Muv-luv Over World   作:明石明

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どうもこんばんわ、明日も仕事が早いというのに思いついた今回のネタを一気に書きあげて投稿した作者です。
今回は横浜に帰るまでの内容ですが、いつもと比べかなり短めの内容となっています。
これが癖になって内容が薄くならないだろうか心配です。

ともあれ本編第27話どうぞご覧ください。


第27話

国連軍 アラスカユーコン基地 特別会議室

 

 

 そこは異様な空間だった。

 広さに反して5人しかいない部屋なのに空気は重く、その内の少女二人は自分たちと同様の存在を前にして体が完全に硬直し、彼女たちの上官である男も同様に言葉を失っていた。

 そしてこの状況を作り出した男――神林 零は主導権を完全に掌握したことを実感しながら声をかける。

 

 

「社少尉は貴官たちが察する通りの存在であり、今回はビャーチェノワ少尉とシェスチナ少尉に会いたいとの希望で連れて来させてもらった」

 

「我々に、会いに?」

 

「はい。どうしても、お二人と話がしたかったので」

 

 

 霞は二人の前まで歩み寄り大きく深呼吸をすると、静かに切り出す。

 

 

「あなたたちは、このままでいいのですか?」

 

「え?」

 

「……どういう、ことだ」

 

「自分の気持ちを明かさないまま離れて、本当にいいのですか?」

 

 

――――――あっ。

 

 初めは言葉の意味がわからなかったのだろう。しかし次に告げられた言葉で理解したのか、二人はそろって小さく声を漏らす。

 その姿を見て霞は二人の手を取り、きゅっと力を込める。

 

 

「いつか、では間に合わなくなるかもしれない。まだ生きて会える今のうちでなければ、後できっと後悔することになります」

 

「……そっか。あなたが知ってるお日さまみたいな人、とっても痛かったんだね」

 

 

 イーニァは手を握り返し、霞から感じた色の主に共感する。

 クリスカも同じような気持ちなのか、複雑そうな表情で握られた手を見つめていた。

 

 

「クリスカ。わたし、ユウヤの行くところに行きたい」

 

「イーニァ……」

 

「カスミの言う通りだよ。わたしは後悔したくない。だから、クリスカも一緒に行こ」

 

「……でも、私たちは」

 

 

 言い淀むクリスカは思わずサンダークの方へと目を向ける。

 彼はそのまなざしを見つめ、やがて観念したように首を振った。

 

 

「クリスカ・ビャーチェノワ少尉、並びにイーニァ・シェスチナ少尉に告げる。計画の一端として、国連軍横浜基地への一時異動を命ずる。なお、現地では神林中佐の元で行動し、原隊復帰の決定権も中佐に一任させていただく」

 

「――――ハッ!」

 

 

 命令を受け、クリスカは軍人らしい返答とともにサンダークへ敬礼する。イーニァもまた、それに倣うように敬礼する

 

 

「……中佐、彼女たちを頼みます」

 

「了解した。先ほど言った機体や武装についてだが、後日に実物と資料をこちらへ届けよう。ビャーチェノワ少尉とシェスチナ少尉は、必要なものをそろえたら横浜基地へ向かってくれ。俺たちは一足先に横浜で待っている。――それと、サンダーク中尉は必要資料とそれに伴うサンプルを用意しておいてくれ」

 

「了解しました」

 

 

 零はその返答を聞くと満足げに頷き、霞を伴って部屋を後にする。

 しばらく無言の時間が続き、不意に霞が口を開く。

 

 

「神林さん」

 

「なんだ?」

 

「クリスカさんを、治せますか?」

 

 

 なにを、とは聞かない。零はそれを理解したうえで「安心しろ」と答え、ぽんぽんと頭に手を乗せる。

 

 

「そのために必要なものをさっきサンダークに要求した。それに万が一情報が隠ぺいされようと、Gステーションの医療施設なら詳しい状態やそれに対する処置がわかるはずだ」

 

 

 数世紀以上先の技術は伊達じゃない。そう付け加えて零は表へ通じる扉を開けようとドアノブに手をかける。

 と、力を込めようとしたのとほぼ同時に扉が開き、反対側から国連軍の制服を纏った男性が入館しようとしていた。

 

 

「失礼」

 

「いや、こちらこそ」

 

 

 短いやり取りの後、男はサングラスを外してズレかけた帽子をかぶり直すとそのまま施設へと入館する。

 それとすれ違うように零と霞は施設を後にするが、少し歩いたところで零はハッとなって男の方へと振り返る。

 しかし扉はすでに閉まっており、鉄の扉は沈黙へと入っていた。

 

 

「……今の男は確か」

 

 

 先ほどの男の特徴を思い返し、零はある予想をする。

 そしてその予想が確信へと変わったのは、帰投したプトレマイオス2で国連軍のデータベースを調べてすぐのことだった。

 

 

 

太平洋 プトレマイオス2 零の私室

 

 

「……やはり、こいつだったか」

 

 

 アラスカでの全ての用事を片づけ、トレミーに帰投するなり横浜基地への進路を取らせた俺は自室で国連軍のデータベースを調べていた。

 発端はサンダークたちとの会合を終えた後にすれ違った男の存在だ。最初こそサングラスでわからなかったが、外した後の顔を見てから記憶を辿ってようやく誰かに似ていることに気付いた。

 そしてそれが今、検索データにヒットして顔写真と合わせて表示された名前を見て確信へと変わった。

 

 国連軍アラスカユーコン基地所属 グルーデック・エイノア少佐。

 

