Muv-luv Over World   作:明石明

25 / 41
どうもこんにちわ、最近ようやく艦これで長門が出たり久しぶりのフルブでデルタの☆が5つになった作者です。

さて、今回はユーコンテロへの介入に至る内容と唯依姫たちとの合流まで進みます。
いつもより若干短いですが、思い切って投稿することにしました。

それでは本編第22話、どうぞご覧ください。


第22話

アラスカ湾 プトレマイオス2 ブリーフィングルーム

 

 アラートと艦内放送を流して数分。零がブリーフィングルームに足を踏み入れた時点で既に衛士、もしくはパイロットが全員そろっていた。

 いずれも引き締まった表情をしており、現状がただ事ではないのを十分に理解していた。

 

 

「敬礼は不要だ、時間が惜しい。――先ほど、目的地である国連軍アラスカユーコン基地との通信が途絶した。通常、非常用を問わずだ。軍用回線が軒並み通信不能に陥ったことからユーコン基地で異常事態が発生したと判断し、我々はMS及び戦術機で直接現地に向かう」

 

「直接、ですか?」

 

 

 秋生の確認に「そうだ」と返し、零は続ける。

 

 

「具体的には俺のデルタカイとグラハムのデルタプラスがウェイブライダーで葉月、小早川、井吹の旋風を運ぶ。その際に俺が葉月を、グラハムが小早川を乗せる。井吹の機体はウェイブライダーのまま二人で腕をつかみ、そのまま運ぶ」

 

「中佐、俺はどうなる?」

 

「ニールのデュナメスはGNドライブの恩恵で単独での飛行が可能だ。だが戦術機を抱えてはウェイブライダーと並行移動が出来ないので今回は簡易補給コンテナを運んでもらう」

 

 

 デュナメスに限っては先行して調査するという手もあるが、零としては正確な事態が把握できない以上ヘタに戦力を分散させたくなかった。

 また最悪の場合を想定して補給コンテナには推進剤と弾薬、試作のエネルギータンクとリペアキットが3つ用意された。

 早々やられることはないだろうが、用意するに越したことはないと言うのが彼の考えだ。

 

 

「なお、今回の作戦においてコールサインを用意した。移動中に説明するから、誰が何なのかそこで頭に叩き込んでくれ。――では、行動を開始する。各員速やかに強化装備、もしくはパイロットスーツに着替えて機体に搭乗せよ!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 全員が一斉にブリーフィングルームを後にし、零も遅れないよう急いでパイロットスーツに着替えMSデッキに移動する。

 

 

「さて――ん? なんだこのエンブレムは?」

 

 

 愛機、ガンダムデルタカイの元にたどり着くと両肩に見慣れないものが描かれていた。

 右肩には地球とその上にOWの文字が。左肩には黒い文字でδマークとその下にZEROの文字が。

 彼の呟きが聞こえたのか、側にいた島田班長が側によって説明する。

 

 

「うちの堀川が考案した部隊エンブレムと、中佐のパーソナルエンブレムですよ。何もないとさびしいからって勝手にやって、櫻井に殴り倒されてましたけど」

 

「……いや、かまわない。堀川整備兵にはGJと伝えてくれ」

 

「了解です。ご武運を」

 

 

 コクピットに乗り込みシステムを起動。全周天モニターが点灯し、周囲の状況が映し出される。

 既に機体はシステムを起動させている途中でカタパルトデッキに固定されていた。

 リニアボルテージ上昇……クリア。

 射出進路……クリア。

 全システム……オールグリーン。

 

 

「神林 零、ガンダムデルタカイ、出るぞ!」

 

 

 射出時のGを全身で感じ、零はオーバーワールドとして初めての作戦を開始した。

 

 

 

国連軍 アラスカユーコン基地 正面ゲート

 

 

 ユーコン基地にたどり着いた俺は、事態が予想通りだったことに悪態をついた。

 基地から数キロ手前の地点でニールに狙撃指示を出したおかげでユウヤたちは無事に離脱できたようだ。

 護衛として井吹も下ろしたから、あれならば大体のことに対応できるだろう。

 だが最早この先は俺の知っている状況と違い、本来ここで死ぬはずだったナタリーが生存している。足手まといにならないと思いたいが、生存確率は可能な限り上げよう。

 

 

オーバー1(グラハム)オーバー4(小早川)オーバー2(ニール)オーバー5(井吹)に合流しろ! 俺はいま離脱していった衛士に話を聞いてくる! オーバー3(葉月)は俺のサポートを頼む!」

 

『『『了解!』』』

 

 

 二手に分かれ、まずはユウヤたちを探す。

 それほど離れた場所には移動しておらず、比較的直ぐに見つかった。

 

 

「お前たち、無事か!?」

 

