心当たりがあったからだろ」

 

 そこで訪れる沈黙。 

 その間も一方通行の思考は止まらず、次々と可能性を生み出す。

 

(つまりアレはレムの単独。ならば状況次第で次は…………)

 

 だがその途中で数秒保った沈黙は終わる。称賛するようにロズワールは両手で拍手すると、

 

「素晴らしい。たしかに君の言っていることはその()()()()が的を射ている。だがなにか勘違いしているようだ」

 

 空気が重くなるのを感じる。

 

 ロズワールを包む空間が歪み始め、その場が魔力に満ちる。その変化が可視できるほどのエネルギー量が、ピリピリと一方通行にも伝わる。

 

「仮定の今に意味などないのだよ」

 

 そしてロズワールの周りに次々と現れる光る球体。館内で見たものと同じようだが、その数は二倍三倍、そして更に増え続ける。

 

 さしずめ宇宙に漂う小惑星のように、ロズワールの体の周りを飛ぶそれらは、その数の分、術者のレベルの高さを表していた。

 

 一方通行はそれを目の前にしてなお笑う。

 

「クククッ、その面白ェ面にはお似合いの技だな。大道芸人にでもなる気かァ?」

 

「君には理解できまいさ。そして理解する頃には手遅れだろう」 

 

 それは紛れもない怒りという感情。

 余計な会話が過ぎたかと反省…………することなく、一方通行は言う。

 

「オマエは俺の能力が魔法には対応できねェと思ってンだろ?」

 

 そして輝きを増す色とりどりの魔法が一方通行を襲う。

 

 それだけなら回避もできようが、ロズワールは無数の球体を正確に操り、一方通行の逃げ道を塞ぐように囲んだ。

 

 それでもやはり一方通行は顔色を変えない。視線を動かすことなく、言った。 

 

 

「大正解だ、クソッタレ」

 

 

 そして周りに浮かんでいた数多の光が一斉に襲いかかった。

 

 大規模な魔法はその破壊力も凄まじく、その数の分、次々と爆発を起こしていった。

 

 中心にいる者など塵すら残らないかもしれない。響き続ける轟音とともに巻き起こる土煙は一帯を覆い尽くす。

 

 煙を被るのを嫌ったロズワールはその中心に背を向け歩き出す。

 

 引き起こした本人は確実にターゲットを葬ったという確信があった。

 

 しかし──

 

「何処に行くンだァ?」

 

 声に反応し、振り向いたロズワールの顔は今度こそ驚愕に染まった。

 

 未だ晴れぬ土煙の中心に人影が見えたからだ。

 

「あァ正解だ、全く恐れ入る。俺の能力の大まかな情報と弱点。カンニングでもされた気分だ。既に知っていたのかとも疑う、そのレベルでオマエの戦闘センスはズバ抜けてる」

 

 広範囲に広がる土煙は、その人影が右手を払うだけで中心に巻き付くように集まり、次の瞬間には霧消した。

 

 そして姿を表した一方通行は続ける。

 

「そして今の攻撃。先に退路を絶つことで確実に仕留めに来たなァ。初戦でそンなことしてきたやつァオマエが初めてだ」

 

 よくみれば、一方通行が立っている地面は円を描くように周りだけがズタボロだ。まるで彼が立っている地面のみ守られたかのように、明らかに一線を引いていた。

 

「おかしな話だよなァ。蓋を開けてみりゃァただの『火』や『氷』だってンのに、この俺が操ることができねェンだから」

 

「だが違ェンだよ。俺は……というより科学ってのは物理法則に忠実だ。自然法則ともいうな。保存則、等価原理、&etcだが、『魔法』ってのはほぼ全て守ってねェ」

 

「そりゃ操れねェよな。『魔法』に法則なンてモンねェンだからよ」

 

 一方通行はそこで一度切る。

 

 そして目の前の未だ動揺の抜けないロズワールの顔を見る。

 彼は一方通行が無傷だという事実と、自分ですら理解できない程の話に戸惑っていた。

 

「なァロズワール、『ゲート』ってのは人によってその構造から運動量まで全く違う、だろ?」

 

 いきなりの質問。

 だが、ロズワールは一度呼吸を整えると、難なく答える。

 

「その通り。だからこそ人それぞれ素養や相性の良い属性が変わる」

 

「そうだ。そしてこの大気中のマナを仮に『世界のマナ』とする。これは一種の気体の様なもの。こンなこともできる」

 

 それが可視できるよう、一方通行は手のひらに小さな電離気体(プラズマ)を作る。

 

「だが」

 

 そこでそれを握り、消し去る。

 

「『世界のマナ』が誰かのゲートに取り込まれると、それはもう全く別のモノだ。いうならば『Xのマナ』。オマエが言ったようにゲートは人によって全く違うから、存在するゲートの数だけ『世界のマナ』は枝分かれして別のモノになる」

 

 そこまで話すと一方通行は自嘲するように笑い、

 

「俺ァバカだった。そンな法則もクソも無ェモンを頑なに能力で操ろうとしたンだからな。早々に諦めて別の方法を探すべきだったよなァ」

 

 そこで遂にロズワールが横槍を差す。

 

 無詠唱で発動した『ウル·ゴーア』が、一方通行を襲った。

 不意を突かれた一方通行は相殺は間に合わず、それに直撃。盛大に爆煙を上げる。

 

「……分からないことを長々と語って、時間稼ぎのつもりかぁーな?」

 

 やがて煙は晴れるが、そこには地面から盛上がったであろう土の壁があった。

 

「ッ……」

 

「これが答えだ。何も魔法を能力で防ぐ必要は何処にもない。なァ? ロズワール·L·メイザース」

 

 それが一方通行が下した結論であり、地上戦を選んだ最たる理由。

 直接操れぬならば、二次災害で防いでしまおうという、直ぐに思い付きそうで思い付かなかった手法。

 だからこそ彼は自分をバカだと言った。

 

 

「さァ来いよ魔導師様。こっから先は一方通行だ」

 

 

 言葉とともにマナを集め、魔法陣を展開。

 手を突きだし、クイっと指を曲げて挑発する一方通行。ここからが真の戦いとばかりに笑って見せた。

 

 対するロズワールは、珍しく額にシワを寄せている。

 怒り心頭、今日という日で実に二度目の激情だ。冷静さを欠いた彼は怒りのままに顔色を変え──

 

「ふっふっふっふ」

 

 ──笑った。

 

 その表情は怒りのそれではなく、本当に楽しそうに、彼は笑った。

 

 しばらくそのままの状態が続き、ひとしきり笑い終わった後、彼は穏やかな笑みを浮かべたまま溢す。

 

「やはり貴方は私を救ってはくれないようだ」

 

 その声はあまりに小さく、他の誰にも届かなかった。

 

 そしてロズワールは目の前にいる人間を見据える。

 

 その最も忌々しい存在を。

 

「思い知れ。その魔法陣は…………『紋章術』は、君が使っていいようなものではない!!」

 

 

 

 




お疲れ様です。
私が悪かった。ごめんなさい。
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