Muv-luv Over World   作:明石明

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どうもこんにちわ、先日金曜ロードショー「もののけ姫」がニコ生を観賞しながら見れなかったので仕方なく家にあったVHS版で満足することにした作者です。
DVDではありません、VHSです。(2回言ったけど割とどうでもいい


さて今回は吹雪の搬入に伴うあのイベントです。
残念ながら真耶さんたちは出てきませんが、代わりに別の人が出てきます。

また、本編の最後の方に今回の没シーン集が収録されています。
勢いとノリ、他作品とのクロスの成分が非常に強いので、受け付けられない方は飛ばしてください。

それでは本編第28話+α、どうぞご覧ください。


第28話

国連軍横浜基地 特別機密区画 格納庫

 

 昨夜に横浜基地へ帰投した俺はオーバーワールドの衛士全員に休息を与え、作業員を率いて戦闘データのまとめ作業に励んでいた。

 先のテロ事件で対戦術機データに加えて今後の本命ともいえる対BETA戦闘のデータを得られたのは非常に大きい。万が一発生してしまった場合の対クーデター戦にBETAの新潟上陸や佐渡島奪還作戦に向けての調整に役立つことだろう。

 各機のデータ抜き出しがひと段落し、旋風からの報告を島田班長が。MSを担当した片桐がそれぞれ報告レポートを手に俺の元へやってきた。

 

 

「やはりビーム兵器だけでなく頭部バルカンも十分な戦果をあげているな」

 

「接近してきた小型種を一掃するには十分すぎる代物ですね。しかしデルタプラスの場合、弾切れになってしまうとその場での補給が利かないことですかね」

 

「頭部のバルカンを実弾からビームに変えてはどうですか? 動力から直接供給させれば、少なくとも弾切れになる心配はなくなりますが」

 

「それも一つの案ではあるな。戦術機の場合は……稼働時間の影響を考慮しても実弾のままの方がいいだろう。確かにバルカン一発の消費量は非常に少ないが、塵も積もれば山となる。調子に乗って使いすぎて積もり積もった消費エネルギーが機体稼働時間に影響を及ぼしたら元も子もない」

 

 レポートをめくりながら議論を交わし、問題点と改善点の意見を出し合う。

 特に旋風はデルタプラスのような核融合炉やデュナメスのGNドライブといった半永久機関を搭載していないため、稼働時間が絡む問題には慎重にならざるを得ない。

 結局この日に出たアイデアとしてはバルカンをビームにするなら追加ジェネレーターの搭載という形でとりあえずはまとまり、どこにどんなものを取り付けるかは次回への課題として終了した。

 その内容をまとめ香月博士に報告するべく俺は地下にある自分の執務室へと向かおうとするが、目の前を駆けていく207訓練部隊の連中を見てふと足を止める。

 はて、あの様子だと何かうれしいことでもあったのだろうが、なにがあったか……。

 

 

「……お、武!」

 

 

 首をかしげ たところでさらに武が現れたのをこれ幸いとし、俺は声をかけながら近づく。

 向こうも呼ばれたことでこちらに気付き、手を挙げてこちらに近づいてきた。

 

 

「零、アラスカでは大変だったみたいだな」

 

「まあな。それより今、207の連中が走って行ったがなにかあったのか?」

 

「吹雪だよ。あいつらの機体が搬入されたんだ」

 

「ほお、ついにXM3の教導も始まるわけか」

 

「ああ……後、俺の予想だと紫の武御雷が一緒に来ている」

 

「政威大将軍専用機……なるほど、殿下から御剣宛ての機体か。そうだとしたら一悶着ありそうだな」

 

 

 戦力をひとつでも、と言う悠陽の心遣いだろうな。しかし冥夜は戦術機に乗ってすらいないから扱うことはまだ難しいだろう。

 こちらも早くMSの内装を改造しなければならないんだが……あと一人くらい優秀な技術者が欲しいな。それも規格外の力量を持った、全く触れたことのない機体でも何とかしてしまうような人物が。

