Muv-luv Over World   作:明石明

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どうもこんにちわ。仕事のストレスで体調のヤバさがマッハな作者です。
心臓ってストレス溜まると本当に痛むんですね。程度がショボくて何とかなってますが、このまま行くと今度は胃に穴が空きそうです。

それはさて置きお待たせしました、第11話です。
自分の駄文っぷりに頭を抱えるばかりです。
そして前半何故こうなったのかよくわかりません。執筆本能の赴くままに書いたらどうしてかこうなってしまいました。
あえてもう一度言わせてください。
どうしてこうなった


第11話

国連軍横浜基地 PX

 

 

 零と別れて強化服から着替えた武は霞と共に夕食をとりに来ていた。彼女がシミュレータールームで一緒に食事がしたいとねだったのが発端だが、武自身もちょうど空腹を感じていたためタイムリーだと思っていた。

 

 

「おや、武に霞ちゃんじゃないか! 今日も同じのかい?」

 

「はい。お願いします」

 

 

 カウンターに並ぶなり大きな声で二人を迎えたのはこのPXの最高権力者にして横浜基地の肝っ玉母さん、京塚のおばちゃんである。

 このPXにおいては例外なく兵士たちは彼女の息子であり、娘である。それは横浜基地の実質的なトップで ある香月夕呼も例外に洩れず、彼女自身もこのおばちゃんをもう一人の母親のように感じていた。

 そして狂犬と化した神宮寺まりもを(物理的に)押さえ込める唯一の人物でもあると言う噂も……。

 そんな彼女は武から返事を聞くと、すぐに二人分の合成サバの味噌煮定食を用意する。合成ではあるが、他の基地と比べても美味しいのは間違いなく才能と実力によるものだろう。

 さて、本日の夕食を確保した二人は続いて本日の食事を摂る場所を確保すべくテーブル席へと足を進める。だが少し出遅れたのが響いたのか、いい場所は完全に埋まっていた。

 

 

「――あ、白銀大尉」

 

 

 不意に自分を呼ぶ声につられて顔を向けると 、207訓練部隊の少女たちが固まって食事を摂っていた。

 

 

「よお、お前らも飯か」

 

「はい。社少尉もご苦労様です」

 

 

 涼宮茜の挨拶に霞も小さくお辞儀をして答える。

 ここ数日、昼間の訓練で武の後ろについていることが多かったため彼女らにも顔を覚えられたのだ。

 ちょうど席が並んで空いているのも幸いし、二人は迷うことなく席に着く。

 

 

「調子はどうだ、お前ら」

 

「まずまずと言ったところです。ですが、総合技術演習までには必ず――」

 

「ストップだ」

 

 

 晴子がそこまで口にしたところで、武が手で制す。

 

 

「公の場とかでない限り敬語は要らないっていっただろ? しかも今は飯時だ。堅苦しいのは無しにしようぜ」

 

「ですが、大尉」

 

「はい、階級で呼ぶのも禁止だ。委員長」

 

「……榊。納得できぬ気持ちはわかるが、この者は梃子でも考えも変えそうにないぞ」

 

 

 冥夜の言葉に「まったくね」と嘆息し、千鶴は諦めたように口を開く。

 

 

「わかったわ。私の負けよ、白銀」

 

 

 その返答に満足したのか、武は笑って頷く。

 

 

「よし、じゃあみんなも委員長みたいな感じで接してくれよな。 あ、珠瀬は俺のことたけるさんって呼んでくれ。俺もたまって呼ぶからさ」

 

「ふぇ!? な、なんで私だけですか!?」

 

「……白銀、幼女趣味?」

 

「おい待て、断じて違うぞ彩峰」

 

「そうなの? ずっと社少尉が傍にいるから私もてっきりそう思ってたんだけど」

 

「白銀さんはどんな人でも平等に好いてくれます」

 

「霞!? 今それを言う場面じゃないしなんか言葉足りないよね!?」

 

 

 築地にまでそう思われていたことに反論しようとした武だが、霞のさらに誤解されかねない発言にツッコミを入れざるを得なかった。

 ちなみに霞本人は武なら『胸が』どんな『サイズの』人でも平等に好いてくれると言ったつもりだが、言葉足らずで伝わったため大部分は「やはりロリコンか?」「なんという女たらし」と邪推した。ちなみに高原だけは何故か男もイケルと別のベクトルで勘違いし、零と親しいのは実はそういう仲だからなのかと勝手に納得していた。

 

 

「とにかくだ、その呼び方呼ばれ方が俺としてもしっくりくるんだ。だから頼む」

 

