Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう)   作:因幡inaba

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こんばんは。
一方通行じゃない、という評価を頂きました。
ふむ、でも性格とかが変わるのは仕方ないのでは……。
キャラ崩壊タグ入れた方がいいですかね? よければ感想お願いします。


32話 VSロズワール·L·メイザース ③

「なんだ……何なんだ君は…………?」

 

 赤と青のオッドアイ。

 その瞳を震わせながらロズワールが言う。

 

 自らが放った最大威力の魔法が跳ね返され、動揺を隠せないロズワール。

 

 やがて晴れていく煙の先に見えたのは、

 

「《七芒星(しちぼうせい)の魔法陣》……!? 200年の壁を越えたというのか!?」

 

 片手をこちらに向け、ニヤリと微笑を浮かべる一方通行。

 

 その神経を逆撫でする行為に、ロズワールは更に眉間にシワを寄せる。

 

「気に入らないッ……今さらこの場所で……()()()()()……紋章術師がッ!! ()の前に立つなァァー!!」 

 

 かすれそうなほどの大声で叫ぶロズワール。

 

 その叫びに呼応するように両手に炎が灯り、未だに地面で魔法陣を展開し続ける一方通行へと放たれる。

 

 

 一方通行(アクセラレータ)は飛んでそれを回避するが、空中はロズワールの土俵(どひょう)

 

 

 高速で迫るロズワールを前に、両手を交差し、ガードの体勢をとる。

 

 

 ガッ!

 

 

 とロズワールの長い脚が一方通行の腕を捉える。

 

 後方へ飛ばされる一方通行。

 

 

「チィッ! ンで俺に触れれるッ!?」

 

 

 先ほどから少し不思議なくらいに一方通行に対して疑問と怨嗟(エンサ)を表すロズワール。

 

 その反対に一方通行もまた大きな疑問を抱えていた。

 

 

 ────何故アイツは『一方通行』を越えてくるのか?

 

 

 だが今それを考えるのは得策ではない。相手に『一方通行』が通じないのであれば、近づかないまで。

 

「《ゴーア》!」

 

 一方通行は苦し紛れに火属性魔法を放つが、当然、

 

「《ウル·ゴーア》」

 

 ロズワールは同じ魔法で返す。

 それも威力は一方通行の倍以上のものだ。

 

 

 一方通行の《ゴーア》はあっけなく飲み込まれてしまう。

 

 

「クッソがァァァァーーーーッ!!」

 

 

 大気を思いっきり殴りつける。

 

 

 発生したドス黒い空気弾が、迫る《ウル·ゴーア》とぶつかる。

 

 

 ロズワールと一方通行の中間で大爆発が発生。

 周囲の空間を震わせた。

 

 

(この世界のモンじゃダメだッ! 『電気』じゃねェとッ……)

 

 

 息を切らし、ボロボロに汚れた一方通行と、服こそボロボロだが普段と変わらぬ肌色を保っているロズワール。

 

 

 どちらが優勢かは、一目瞭然だった。

 

 

「どうした紋章術師。この程度ではないハズだ」

 

「アァッ……? さっきから、なァンで紋章術師にこだわる?」

 

「知っているだろう? この世界の歴史上、紋章術師の二つ名を持ったのはただ一人、」

 

 

 「「賢者シャウラ」」

 

 

 声を被せた一方通行は更に問う。

 

 

「それと何が関係ある?」

 

「賢者はその強大な力を、たった一人の人間の為だけに使った。いついかなる時も、賢者の行動理念はたった一つ。『その人間を守ることに繋がるか』だ」

 

 俯き、拳を握り締めるロズワール。

 

「そうだ。賢者は救えたはずだ。もっと大勢の人間を…………僕の、大切な人をッ!!」

 

 

 ────!?

