Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう) 作:因幡inaba
ドッジボール? ドッチボール?
アンケいれたので是非♪
22:37追記
タグに一方通行の原作タグ、『とある魔術の禁書目録』。また、一応『キャラ崩壊』を追加。
原作タグはつけろって怒られました、すみませんでした
陽日九時──
再び一方通行はこの日この時間に眼を覚ます。
「……ン、……?」
まだはっきりとしない意識と感覚のなか、上半身を起こす。
しかしピタリと静止することができず、少し前のめりになってしまった。
その事実確認が一方通行の意識を強引に覚醒させる。
「ッ!? スバッ──」
ハッ、となって思わず現状を再確認する。
やたらと肌触りのいいベッドに、横から差す朝日。毎度一瞬驚かされる貧血も、体調不良ではなく世界の始まりとして認識しつつあった。
そして傍らに立つのは────
「ラムと、レム………だよな?」
おかしな話だ。繰り返される世界で、既に分かっている事を確認するのだから。
更に言えば、一方通行は視線を少しも動かしていない。つまり彼も分かってはいるのだ。
それでもどこか恐れていた。
若干しかめたような面で手元を睨んだまま発される声は、心なしか、聞きようによっては震えたような声だった。
世界が一新したとはいえ、一方通行は清々しい気分にはとてもなれない。
──その回答が聞こえるまでは。
「はい。レムはレムです、お客様」
「えぇ。ラムはラムよ、お客様」
ハァ、と自然とため息が漏れる。
「──よかった」
短く放たれたその言葉は直ぐに虚空に消え、レムとラムは愚か、言った本人にすら届かなかった。
そしてようやく、止めていた視線を動かす。
一方通行は二人の顔を見ると、一瞬安心したような表情を見せた。
だがそれは文字通り一瞬で、すぐに平生の顔を取り戻すと、どこか腑に落ちない感情の起伏に気付いて体の力を抜き、目を瞑って思考を走らせる。
──安、心した……?
少し、一方通行という人間について説明したい。
優秀な存在というのは得てして孤独を強いられるものだ。
特に彼のような、幼い頃から周りと比べて頭二つ三つ抜けていた存在には、友人どころか普通に接してくれる人間すらいなかった。
自我にまつわる言葉として、「我思う、故に我あり」というものがある。これは哲学の根幹で、ありとあらゆるものを疑っても、それを疑う『自分』だけは疑い得ない、という意味。
即ち一方通行から見た『自分』は絶対の存在。
今そこに歪みが生じている。
「俺は何者だ?」とヒステリックに騒ぎ出すことはないが、それに近い状況には違いない。
疑い得ないはずの『自分』が今、急速な価値観の変化により崩れかけている。
──どうしちまったンだ俺ァ……分からねェ、分からねェ……。
貧血の症状には慣れつつあるが、今度は心に異常をきたしてしまった様。
それも免疫がないものだから、常人よりも余計に混乱が生じてしまっている。
当然ながら、心の整理にかかる時間も人並みから遥かに劣る。落ち着かない時間が続き、こめかみ辺りに汗が浮かんできた頃──
不意に、両の手のひらに仄かな温もりを感じた。
「……ハ? 何、やってンだ……?」
見れば、ベッドを間に挟むように移動していたレムとラムが、一方通行の両手を握っていた。
左手はレム、右手はラム、と。
そして慰める、或いは諭すように言う。
「落ち着いてちょうだい、お客様」
「落ち着いてください、お客様」
一方通行は頭のなかが真っ白になるのを感じた。
これは比喩でもなんでもなく、事実一瞬思考が完全に止まったのだ。
束の間の硬直が溶けて我にかえると、
「は、離せッ!」
慌ててひったくるように手を引いた。
「オ、オイ、さっさと出てけッ!」
そして声を荒げて二人を追い出そうとする。
客人の予期せぬ突然の激情に、レムとラムは慌てたようにやや早足で扉へと向かった。
「あ、いや、あー、待てオマエら……」
姉妹メイドは扉に手をかける瞬間、そんな覇気がない声を聞いて振り向く。
見れば、一方通行が視線を泳がしながら顔をこちらに向けていた。
「イヤ、なンつーか……
あまりにも情けない声色の謝礼がその部屋に響き、沈黙が訪れる。
