魔法少女リリカルなのは 黒騎士の憂鬱   作:孤独ボッチ

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 年内に投稿が間に合いました…。
 申し訳ありませんが、著しいモチベーション低下が
 起こり、文章を書き易くする為に従来に大部分戻し
 ました。
 ご指摘を蔑ろにしたい訳ではありませんが、ご勘弁
 願えればと思います。
 それでは、お願いします。



 


第9話

              1

 

 考えてみれば、なのはちゃんに気を遣ってやる必要がどこにあったのか。

 別に彼女が一生引き摺る傷を負おうが、それは彼女の選択じゃないか。

 聞かないならそれでいい。

 なんて思ったが、何やら気付けば先生役を押し付けられていた。

 自分がなれなかったものになれると言うなら、止める必要もない。

 だから、その場のノリとはいえ、引き受けてしまった以上は多少真面目にアドバイスしないといけない。

 だから、偶に気付いた点を指摘するだけはしている。

 更に考えてみれば、私とあの子では魔法自体異なるから戦いの呼吸みたいなものをアドバイスするのみになっている。

「だから、攻撃がヌルいんだよ。手加減なんて強者にしか許されない贅沢なんだよ」

 標的を撃ち抜くだけの訓練ではなく、もっと素早く動き、人や動物型の思念体を想定し、魔法で表面上そう見える標的で模擬戦をさせているが、動くだけの的と違って途端に動きが悪くなる。

 非殺傷設定で傷など付けないのだから遠慮なくやれないと駄目だ。

 殺気や敵意を放っていないのに、これでは道は遠い。

「分かってはいるんですけど…」

「いきなりハードルが高いんじゃ…」

 なのはちゃんが項垂れ、ユーノが甘やかす発言をする。

「殺す心配がないのに躊躇するなんて、殺して下さいって言ってるようなもんなんだよ」

 私はユーノの寝言を切って捨てる。

 私を超えるなどと言った以上、これくらい出来ないとお話にならない。

 まずは自分を護る。これが重要な事だ。私だって最初そうだった。

 自分が死んでしまったら、残された人達も当然死ぬんだから。

「それが改善されるまで、何か言う事はない。それじゃ」

 黙り込んでしまう二人に背を向けて、私は今日も義務を果たした。

 

 こうまで言われて気分が悪いなら、前言撤回も有りだ。好きにしたらいい。

 

 

 

              2

 

 なのは視点

 

 レクシアさんが去って行って、私は基本的な訓練に戻る。

 考え込んでいても、こればかりはいい案が浮かばないから。

 何かをしてないと落ち着かない。

 レクシアさんの言っている事は理解してる。

 でも、どうしても標的がリアルで躊躇っちゃうんだ。

 レクシアさんが造ってくれた標的は、本当に生きているみたいでビクッとしちゃう。

 最初に出てきたようなのなら、本当に怪物みたいだし出来るんだけど…。

 レクシアさんの話だと、宿主の姿形が色濃く出ている思念体もいるって言ってた。

 だから、凄い人になるって言っちゃった手前、頑張らないといけないんだけど…。

 

 悩みがある所為か、その日は基礎訓練である魔力制御も上手くいかなかった。

 

 

 

              3

 

 そろそろリニスの気にしてる子が来る頃だと思うんだけど、まだその気配はない。

 まあ、ゆっくりでも構わないけど。

 ジュエルシードも、なのはちゃんの答えを聞く邪魔をしてきた思念体以降、サッパリと音沙汰がない。

 後から来るあの子に感染型魔力対策しないといけないから、思念体より先に接触して置きたいから、この隙に来て欲しいもんだけど。

 

 なのはちゃんの修行は漸く魔力制御が形になりつつあるってところのようだ。

 これはユーノからの定期報告だ。

 魔力が強大だから難しいのは仕様がない。

 と言っても、短期間で魔力制御以外の基礎の魔力運用をマスターしつつある才能は流石は主人公だと思う。

 どっちにしても実戦レベルではない。

 

 アースラも原作より早く到着しそうだし、一気に方を付けてしまいたい。

 アースラにしてもあの子にしても来ないし、ジュエルシードも姿を見せない以上やる事もない。

 そんな時、嫌な誘いを受けた。

「ねぇ!綾守さん!温水プールに行かない!?」

 教室で本を読んでいた私に佐伯さんが私に声を掛けてきた。

 実は一番紛れ込むのが多いグループのリーダー格の子だ。

 まだ泳ぐには少し早い。

 温水プールなんだから関係ないんだろうけど、何故にわざわざ行かなきゃいけないんだ?

