Re:ゼロから始める一方通行(いっぽうつうこう)   作:因幡inaba

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こんばんは。
遅れて申し訳ありません……!
読んでくれている方々を蔑ろにする気は一切ありません……ありませんが……
11月12月は忙しいんだ……!!

評価感想全部見てます。  ありがとうございますm(_ _)m
今後ともよろしくお願いします!


37話 一方通行の推測

 夜天に浮かぶ月の光が辺りを照らし、本格的に夜に差し掛かる頃。

 

 貸し切りでの長風呂を堪能したスバルは、一度自室へ戻った後、暖まった体ですぐに一方通行の部屋へと向かった。

 

 進む足取りは軽く、これから行われる作戦会議とも言える話し合いに期待は膨らむばかり。遂には無意識的に鼻歌まで奏で始め、目的地へたどり着く頃には体だけでなく心もホカホカだった。

 

「おっ邪魔しまーす! お、窓閉めてるのか? もっと開放的に行こうぜ」

 

 ノックの返事を待たずに入室し、ドタドタと勝手に窓を開けようとするスバル。

 

「ご開帳……って寒っ!? 風呂上がりにはきついなこりゃ」

 

 夜の冷たい風は乾ききっていない頭に響き、とっさに開いたばかりの窓を閉めた。

 

 そんな忙しない一部始終を見ていた一方通行はゆっくりと立ち上がると、未だ窓と向き合い寒さに文句を足らすスバルに歩み寄る。

 

「春風ならもう少しぬくもりというものを──ハっ!?」

 

 スバルは感じる。

 

 自らの背後に在る圧倒的な存在感。

 夜風など比べものにならない程の寒気。

 

「あの……」

 

 滴る無数の汗と、

 

「なンだ?」

 

 一見普通だが、どこまでも冷めた声色。

 

「すみませんでしびれびれびれびれアバババババ!!?」

 

 そして身体中に走る電流の刺激を。

 

「人の部屋でハシャいでンじゃねェ」

 

 少し全身が黒くなり、床に倒れ伏すスバル。

 

 ピクピクと悶える様から意識は残っているようで、座り様一方通行が冷えた声で問う。

 さて、一時のテンションに任せて動くと後で必ず後悔するという言葉の通り、スバルは自分の状態をもっと認識するべきだった。

 

「何か言うことは?」

「よくもやりやがったなこのマッドサイエンティストがぶらっ!!?」

 

 次にスバルを襲ったのは強烈な圧力だった。

 全身が床にめり込まんばかりに押し付けられ、まるで館と同化したかのような錯覚に陥る。

 

 そして基本サディスティックな男はそんな状況を面白がり、歪んだ笑みと言葉で更なる苦を与えようとする。

 

「ンだこりゃ館の装飾かァ? にしては不細工だな窓から捨てるか」

「ず、ずびばぜんでじだぁぁ!!」

「ほォ?」

 

 そこでようやく解放されるスバル。かけられていた重みのせいか、嫌に軽く感じる身体を起こしてその場に座り込んだ。

 

 

 振りきっていたテンションはこの数十秒で急降下し、むしろ低いくらいになったところでようやく本題に入る。

 

「で、俺は何をすればいい?」

 

 雰囲気ががらっと変わる。先程と打って変わり、緊張感のある声色。仄かに表情が笑っているのは期待とやる気の表れだろう。

 それを確認して一方通行もベッドに座る。それが一体どういう質問なのか、理解したうえで間髪入れずにハッキリと言った。

 

「何もしなくていい」

 

「へ?」

 

 それは多少なり身構えていたスバルからすると拍子抜けするような回答だった。

 

「強いて言うなら真面目に働け」

「ちょ、ちょっと待てよ!」

 

 この渦中で蚊帳の外に置かれるのは流石に納得がいかない、というより、少しでもいいから役に立ちたいという気持ちで抗議に走ろうとするが、

 

「──オイ、話は最後まで聞けよ」

 

 スバルの発言を遮る形で一方通行が口を挟む。

 

 やや呆れ顔になっている辺り、スバルがどういう行動に出るかは理解しているらしい。でなければ極力口数を減らしたい一方通行が注意などしないだろう。

 

「被害ゼロで一週間乗り切るのに必要な条件は何だ?」

「え? えーっと……レムへの対応と、呪術? だかの回避、か?」

 

 座り直し、指を折りながら自信無さげに答えるスバル。

 その回答への評価を後回しに、一方通行は別の切り口から話し始める。

 

「まず振り返ってみろ。一回目、オマエの死因は何だ?」

「不明だろ? 朝起きたら戻ってて……」

 

「それだが、一回目のオマエの死因と先のレムの死因は同じ可能性が高い」

 

 は? と表情を固めて何か言いたそうなスバルを置き、一方通行は自らの推測を語る。

 

「呪術には相手に触れるという発動条件がある。滅多なことではレムは遠出しねェ、となると色々辻褄が合っちまうンだよなァ」

 

 午前のラムとの会話で得た小さな情報だ。館の給仕の要であるレムは滅多なことでは遠出することはない。

 それがこの推測を支えている。

 

「この世界で一週間もない俺達に敵がいるのは考えにくい。となればオマエが狙われたのは唯の偶然。客として過ごした前回、オマエは外部の人間と接触しなかったから代わりにレムが標的となった」