 

 

 風が一方通行の髪を扇ぐ。

 

 

「賢者が生きていたのは400年前だぞ……? テメェは────」

 

 

「僕は、『紋章術師』を認めないッ! 認めるわけには行かないんだァァーー!!」

 

 

 赤青緑、三色に輝く球体がロズワールの周囲に次々と現れる。

 

 それに感化され、一方通行も歪な笑みで返す。

 

「ハッ、トンだトバッチリだが! 元よりこっちは本気で殺る気なンだよッ!!」

 

 

 バチチチチッ!!

 

 自分を中心に電気を巡らせた。

 

 

「「ウォォオォォーーー!!!」」

 

 

 宙を舞う幾つもの光る球体。

 

 

 それを次々と(ほとばし)る電気が貫く。

 

 

 球体が撃ち抜かれる度に小さく爆発が発生し、それは球体の数の分だけ連鎖する。

 

 

 その爆風と爆煙に乗じて二人は同時に接近、

 

 

 煙の中で互いの拳が交わる。

 

 

 バチッ!!

 

 

 肉と肉がぶつかり合う音が響き、その衝撃が周囲の煙を一気に払う。

 

 

 一方通行は直ぐに拳を引き、反対の拳でロズワールの顔を狙う。

 

 

 それをロズワールは体を横に傾ける小さな動きで回避。

 

 

 自らの肩を通り抜ける一方通行の腕を両手で掴み、背負うように投げ飛ばした。

 

 

 空中で回転した一方通行は逆さまの状態で魔法陣を展開。

 

 

 その拍子にポケットからこぼれ落ちる数枚の硬貨。

 

 

「ローレンツ力を知ってるかッ?」

 

 

 宙にアーチを描くコイン。その中から一枚を右手で掴み、

 

 

「《超電磁砲(レールガン)》!!」

 

 

 吹き荒れる衝撃が一方通行の髪や衣服をはためかせる。

 

 

 音速で放たれた硬貨がロズワールを狙う。

 

 

 ロズワールはバッ、と即座に体を横に傾ける。

 

 だが完全に避けるには至らず、かすった部分の服が焼け飛び、肉を抉るように一本の線ができた。

 

 

「クッ……」

 

 

 悲痛の声が漏れる。

 

 

 ロズワールは先ほどのように、即座に回復ということをしなかった。

 

 ──いや、できなかった。

 

 

(マナが……全身の回復は負荷が掛かりすぎたかッ)

 

 

 国一番の魔導師といえど、人間一人にゲートは一つ。いくら才に恵まれていても、使えるマナには限りがある。

 

 

 ロズワールのマナ枯渇(こかつ)に気付いた一方通行は一気に出力を上げる。

 

 

「ウオォオォォッ! 《雷轟(ライゴウ)》ォォーー!!」

 

 

 バチバチバチッ!!

 

 突き出した右手から伸びる電撃がロズワールを貫く。

 

 

 それを見届けた一方通行は演算すらままならなくなり、地面へと落下。

 

 

 仰向けに寝転び、ロズワールを見入る。

 

 

「グッ…………これで────ッ!?」

 

 驚愕。

 今の一方通行の状態を表すのにこれほど適切な表現はない。

 

 

 一方通行の最後の電撃は、間違いなくロズワールを貫いた。

 

 

 だがロズワールが落下を始めることはなかったのだ。

 

 

 ピクリとも動かず空中で静止している。

 

 

「────だッ」

 

 

 今にも消えそうな声がその場に響く。

 

 

「僕は、負ける訳には行かないんだ」

 

 

 身体中に走る激痛に耐え、拳を握りしめる。

 

 

「紋章術師に、負ける訳には行かないんだァァーー!!」

 

 

 地面の一方通行を見下ろし、魔法を行使する。

 

 

 硬く握り締めた拳から放たれる、太く透き通るような虹色の光線が一方通行を狙う。

 

 

(体がッ……)

 

 

 一方通行は身体を動かすことができない。

 

 

 蓄積したダメージ、そして魔法陣による疲労。

 

 

 それらがここで一気に精算され、一方通行の体を縛り上げる。

 

