色に形はないけれど。   作:零崎博識

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第一話『追憶の色』

「この世界は何色だと思う?」

 

少女は俺に、そう聞いた。

 

何分小学生のころの記憶なので定かではないが、

その子と俺はそれほど深い中ではなかった。

クラスメイトではあったが、それ以上でもそれ以下でもなかった。

話したことも、片手で数えられるほどの回数しかなかったはずだ。

 

なぜそのようなことをいきなり聞いてくるのだろう、

どういう意図の質問なのだろう、

俺は何を試されているのだろう。

 

突然のことに頭が追い付かず、半ばパニック状態だった。

 

「どうして、俺にそんな質問をするんだ?」

 

まんま直球に聞いてしまった。

 

「だって、あなたは色が見えているでしょう?」

 

少女が言ったことに、半ば呆れてしまった。

 

「色なんて大半の人間が見えているだろう。俺に限った話じゃない。

 世界の色、なんてものは見えていないけどね。」

 

「違う、そうじゃないわ。」

 

何だというんだ。

 

「色が見えているのは、あなただけ。

 普通の人間が見ている色は、かりそめの物に過ぎない。

 ホントの色が見えているのは、あなただけなの。」

 

何を言っているんだこいつは。

すでに思考を放棄してしまっていた俺は、

もう言葉を紡ぐことができず、

ただ少女の言葉に耳を傾けるしかなかった。

 

「あなたは選ばれた人間。

 選ばれた人間には、

 選ばれた人間として果たすべき責務がある。

 そのことを決して忘れないで。」

 

どこかで聞いたことのあるようなフレーズ。

もうちょいひねりを利かせろよ。

大体、俺のような平々凡々な少年を捕まえて、

特別だなんだといわれても全くぴんと来ない。

 

「今は意味が分からないかもしれない。

 でも、わかる時がそのうち来るわ。

 その時、私はきっといない。

 だから、いま言っておいたの。じゃあね。」

 

言いたいことを言うだけ言って、少女は立ち去ってしまった。

必然というか予想通りというか、少女はこの後すぐに、転校してしまった。

 

後から聞いた話だと、少女は常にそんな感じであったわけではなかったらしい。

いたって普通の子。不思議ちゃんでも電波ちゃんでもない。

 

それを聞いて、ますます訳が分からなかった。

友達にありのまますべてを話したが、「馬鹿じゃねえの」と一蹴された。

白昼夢でも見ていたのかもしれない。

 

記憶の底に押し込むようにして、その出来事は最近まで忘れ去っていたのだが、

とあることをきっかけに、思いだした。いや、思い出してしまった。

 

高校進学と同時に、『色が見えるようになった』のだ。

 

長々と話してきたが、要するにこれは、『色が見えるようになった少年のお話』なのである。

 




投稿ペース遅めです 
オリジナルは初の試みでして、つたない点があるかもですがよろしくお願いします。
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