世界の名はアザトース 作:風になれ
序章
練習作品です、意見、批判など遠慮なく言ってもらえたら幸いです
0と1が世界を作り出す。
人間がネットワークというものを生み出して何十年、それは、飽くなき悪意の吐きどころとなっていた。
人間と呼ぶ存在は、自身に何をしても害がないとなると、理性と呼ばれる枷が外れて言葉という暴力をふるう生き物だ。
ネットワークのつながりは容易く他者を害し、犯し、そして殺すのだ。
これは、人間がネットワークと呼ぶものをさらに発展させ、新たな世界と呼ぶにふさわしい場所を生み出した世界の話である。
その世界の名は、電子夢想世界アザトース。
それは、夢を見る
とてつもなく強大な力を持って世界を生み出し、容易くその世界を破壊するという存在。
悪意なき悪意とも呼べる、邪悪な魔王と同じ名前。
この名前を付けたものが、何を考えていたのかは計り知れない。
ただ、確かなことが一つある。
それは、製作者は人間をそのようにに見ているのだということだ。
人々は、何も知らずただただその世界を利用するだけのこと、自身は関係ないと、ありえもしない幻想を抱きながら。
――世界とは、
ここは電脳都市ドリームランドにある、とあるエリアの一区画。
灰の色をした壁のビル群が並び立つ、味気のないオフィス街。
空にはこれまた同じく電子データで構成された太陽がじりじりと地表を照らしている。
時間を確認してみれば午前9時、テレビではヒーローやヒロインたちが、今日も世界を救っているころだろう時間帯。
二人の人型の警備プログラムが立つ電子マネーを補完する銀行から1キロは離れた道路から、高速で迫る物体があった。
それは、引っ越しなどで使われることが多い、大型の5トントラックであった。
トラックの運転席座る覆面を被った人物道中にある車など気に求めず、吹き飛ばしていく。
トラッックにあるスピードメータを見て見れば、その速度は限界速度である90キロを振り切っていた。
銀行の前にいる警備プログラムが接近する物体を感知すると、すぐさま警告を飛ばした。
『警告! 警告! あなたは規定された速度をはるかに超える速度を出しています。 違法改造の疑いがありますので直ちに停止しセキュリティの到着を待ってください』
だが、警告は覆面の人物に届くことはなかった。
それどころか、トラックはさらにその速度を増した。
その距離が300メートルにまで迫ると、二体の警備プログラムは、銀行を守るために両手を前に突き出し緑色のファイアウォールを展開した。
このファイアウォールは、触れたプログラムを即消去するという強力なものだ
たとえそれがこの世界にログインしている人間のアバターであろうともだ。
だが、そんなファイアウォールを展開しても、覆面の人物は速度を落とすことはなかった。
代わりというのか、途中0と1の光がトラックを包むように輝き、赤色のフィールドが形成した。
そのまま、その距離は200、100、と縮まり、ついには大型トラックはファイアウォールへと衝突する。
本来ならば、即消去されるはずのトラックは、ファイアウォールに火花を散らしながら拮抗していた。
本来、感情など搭載されてなどいない警備プログラムが驚いたような気がした。
数秒拮抗していたが、突如罅の走る音がした。
音が発生は警備プログラムが展開している緑色のファイアウォールに衝突しているトラックの場所からだった。
拮抗するトラックの音かと思いきや、音はファイアウォールの方から聞こえてくるようだった。
音は次第に大きくなっていくと、ついに限界を迎えたのかファイアウォールが砕け散った。
それと同時に、トラックは銀行へと吸い込まっるように突っ込んだ。
防衛プログラム達はその衝撃で吹き飛ばされ、0と1のプログラムへと崩壊していった。
覆面に人物は意気揚々とトラックから下り、銀行の中へと入っていった。
それは、この世界ではよく見る光景の一つであった。
電子的記号で構成された高層ビルの屋上の淵に座り、私はため息をつく。
