Muv-luv Over World   作:明石明

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どうも、フルブでユニコーン使って13連勝したら別の部屋で勝率70%超えのタッグに20連敗した作者です。
4月の一発目の投稿になります。
4月と聞いて現在頭に浮かぶのが3つほどあります。
まず消費税増税ですね。
ガンプラやゲーム、本やガソリンなどが高くなってしまいました。ちくしょーめぇ!
次にプロ野球のシーズンですね。
でも虎はもうダメかもしれません。
3試合して失点が既に30点近いとか……。
最後は10日に第3次スパロボZが発売されることですね。
早くガンバスターで暴れたいです。

さて、話がだいぶ脱線しましたが第14話です。
みなさん、よろしければコメントにあのセリフを残してください。
それでは本編をどうぞ。


第14話

国連軍横浜基地 第90番格納庫 地上行きリフト

 

 

 運命の日。

 そう、ある意味で今日と言う日はそう呼称できるだろう。

 香月博士にとっても、この日本帝国という国にとっても。

 それが真に人類勝利の鍵となるかはまだわからないが、その一翼を担う効果を上げることは可能だ。

 

 

「どう転ぶかは神のみぞ知る、てな」

 

 

 地上に向かって昇るリフトに載せられたデルタプラスのコクピットで、発進の準備をしながらそう呟く。

 最後に乗って数日しか経ってなかったが、乗り込んだ際に全周天モニターがとても懐かしく感じられた。

 やがて機体が地上へと姿を現し、脚部がカタパルトに固定される。

 規格が違うはずなのに固定ができるのはありがたいな。

 現在の時刻は夜明け前の午前4時30分。

 空が夜の闇から夜明けへと繋がる瑠璃色に変わろうとしていた。

 

 

「さて――神林零、デルタプラス。出る!」

 

 

 カタパルトから射出された機体が十分な高度に達したのを確認し、ウェイブライダーへと変形させてトレミーを隠した海域へと向かった。

 

 

 

国連軍横浜基地 A-01専用ブリーフィングルーム

 

 

 夕呼から昨日に続き連絡を受けたみちる。全員ブリーフィングルームに集合との連絡だったので、ほぼ間違いなく昨夜の演習についてだろうと考えていた。

 

――おそらく、今朝からシミュレーターが使えないのと何か関係があるはずだ。

 

 昨夜の敗北をバネに水月と香奈多が訓練に行こうとしたところ、シミュレーターが全台使用不可の状態にあったらしい。そして整備をしていた連中はこぞってニヤニヤしており、訪ねても楽しみにして欲しいとしか言わなかったそうだ。

 

 

「大尉ー、副司令の話って何なんですかー?」

 

「さあな。 ――ところで真咲、それが上官に質問する態度かっ!」

 

「あいたっ!?」

 

 

 退屈そうに机に突っ伏しながら質問して来た部下の頭にゲンコツを落とし、みちるは呆れ気味にため息をつく。

 

 

「――待たせたわね。敬礼はいらないから、さっさと本題に入るわよ」

 

 

 それから間も無く、お待ちかねの人物がいつもと変わらぬ姿で現れる。

 しかしみちるには、その表情が何処か楽しそうにも見て取れた。

 

 

「まず、昨日戦ってもらった不知火についてだけど――」

 

 

 その言葉に、全員の空気と表情が一瞬で変わった。その変化に夕呼は満足そうに笑みを作り、話を続ける。

 

 

「おかしなことがなかったかしら? 例えば……硬直が全くなかったりとか」

 

 

 言われ、水月の目がさらに鋭くなる。

 演習が終わってから何十回と戦闘記録を見直したが、夕呼の言ったように硬直と呼べる場面が全くと言っていいほど無かったのだ。

 

 

「あれはXM3というあたしの研究を応用した新OSを搭載させたものよ。このOSの特性として大きく3つに分類されるわ」

 

 

 キャンセル、コンボ、先行入力と指を一つずつ立てながら夕呼は説明していく。

 それぞれの特性やその恩恵を聞くに連れ、A-01の表情が驚愕から希望に満ち溢れたものへと変化していった。

 OSの換装だけであれ程の戦果を挙げられるのだ。もしこれが世界中に普及されれば戦死者の数が激減するのは想像に難くない。

 

