Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう)   作:因幡inaba

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こんばんは。
今回はギャグ(と思って入れた会話)も多めですが、これが面白いと感じる人は私以外にいるのでしょうか。
書きながらだとすごく面白いんだけどな……。

今回試みで、会話の連投部分に改行を入れてません。よければそこについて意見お願いしますm(_ _)m


35話 ナツキスバルの決意

「……」

 

 先ほどの些細な出来事ですっかり目が冴えた一方通行は、横目で窓から見えた光景に唖然とした。

 

 ロズワール邸の庭園、その一角で謎の体操をしている二人組。

 スバルとエミリアだ。

 

「……何やってンだアイツ」

 

 一瞬この世界特有の文化を疑った一方通行だが、エミリアがスバルよりワンテンポ遅れているのを見る限り、それは無さそうだ。

 

 そして先ほどから主張の激しい空いた腹をどうにかするまで、なるべくエネルギーを使いたくない一方通行は気まぐれ半分で彼らに交流することに決めた。

 

「イヤどうだか……」

 

 自然と足が止まり、決意が鈍りそうになる。

 

 書庫に行き頭を働かせれば当然多大なエネルギーを消費する。

 ただしスバルと会話するのもそれなりにエネルギーを消費するという事実を思い出したのだ。

 

「まァいい。本だけ回収しにいくか」

 

 非常に短い思考のすえ、例の英語の本を回収してから合流しようと決め、行動を始めるのだった。

 

 

 

 

「ンで、コレは?」

 

 一方通行にコレと表現されたのは、地べたに倒れて時折ピクピクと悶えるように動くスバルだった。

 

「おはようあくせられーた。ほらパック、説明して」

「にゃはは……えーっと、てへっ」

 

 エミリアと、猫の見た目の精霊パックが各々反応を示す。

 本来なら苦笑いしながら自分の頭を小突いてウインクする猫を見て疑問が生まれないわけもないのだが、一方通行からすれば既に慣れたものだ。

 

「てへっじゃないでしょ! ごめんね、あくせられーた。ちょっと無理しちゃって……」

 

 観念したパックは、起きた出来事を一から説明した。

 

 なんでも魔法を使いたがるスバルのためにパックがサポートし、スバルのゲートを介して魔法を使ったのだそうだ。

 ただし使い込まれてないゲートだったために制御が効かず、マナをほとんど吐き出してしまった。

 

 その結果がこの有り様である。

 

「ぐ……そこに……いるのは……一方通行か……」

「バカ野郎が。どンな気分だ?」

「かつてない程の疲労感……倦怠感……身体中の力が……」

「マナの使いすぎで疲労か」

 

 妙に心当たりのある症状だ。

 それは一方通行が魔法を使った時のリスクに酷似している。色々と謎の多い術だがベースはやはりゲートのようで、『人口魔法器』というのはなんとも的を射た言葉だ。

 

「うーん、スバルのゲートは目が荒いのかな。本人の意思を無視して、必要以上のマナを放出しちゃうみたい」

「んな……冷静に分析してないで……たすけて」

 

 顔の向きは変わらずただ口元が少しずつ動くスバルと、腕を組んで解説するパック。

 そこにエミリアが所々で突っ込みを入れている。

 

 そんな和やかな雰囲気を見て、別のことに思考を走らせていた一方通行は、ハッとなって頭を空にした。

 

「気の休まらねェ……」

 

 ため息とともに呟く。

 

 肉体的にはともかく、精神的な経験値は記憶とともに引き継がれてしまう。いくら一方通行といえど、何日も気を張っていると滅入ってしまうものだ。

 

「ね、あくせられーた。昨日は本当にありがとう」

「またか……俺にその言葉を言うな。二度とだ」

 

 別に謝礼の言葉が嫌いなわけではない。ただその言葉を聞くと()()()、胸焼けのような気持ち悪さが込み上げてくるのだ。

 

 そんな一方通行の感情を読んだパックは、

 

「それなら、なにか形でお礼させてよ。僕にできることなら何でも言って」

 

 と提案した。

 

 書庫の一件でパックからの礼は既に受け取っている。話の流れからこれはエミリアの分、ということだろう。

 軽い話の入り方ではあるが、パックは精霊の中でもかなり高位のものだ。なんでも、とまで言わせるのはそれだけパックがエミリアを大切に思っている証拠だ。

 

「そォか、それならそこに倒れてる哀れなやつを……」

「あ、一方通行様……!?」

 