「はぁ……」
私が現実の世界に戻ったのは一体どれくらい前だっただろうか。
電子夢想世界アザトース。
何年も前に流行ったサブカルチャーに登場する邪神の名を関するこの世界は、ひどく歪であった。
頭に特殊チップ『ミ=ゴ』を埋め込み、始めて入ることのできるこの世界で、人々は自由に自分のやりたいことをやっていた。
例えば、現実では到底乗ることのできない高級車を乗り回すだとか、アレルギーなどで食べることが不可能の食べ物をを食べたり、やろうと思えば紐なしのバンジーも体験可能である。
この世界では、おおよそ現実で不可能と呼ばれるものが可能となるのだ。
これだけ考えれば、ここは本来体験できなものを体験できるという夢のようなテーマパークといえるだろう。
だが、ただのテーマパークで終わらないというのが人間の悪辣さだった。
いわゆるクラッカーと呼ばれる者たちである。
彼らはこの世界の構成情報に干渉改竄し、様々な現象を引き起こす術を持って、電子マネーや個人データを盗んだり。 個人アカウントにハッキングを施してログアウト不可能にし、様々な悪意ある行為を行い精神的ダメージを与えるなどの犯罪行為を重ねている。
当然セキュリティと呼ばれる者も存在するが、人手不足ですべてには対処不可能であった。
たとえ捕まえても、アカウントを凍結、または破壊しても彼らはいなくなることはなく、むしろ年々増えているというのが現実だ。
そうなっては、セキュリティ側も少ない人材を馬車馬のごとく働かせてるという暴挙を行うのも時間の問題であった。
というか、現状の私であった。
「はぁ……」
今日何度目かわからないため息をこぼす。
こう何度もため息をこぼしていては、幸せが逃げていくというが、今の私にはそんなことはどうでもいいくらいに疲れていた。
私は、右手を前にかざしてコンソールを出す。
そこには、私のアバター――スーツを着た黒髪の女の姿――とそのほかの様々な項目が映し出されている。
項目を操作し、あまり見たくない気もするが、連続ログイン時間を確認してみる。
「うわぁ……744時間とか書いてある」
744時間、計算すると訳一カ月ほどこの世界にいるということになる。
現実の肉体は医療カプセルの中であるため何の問題もないのだけど……これは労基で訴えれば会社に勝てるんじゃないかと思うが、訴えてもどうにもならなさそうなのは目に見えている。
就職するのも大変はこのご時世、一応まだ若い身である私だが、転職を考えるのは怖い……だが、そろそろ考えるべきではないだろうか。
電脳適性がほかの人より高かったおかげで簡単に入社できたけれど、そろそろ新しい世界というものを見て見るべきなのかもしれない。
うん、そうと思ったら即行動! そうしなければすぐにだめになってしまうだろう。
今すぐ退職届と引継ぎのプランを考えなければ……
「ん?」
私がそう思っていると、通話を知らせる音が私の頭に響く。
コンソールを開き誰からだろうと表示される名前を見て見るとそこには上司の名前があった。
「うげぇ……チーフからだよ……」
思わず顔をしかめた私は悪くないと思う。
なにせ、今私に連絡を取ってきたこの人物は、私に様々な仕事を流してきて忙しくする張本人だからだった。
断ればいいと思うかもしれないが、私の給料はこの人が握っている。
仕事のせいで使う機会もあまりない給料だけど、それでも減らされるのはいやだと思うのは自分だけではないはずだ。
なので、私は仕事を断ることができないのである。
さて、このまま通話に出ないのはまずいだろう。
私はいやいやながらも通話をONにする。
すると、私の眼前にウィンドウが現れ、そこには40代くらいの男性の姿が映し出された。
「レイン今動けるか?」
「一応動けますけど……なんでしょうか」
チーフが連絡してくるということはそれすなわち、あることを意味している。
それは……
「仕事の時間だ」
休憩の時間は終わったということだ。