 

「――で、あんたたちにはシミュレーターの換装が終わり次第慣熟訓練に入ってもらうわ。本来なら作った奴が教えればいいんだけど、生憎そいつは今日からあたしと一緒に少し基地を離れるわ」

 

 

 真剣に話を聞いていた彼女たちは、その言葉にふと疑問を感じた。

 

 

「作った奴……このOSを開発したのは副司令ではないのですか?」

 

「いいえ、あたしは要望を聞いて作っただけ。開発したのはあの不知火に乗っていた衛士よ。名前は白銀で性別は男、とだけ教えておくわ」

 

 

 その発言に、先程説明を受けた時以上の衝撃が襲った。

 誰も彼もがこの素晴らしいOSを開発したのが目の前の天才、香月夕呼だと思い切っていた。

 だが本人はそれを否定し、真の開発者は自分たちを倒した衛士ときた。

 一体どれほどの英傑なのかと想像したところで、夕呼がニヤニヤと一つの通信記録装置を取り出した。

 

 

「先に言っとくけど、あんたたちが思うような人間じゃないわよ。そいつ」

 

 

 そう言ってカチッと装置の再生ボタンを押し込む。

 そして再生されるは以前零が録画したPXの出来事だった。一部音声――主に零と武――が夕呼の手によって編集され所々で妙な間が空くが、それでも音声だけで修羅場の混沌具合がハッキリと伝わってくる。

 それを聞いていたA-01の彼女たちは、肩透かしを食らったように呆然としていた。

 

 

「さて、さっき言ったようにあたしは今日の夕方から5日ほどここを離れるわ。伊隅は有事の際、ピアティフを通して連絡なさい」

 

「了解しました」

 

「昼過ぎにはXM3がシミュレーターで使えるようになるから、それまでは好きにしなさい。以上よ」

 

 

 伝えることを伝えた夕呼は夕方に備えての準備をすべくさっさと退室して行った。

 残された乙女たちはシミュレーターが使えるまで時間を潰すべく、自主トレやXM3の特性についての再確認に時間を費やすことにした。

 

 

 

国連軍横浜基地正門

 

 

 門番の伍長二人はビビっていた。

 今日も今日とて何事もなく平和に一日が終わると思いきや、夕刻間際に突然現れた一台の黒塗りの車。何事かと思い歩み寄ってみれば後部座席から顔を出したのはなんとこの国の政威大将軍、煌武院 悠陽 殿下だ。

 何故、と思う前に脊髄反射で直立不動の最敬礼。さらにそこへ現れたのは儚げな少女を従えた横浜基地の副司令にして魔女の異名を持つ天才、香月夕呼。

 再び敬礼したところで下がれと命令され、二人はこれ幸いとここしばらくやっていなかったキビキビとした足取りで定位置につく。

 

 

(おい相棒! どうなってんだよこりゃ!?)

 

(知るか! 俺が知りてぇよ!)

 

 

 こんな感じで伍長たちが生きた心地がしない空間に陥ったのと同じ頃、場所は変わり正面昇降口へと移る。そこでは二人の男が手持ち無沙汰で立っていた。

 グラハム・エーカー大尉とニール・ディランディ中尉である。

 昨日、零から迎えを寄越すからここで待つように指示をされたのだが誰が来るかは教えられていなかった。

 二人が迎えと聞いて思い浮かべたのは最初に零の元へ連れて行ったピアティフ中尉だったが、その予想は目の前に現れた男の発言で外れることとなった。

 

 

「グラハム・エーカー大尉、ニール・ディランディ中尉ですね? 自分は白銀 武 大尉です。神林中佐の命によりお迎えに上がりました」

 

 

 男――白銀 武はピシッと綺麗な敬礼とともに軽い自己紹介をする。

 その動作から今日まで横浜基地で見て来た衛士とは違うオーラを感じ、二人はまず返礼をして軽く自己紹介を済ませる。

 

 

「白銀大尉。一つ確認したいのだが、大尉は神林中佐がどういう人物かご存知か?」

 

「えーっと、その前にお二人に確認したいんですけど、どこまで聞いてます?」

 

 