 

 視線を動かさずに淡々と語る一方通行。

 

 スバルとてこの状況でふざけてはいられず、一方通行の言葉を頭の中で噛み砕いていった。

 

「呪術師は一回目の世界でオマエに会ったが、前回は会わなかった()()()()()()()()()()()()()。つまり──アーラム村の誰か、だ」

 

 それが一方通行の推測だった。

 

 一見筋が通っている話に聞こえるが、スバルにはどうしても納得できない点がある。

 今の話はある前提から組み立てられているが、その部分に大きな疑問が残るのだ。

 

「ま、待て待て。お前、一回目の世界で俺を殺したのがレムだっていう可能性を切り捨ててないか?」

 

 あくまで今の話は、一回目の死因が呪術であるという前提から組み立てられたもの。

 

 忘れもしない二回目の世界。レムが二人に牙を剥き、今では最悪の記憶として残る出来事。それが一回目でも行われたという可能性は──

 

「おそらく、無い」

「え、無いの?」

「あァ」

「そっかーなら安心だぁ……ってなるかぁ!!」

 

 ホッと胸を撫で下ろすも一瞬。直ぐに声を荒げて反対した。

 

「忘れたのか!? 二回目の世界で何があったのか!」

 

 大声で捲し立てるスバル。当然、スバルだって必死なのだ。相手が誰であろうと自分の思ったことは堂々と言う。

 その姿勢には好感を持てるが、今この場では不要のものだ。一方通行は常にスバルの一歩先で思考している。

 

「うるせェなァオイ。オマエこそ忘れたのか?」

 

 振り返ってみろ、と言われ、スバルは二回目の世界を頭のなかでなぞる。

 

 ──俺の二回目の世界は……

 

 客になった。

 レムに殺された。

 

 ふむ──

 

「客になって、レムに殺されたな」

 

 シンプルイズベスト。

 

「クックックックッ」

「あっはっはっはっ」

 

 

 バキッ ゴキッ ズガガガガガ

 

 

「あの時、レムはわざわざオマエに治癒魔法をかけてまで情報を引き出そうとした。尋問するなら無防備だった一回目の世界の方がよほど楽だ。よってレムに殺された可能性は極めて低い」

 

「なるほど、そういうことなんだな」

 

 ()()()、顔面が腫れ上がっているスバルが頷く。

 

「ロズワールとラムはオマエを殺す気はないと前回確認した。レムも注意はされてるらしいが、アイツはラムほど自分を抑えらンねェ。館近くの森で潜伏ってのはあからさますぎたなァ……」

 

 思い返せばあの状況は非常に怪しい。突然客としてやってきた人間(しかも魔女の香り付き)が、館から出た後すぐ近くに潜んでいたのだ。レムの猜疑心(さいぎしん)を煽るには充分すぎる。

 

「……俺が狙われるのは、俺から魔女の香りがするからってことなんだよな?」

 

 その問いに対し、一方通行は一瞬回答に迷う。

 

「…………あァ、そうだ」

 

 魔女の香り、それを理由に狙われるのはあまりに理不尽というものだ。

 ベアトリス曰く、魔女に特列扱いされているということらしいが、あくまで一方的なものであり、スバルが望んでいることではない。

 

 だが活路はある。

 

 スバルだけでなく、そういう体質の者は稀にいる。

 必ずしも反感を買うわけではない、信用さえ勝ち取れば。

 

 レムから信用されることは、この先ロズワール邸で過ごすうえで必須。だから一方通行はスバルに真面目に働けと言った。

 

「この世界を生き抜く条件は、アーラム村にいる呪術師を割り出すことと、レムから信用されること……」

 

 顔を床に向け、ブツブツと独り言のように呟くスバル。

 一方通行は、また面倒なことになるか? と思ったが、杞憂だった。

 

 スバルは今までの話を自分の中で纏めると、顔をあげて笑った。

 

「よっしゃ! 流石一方通行だぜ!」

 

 何てことはない。

 一歩ずつだが成長しているスバルはこの程度ではへこたれない。

 むしろやることがハッキリしたことに対して喜んですらいる。

 

 目に見えてテンションの上がったスバル。一方通行はそんな様子を見ながら、ソッとため息を一つ。

 

(コイツ……)

 

 今まで話したことは全て推論の域を出ないものだ。始めの推測から、質問の答えまで。

 それこそレムが気紛れで無抵抗のスバルを無抵抗のまま葬った可能性もあるハズなのに。

 

 それでもスバルは一方通行のことを信じきっている。

 

 それが一方通行にしては不思議な感覚だったのだ。

 ただ間違いないのは、それが悪い感じではないということ。

 

 ──そして、他でもないナツキスバルという人間が自分の心に影響を及ぼしているということ。

 

(ったく、面倒なヤツだ……)

 

 僅かに口角を上げながら、心のなかで呟くのだった。

 

 

 




一回目とか二回目とかはこのループ内ってことです。分かるか。

お疲れ様です。
長らく空いていたからか、書き方が更に杜撰なものになってる気がする……意見ありましたらどんどん言ってください。
次回からあの事件ですね。頑張って書きます

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