 まあ、本当にそんな奴がいたら苦労はしないんだがな。

 ともかく、本当に武御雷が来ているならあのイベントがあるはずだ。

 武には悪いがこのイベント、利用させてもらおう。

 武と別れて博士の部屋に向かいつつ、俺は以前から考えていた策の実行を視野に入れた。

 なお、博士に問い合わせたところ武の読み通り武御雷が搬入されたそうだ。

 それを 教えてくれた博士は俺の策の実行を許可してくれると嬉しそうに吹雪が搬入された格納庫へと向かった。

 ――新品のビニールをこれでもかと言うほど剥ぐために。

 

 

 

国連軍横浜基地 PX

 

 

 最初に気付いたのはこのことを予見していた武で、次に気づいたのは美琴と茜だった。

 

 

「ねえ、あそこの少尉たち……」

 

「こっちを見てるわね」

 

 

 男女の少尉がこちらを睨んでおり、時折指をさして何かを喋っていた。

 どちらも不愉快な笑みを浮かべており、少なくとも友好的にはまず見えなかった。

 

――やっぱりきやがったか。このイベントは絶対に避けられないのか?

 

 内心で嘆息し、武はおもむろに空のグラスを取って立ち上がる。

 

 

「武、どこに行くの?」

 

「なに、ちょっと飲み物を取りに行くだけだ」

 

 

 美琴にそう返しながらすばやく訓練着につけていた大尉の階級章を取り外し、そのまま問題の少尉二人の前にさしかかる。

 

 

「待てよ。お前、あの訓練部隊の人間だな?」

 

 

 やっぱりきたか、そう思いながら武はあえて格下のように対応する。

 

 

「ハッ、何でしょうか。少尉殿」

 

「あの武御雷は一体なんだよ、あれは誰の機体だ?」

 

「あれのせいでハンガー埋まって邪魔なんだけど、まさかあれが訓練兵の所有物なんてバカな話はないよね?」

 

 

 武御雷を、しかも将軍の専用機であることを示す紫の機体をあろうことか『あれ』呼ばわり。

 この発言を月詠中尉が聞いたら怒り狂うこと間違いなしだなと思いつつ、武は侮蔑をこめてワザとらしくため息をして見せる。

 

 

「少尉、あなたたちはアホですか?」

 

「あ? お前、上官にそんな口きいていいと思ってんのか?」

 

「どうやら上下関係ってのをキチンと教えてもらっていないみたいだね」

 

「それはそちらの方が教えてもらってないのでは? しかも無断で他軍の機体を探ろうということはスパイ容疑で軍法会議にかけられても文句は言えませんよ?」

 

「テメェ……調子に乗ってんじゃねえぞ」

 

 

 武の態度に腹を立てたのか、だんだんドスを利かせた声を発する少尉だが武は涼しい顔で続ける。

 

 

「自分は事実を述べただけですよ? それを突かれ不利だと感じたら脅しですか? そんなくだらないことに体力使うなら、少しでもBETAを倒せるよう訓練に励んだ方がよっぽど有意義だと思いますが?」

 

「うるせえぞ! 訓練兵の分際で!」

 

 

 ドスッ!っと少尉の拳が武の腹部に付き刺さる。

 突然の大声と殴られた音に周りが騒然となるが、殴られた武は眉ひとつ動かすことなく、呆れたようにため息をつくだけだった。

 

 

「都合が悪くなったらすぐ暴力か。半人前の訓練兵以下だな」

 

「な……んだとコラぁ!」

 

 

 予想外の事態に気押されそうになった少尉は空気に呑まれまいと再び拳を振るう。

 女の少尉も加わり武は一方的に顔や背中を殴られるが、それでも微動だにしなかった。

 

 

「ば、化け物かテメェ!?」

 

「地道な鍛錬を欠かさず続けていればこの程度の腕力に揺らされることはありませよ? と言うか、少尉の訓練不足では?」

 