 グラハムの質問にそう確認すると、ニールから返答があった。

 

 

「中佐は自ら異世界人であると名乗っていましたが、本当ですか?」

 

「俺の方が年下なんで今みたいな時はタメ口でいいですよ、ディランディ中尉。で、質問の話は本当ですよ。俺たちの戦術機がおもちゃに見えるような機体や武装を保有していますし、俺自身シミュレーターで体験しましたけど、間違いなく単機で戦況を一変させる性能がありました。 無論これを知っているのはごく少数の人間だけで、今回の本拠地への招待はそう言った話を完全に納得させる意向もあるんですよ」

 

 

 武の説明を受け、二人の中で初めて零に会った時の話が信憑性高めた。

 しかしニールは同時に武の発言に気になることがあった。

 

 

「白銀大尉。ちょっと聞きたいんだが、異世界の戦術機を触らせてもらったってことは大尉は中佐の直属の部下になるのか?」

 

「直属ってわけじゃないですけど、形式上では上官と部下です。けど、俺はそれ以前に仲間だと思っています。無論締める時はきっちり締めますし、呼び捨てにしたりするのもプライベートや人が少ない時ですよ」

 

 

 上官と部下で有る前に仲間である。

 その言葉を聞き、隣で聞いていたグラハムは胸に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。

 しかし同時に疑問も湧き上がった。

 上官と部下と言うのは理解した。だが何故あの中佐の部下であるのか、それが謎だった。

 

――同類の人間である、と言う可能性も捨てられんな。確実なのは中佐同様、ただの衛士ではなさそうだと言うことだ。

 

 そう結論付け、いつか中佐本人から全てを確認しようと心の中で誓う。

 それじゃあと武が切り出し、二人は導かれるまま正門の方へと向かう。

 たどり着いた場所では大きな黒塗りの車が1台と、軍用車両が一つ停車していた。

 黒塗りの傍らには香月夕呼と社霞、そして相変わらずトレンチコートの鎧衣課長が。軍用車両の傍らにはピアティフ中尉が立っていた。

 

 

「遅いわよ白銀。――で、そっちの二人が神林の呼んだって奴ら?」

 

「はい、グラハム・エーカー大尉とニール・ディランディ中尉です。エーカー大尉、ディランディ中尉、この人が横浜基地副司令の香月夕呼せん――博士です」

 

 

 噂の横浜の魔女を紹介され、反射的に敬礼を取る二人。

 だが夕呼は面倒臭そうに手を振り、「敬礼は要らないわ、それよりさっさと行くわよ」と告げ、鎧衣に黒塗りの後部座席を開けさせる。彼女が乗り込むとその後を霞がちょこちょこと続き乗り込み、鎧衣は手早く扉を閉めると反対側の扉から乗り込んだ。

 

 

「白銀大尉。あれが本当に基地の副司令である香月博士なのかね?」

 

「言いたいことは大体わかりますけど、残念ながら副司令の香月博士本人です」

 

 

 どこか疲れた表情で説明する武を見て、おそらくいろいろあったのだろうと同情の念を送る二人であった。

 

 

 

日本帝国 某海岸

 

 

 武の運転する車に導かれて移動すること約1時間、到着したのは人っ子一人いない小さなビーチだった。

 武は少し前に零からみんなをここに連れて来て欲しいと頼まれ、座標が入力された端末ナビを頼りにここまで来た。

 しかしそこに肝心の零の姿はなく、約束の時間は既に10分前まで迫っていた。

 

 

「白銀。本当にここで合ってるの?」

 

「あいつが寄越したこのナビが正しかったら、間違いなくここです」

 

 

 だが見渡せど指定した本人の姿はない。

 と、海の方から一つの輸送機が飛来して来ていた。

 誰もが見たことない機体だと思っている中、不意に武が見たことのあるカラーリングに気づくのとほぼ同時に端末へ通信が入る。

 

 

『こちら神林。現在輸送機でそちらを視認した。今から着陸するため風圧などに注意されたし』

 

 

 噂をすればなんとやら、本命の男からの通信だった。

 機体が浜辺に着陸し、扉から国連軍のものとは違う青い軍服を纏った神林零が姿を現した。

 

 

「本日はご足労頂きありがとうございます、殿下」

 