 

「ッ────」

 

 

 遂に少しの抵抗もできず、一方通行は虹の光線に飲み込まれてしまった。

 

 

────────────────────

 

 

 ────消え入る意識の中で、走馬灯のように駆け巡る記憶の一端。

 

 

 

「うおおおぉぉーー! すっげぇーー!!」

 

 パリパリ、と可視できる程の電気エネルギーを周囲に巡らせる一方通行を見て、眼を輝かせるスバル。

 

「いいか? コイツはこの世界じゃ未知の力だ。覚えとけ、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 パチン、と指を鳴らすと電気は霧消。

 そのまま魔法陣も消える。

 

「天気なンか分かりやすいだろ。この世界にそれを予報する術はない」

 

「…………」

 

 腕を組んで黙りこむスバル。

 

「オイ、聞いてンのか?」

 

「……一方通行」

 

「あァ?」

 

「さっきの電気技、『雷轟(ライゴウ)』ってのはどうだ?」

 

 バキッ!!

 

「グッハァァーー!!?」

 

「テメェはもう何回か死ンだ方がいいらしいな! このクッソ役立たずがァァ!!」

 

「ノォォーーッ!?」

 

 涙目で飛び回るスバルと追いかけ回す一方通行。その地獄の鬼ごっこは数十分続き、終わる頃にはスバルの上半身は地面に埋まっていた。

 

「フン、バカが」

 

「ブヘッ。ダァ痛ッたたた……」

 

 起き上がり、ジタバタと暴れるスバル。

 

 数分それが続き、落ち着いたスバルは、

 

「……つくづく、お前が居てよかったよ」

 

 胡座をかいて改まり、感慨深げに呟く。

 

「アァ?」

 

「なんつうか、俺はそっち方面はからきしだからよー。お前が居なかったらと思うと、ゾッとするぜ」

 

 エルザの一件を思い出し、身震いするスバル。

 

「……」

 

「正直不安だったんだ。こんな左右も分からない世界で、なんの力もない俺が生きていけるのかって」

 

 

「──『仲間(なかま)』がいてよかった」

 

 

「…………フン。そう思うならちったァ役に立ちやがれ」

 

 

「グッ……まぁその辺は俺も頑張るって! これからも頼むぜ、相棒(あいぼう)────。

 

 

 

 

 ガラガラガラ

 

 瓦礫をかき分け、立ち上がろうとする一方通行。

 

「あァッ……体がイカれちまいそうだ……メチャクチャしやがる」

 

「立ち上がるその気力は流石の一言。だが、次で終わりのようだねぇ」

 

 手に(ほのお)を灯しながら降下してくるロズワール。

 

「野郎ォ……グッ!?」

 

 ヨロけて膝をつく一方通行。

 

 あまりのダメージ量に既に肉体は限界、能力で電気信号を操り、無理やり体を動かしているのが現状だ。

 

「既に体は限界だろう。それでも立ち上がるのは……いや、戦うのは何故だ?」 

 

 そう問いかけるロズワール。

 一方通行は顔を上げ、微笑を浮かべる。

 

「……さァな。俺だって不思議なモンだ」

 

 これまで、一方通行にとって戦う理由は大体一つだった。

 

 

 ────『怪物』『化け物』『人格破綻者』

 

 

 あァ、それは知ってる。最も簡単な理由だ。

 

 

 ────『仲間』『友達』『相棒』 

 

 

 それは…………

 

 

「意味が、分からねェッ。……分からねェから、負けるわけにはいかねェッ!!」

 

 

 それを聞き、ロズワールはクツクツと笑い、言う。

 

 

「戦う理由は単純だ。何かを守りたい、と思う限り、戦い続ける。かつて私はそれを放棄し、戦場から逃げ出した。そして自分より力がある賢者に責任転嫁した」

 

 

 それは目の前にいる一方通行にではなく、自分自身に言い聞かせる嘆きの言葉。

 

 

「だからこそ、今度こそ私はその覚悟を持ってみせる! さらばだ! 《アル·ゴーア》ッ!!」

 

 

 太陽と見間違える程の特大の炎。

 

 

 地面にすら焼き色をつけるほどのソレに、飲み込まれた人間は骨も残らないだろう。

 

 

 それが正に一方通行に直撃する──瞬間

 

 

 パキンッ!!