 

 口元の血を拭ってそう吐き捨てると、流石にキレたのか少尉二人は再び武へと殴りかかる。

 ――が、そこで一人の男が見計らったように待ったをかける。

 

 

「どうした武。こんな格下に良いように殴られているとは……社が心配するぞ」

 

 

 どこか呆れたような表情で現れたのは作業モードの零だった。

 階級章がついたつなぎ上半身は腰の部分で縛られているため隠れているが、彼を知る人物らは左官の登場に安堵した。

 そう、知っている人物はだ。

 

 

「何だ、整備兵は引っ込んでろ。これは衛士の問題なんだからよぉ」

 

「そうそう。戦術機にも乗れない雑魚の出る幕じゃないんだよ」

 

 

 相手が上官であることを露も知らない少尉たちは零をただの一整備兵として認識し、蚊でも払うかのように手をシッシッと振る。

 その光景を目の当たりにした207訓練部隊の少女たちは一斉に顔を青ざめる。

 しかし慧、晴子、早苗の3名は少尉に対して苦笑いで合掌をした。

 そして整備兵扱いされた零はと言うと――――

 

 

「ふん!」

 

 

ゴシャッ!

 

 

「おごぁ!?」

 

 

ドゴォ!

 

 

「がはっ!?」

 

 

 男の少尉には顔面に、女の少尉には腹部へ鉄拳制裁を加えた。

 

 

「おやおや、雑魚呼ばわりする相手の拳にも耐えられないか。これでは訓練兵の方がまだマシだな」

 

「よ、よくも整備兵の分際で少尉に楯突いたね……」

 

「階級でしかえばれないとは器が知れるな。そういう奴ほど、戦場で真っ先にBETAにやられるものだ」

 

「はっ! BETAがどうした! あんなゴミども、いつ現れても俺が一匹残らず殺してやるよ!」

 

 

 負けることなど万に一つもないような口ぶりで少尉は顔を腫らしたまま胸を張る――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――突如、ビィーッ、ビィーッっとけたたましいサイレンが横浜基地を包み込んだ。

 

 

『コード991発令! 繰り返す、コード991発令!!』

 

 

 放送から発せられる電子アナウンスが告げた内容に、一部を除いた全員が硬直した。

 数秒の沈黙が流れ、状況を呑みこんだ衛士が弾けるように叫んだ。

 

 

「――――こ、コード991だとぉ!?」

 

「ふざけんな! ここは横浜だぞ!? どこから沸いて来ってんだ!?」

 

「馬鹿野郎! んなことはどうでもいいんだよ! 格納庫に走れ!」

 

「う、ウソだろ……。なんでこんなところで……」

 

「こんな話、聞いてない……」

 

 

 辺りが一瞬にして阿鼻叫喚の図へと陥れられる。

 しかしまともに動いたのは、その中でも数えるほどしかいなかった。

 

 

「207訓練部隊! 至急白兵装備でブリーフィングルームに集合! 急げ!」

 

「……は、はい!」

 

「チクショウ! どういうことだよ!」

 

 

 武の指示を受けて放心状態に陥った訓練兵たちが一斉に駆け出し、武も訳がわからないといった風に叫びながらもPXを飛び出した。

 一方、零は時計に目をやり「そろそろか」と呟く。

 

 

『全員落ち着けぇぇぇぇぇぇいッッ!!』

 

 

 全体放送から発せられた叫び声が全員の動きを止め、咳払が一つ響く。

 

 

『こちらはパウル・ラダビノッドだ。先ほどのコード991は、システムの誤作動によるものである。事実、近辺にBETAの姿は無く、佐渡島より侵攻してきたという情報もない』

 

 

 基地司令、ラダビノッドの放送を聞いて多くの者が安堵の息を漏らす。放送は続き、誰もが耳を傾ける。

 

 