「え……えっと、わかりました。た、たけるさん」

 

 

 恥ずかしそうに、しかししっかりと自分の名前を呼んでくれた壬姫。武は自分が望んだ輪に近づきつつあることを感じた。

 

 

「さ、飯にしようぜ。俺もう腹減って倒れそうだ」

 

 

 わざとらしくお腹をさすってアピールし、武は自分の食事に手をつけようとする。

 と、隣に座っている霞が裾を引っ張ってきた。

 

 

「ん? どうした、霞」

 

 

 見ると、箸で摘んだサバの味噌煮をこちらに向けている霞がいた。

 

 

「……えーっと、まさかとは思うが、あれか?」

 

「はい。 あーん、です」

 

 

ズギャァァァァン!

 

 訓練兵たちに雷よりも衝撃的な電流が、妙な効果音と共に全身を駆け巡った。

 

 

 

国連軍横浜基地 PX入り口

 

 

 

「あー、腹減った」

 

 

 地上に上がってきた俺は真っ先にPXへと足を運んだ。空腹をどうにかしなければまとめられる仕事もまとめられんのだ。

 列ができているカウンターの最後尾に並び、PXを見渡す。すれ違う何人かの兵が俺の階級に気付き、あわてて敬礼をして立ち去る。

 ……この基地の空気もどうにかしないと、後で痛いしっぺ返しを喰らうな。

 

ズギャァァァァン!

 

 

 

「おおぅ!? 何だ、今の感覚は?」

 

 

 本気でAI操作のガフランを大量投下しようとも考えたその時、妙な感覚が効果音と共に届いた。

 何事かと思わず辺りを見回すと、テーブル席で食事を摂っている武たちを見つける。

 そしてその中で霞が武に食事を突きつけているのが見えた瞬間、俺は全てを悟った。

 

 

「こいつぁ……祭りの予感ですよ」

 

 

 口元が笑みに変わるのを感じながら、こんなこともあろうかと懐に忍ばせておいたハンディカム(何故かトレミーにあったもの)を取り出し、誰にも気付かれることなく人気が少なく、かつテーブルの様子が把握できる観葉植物に固定させて録画を開始する。高性能集音マイクのおかげで音質も良好だ。

 速やかにその場から離脱し、再びカウンターへと舞い戻る。

 ああ、早くあの場を更なる混沌に陥れてみたい……。

 徐々に詰まっていく列の中でそんなことを思いながら、俺はその光景を眺めることにした。

 

 

 

国連軍横浜基地 PX

 

 

――なんでだ!? 何でこのタイミングでこれをする霞!? いや落ち着け、落ち着くんだ白銀武! こんな時こそKOOLになるんだ!

 

 混乱する頭を落ち着かせようとするが、状況が状況のためうまく落ち着かない武。そして周りの少女たちも、突然の霞の行動に唖然としていた。

 

 

「べ、別に今それをやらなくてもいいんじゃ?」

 

「白銀さん、さっきお願いを聞いてくれるって言いました。だからあーん、です」

 

「いや、お願いって一緒に飯食うことじゃないのか?」

 

「? 私は元々、これをお願いするつもりでした」

 

「なん、だと……!?」

 

 

 それはシミュレータールームでのこと。零のお茶目で気を落とした霞を元気付けてやるため、武は霞にお願いを聞いてやると言ったのだ。

 そこで霞はこのお願いを思いつき、「ではPXに行きませんか?」と誘った。

 ところが武はお願い=夕食を一緒に食べることと解釈。結果快く受け入れたのだが、霞の真のお願いはさらにその一歩先にあった。

 それを今、武は羞恥と後悔の渦中で悟り頭を抱えた。

 

 

「では。あーん、です」

 

 

 三度目の「あーん」攻撃。並の男ならその仕草だけで陥落してしまうだろうが、数々の修羅場を潜り抜けてきた男はなお抵抗の意思を見せる。

 

 

「か、霞。今回は他の人もいるから 、また別の機会に――」

 

「おやおや、女の子がこんなにも甲斐甲斐しくしてくれるというのに、武君はそれを拒否すると言うのかな?」

 

「げぇー!? 零!?」

 

 

 ここぞと言うタイミングを見計らっていたカオストリガー、神林零が悪い笑みで夕食のトレー(合成生姜焼き定食)を片手に武の背後から現れた。

 

 

