Muv-luv Over World   作:明石明

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どうも、お久しぶりです。
話の練り直しやリアルの仕事が忙しく最新話構成に時間がかかりました。
まだまだ拙い部分がありますが、よろしくお願いします。


第10話

国連軍横浜基地 地下19F 開発シミュレータールーム

 

 

 外がすっかり宵闇に包まれるも、それを把握できない地下で一機のシミュレーターが激しい動作を繰り返していた。

 俺と霞が見ているのはそちらではなく、現在シミュレーターでが使用している不知火のXM3試験映像だ。

 香月博士からα版が完成したとの報せを受け、早速武と霞を呼び出しバグ取りと実証データの確保に乗り出したのが2時間ほど前。何回かプログラムを修正してからは目立ったエラーはなく、映像の不知火は現在運用されている戦術機からすればありえない反応速度をたたき出していた。

 

 

「武、使い心地はどうだ?」

 

『問題ない。ただ少しだけ反応が鈍い気がする』

 

「鈍い? データ数値は全部目標値をクリアしているぞ」

 

『それはなんとなくわかるけど、なんか少し遅い気がするんだ』

 

 

 MSのOSに慣れてしまって物足りないというわけではないよな? 俺も不知火で軽く触ったが、反応速度自体は体感でジェガン並といった感じだ。この世界の一般兵にしたらそれだけでも破格の性能を持っているのに物足りないということは、ただ単に武の機動に機体が追いついていないだけの可能性があるな。

 デルタプラスに触れた後だから余計に遅く感じているとすれば、現行の戦術機で武の機動に応えられるのはそれこそ並の物ではもう無理だ。最悪の場合、武御雷でも追従できない可能性もある。

 

――まだまだ伸びる余地があるのなら、早い段階で専用機の設計に取り掛かる必要があるな。それも最低デルタプラス……いや、下手をすれば俺のガンダムに匹敵するくらいの機体が。

 

 時間もあまり余裕がないし、Gステーションに置いてきた調整中の機体や技術を使って戦術機を組むか。

 全部終わった後は厳重に封印、もしくは自爆させよう。Gステーションもいずれ同じような道を辿らせなければならないし、これから作っている機体や武装についても同様だ。

 ある程度の技術は残しておかないとまたBETAに攻め込まれたときに問題となるが、そのまま残せばまた戦争の火種となる。それはガンダムの世界??特にC.Eの世界が証明している。

 バランスをとることは非常に難しいが、とりあえず今は目の前のOSを完成させよう。

 ざっとレポートを眺めエラーがないことを確認する。プログラム関係はあまり得意ではないが、バグチェックやデータ収集ぐらいは問題ない。

 

 

「――よし、今日はここまでだ。明日、もう一回データを取ったら香月博士に提出するぞ」

 

 

 了解の返事と共にシミュレーターが停止し、先日のように強化装備を身に身に纏った武が姿を現した。

 

 

「そういえば今日見慣れない二人組みを見かけたんだけど、零。何か知ってるか?」

 

「二人組み? もしかして顔に大きな傷のある大尉と背の高い中尉か?」

 

「そうそう、その二人。なんて言うのかな、雰囲気が他の連中と明らかに違ってた」

 

 

 さすが最前線のエースたち。ここの空気に感化されず常在戦場の心構えでいたか。

 

 

「俺が今協力を頼んでいる二人だな。アフリカ戦線のエース、グラハム・エーカー大尉と欧州最高スナイパー、ニール・ディランディ中尉だ」

 

「お、おいおい。そんな二人を呼んで大丈夫か? アフリカもヨーロッパもそんな余裕ないだろ」

 

「それは百も承知だが、その上で協力してもらえるように頼んでいるんだ。突っぱねられたらそれ以上のことはしない。 それに権力を楯に引き抜くのは簡単だが、乗り気じゃないやつを無理やり連れてきたところで扱いづらいだけだしな」

 

「なるほど、ただ単に強いやつを集めればうまくいくってわけじゃないってことか」

 

「そういうことだ」

 

 

 一方的な要求だとマイナスの要素が多いが、ギブアンドテイクならまだプラスの要素が多い。

 「上官命令だ、協力しろ」では少なからず反感を買うが、「限度はあるが要求するものを揃える。だから協力してくれ」ということなら相手にもメリットがある。これなら相手も協力しやすくなるし、何より自分たちのために手を抜いたりはしないだろう。

 断られたら時は縁がなかったと思ってあきらめることにしよう。

 