 年齢からしてガンダムAGEの第1世代のようだが、まさかこんな所にいたとは……。

 誤差と言えば階級が中佐じゃないが……まあこの辺は割とどうでもいいな。

 しかしこれは思わぬ収穫だ。上手く交渉してこちら側に引き込めれば、俺が不在の間の艦を任せることができる。

 また戻って交渉、というわけにはいかないだろうからグラハムたちの時みたいに呼び出した方がよさそうだな。それまでにもう少し情報を集めて交渉材料を用意する必要があるが、それはさして問題にはならないだろう。

 とりあえず、こっちは横浜に帰ってからまた考えるとしよう。

 

 

「次はGステーションの開発システムにつないで……っと」

 

 

 現在Gステーションでは旋風や轟火のパーツの他に新しい規格のサンプルを開発させている通常ラインに加え、優先度の高い特別ラインの2種類が稼働している。

 特別ラインは現在『SS』と『GL』の二つを開発させているが、今回はそれに加えてさらにラインを二つ追加する。内容はソ連側にサンプルとして送る提供するジムの寒冷地仕様と専用装備のマシンガン、そして世界……特に第5計画への抑止力として使用するMAの開発だ。

 ジムに関しては正直完成品を送ったりはしない。必要なのはあくまで『寒冷地に対する技術』であり、ビームサーベルは除外して核融合炉は出力を死ぬほど落としてブラックボックス化する。無論OSやシステムなんかも搭載しないので、完全に寒冷地仕様の技術のみの提供となる。

 一応紙面の資料は制限を緩くして提出するが、それでも動力や一部武装は伏せて戦術機のOSを搭載しても無駄だという一文を加える。

 そんな特別製のジム(笑)の製作指示を出し、続けてMAの開発に移行する。

 一応特別ラインの開発もMA一本に絞ればそれなりに早く製作することができるが、『SS』と『GL』の開発を遅らせるなんてことはできない。

 なのでそれを考慮して開発した場合……サイコガンダムだと最速で一ヶ月半、デストロイで二ヶ月ってところか。

 ふむ。一応、稼働可能の機体と調整が必要な機体をまとめてみるか。

 現時点で稼働可能な機体は俺のガンダムデルタカイを筆頭に、デルタプラス、ガンダムデュナメス、ガンダムAGE-2、トールギス、バスターガンダム、そしてマスラオか。マスラオは改造するから、どちらかと言えば調整に回すべきか? まあいいや。

 逆に調整中の機体は完了が早い順にハイゼンスレイⅱ・ラーにジェガン、ジムカスタム、アッガイ、バイアラン、ジムキャノン2、リーオー、そしてストライクガンダムにクロスボーン・ガンダムX1パッチワークにビギナ・ギナIIか。

 正直、調整中の機体は全部使えるようにできる気がしない。

 そこから開発して新しい機体にするか、パーツを拝借して別の機体で使用するかで終わりそうだな。バイアランとか腕だけ引っ張ってこられそうだ。

 X1パッチワークやビギナ・ギナIIはここから発展させてフルクロスやビギナ・ロナへ開発させても全然ありだ。問題は乗り手を選びそうなところか……。

ま、人手が足りてもいないのに今余ってる機体の心配をするだけ無駄かもしれないな。

 

 

「あとは……『SS』と『GL』の仕様を再確認するか」

 

 

 『SS』のコンセプトは単機による最速のハイヴ攻略と帰還を重点とし、特に機動力と自衛力の高さに重点的を置いている。

 武装も簡単にいえばデスティニーのモノに近いが、とにかく手数を揃えるようにしている。腕にマシンガンを搭載したり、頭部のバルカンや胸部のビームバルカンによる弾幕などにも気を配っている。あとは使用者の無茶で関節がすぐに潰れないよう徹底しているくらいだな。

 次に『GL』だが、こちらは単機で十万単位のBETAを蹂躙できるほどの広域殲滅能力を目指している。

 エネルギー切れや銃身の冷却の問題に重点を置き、全方位を問題なく対処できる性能を詰め込むつもりだ。

 だがそれを可能にするためのシステムがまだまだ未完成なため、下手をすれば途中で凍結なんて事態にもなりかねない。

 最悪『SS』だけが完成して終わる結果になるかもしれないが、月や火星を攻略するときに絶対必要になるタイプの機体だ。

 

 『GL』で雑魚を一掃し、『SS』が大将頸を取りに行く。

 

 今の俺が思い描くエレメント形式がこれだが、果たして実現できるかどうかだな。

 

 

「……悲観的になってちゃ、出来るものもできなくなるな」

 

 

 思考を前向きに切り替え、データの保存をしてファイルを閉じる。

 さて、横浜基地に着くまで残った報告書でも仕上げるか。

 その後、フォルダから報告書のフォーマットを起動させた俺は葉月に呼ばれるまで黙々と報告文章と格闘することとなった。




第27話、いかがでしたでしょうか?

クリスカの蛋白改善フラグと零が不在の時の艦長にグルーデックさん(のソックリさん)が候補に挙がりました。
それにしてもようやくグルーデックさんの名前出せました。
あとは通信と整備要員ですが、整備の方は既に候補がいます。
問題は通信なのですが、さてどうしたものか……。
ちなみに副長とゲストは思いついたら設定しますので、基本的にはいないと思ってください。

それでは時間も遅いので今回はこの辺りで。
また次回の投稿でお会いしましょう。







余談①
衝動買いって恐ろしいですね。
今日模型屋でフリーダムガンダム付きの1/144スケールミーティアを定価の半額で購入してしまいました。
置く場所ないのにどうしようか……。


余談②
艦これでついに榛名の改二が実装されるそうですね。
アプデは7/28らしいですが、レベル上げなきゃ(使命感


余談③
今度また新作を試験的に挙げるかもしれません。
内容はビルドファイターズに触発されてオリジナルガンダム(笑)を作ったら某特異点や某タイムスリッパーのように世界や時間を関係なく飛ばされるようになった男の物語になる予定です。

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