レムとラムはきょとんとなってお互いの顔を見つめ合った後、クスッと笑った。
「グッ……わ、笑ってンじゃねェぞこのクソガキどもがッ!?」
「姉様姉様、お客様は素直じゃないようです」
「レムレム、お客様は素直になれないのよ」
「ッッッ等だゴラッ!! 歯ァ食いしばれテメェらァ!!」
しかし、一方通行が立ち上がるより先に、流れる水のようにスルッと扉から出ていってしまった。
残された一方通行は、やりきれない思いを胸に、再びベッドに寝転がると、
「ダァァーーッ……クソッ!! どォかしてるぜ」
大きくため息をついて、苛立ちを抑えるのだった。
(にしても──)
ただ一方通行にはもう一つ思うことがあった。
自力では止められなかった心の乱れを、いとも簡単に止めてみせた、あの事象。
未だ手に残る僅かな温度を感じる。そして触れていると、ひどく安心するのだ。
(人ってのは、あったけェンだな……)
この日、齢十八にして一方通行は、人肌の温もりを知ったのだった。
「ンで、オマエは何だよ?」
「愚かにも自爆しかけたバカな男を笑いに……心配で見に来てやったのよ」
本人は忘れかけていたが、一方通行は今朝ちょっとした失敗で吐血している。
「……あァそうかい。ならいいから幼稚園行ってこいよ、遅れるぞ」
「……それは冗談のつもりかしら? 見た目と反して面白くないのよ」
「そりゃァ五歳児がクリーム色のクルクルヘッドだもンな。いや敵わねェわ」
「もやしもどきがチョロチョロ歩いてると目障りなのよ」
「あ?」
「ん?」
今回もベアトリス来訪イベントは滞りなく行われていた。
「そもそも、ベティの書庫はお前のような下賎な男が立ち入っていい場所じゃないかしら」
「おーおー、確かによくよく見りゃ高貴な格好してるじゃねーか、王女様みてェだ…………アホ王国の」
「ハ?」
「お?」
出会い頭からお互いに軽口をぶつけ合い、しばらくの間ドッチボールが続いた後、ようやくベアトリスが核心に触れる。
「フン、これに懲りたら大人しくしてるのよ。お前のゲートの損傷具合じゃ、魔導士としてはやっていけないかしら」
「あァ、そうかい。オイ、ちょっと手出せ」
予想していたかのようにサラッと返した一方通行は、ベッドに座ってベアトリスを正面に見据え、手を差し出すようジェスチャーした。
「?」
意図のつかめないベアトリスは、疑いの表情で手を伸ばす。
すると、あろうことか一方通行がその手をギュッと握った。
「なっ!!?」
一方通行のやりたいことは決まってる。先ほどの事象の検証だ。
「……」
その状態で一方通行は、目を瞑って温度を感じることに集中する。
──冷たくも熱くも感じない。特別熱を持っているわけではない。ただ、どこか温かい。
(……熱量は大したことねェンだけどなァ)
惜しむことなく能力を使って分析も行い、その謎を解明しようとする。
ただしそこに明確な解など存在しない。集団で生きることを生業とする『人間』という種族の性なのだ。
ひょっとしたら、一方通行は心のどこかで寂しいという感情を持て余していたのかもしれない。
二人の肌が触れあっている時間、守られていた沈黙は不意に、
「……小せェなァ」
という、一方通行のつい声になってしまった言葉にかき消される。
「んなっ!!? 調子に! 乗るなぁ!!」
目にも止まらぬ早さで手を引いたベアトリスが、もう片方の手を一方通行に向ける。
「グォッ!?」
不可視の力が働き、たちまち一方通行は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「清々したのよ」
バタン、と扉が音をたて、ベアトリスが退室。
「グッ……あンのクソ幼女ッ」
手のひらの余韻を感じる間もなく、怒りに感情がむいてしまった。
もし、少しでも感傷に浸って考える時間があったら一方通行はもう少し成長していただろう。
でもこれは仕方ないことだ。
結局ベアトリスと一方通行の距離は、近くともギザギザなこのくらいなのだ。
お疲れ様です。主はワンピースが大好きです
僕そろそろオリジナルに手出そうとしてまして……書き上げた作品ってなんかの賞に出すのと、投稿サイトに出すのどっちがいいんでしょう
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