優先させていたクロノトリガーの作品が一応完結しましたので、予告通りこちらの執筆を再開したいと思います。
しかしながらリアルの忙しさと設定の見直しのため最新話の投稿はもうしばらくお待ちください。
今回の投稿はMLOWの更新再開を知らせることとちょっとしたリハビリを目的とした投稿で、一仕事を終えた女神さんが零の様子を見にきたという内容となっています。
クロノ作品の宣伝のようになってしまっていますが、どうかご容赦ください。
国連軍横浜基地 神林零の執務室
それは香月博士に00ユニットの問題点について話し合って間もない時のこと。
少し遅めの昼食を終え、なんとなく立ち寄った脳髄の部屋で霞とくつろいでいた武をいじり倒した俺は、自分の執務室に戻るなり一瞬言葉を失った。
「やあ、失礼させてもらっているよ」
「やあって、どうしてあなたがここにいるんですか」
応接ソファーで紅茶を飲んでいた人物を見て、俺は驚きながらそう尋ねずにはいられなかった。
部屋にいたのが鎧衣課長なら別段驚くことはなかったが、目の前にいるのは俺をこの世界に送った神の上司を名乗った女神さんだった。
「何、少し大きな問題が片付いたついでに君の様子が気になってな」
「大きな問題って、まさかまたあのクソ野郎が何かしでかしたんですか?」
「……ああ」
「……お疲れ様です」
当てずっぽうのつもりだったのだがどうやら大当たりだったらしく、女神さんはどこか疲れた風に返事をした。
ちなみに俺が言うクソ野郎とは、俺をこの世界に送り込んだ神のことだ。
「差し支えなければ、どんなことがあったのか教えてもらってもいいですか?」
「ふむ……君もあれに振り回されたひとりだしな。お茶でも飲みながら話そう」
どこからともなく新しいカップとソーサーが取り出され、おかわり用に置いてあったポットから紅茶が注がれる。
その様子を見ながら手荷物をデスクに置き、女神さんの対面に腰掛ける。
「それで、今度は何があったんですか? 様子を見る限り、ロクでもないことは確定みたいですが」
「うむ。実はあの阿呆が君をこの世界に送って以来、奴の尺度で面白い転生を望む者がいないからと死んでもいない人を別の世界に転移させようとしたんだ」
……なんというか、呆れてものも言えないな。俺みたいに一度死んだ人間じゃなくてまだ生きてる人を異世界に飛ばすとか、人によっては殺されても文句は言えないぞ。
「その人はどうなったんですか?」
「本来なら転移ギリギリのところで阻止できたはずだったのだが、保護対象が暴走したエネルギーと次元に干渉してきた謎の力に呑まれて行方知らずとなってしまったんだ」
「次元に干渉してきた力?」
暴走したエネルギーというのはまだわかるが、単独で別の次元に干渉できる存在が別の世界にいるっということか? もしそうだとしたら相当ヤバイ相手だな。
「幸い発見に少し時間がかかったものの、目的の人物の発見には成功した」
「お、よかったじゃないですか」
「そのまま終わればそう思っていたが、干渉してきた力の影響で世界を隔てるように強力な壁が形成されて手出しができなくなっていたんだ」
なにそれ、エグ過ぎる。
「……それで、飛ばされた人はなんと?」
「どうやら彼はその力の原因の目星がついていたらしくてな。それを倒せば何とかなりそうだと言っていた」
「別の世界に干渉するほどの力を持った相手に何とかなるんですか?」
「苦戦はしたようだが、結果的になんとかなったぞ?」
「マジっすか」
どんな化け物を相手にしてたのかはわからないが、俺はその人に心の底から賛辞を送りたい気分になった。
「そういえば全部終わった後に化け物について話を聞いたんだが、あの化け物とこの世界にいるBETAとやらはどことなく似ている点があるな」
「へぇ。どんなところですか?」
BETAに似ているってことは、星の資源が目当てだったりするのか?