『慌てることはないが、これを機に諸君らには一度思い返してもらいたい。先ほどの警報で自分は迅速に行動できたのか? 自分の役割を理解し、それに準じて動けたのかを。なまじ襲撃が少ないので誰もが意識を薄れさせているのかもしれないが、ここは極東の最前線である。いつ、いかなるときにBETAに襲われても全くおかしくはない。願わくば、今回の騒動で皆の意識が変わることを私は望む。最後に誤作動とはいえ、皆に迷惑をかけたことを謝罪させてもらう』

 

 

 放送が終了し、多くの人間がラダビノッドの言葉に心を揺さぶられた。

 自分たちは緩んでいた。そう実感した者はすぐさま今回のことについて話し合うべくその場を後にしていった。

 そして零の前には、未だに混乱している二人の少尉の姿があった。

 

 

「大口を叩いた割には、なんとも無様だな」

 

「は……は、あんなの、予想できるわけねーじゃん。混乱するのが当たり前に、決まってるだろ」

 

「貴様は先ほどの司令の言葉をしっかり聞いていたのか? 聞いたうえでそんなことを言うのなら、もはや呆れを通り越して嘲笑ものだな」

 

「お前……いい加減にしろよ。整備兵のくせにさっきから言いたい放題言ってくれちゃって」

 

「いい加減にするのはどっちだ? こんな状況でまだ自分だけは違うとでも言うのか? さっき貴様らが格下と見て殴っていた奴の方が十分に己の責務を全うしていたぞ? だというのに自称格上の貴様らはどうだ? 991を聞いたらあり得ない、信じられない。衛士として致命的な発言しかしていなかったな」

 

「上等だ……。上官に口答えできないくらい修正してやる」

 

「懲りないな、貴様ら。 ――ふむ、少し肌寒いな」

 

 

 未だ己の行いを認めようとせずよろよろと起き上がった少尉たちを見て、零は思いついたようにつなぎをほどいて袖を通す。

 それとともに現れたのは――――まぎれもない国連軍『中佐』の階級章。

 

 

「な゛っ!?」

 

「そ、そんな!? ちち、中佐……殿!?」

 

 

 ここで二人はようやく自分が犯した失態に気付き、ライオンを前にしたガゼルのように震えだした。

 今まで自分たちが侮辱していたのはただの整備兵ではなく、中佐と言う階級を持った上官だったのだ。

 

 

「さて。貴様らは上官に対しての暴言と暴行を行い、あまつさえ斯衛軍が運び入れた機体に対して利敵行為に等しい行いをしようとした……これらの罪は決して軽くはないぞ」

 

「は、は?」

 

「上官への、暴行?」

 

「何だ、知らずに殴ったのか? 貴様らが先ほどまで殴っていた相手は、国連軍『大尉』の男だぞ」

 

「「な゛あ゛ッ!?」」

 

 

 衝撃の事実を聞かされた二人はその場にへたり込み、とうとう放心状態となってしまった。

 

 

「貴様らの処遇は貴様らの隊長へ通達しておこう。それまで自室謹慎でもしておけ」

 

 

 そう言い放ち、零は踵を返してPXを後にした。

 

 

 

 なお、その場に残された少尉たちは数ヵ月後に後にアフリカの最前線へ送り込まれ、戦闘開始後10分足らずで突撃級に踏みつぶされたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

勢いとノリで構成されたおふざけ没シーン集

 

その①

 

 

「ば、化け物かテメェ!?」

 

「地道な鍛錬を欠かさず続けていればこの程度の腕力に揺らされることはありませよ? と言うか、少尉の訓練不足では?」

 

 

 口元の血を拭って武がそう吐き捨てると、流石にキレたのか少尉二人は再び武へと殴りかかる。

 ――が、そこで一人の人物が見計らったように男の少尉の肩を叩く。

 

 

「あ? なんだ……よ…………」

 

 

 男が振り向いた先に、異様な人物がいた。

 服装は階級が外された国連軍の制服だがその頭には派手な羽飾りで装飾されたインディアンマスクのような仮面が装着されていた。

 

 

「うまうー……」

 

「な、なんだよ! 何言ってんだよ?!」

 

「うまうー!」

 

 

バシィン!