 地獄に仏とはこのことだ。

 身体中に力が入らず、未だ立つことすら叶わないスバル。更には、ついに魔法を使えるぞ! という期待からの事態だったために精神的なショックもあるのだ。

 

 そんなスバルにもまだ神がいた────

 

「敷地から放り出せ」

 

 神は死んだ。

 

「ホワッツ!?」

「それはお安いご用だよ」

 

 更にはパックが悪ノリしたことによって益々ヒートアップ。

 ニヤニヤと笑いながら一方通行が便乗して言う。

 

「派手にな。着地と同時になンか大爆発するくらいだ」

「なんか大爆発!?」

「うーん。でもそれをやったら……」

「そうだパック! 正気に戻れ!」

 

 考える人さながらに顎に手を置いて言うパックに、スバルは必死に発破をかける。

 

「アクセラレータとリアの服が汚れちゃうよ?」

「服に負けた!? あ、一方通行さん? 冗談だよな……な?」

 

 布以下の扱いを受け、最早藁にもすがる思いで淡い希望を口にするが、

 

「あァ。新ネタだ」

「……」

 

 先ほどまで体勢に似つかわしくない声量で必死に言葉を紡いでいたスバルもこれには脱帽。哀愁漂うその姿からはチーン、なんて効果音が聞こえてきそうだ。

 

「準備はいいか?」

「リーサルグレネード、いつでもオーケーさ」

 

 薪に火をつけようか、くらいの感覚で消されそうになるスバルの命。

 無慈悲にも両手を掲げるパックと、サッカーボールでも蹴るかのような体勢を取る一方通行。

 

 その双刃が今まさにスバルに襲いかかる、瞬間。

 

「──やめなさーい!!」

 

 その場にいる唯一の良心、エミリアの氷塊とともに放たれた鶴の一声により止まった。

 

 

 

 

 一方通行とパックに迫る二つの氷の矢。

 パックは「よっ」なんて軽いかけ声で片手をふって消し飛ばし、一方通行は能力でコースを反らした。

 

 魔法に能力は作用しない。だから本来は同じ魔法で相殺するところなのだが、敢えて使わずに能力で対応したのには理由がある。

 

 今この瞬間、エミリアの魔法を見たことで一番最初の世界の記憶がよみがえったのだ。あの路地裏で、一方通行はたしかにエミリアの魔法を中途半端にだが操作した。

 

「要するに精霊術ってワケだ」

 

 エミリアが使ったのは精霊術。その認識で間違いないだろう。

 では何故誤りが生じるか。

 大気中のマナを使う精霊術において生じる違いと言えば術者くらいだ。ならば問題はそこなのだろうが、それではどうにも納得いかない。

 

 スバルに駆け寄るエミリアに「冗談だ」と声をかけた後、一方通行はパックに問いかける。

 

「よォ、精霊術ってのァ術者によって変わるモンか?」

 

 それに対しパックは悪戯のバレた子供のように笑いながら答えた。

 

「術者というより従える精霊によるって感じかなぁ。精霊術に興味ある?」

「まァな」

 

 すると突然パックは真顔になり、全てを見透かすような小さな瞳で一方通行を見つめた。

 

「どうして? 単純な興味じゃないよね?」

「……ハ?」

 

 一方通行は一瞬聞かれたことの意味が分からず、頭のなかで同じ言葉を反芻する。

 

 ──どうして? どうして……。

 

「どうってそりゃァ……」

 

 様々な答えが頭のなかに浮かぶが、そのどれもが喉元で止まり、口に出ることはなかった。

 

 あまりにも唐突とはいえ、自分は何故強さを求めているか。そんなことにややこしい答えなどないはずなのに。

 

 互いに無言のまま時間が進む内にパックは緩い笑みに変わり、一方通行の心を読み取ったように言う。

    

「大丈夫、それは決して邪なものじゃないから。君は根はすごく優しいから、今はそれでもいいんだよ。ゆっくりゆっくり」

 

 一方通行の頭に乗りながらのんびりと言うパック。

 寝転がったり座ったりと繰り返すパックは、意外とサラサラフワフワしている一方通行の髪を堪能していると見える。

 

 それを気にもせず、一方通行は勢いよく背中をついて寝転がった。

 その拍子に地面に激突しそうになるパックは間一髪で宙に浮遊。難を逃れた。

 

「危ないなぁもうっ」

「うっせェ。ヒトの頭を巣にするからだ」

「んー、警戒心は見えないけどなぁ。意外と単なる羞恥心だったりして……」

 

 一方通行の顔の前でウロウロ飛びながらそんなことを言うパック。

 隣で聞いていたスバルは、即座に警戒体制(心だけ)に入った。一方通行の怒るタイミングを彼は熟知したつもりだったのかもしれない。

 