「似ている点といっても、その化け物は原始時代に他の星から来た存在というものくらいだな。化け物はそのときから大地の底で星に住む生命が辿った進化の中でも特に優れた遺伝子をかき集めて、自身が進化するための材料としてきたそうだ」
「……ん?」
なんだ、似たような話の敵をどこかで聞いたような……。
「そして用が済めば地表に出てくるなり圧倒的な力ですべてを破壊して、新しい進化の情報を求めて他の星へ移動するそうだ」
「ブフォッ!?」
すべてを破壊して他の星へ移動すると聞き、敵の正体が何なのかようやく理解した。
「女神さん、その化け物の名前って、もしかしてラヴォスとかいうやつじゃないですよね?」
「なんだ、君も知っているのか」
ビンゴだ。だがクロノトリガーの世界に飛ばされることになったとは、運がいいのか悪いのかわからないな。
現代か中世に転移できたのなら比較的平穏に過ごせるだろうが、未来だったら廃墟と化した世界で過ごすことになるんだろうからな。
それにラヴォスが相手なら、次元に干渉というのもなんか納得できる。というか、原作をやりこんだ人ならパターンを知り尽くしているから戦いになっても苦戦しにくいだろうな。
「ただ戦った彼曰く、途中までこっちの思惑通りだったのにここにくるまでやりたい放題したせいか、原作からかけ離れて鬼畜じみた強さになっていたそうだが」
「え?」
「なんでも相手がボスラッシュ外殻かと思ったらいるはずのない最強外殻だったとか、本体のスペックが底上げされてる上に腕がセルみたいに腕が再生したとか、あとビットが多すぎて本体がどれかわからなかったとか言ってたな」
――前言撤回。俺の知ってるラヴォスと比べてかなり厄介なラヴォスだったようだ。
最強外殻は……装備さえ整っていれば倒せないことはないな。ただ、ボスラッシュと思わせてそれは予想外にもほどがあるだろ。それに一番気になるのはビットが多すぎたという点だな。コアが一つなのに対していったいどれだけのビットがいたんだ……。
「ところで、やりたい放題って何をやってたんですか?」
「そこまでは私も知らないな。 ああ、そういえばその彼なんだが、面白いことに元の世界に帰るまでの間にできた時間を使って現地で知り合った女性と挙式を上げていたよ」
「……確かにやりたい放題だな。まさか連れて帰る気満々だったんじゃ」
「うむ、奥さんの戸籍と経歴を用意してくれと頼まれた。奥さんも最初からついていく気だったようだし、問題はないだろう」
け、結構無茶苦茶してるなそいつ。異世界で嫁を迎えて連れて帰るとか、その世界の家族はそれを了承したのか?
「ともかく、その問題も解決したのをみてふと君の方がどうなっているのか気になったわけだ」
「そういうことですか。まあ、こっちもこっちで好きにさせてもらっているんですけどね」
TE組に介入したり、オルタ組の戦力を強化しまくったり、こうしてみると、やりたい放題という点では俺も人のこと言えないな。
「君の問題も早く解決しなければならないのだが、ただの転移と特典付きの再転生では必要なエネルギーが全く違うから対応にまだ時間がかかる。それまでこの世界にいてくれないだろうか?」
「以前もお話ししましたが、そこは今の俺にとってさほど重要なことではないので問題ありません」
少なくともあ号標的を潰すまでは間違いなくこの世界にいるし、戦後の問題も視野に入れれば最低でも一年以上ここにとどまらなければならないだろう。
「そう言ってもらえると助かる。 ――さて、私はそろそろ行く。こちらの準備が完了するまで、君も死ぬんじゃないぞ」
「簡単にくたばりませんよ。そのためにいろいろ融通を利かせてしてもらったんですから」
「――そうだな。では、また会おう」
カップやポットを回収した女神さんが懐からお札のようなものを取り出すと、閃光と共に女神さんは初めからいなかったかのように消え失せた。
「それにしても、ラヴォスを倒してなおかつ現地妻を手に入れた人物か。会ってみたい気もするが、まずは目の前の問題を片づけるとするか」
デスクに戻って資料を広げ、俺はこれからの戦いに必要なものを揃える準備に取り掛かるのだった。
Extra Storyと打たれたサブタイは今後、幕間やお知らせを目的として投稿することが多くなると思います。
さて、次回からは本格的に本編を再開させます。
進捗具合は未だ40%ほどですが、一月以内に投下できるよう頑張ります。
そして次回のテーマは『武ちゃんのスパルタ訓練』『鎧衣課長の知らせ』『存在公表の下準備』の三本を予定しています。
テーマ内容と本編の内容が大きく変動する可能性がありますが、どうかご容赦ください。
それでは、また次回の投稿でお会いしましょう。