 

 

「ぶふぉ!?」

 

 

 大きなスウィングによって放たれたビンタが男の顎を捉えるッッ!

 

 ――――――その光景を見物していた、食堂のおばちゃんKさんは語る。

 『ありゃあ身体ごと飛ばされたんじゃない、身体ごと回されたね』と。

 その場で数回回転してから地面に叩きつけられた男は気を失っており、顔面は見るに堪えない形に変形していたという。

 

 

「ひ、ひぃ!?」

 

 

 それを見た女の少尉が腰を抜かし、仮面の男から逃げるように後ずさる。

 しかしその途中で誰かにぶつかり慌てて振り向いた先には――――――

 

 

「会いたかった……会いたかったぞ! 斉藤ォォォォォォ!!」

 

 

 軍服の上に陣羽織を羽織った金髪仮面男が突然刀を抜き放ちインディアンマスクへと斬りかかるッッ!!

 

 

「はりゃほれうまうー!」

 

 

 斉藤と呼ばれたインディアンマスクもなにもなかったはずの背中から刀を抜いて迎え撃つッッ!

 ギィン!と刃と刃がぶつかり合い火花が散る。

 その光景を見ていた207訓練部隊B分隊所属の鎧衣 美琴があることに気付きハッとなる。

 

 

「あ、あれは……!」

 

「鎧衣! そなたはあの仮面の者たちを知っているのか!?」

 

「あのインディアンマスクは最強の男……マスク・ザ・斉藤だ!」

 

「「「ま、マスク・ザ・斉藤!?」」」

 

「そしてもう一人は最近横浜基地の自動販売機付近で見かけるという変t……じゃない、益荒男のミスターブシドーだ!」

 

「「「み、ミスターブシドー!?」」」

 

「そうだ。斉藤に敗れ、斉藤に打ち勝つため生き恥を晒してきた男。それがミスターブシドーだ」

 

 

 突如少女たちの背後から現れたのは銀色のマスクで顔のほとんどを覆い隠したプラチナブロンドの長身男性だ。

 さらにその後ろには様々な仮面やマスクをつけた男たちがいた。

 尖がりアンテナが付いたヘルメットにヘッドギアを改造したマスクの男。

 ドイツ国旗を模した覆面マスクの男。

 フルフェイスの鉄仮面をつけた男。

 尖がりアンテナの男によく似た雰囲気を持つマスクの男。

 顔半分を隠せる程巨大で真っ赤で尖った派手な暗視グラスの男。

 他にもサングラスやマスクをした男女がぞろぞろと現れて斉藤とブシドーの戦いを眺め始めた。

 二人の戦いはやがて人知を超え、体が宙を舞いさらには刀身がビームサーベルのように輝き、ぶつかり合うごとに凄まじい衝撃波をまき散らした。

 

 

「流石と言いたいところだが、あえて言わせてもらおう! 仮面の性能の違いが、勝敗を分かつ絶対条件ではないということを!」

 

 

 ついに2刀流になったブシドーに対し、斉藤も威嚇するように羽根飾りを広げて対峙する。

 十秒か、一分か、はたまた十分か。それ以上かもしれない時の流れを感じながら二人がついに動き出す。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「うまあああああああああああああ!!」

 

 

 雄叫びと共に互いが得物を振り上げ、全力の一撃をその太刀に込める!!