 

 外部スピーカーで呼びかけると、全員が驚いた顔で見上げていた。

 

 

「その声……やっぱあんた、カムチャツカの時の!」

 

「お、覚えてくれていたとは光栄だ。だがそれは後回しだ、まずはお前たちをハンガーまで護衛しよう。手に乗れ」

 

 

 片膝を立たせてライフルを持ち替え、右手を4人の前に下ろす。

 しかしユウヤのそばにいた崔 中尉が怪訝そうに尋ねる。

 

 

「味方と見ていいのかしら?」

 

「一般人も平気で殺すようなテロリストがわざわざ敵をハンガーまで運んでくれるのか? それより時間がない。早くしろ」

 

「――タリサ、中尉。乗せてもらおう。多少目立つが、走って行くよりは早いはずだ」

 

 

 ユウヤがガンダムの手に足を掛けたのを皮切りに残りの3人も続く。

 全員が乗ったことを確認し、可能な限り風で煽らせないように指を立てる。

 

 

「XFJ計画のハンガーに行ってくれ! あそこなら俺たちの仲間がいる!」

 

「了解した! オーバー3、データリンクで位置はわかるか?」

 

『特定しました。ですが妙です、特定した直後から基地のデータリンクが更新されていません』

 

「情報部もやられたみたいだな。だが最優先目的地がわかったならこっちの物だ。撃ってくる奴は敵とみなして無力化させる。行くぞ!」

 

 

 ブーストを軽くふかして目的のハンガーを目指す。しかし移動がMSのためか地上からMPたちが攻撃をし掛けてきた。

 だが鋼鉄の巨人にそんなものは豆鉄砲と同じで、痛くも痒くもない。

 俺はとりあえず威嚇としてバルカンをMPたちから少し離れた場所に撃ち込む。

 戦術機の突撃砲の倍近い口径による攻撃に流石のMPも恐怖に駆られて蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

 うーむ、ガンダムMk-2を強奪した時のカミーユみたいだな。

 ならばとりあえず、

 

 

「アッハハハハハ! ざまぁないぜ!」

 

『中佐、完全に悪役ですよ』

 

「ですよねー」

 

 

 ええ、わかっていましたとも。

 所々でこちらに発砲してきた連中に一方的な痛さと怖さを教えてやりながら移動し、ものの数分で目的地にたどり着く。

 ちょうど誰か受け入れてようとしているのか、シャッターが開こうとしていた。

 

 

「ユウヤ! 篁中尉だ!」

 

「わかってる。 ――篁中尉!!」

 

 

 ユウヤの声が届いたのか、シャッターの前にいた唯依姫とクリスカがこちらを見るなり驚いている姿が見えた。

 シャッターが全開になろうとしていることから、俺はこれ幸いと葉月を連れて中に入る。

 周りの連中が俺たちの機体を指差して見ているが、それはこの際どうでもいい。

 ユウヤたちを降ろすと先にハンガーに入った唯依姫が無事な姿に安堵していた。

 

 

「オーバー3、一度降りるぞ。ただし、機体はいつでも動ける状態でロックをかけろ」

 

『了解』

 

 

 葉月に指示したように俺も機体にロックをかけコクピットハッチを開く。

 あたりから動揺の声が上がるが、全て無視してワイヤーラダーで降り立つ。葉月も同じように降りると、すぐさま俺の側にきた。

 

 

「貴官が篁中尉だな?」

 

 

 ヘルメットを外しながら尋ねる、彼女の前にやってくる。やはりと言うか、困惑と警戒の感情が見て取れた。

 

 

「国連軍横浜基地所属、独立遊撃部隊『オーバーワールド』隊長、神林 零 臨時中佐だ。こっちは部下の葉月 絢香大尉」

 

「XFJ計画責任者、篁 唯依中尉です。部下を助けていただき、感謝します」

 

「細かい話は後だ。まずはーー彼女から大まかな情報を聞き出す」

 

 

 視線を向けた先には、周りの連中から怪訝な視線を一身に受けるナタリーがいた。

 

 

 

国連軍 アラスカユーコン基地 アルゴス試験小隊ハンガー

 

 

 ナタリー・デュクレールがテロリストの一人だった。

 彼女の店の常連であったアルゴス小隊の面々にもたらされたその情報はまさしく衝撃的な話だった。

 しかし、彼女の口から明かされたテロの内容はその衝撃をさらに上回った。

 

 

「アメリカがこんなところでBETAを研究していたなんて……」

 

「確かに公になったらとんでもないことだぜ、こりゃ」

 

「国連の内情も大概だ。下手をすれば、矛先がこちらにも向きかねない」

 

 