 だから、次の反応にはスバルが一番驚いたのだ。

 

「──イヤァ、それはねェな」

 

 声を荒げず呟く一方通行はそのままの調子で続ける。

 

「習うより慣れろってか……ハッ、ったく、眠てェことを……」

 

 一方通行はそれきりで目を瞑ったと思ったら、そのままスースーと穏やかな寝息を奏で始めた。  

 パックは「そういう意味じゃないんだけどなぁ」と小さく呟いた後、ゆっくりと一方通行から離れ、スバルとエミリアに近寄る。

 

「え。あ、あれ? 一方通行、寝たのか?」

「まぁ本人の自覚以上に疲れがたまっていたみたいだしね。頭の回転も早いし、考えさせすぎちゃったかな?」

「疲れ……か。そ、それより俺のこれどうにかならないのん? マナ吸収があるなら供給とかも……エミリアたんからなら更にマル。俺が先生なら花マルプラスサイン付けちゃうね」

 

 などと供述しており、未だ声を出す以外は満足に行動できないスバル。

 流石に見かねたエミリアはゴソゴソと懐を漁ると、小さいリンゴのような形の何かを取り出した。

 

「はい、ボッコの実。気休めだけど、かじって」

「ご、ゴッホの実? 俺芸術方面はちょっと……」

「またわけの分からないことを……。早くかじる」

 

 あり得ない方向の勘違いをかました後、大人しく口元に当てられたボッコの実を口に含むスバル。

 

「う、うおおぉぉーー!!」

 

 すると、ほとんど意思と関係なく身体が起き上がり、更に身体中が熱くなったかのように感じた。

 一気に元気がみなぎり、その場でピョンピョンと跳ねたうえにシュッシュッと口で奏でながらシャドーボクシングを始めた。

 

「制御の効かない蒸気機関車みたいだ! そんなの見たことねーけど! シュッシュッシュシュシュッ! これなんて効果?」

「ボッコの実。体の中のマナを活性化させて、ゲートが少し力を取り戻すの。体によくないから、あまり使いたくなかったんだけどね」

 

 そんな彼女の親切の裏にはちょっとした後悔が見て取れた。

 それを分かってても踏み切る辺り、困っている人間を放っとけない性格は苦労も多そうだ。

 

「いや、実際助かった。今日動けないのは流石に辛いし」

「? 今日なにかあるの?」

「あ、いやいや。こっちの話」

「あくせられーたも言ってたけど、それってどっちの話なの……?」

 

 スバルは小首をかしげるエミリアを見て、かわいいとかかわいいとか言いたいことはたくさんあった。

 だが()()()()()をそんな風に扱うことは今やできなくなってしまった。何とは言わないが、スバルにも多くの心情がある。

 

 そして、それを思い出した。

 

「そうだ、そうだよ……そうなんだよ」

 

 突然の三段活用に、エミリアとパックは顔を合わせて疑問を共有する。

 

 スバルはそれを気にせず、パンっと両手で自らの頬を叩き、深呼吸。

 すっかり様変わりした顔つきになり、パックとエミリアをまっすぐ見て言った。

 

「頼む! ゆっくりでいい。楽なんて求めないし、弱音も吐かねぇ。俺に、魔法を教えてくれ!」

 

 そしてキッチリと腰から曲げて頭を下げた。

 

 何も知らないエミリアとパックは再び顔を見合わせる。エミリアは少しの間困惑の表情を浮かべていたが、パックがスバルをジッと見たあとに頷いたのに同調した。

 意見が揃い、パックが代表して答える。

 

「僕とリアにできることなら、て条件付きだよ?」

「っ! あ、ああ! ありがとうっ!」

 

 そこに普段のおちゃらけたナツキスバルはいない。

 

 表情から読み取れるのは決意。

 後ろではなく隣に着くため、道を自分で切り開くため、スバルは自分の弱さを知った分だけ強くなることの意味を知った。

 

 ──もう逃げない。今は追っている背中に、今度は背中を合わせて戦える日まで!

 

 




お疲れ様です。
ちなみに私的この作品のコンセプトは、一方通行が早期から心の許せる人間と出会っていたらどんな成長を遂げたか。リゼロを選んだのは好きなのもあるけれど、純真無垢なエミリア、そして必ず守らなければならない対象(スバル)がいるからっていうのが大きいですね。
てわけでまた次回会いましょう。

11/5 一部改善、読みにくかった場所を改良しましたしました

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