 

 

「切り捨てぇ―――――」「はりゃほれ―――――」

 

「ごめえええぇぇぇぇぇぇぇん!!」「うまううううぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 

 煌めく閃光と轟く爆音。

 全てが晴れたとき、斉藤も、ブシドーも、仮面の一団も忽然と姿を消した。

 そう、まるで夢幻の如くに。

 この戦いの一幕は、後の横浜基地の伝説になったとかならなかったとか。

 

 

その②

 

 

「ば、化け物かテメェ!?」

 

「地道な鍛錬を欠かさず続けていればこの程度の腕力に揺らされることはありませよ? と言うか、少尉の訓練不足では?」

 

 

 口元の血を拭って武がそう吐き捨てると、流石にキレたのか少尉二人は再び武へと殴りかかる。

 ――が、そこでなにかが見計らったように男の少尉の肩をぽんぽんと叩く。

 

 

「あ? なんだ……よ…………」

 

 

 男が振り向いた先に、それはいた。

 

 

「ふんもっふ!」

 

 

 ネズミのようなコアラのような姿に加え愛くるしい声をしているが、声と姿に対して不釣り合いなはずなのに違和感がない装備を所持していた。

 防弾チョッキにスタンロッド。そして暴徒鎮圧用ゴム弾にグレネードを装着したアサルトライフルやバズーカを備え頭部にはアンテナ付きのヘルメットが。

 

 

「な、何だテメェは!?」

 

「ふも! ふもふも! ふもるる! ふもっふ!!」

 

「いや、わけわかんねえよ!?」

 

「『自分の名はボン太くん。この横浜基地において特殊な訓練を受けた対BETA戦のプロフェッショナルである』と言っています」

 

「わかるのか!?」

 

 

 ボン太くんと名乗るそれの通訳をしたのは後ろについていた霞である。

 そして男の質問にドヤァ……とサムズアップ。

 

 

「ふもふも、ふもも! もっふもふる! ふもっふるももふ!」

 

「『そして横浜基地の風紀を取り締まるプロフェッショナルでもある。上官に対する暴行を確認したため、貴官らを拘束する。無駄な抵抗は身を滅ぼすのでおとなしく従え』と言っています」

 

「ピアティフ中尉まで!?」

 

 

 続いての通訳としてボン太くんの後ろから現れたピアティフの姿に驚いたのは武だ。

 こちらも同じ様にドヤァ……とサムズアップ。

 通訳をしてもらったボン太くんはぽよ、ぽよという足音と共に二人の少尉へと詰め寄る。

 

 

「ふ、ふざけんじゃねえ! ぬいぐるみなんかに拘束されてたまるかよ!」

 

 

 激昂した男がボン太くんに一発見舞おうと大きく振りかぶる!

 

 

「ふもっふ!」

 

 

 ボン太くんは伸ばされた男の腕をつかみ、そのまま懐に飛び込んで一気に担ぎあげる!!

 

ゴギャア!!

 

 

「ぐがあ!?」

 

 

 ボン太くん渾身の一本背負いが炸裂し男の背中から破滅的な音が響いた。

 その男の末路を見た女は0.01秒で土下座体勢に入り、ボン太くんとMPに連れられてPXをあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武「――――って両方ともオチなしかよ!?」

 

 

 打ち切りと言う名の蜜柑、もとい。未完。




本編第28話+α、いかがでしたでしょうか?
システム誤作動のサイレンは去年関西圏で起こった緊急地震速報の誤報事件を元にしています。
斉藤ネタはだいぶ前から、ボン太くんネタはZ3やってから思いつきました。
一発ネタなのでこんな形でしか出せませんでしたがいかがでしたでしょうか?(震え声

次回はグルーデックさん呼んだりTE組が合流したりする予定ですが、例によって作者の都合で変化する場合があります。ご注意ください。

それでは、また次回にお会いしましょう。





余談①
艦これでまるゆを入手したものの、このSSを作るためTEを何回も見倒したおかげかセリフ全てがイーニァに聞こえます。(割とガチで


余談②
最近もう一つの作品を作るため久しぶりにスパロボAPに手を出した作者ですが、アホセルが楽しすぎてそれどころではないかもしれません。


余談③
今回の没シーンに使用したネタはこちら。
・フルメタルパニック?ふもっふ
・範馬刃牙(野人戦争編)
・リトルバスターズ!
・ガンダムシリーズの仮面のみなさん(覆面レインを含む)


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