 あたりから動揺の声が上がる中、零は前世の記憶を思い返していた。

 彼の記憶ではテロリストがアメリカの爆撃部隊を迎撃するため光線級を使った。

 そしてBETAはエネルギー補給のために最も近い甲26号ーーエヴェンスクハイヴに向かうことになる。

 しかし北米絶対防衛線、通称レッドシフトという防衛ラインに一定数のBETAが通過すれば埋没された水爆が起爆してアラスカが割れる。

 零としてもこれは許容できないことであり、これからの歴史を正すためにも必要不可欠な阻止項目だ。

 

――今からBETA研究施設を探して破壊するには時間がかかりすぎる。ならいっそ解放させて現れたところを片っ端から撃破した方がいい。一番ベストなのは、リルフォートに到達される前だな。米軍の爆撃機と光線級は……ニールの狙撃とグラハムで無力化してもらおう。

 

 これからの算段を立て零は頷く。

 

 

「まずは抑えられた戦術機の弾薬、推進剤を奪取するぞ! 動かせる戦術機は片っ端から火を入れ、動ける衛士が乗り込め! 非常事態だ、機体が何処の資産とかどうでもいい! 作業完了後、非戦闘員は速やかに地下シェルターへ退避しろ! ――篁中尉。君が乗る機体はあるか?」

 

「はっ、斯衛のハンガーに武御雷があります。専用の長刀も予備を含めれば戦闘は十分に可能かと」

 

「ならば葉月大尉を護衛につけよう。大尉、聞いての通りだ。迅速に中尉を連れて行ってくれ。俺は全周警戒をしつつグラハムたちを呼ぶ」

 

「了解しました。お気をつけて」

 

「そっちもな。 各員、早急に作業にかかれ! モタモタしてると蜂の巣にされるぞ!」

 

「神林中佐! ナタリーはどうしましょうか!?」

 

「お前はテロリストだったとはいえ顔見知りの可愛いお嬢さんを死なせたいのか!? 男ならやることは決まってるだろ、そうだろ軍曹!」

 

「了解しました中佐殿ぉ!」

 

 

 ヴィンセントの返答に満足し、零もヘルメットを抱えたままワイヤーラダーに足をかけ機体に乗り込む。

 ロックを解除してヘルメットを被り直すと、タイミングよくグラハムから通信が入った。

 

 

『こちらオーバー1。オーバー2とオーバー5に合流しました。しかし基地より機影を多数確認、こちらに向かってきています。交戦は避けられないかと』

 

「こちらオーバー0。交戦は最小限とし、攻撃する際は管制ユニットを避け武器、もしくは行動不能に持ち込め。こちらは現地にて目的の人物とその部隊と合流した。だが事態は思わしくない方向へと進んでいる。すまないが敵を突破してこちらへきてくれ」

 

『フ、臨むところだと言わせていただきます』

 

 

 通信を終了させレーダーを見ると、こちらに接近してくる2個小隊分の機影が確認された。

 ひとつは零たちの方へ、もうひとつは絢香たちの方へと向かっていた。

 それを見て零は少し考え込み、やがて笑みを浮かべる。

 

 

「よろこべ、お前たち。奴さんがわざわざ武器を持ってきてくれたぞ」

 

『中佐、そりゃ攻撃しに来たっていうんじゃないっすか?』

 

「ジアコーザ少尉の言う通りでもあるが、実弾装備の武器を持ってきたのも事実だ。遠慮なくいただき、この事件から早急に退場してもらおう」

 

 

 楽しそうにグリップを握り直し、完全に開かれたシャッターから外に出る。機体を向けた方向には先ほどレーダーにかかった敵機の姿が。

 

 

「さあ、懺悔の時だ。そしてこの基地に俺たちが来たことを後悔しろ!」

 

 

 スロットルが一気に開かれたデルタカイは一直線に敵機へと向かい、右手にしたライフルで開戦の福音を鳴らした。




第22話、如何でしたでしょうか?

ユーコン編は早ければ次回、遅くとも後2回ほどで終わらせる予定です。
唯依姫たちが横浜に来るのはそこから少し後になります。
先に軟弱者がくるかな?

ともあれ、今回はここまで。
それでは、また次回にお会いしましょう。





そういえばZ3も2週目が終わりました。
ヒイロの撃墜数が1400を超えました。
ゴールドエンブレムとゲートジャンパーを装備してBセーブでフル改造ロリバスが5発に加え射撃の数値がカンスト、僚機にパーツ供給をもつオズマ(AB習得済み)とカートリッジとスーパーリペアキットとテンションレイザー、そして開幕バサラの突撃ラブハート。これで59話の敵初期ユニットの8割を狩り尽くしました。
もうこいつ一人でいいんじゃないかな……。

あとボン太くんとボスキャラの会話面白すぎる。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。