 

「それはそうと、武。よく切れる実体剣とビームサーベル、どっちが好きだ?」

 

「なんだよ、藪から棒に。 まあどっちがいいと言われれば実体剣だけど」

 

「ふむふむ。ならライフルとマシンガン、どっちが好きだ?」

 

「うーん。威力で言えばライフルだけど、取り回しを考えたらマシンガンだな」

 

「なるほどなるほど。じゃあ胸はボインとペタ、どっちが好きだ?」

 

「もちろんぼ……まてぃ! 武装の話から急にどうでもいい話になったぞ!?」

 

「なに、ちょっとしたお茶目だ。しかし俺たちにはどうでもいいかもしれないが、社には重要なことのようだぞ」

 

「……小さいのは、負け組ですか?」

 

「ああ! 霞から負のオーラが!?」

 

 

 項垂れ自分の胸を押さえて絶望している霞に必死でフォローする武を目尻に、俺は混み上がる笑みを抑えて先ほどの回答を小さくメモする。

 

 

「安心しろ、社。武ならどんなサイズでも平等に扱ってくれるさ」

 

「この状況を作ったお前にだけは言われたくないが、間違ってないから言い返せねぇ……」

 

 

 何やら非難の目が向けられているようだが、この程度は非難に入らんな。

 しばらくして霞がうさ耳をピコピコ動かして武に何か提案し、当の本人は笑顔で快諾している。

 

 

「うし。俺たちは飯に行くけど、零はどうする?」

 

「そうしたいのは山々だが、今日の成果を博士に報告してくる。社と先に行っててくれ」

 

 

 片手に持ったデータチップを見せ、二人と別れ香月博士の部屋に向かう。

 移動しながら昼間に考えた兵装のメリットデメリットを見直していると、妙なデジャヴが俺を襲った。

 同じ場所で昨日、一人の男に遭遇した時と同じ感覚だ。また鎧衣課長かと思い振り返るが、人はおろか段ボールもない。依然として視線が俺に注がれていることを確認し、俺は神経を研ぎ澄まして出処を探る。

 視線の元は視界正面の上――通風口からだった。

 

 

「段ボールの次は天井ですか? 鎧衣課長」

 

「おやおや、こうもあっさり見破られるとは。今回はうまく行くと思っていたのですが、本当に手強いですな。神林中佐」

 

 

 響く声と共に通風口のフタが開き、案の定――鎧衣課長が颯爽と降り立った。トレンチコートで通風口這って来るとか何考えてんだ、このおっさんは。

 

 

「どうも中佐。一日ぶりですな」

 

「こちらこそ。しかし昨日といい今日といい、あなたは忍者か何かですか?」

 

「いえいえ、ご存知の通りただの宮仕えですよ」

 

「俺の知ってる宮仕えの人間は段ボールに隠れたり天井を這って移動したりしませんがね」

 

「おや、どうやら中佐は古いタイプの人――いわゆるオールドタイプにしかお会いしたことがないようですね。ニュータイプと呼称できる最近のサラリーマンにとって隠密は必須能力の一つにカウントされるほどの重要スキルなのですぞ」

 

 

 そんなサラリーマン聞いたことないし、俺の知ってるオールドタイプやニュータイプでもやらないからな。

 というかニュータイプの話をした覚えがないのにその単語を使われると聞き耳立てられてる気がして不安になる。

 

 

「それで、今日はどういったご用で? タイミングから察するに、スケジュールに目処がたったところでしょうか?」

 

「いやはや、本当に勘の鋭い方だ。 ――博士のお部屋でよろしいか?」

 

「そうですね、行きましょうか」

 

 

 別にここで聞いても良かったが、念を入れるに越したことはない。特に一国の代表を連れ出す話となれば、その情報の扱いには細心の注意を払って然るべきだ。

 それにこの話は博士にとっても重要な話となる。ならば交えて話した方が伝達の確実性が高い。

 以前のように移動中特に会話することなく博士の部屋に入室すると、鎧衣課長を認識するなり不敵に笑った。

 

 

「鎧衣。あんたが神林とここに来たってことは、そういうことでいいかしら?」

 

「はい。明後日の夕方18時より5日間、視察と慰問という名目でGステーションへ伺うことができます。ただ一週間近い日程のため、同行できる人に限りがあります。 詳しくはこちらをご覧ください」

 

 