 夏に行け夏真っ盛りに。

「う~ん。今回はパス…」

「今回ね!なんと!バニングスさん達とも一緒に行くんだよ!?」

 益々遠慮したいわ。

「月村さんのご両親が関わってる施設らしくってね!」

「ことわ…」

「綾守さんも来るんだ!?珍しい!楽しみだね!」

 どこから現れたのかすずかちゃんが近くに来ていた。

 心の中だけで舌打ちする。

 カーストトップ集団にこんな事を言われて断ったら角が立つ。

 影の薄い子を自認している私には、こうなってしまっては修正不可能だ。

 精神干渉魔法を四六時中使ってる訳にいかないからな。

 そんなこんなで私の意志を確認しないまま、周囲は盛り上がり私も引っ張り出される事となったのだ。

 

 

 なんでプライベートまで付き合わなきゃならない。

 

 

 

 

              4

 

 突然の発熱でドタキャンするという野望は、リニスによって打ち砕かれた。

「何馬鹿な事しようとしてるんですか!?友達と出掛けるなんてって紗枝や祿郎が喜んでたんですよ!?それをすっぽかそうなんてとんでもない!」

 リニスの親に言うぞ?という脅しに屈する形で家を出る羽目になった。

 母上からは水着を買わなくていいの?なんて言われた。

 いいわ、そんなもん。スク水という強い味方が私には付いている。

 どこのプールで使っても小学生のうちならセーフという有難い一品だ。

 異論は認める。

 母上は最後まで渋っていたが、私は自分を曲げなかった。

 

 そして、集合場所へ到着する。

 海鳴レジャープールの前。

 もっと洒落た名前にしてやれよ。月村さん。

 私が到着すると、お約束のように早く来ている人たちの姿があった。

「綾守さ~ん!」

 佐伯さん達のグループに、お馴染みの三人組まで勢揃いだった。

 時間前に到着したよな?

 時計を確認しても、10分前に到着していた。

 時計も正常に動作している。

「大丈夫よ。ギリギリだけど時間前よ」

 アリサちゃんが偉そうに、私の時計は間違っていない事を告げた。

 それにしてもギリギリね。

 どれだけ余裕持って来たんだよ。

 

 そして、ゾロゾロと中へと入って行った。

 

 

 

              5

 

 中は地味だが、しっかりとした造りのようだった。

 値段もまあ安いんだろう。

 更衣室で着替えていざ出陣。

「ちょっと待ちなさい」

 アリサちゃんに後から声を掛けられる。

 なんだ全く。

「なんで学校指定水着なんて持ってきてるのよ!?」

 見れば一人を除き全員が可愛らしいワンピースタイプの水着だった。

「何か問題でも?」

「一目見たらどこの学校かバレるでしょうが!最近は物騒なんだから!個人情報をバラすような事しちゃダメじゃない!」

 心配してくれているのは分かる。

 だが、余計なお世話だ。

「まあまあ、ダメって校則で決まってる訳じゃないし、スクール水着なんてどこも一緒だから特定されないよ」

 佐伯さんがアリサちゃんを宥める。

「それにこれから遊ぶ訳だし、後で注意もしとくからさ」

 佐伯さんが、拝むように勘弁してくれメッセージを送る。

「まあ、そうね。悪かったわ。でも、綾守ってよく見れば可愛いんだからお洒落とかした方がいいと思うけど?」

 女として二度の人生生きたけど、未だ男の価値観が消え失せていないもんで。

 それにしても、私はアリサちゃんが少しばかり冒険し過ぎな気がするけど?

 なんせビキニだ。 

 当然、今の彼女の年齢ではスタイルがって訳にはいかない。

「そう?どうもありがとう」

 私はサラッと流す事に決めた。

 流された事を悟られたようでアリサちゃんはジト目で私を見ているが、私はそんな事で恐れ入らない。

 

 少しばかり揉めたが、プールへと到着。

 皆が歓声を上げる。

 広いし新しいだけあって綺麗だ。

 既に家族連れや私達のような子供の姿もある。

 娯楽に飢えていたんだな。

 早速、基本通りに準備運動。

「ちょっと、何やってんの?」

 アリサちゃんが、私の準備運動を見て引き攣り気味に言った。

 全身ほぐしてるだけだけど?

「なんで全身バキバキ音立ててんの!?」

 よく見れば、周りもドン引きしていた。

 いや、ドラマで見てベルカ時代からこれだけど?

 そういえば、剣の館でも変な目で見られていたような?