 

 

 と割れるように炎が消える。

 

 

 いや、マナに帰ったといった方が正しいかもしれない。

 

 

 場にはキラキラと星屑(ほしくず)のように、光るマナが降り注いだ。

 

 

「コレは……まさか『憤怒(ふんど)』のッ……なっ!?」

 

 

 立ち上がった一方通行の背には、透明な翼のようなモノが見えた。

 

 それは幻覚かとも思うほど透明度が高く、目を凝らしてやっと見えるか見えないか。

 

 まるで水が翼の形をしているかのようだった。

 

(なン、だ? 誰かに干渉されて…………)

 

 一方通行はその不可思議な現象の中に、誰かとの繋がりを認識した。

 それを深く考える時間はない。

 

 ──今は、

 

(借りるぞ、この力)

 

「気付いてるかロズワール。天へと昇った二つの魔法」

 

 

 未だ動揺の解けないロズワールは黙り込むしかない。

 

 

「大気を焦がす程の炎属性魔法は、確実にあるモノを生み出す」 

 

 ポツン、ポツン、と何かが二人のの肩を触る。

 

「雨……」

 

 いつの間にやら、辺りには大きな影が覆い被さっていた。

 

「上昇気流……雷雲だ──」

 

「クッ……まさか!?」

 

 

 透明の翼をはためかせ、天へと駆ける一方通行。

 

 ロズワールはそれを追いかけるように魔法を放つ。

 

「《ウル·ヒューマ》」

 

 次々と現れる氷の槍が一方通行へと向かう。

 

 

 だが、それらは透明の翼に触れた瞬間消え去り、幻想的な光の雨を降らせた。

 

 

 ピッシャァァーーンッ!

 

 

 暗くなりかけた辺りを轟音と光が一瞬照らした。

 

 暴風雨とともに雷雲が暴れだしたのだ。

 

 

「来いッッ!!」

 

 

 一方通行が雷を待つように手を掲げる。

 

 

 その光景を前に、ロズワールは更なる驚愕を示す。

 

 

「雷すらも、味方につけるというのかッ!?」

 

 

 だが、最早遅かった。

 ロズワールは『防御』という言葉を見失ってしまっていた。

 

 ただその場に立ち尽くす。

 

 

「これでッ!! 《雷龍(ライリュウ)咆哮(ホウコウ)》ォォーー!!」

 

 

 一瞬。

 

 強大な光がロズワールを直撃し、

 

 

 その数瞬後、

 

 

 ピシャァァーーン!!

 

 

 と遅れ、雷鳴が鳴り響いた。

 

 

 地を貫くばかりの雷。

 

 

 ロズワールは今度こそ意識を手放し、地面に倒れ伏した。

 

 

 そして一方通行からは次々と何かが失われていく。それは色かもしれないし、生気かもしれない。

 キラキラと光る飛沫(ひまつ)が、降り注ぐ雨と逆方向に浮かんで行く。

 

 落雷の瞬間まで一方通行を包み込んでいた何かは完全に消え去り、

 

 

「ハッ……クソ科学も、捨てたモンじゃ、ねェ……な」

 

 

 この言葉を最後に、学園都市最強とルグニカ最強の戦いは終結を迎えた。

 

 

 ──地面に転がる二つの影を、雨はその世界の終焉まで打ち続けた。

 

 

 

 




お疲れ様です。
ロズワールが一方通行を貫ける理由はまだ先です

そして多分いつかリメイクします。あまりにも戦闘描写下手なんで……

九月二十九日
轟音→雷鳴 編集しました

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