「構いません。今回のそなたのすべきことを考えれば仕方なきことです」

 

「お心遣い、大変感謝致します。では、早速参りましょう」

 

 

 先頭を歩き出す零に続き悠陽たちが乗り込む。

 輸送機の内部はそこまで広くないが今回の人数を運ぶには十分な広さが確保されており、乗り込んだ一同は内装のモニタや計器類に目を張る。

 技術に大きな差があることは覚悟していたが、自分たちの想像以上だったようだ。

 

 

「ではこれより現在使用している母艦へ帰投します。操縦しながらで申し訳ありませんが、何か質問がありましたらどうぞご遠慮なく」

 

 

 まるで飛行機の機長のような説明をし、零は機体を浮上させた。

 

 

 

太平洋 プトレマイオス2 MSデッキ

 

 

「ようこそ、プトレマイオス2へ」

 

 

 輸送機を降りた殿下たちへ向けた俺の第一声がそれだった。

 しかし俺のその言葉にまともに反応出来たのは香月博士とここに現れた武で、時点で殿下と月詠大尉、あとは霞がどうにか反応。後は鎮座しているガンダムデルタカイとデルタプラスに釘付けとなっていた。

 さて艦の案内もそこそこに済まし、俺は全員をブリーフィングルームに案内し、今後の説明に入る。

 説明と言っても、大気圏離脱の時に強烈なGがかかるからそれを緩和するためにノーマルスーツの着用と、こちらからの指示があるまで用意した席を離れないようにしてもらうと言うことだけだ。

 ちなみにノーマルスーツについては宇宙服と言うことで納得してもらった。

 それらを了承してもらった俺は殿下、博士、月詠大尉、そして武と霞の5人をブリッジに招く。

 ちなみに月詠大尉は殿下の護衛との一点張りでついて来た。別にいいけど。

 

 

「それでは殿下はこちらの艦長席へ。月詠大尉はオペレーター席に。香月博士は正面左の座席へ。武と霞は後ろ側のサブシートに」

 

「よろしいのですか? 艦長席と言うことならば、神林中佐が座るのが筋では?」

 

「ご安心を。自分は艦の操舵をしなくてはなりませんので」

 

 

 と言うか絵面的に見ても俺より殿下の方が圧倒的に映えるんだよな。これが将軍家のカリスマか。

 まあそれ以上に、あれを起動させられるからこっちに座ったってのもあるが。

 各々が席に着いたのを確認し、余ったオペレーター席にいるハロへ指示を出して全ての準備が整う。

 

 

「艦内の皆様へご案内します。これより当艦は大気圏離脱シークエンスに入ります。先のご説明でもありました急なGにご注意ください」

 

 

 輸送機を発進させた時と似たような口上を艦内放送で流し、トレミーを加速させる。

 さあ、このセリフを言うことをどれだけ楽しみにしていたことか!

 加速が十分上がって来たところで、俺は今回最も重要なキーワードを宣言する!

 

 

「トランザム起動! ハロ、GNフィールドを前方に展開! トレミーは最大戦速に入る!」

 

「GNフィールド展開! GNフィールド展開!」

 

 

 トレミーの船体が赤く染まり、航行速度が一瞬にして跳ね上がる!

 同時に艦首を空に向けて一気に大気圏に突入する。

 艦の前方にはGNフィールドが発生しており、大気圏の摩擦熱から船体を守るように広がっている。

 そこから間も無くトレミーは地球の重力から完全に離脱し、星の海へと飛び込んだ。




第14話、いかがでしたでしょうか?

ついに宇宙に上がりました。(ついでに伍長ズも出ました)
まだ書いてもいないのに初めての宇宙遊泳にはしゃぐ武ちゃんが目に浮かびます。
ここから一気に話を進めるつもりでいますが、どう進ませるかはまだ決まっていません。
2週間以内に上げられるよう頑張りますので、何時ものように気長にお待ちください。
それでは、また。



おまけ
今回のメンバーでトレミーの構成を考えてみたらこうなった。
艦長:香月 夕呼
副長:月詠 真耶
操舵:社 霞
通信:ニール・ディランディ
整備:巌谷 榮二
ゲスト:煌武院 悠陽

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