「武。お前は今、全世界の独身男性の憧れである『女の子があーんと言いながら食べ物を差し出してくれている』という状況にあるんだぞ? それを断ると言うのは即ちその男たちのみならず、現在食べさせてくれようとしている社に恥をかかせると取れる行為だと言うことを理解しているか?」

 

「ま、待て! 俺は別に嫌だとは言ってねぇ! ただタイミングを――」

 

「嫌でないのならなぜ食らわん? 口をあけて飯を食うだけの簡単なお仕事じゃないか。別に見た目だけまともなゲロマズ料理ではない。むしろ他の基地と比べたら十分美味い合成料理だぞ?」

 

「状況が問題だっていってんだよ!? お前だって人前でそんなことされたら恥ずかしいだろ!?」

 

「何当たり前のこと言ってるんだ? 俺だってこういうのは二人っきりのほうが良いに決まってるだろ。だが武、されるのがお前なら俺は全力でその状況を後押しする。何故ならその方が面白いからだ!」

 

「鬼かアンタ!!」

 

「ふはははは! 何とでも言うが良いさ! 他人の修羅場ほど見ていて楽しいものはないのだからな! さあ社、存分にやってやれ」

 

 

 その言葉に無表情ながら力強く頷く霞。そして再びずいっと箸を武の口元まで持ってくる。

 未だ衝撃から抜け切れていないながらも事の成り行きを見守っている訓練兵たちの無言の圧力も加わり、「食べなきゃひどいぞテメェ」といった空気を作り出していた。

 

 

「~~~~っあ、あーん」

 

 

 数秒の沈黙の後、腹を括った武がついに口を開く。そこへ満足そうに食事を運ぶ霞。

 

――覚えてろよコンチクショウ。

 

 恨みがたっぷりこもった視線で零をにらみ、報復を心に誓う武であった。

 

 

 

国連軍横浜基地 地上通路

 

 

「ひでぇ目にあった……」

 

「いや、すまん。あそこまで混沌とした空間になるとは正直予想外だった」

 

 

 あれから霞が何度か「あーん」を続けると空間が歪むような音が聞こえ、訓練兵たち??特にB分隊から形容しがたい暗黒のオーラが噴出した。

 本人たちは何故自分たちがそれを出したか理解していないが、断言できる。あれは嫉妬のオーラであると。

 それ以上はさすがに俺でもまずいと感じたが、霞は満足するまで「あーん」をやめようとはしなかった。

 そしてまず彩峰がわざとらしく足を振って武の脛を強襲。続いて委員長が皮肉を口走りながら箸を真っ二つにへし折り、トドメに美琴が自身が父親に連れ回された先で見た男女の凄惨なる結末のエピソード(ドロドロ恋愛編)をぼかしなしで披露した。

 たまと冥夜はぎりぎり抑えてはいたが、もう一押しがあればナイスボート一歩手前な状況になっていたかもしれない。

 そんなカオスな夕食を終えた俺たちは腹ごなしを兼ねて基地内をぶらついていた。ちなみにカメラは霞に回収させた。今頃は香月博士の手元にあるだろう。

 

 

「で、明後日の夕方だっけか?」

 

「おう。俺は当日に準備のため一足先にトレミーへ行って来るから、お前は訓練兵たちに留守中の注意点とかあれば伝えておけ」

 

「了解。 それにしても、行き先は宇宙か。俺も作戦で上がったことがあるけど、あの時はゆっくり感じてる暇なんてなかったな」

 

「人類の命運をかけた作戦だったんだ。そんな時に余裕があったら、逆に驚くぞ」

 

 

 雑談を交えながら簡単に今後の予定を話し、グラウンドに出たところで見知った顔を発見した。

 

 

「自主トレか? 冥夜」

 

 

 武が声をかけると、グラウンドのトラックを走っていた彼女??御剣冥夜は俺たちに気付いて駆け寄ってきた。

 

 

「ご苦労様です。大尉、中佐殿」

 

「こらこら、堅苦しいのはなしって言っただろ?」

 

「し、しかし。中佐殿がいらっしゃる前でそれは……」

 

「御剣。俺も初めて会ったとき特殊な状況でなければ敬語は不要だと言ったはずだぞ? まあ、気になるなら別にかまわないがな。だが武と話すときくらいは楽にするといい。こいつはそれを望んでるんだしな」

 

 

 俺の言い分に納得したのか、それともこれ以上の反論は無駄だと判断したのか、冥夜は嘆息する。

 

 

「承知した、白銀。しかし、中佐がおられる時はまともな対応をさせてもらうぞ」

 

「別に構わないぜ。ただ、俺のことは苗字じゃなくて名前で呼んでくれ」

 