 取り出された一枚の紙を受け取り中身を確認する。

 まず殿下のお側役である月詠大尉。次に珠瀬事務次官と巌谷中佐。最後に目の前の鎧衣課長の計4名が同行するか。

 てっきり紅蓮大将も参加するかと思ったが、帝都の守りを減らすわけにはいかないから残ったようだな。

 横浜基地からは香月博士に武と霞、呼び寄せたあの二人の計5名を連れて行くだけか。

 あとは緊急通信用の装置をピアティフ中尉と榊総理に預けるくらいだな。

 

 

「了解しました。 では――こちらからこれだけのメンバーが同行すると殿下にお伝え願えますか?」

 

 

 手近な白紙に横浜基地から参加するメンバーをリスト化し、そのまま手渡す。

 

 

「ふむ……。博士や白銀大尉、社少尉はわかりますが、このエーカー大尉とディランディ中尉はよろしいのですかな? 特にエーカー大尉はアメリカ人――月詠大尉からの風当たりが暴風並みになると予想されますが」

 

「確かに彼はアメリカ人ですが、所属はアフリカ戦線です。個人的に話してみたところ、考え方も客観的に見れることから日本に対しても特別な感情を抱いてはいないようでした。それでも月詠大尉が何か言うようであれば、俺が対応しますよ」

 

 

 その答えに納得したのか、鎧衣課長は「なるほど」と頷き用紙を懐へと収めた。

 

 

「了解しました。詳しい段取りはまた後ほど」

 

「では、明後日の18時に」

 

 

 そう交わすと鎧衣課長は退室し、博士が楽しそうな声を上げる。

 

 

「あんたがいると鎧衣との話がスムーズになって助かるわ。あいつが来る時だけ近くにいてくれないかしら?」

 

「勘弁してください、毎回登場に拘られたら流石の俺も疲れます」

 

 

 段ボールに通風口と来たら流石に手詰まりかもしれないが、鎧衣課長なら壁や床から現れるかもしれない。いや、本当にやりかねない。

 

 

「とりあえず聞いていただいた通り、出立は明後日の夕方18時です。武と社には俺から伝えますので、博士はご自身のスケジュールを調整しておいてください。 ーーあとこれ、今日行ったXM3の報告書です」

 

「ありがと。 β版が仕上がり次第試験的に不知火に実装でいいかしら?」

 

「そうですね。その際に武を使ってA-01の訓練に乱入させましょう。インパクトは大きい方がいいに決まってますからね」

 

「……そういうことね。確かに発破をかけるにはいい材料だわ」

 

 

 こちらの意図を察した博士がニヤリと笑う。

 そう、ただ実装するだけではダメだ。彼女たちが持つ戦術機の既成概念を根底から破壊するほどの衝撃を骨の髄まで叩き込み、その上で実機とシミュレーターで新OSの特性を体に覚えさせる。

 これで懐疑的な感情を取っ払い、OSを完全にモノにしようとするハングリー精神を掻き立てようというわけだ。

 並行して新兵器の慣熟訓練も行って行けば中隊規模でありながら連隊以上……いや、旅団以上の戦果を挙げられるだろう。武器の性能を差し引いても、間違いなくそれだけのポテンシャルを伊隅ヴァルキリーズは秘めている。

 しかも後に加わる207訓練部隊は旧OSの癖もないから伸び幅も非常に大きい。

 

 

「分かったわ。仕上がり次第連絡するわ」

 

「感謝します。では」

 

 

 小さく礼をして部屋を後にする。

 一先ず優先事項としてトレミーのハロ達にゲストの受け入れ準備を、Gステーションのハロ達に地球へ運ぶ物資と帰ってくるためのブースターを用意するように指示を出さないといけない。

 だがその前に――

 

 

「武たちと合流するか」

 

 

 連絡もそうだが、腹が減ってはなんとやらだ。




鎧衣課長を出すと何故が一気に筆が進む謎。
次回更新の目処はまだ立っていませんが、長い目で見守っていただけるとありがたいです。
それではまた。














唐突に思いついたどうでもいいおまけ




明の私室。

ドパァン!

零「……何してんだ、作者」

明「え、SSの資料を収集する準備ダァ……っ!」

零「ガンプラ組みながらフルブをしているのにかぁ?」

明「わ、ワシは悪くねぇ! この時期にフルブ出したりHGCEのストライクを発売したバンナムのせいだ……!」

零「その程度の言い訳で俺や読者が納得すると思っていたのか?」ハイメガロックオン

明「お助けーーふぁっ!?」デデーン!
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