「この世界は何色だと思う?」
少女は俺に、そう聞いた。
何分小学生のころの記憶なので定かではないが、
その子と俺はそれほど深い中ではなかった。
クラスメイトではあったが、それ以上でもそれ以下でもなかった。
話したことも、片手で数えられるほどの回数しかなかったはずだ。
なぜそのようなことをいきなり聞いてくるのだろう、
どういう意図の質問なのだろう、
俺は何を試されているのだろう。
突然のことに頭が追い付かず、半ばパニック状態だった。
「どうして、俺にそんな質問をするんだ?」
まんま直球に聞いてしまった。
「だって、あなたは色が見えているでしょう?」
少女が言ったことに、半ば呆れてしまった。
「色なんて大半の人間が見えているだろう。俺に限った話じゃない。
世界の色、なんてものは見えていないけどね。」
「違う、そうじゃないわ。」
何だというんだ。
「色が見えているのは、あなただけ。
普通の人間が見ている色は、かりそめの物に過ぎない。
ホントの色が見えているのは、あなただけなの。」
何を言っているんだこいつは。
すでに思考を放棄してしまっていた俺は、
もう言葉を紡ぐことができず、
ただ少女の言葉に耳を傾けるしかなかった。
「あなたは選ばれた人間。
選ばれた人間には、
選ばれた人間として果たすべき責務がある。
そのことを決して忘れないで。」
どこかで聞いたことのあるようなフレーズ。
もうちょいひねりを利かせろよ。
大体、俺のような平々凡々な少年を捕まえて、
特別だなんだといわれても全くぴんと来ない。
「今は意味が分からないかもしれない。
でも、わかる時がそのうち来るわ。
その時、私はきっといない。
だから、いま言っておいたの。じゃあね。」
言いたいことを言うだけ言って、少女は立ち去ってしまった。
必然というか予想通りというか、少女はこの後すぐに、転校してしまった。
後から聞いた話だと、少女は常にそんな感じであったわけではなかったらしい。
いたって普通の子。不思議ちゃんでも電波ちゃんでもない。
それを聞いて、ますます訳が分からなかった。
友達にありのまますべてを話したが、「馬鹿じゃねえの」と一蹴された。
白昼夢でも見ていたのかもしれない。
記憶の底に押し込むようにして、その出来事は最近まで忘れ去っていたのだが、
とあることをきっかけに、思いだした。いや、思い出してしまった。
高校進学と同時に、『色が見えるようになった』のだ。
長々と話してきたが、要するにこれは、『色が見えるようになった少年のお話』なのである。
投稿ペース遅めです
オリジナルは初の試みでして、つたない点があるかもですがよろしくお願いします。