「な、名前でか?」

 

「ああ。お前に苗字で呼ばれると、なんかむずがゆいんだよ」

 

 

 反論しようと口を開きかけた冥夜だが、言って聞く性格ではないことをここ数日??特に今日の出来事で嫌と言うほど理解させられたため素直に諦める。

 

 

「では、タケルと呼ばせてもらおう」

 

「おう。せっかくだし、人が少ないときは零のことも名前で呼んでみたらどうだ?」

 

「さすがにそれは承服しかねる。中佐には上官として、接させていただきます」

 

「ん、了解した」

 

 

 綺麗な敬礼をした冥夜に返礼する。

 

 

「ところで、お二人は何故ここへ?」

 

「なに、腹ごなしを兼ねた基地の散策だ。お前はさっき武が言ったように自主トレか?」

 

「はい。私は一刻も早く衛士になり、戦場に立ちたいのです」

 

「……よければ、その理由を聞かせてくれないか?」

 

 

 武の質問に頷き、闇夜の空で輝く月を眺めて語り出す。

 

 

「月並みではありますが、私にも護りたいものがあります。この星、この国の民、そして……この日本という国です」

 

 

――ああ、そうか。これは冥夜が目指す護りたいもののエピソードだったな。

 

 御剣冥夜という少女が抱いた、未来への想いだ。

 

 

「私は人々を護りたいのです。人々の心、日本人の魂、そしてその志を守りたいのです。古より脈々と受け継がれてきた、気高き心を」

 

「……立派だな、御剣。他の連中にも見習わせたいくらいだ」

 

「恐縮です」

 

 

 この基地も――いや、この国も今みたいな純粋な気持ちを持つ奴ばかりだったらどんなにいいことか。

 

 

「昔、俺が尊敬する人からこんな言葉を教えられたことがある。『目標があれば、人は努力できる』ってな」

 

「ほぉ。簡潔でありながらも良い言葉だな」

 

 

 武の言葉に深く感銘を受けた冥夜は「私も見習わせてもらおう」と数回頷いた。

 

 

「では、俺からも偉人の言葉を贈ってやろう」

 

 

 俺の言葉が予想外だったのか、冥夜は驚いたようにこちらを見た。武は武で、面白そうな顔でこちらを見た。

 

 

「まあいろいろあるが、今207B分隊に必要なのは『生き延びるなら信じ合う』。これに尽きるな」

 

「生き延びるなら、信じ合う……」

 

「いい言葉だな。どんな人の言葉なんだ?」

 

「ある小隊の隊長だった奴だ。その隊長は仲間との信頼を特に大事にしていた」

 

 

 心の底から信頼しあっているとはまだまだ言い難いB分隊だが、あんな話をした後だ。この言葉に込められたチームワークの重要性は理解出来るはずだ。

 

 

「冥夜、仲間を信じていればそれだけでも力になる。特にエレメントを組んだ時にはそれが顕著に現れる。月並みなセリフかもしれないけど、覚えておけ。 お前たちは一人で戦ってるんじゃない。必ず助けてくれる仲間がそばにいるんだからな」

 

「……はい!」

 

 

 武の言葉に力強く応える冥夜。その表情は、何か吹っ切れたように感じられた。

 

 

「よし。じゃあ明日の訓練に障らない程度で切り上げろ。体調管理は衛士に限らず、どんな人にも共通する重要な事だからな」

 

「ふ、承知している。 では」

 

 

 敬礼をして再びランニングに戻る冥夜。その足取りは、最初見かけた時よりしっかりしているように見えた。

 

 

「俺たちも行くか」

 

「ああ。けど、その前にやることがありそうだ」

 

 

 流石に3回目ならこの後の流れが大体わかっているのだろう。先ほどから――具体的には冥夜と接触した辺りからこちらを警戒する視線が向けられている。

 その視線の主は俺たちが建物の中に入って間も無く、こちらへやって来た。

 

 

「来ると思っていましたよ、月詠中尉」

 

「ほぉ、私の気配に気付いておられたか」

 

 

 現れたのは赤い服を着た女性と、白い服を着た3人の少女達だ。

 帝国衛斯衛軍第19独立警護小隊。

 月詠真那を筆頭に神代巽、巴雪乃、戎美凪が鋭い目付きで俺たちを睨んでいた。




ようやく真那さん出てきました。
でも本格的な絡みは次回からです。
次回の投稿はまた一月くらい後になるかもしれませんが、ご了承ください。
ではまたお会いしましょう。

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