「どうやってやってるのか全然分からないの…」

 なのはちゃんが苦笑いして初めて私にコメントした。

 

 そして、いよいよ泳ぐ。

 いやぁ、水着だと泳ぎ易くていいわ。

 ベルカだと、騎士甲冑で泳いでたからね。

 初めて水練させられた時は、救助訓練は兎も角泳がされた時は馬鹿かって言いたくなったわ。

 しかも激流の川。

 殺しにきてるとしか思えなかったものだ。

 言ったら殺されてただろうけど。

「ま、負けた…」

「全然追い付けないの…」

「普通のクロールだよね?」

 うん?競争してたっけ?

 気が付けば何やら隣でゼェゼェ息を乱している。

 まだまだだね!と心の中で決めてみる。我ながら下らない。

 思いっ切り泳いだ後、プールサイドに座り込んだ時だった。

 

「ママ!綺麗な石ぃー」

 子供が、その手に握っているのはジュエルシードだった。 

 

 

 

              6

 

 こんなとこに!?

 どうやって入り込んだんだ!?

 なのはちゃんは!?気付いてないか!発動してませんもんね!

 コッソリとパクるか!?

 感染型魔力の影響は…ないみたいだ。

 だけど、早目に取り上げとかないとな。

 一歩踏み出した瞬間に、誰かに腕を掴まれる。

「綾守さん!一緒に泳ごうよ!私達とはまだだし!」

 佐伯さん!今それどころじゃない!

「いや、ちょっとお手洗い…」

「あ!私も!一緒に行こう!」

 佐伯さんグループの子の一人が乗ってくると、続々と参加を表明するグループの子達。

 出たよ!意味不明な団体でトイレ!男子の連れションと質が違うし!

 我慢せずに行こうよ!身体に悪いんだからさ!

 どうする?魔法使うか?

「こら!どこで拾ったの!?汚いでしょ!?捨てなさい!」

 親が子供の手を掴んで、ジュエルシードを捨てさせる。 

 ジュエルシードがボチャンとプールに落ちた。

「やぁぁぁー」

 子供が泣いた時、水中のジュエルシードが反応した。

 なんてこと…。

 流石になのはちゃんも気付いて振り返る。

 ジュエルシードの光が柱のように伸びる。

「逃げて!」

 なのはちゃんが声を上げると、同時に首から下げていたデバイスに手を伸ばす。

 デバイスが封鎖領域を展開する。

 優秀なデバイスだね。

 そんな事に感心していたら、私となのはちゃん二人だけになっていた。

 

 何故、私を残すかな…。

 

 

 

              7

 

 暫し呆然とするが、歴戦の感覚は発動したジュエルシードを警戒していた。

 咄嗟にふらつくように倒れ込むと、硬質化した温水が壁をブチ抜いた。

 うん。結界に関しては私が文句言える立場じゃないな。

 前に同じミスしたし。

 一応はプロだ。この期に及んで運命の所為にはしない。しないが、文句はある。

「綾守さん!」

 なのはちゃんの悲鳴染みた声が聞こえる。

 あんな攻撃当たる程間抜けじゃない。

 魔法の影響でふらついて偶々回避したように見えただろう。

 王様のハッタリ演技をずっとしてたから、この程度は容易い事だ。

 温水プールの水が巨人のような形で立ち上がる。

 子供のジュエルシード拾いたいから、どうしてこうなったんだ。

 本格的に壊れた代物だ。

 あの余命幾ばくもない女は、こんなのに頼る気か。

 エネルギーだけだとしてもふざけてるぞ。

 温水魔人は、私にターゲットロックオンしたようで腕を振り上げる。

 さて、なのはちゃんに分からないようにしたいけど、どう誤魔化すかな。

 呑気にそんな事を考えていると、温水魔人の後からピンク色の柱が天に昇る。

 なのはちゃんは魔法少女となった。

 足から魔力の羽が伸びて、私に向かって高速タックルを食らわせてくれる。

 なのはちゃんが、迫りくる拳を回避し華麗に空中へ逃れる。

「た、高町さん?」

 私は精々驚いて戸惑っている声を上げた。

 繰り返すが演技は得意分野だ。

「えっと…これは…」

 いや、敵の前で何やってる。

「殴られるっ!」

「っ!?」

 温水魔人の拳のラッシュをデバイスの操作で華麗に回避していく。

 基礎が固まってきたとはいえ、咄嗟だからか知らないけど動きはデバイスの操り人形みたいだな。

 なのはちゃんお得意の人間感ない敵だけど、デバイスの方はまだ任せられないと感じているのかね。

 飛んでいる姿を分析していると、攻撃が止んだ隙に着地。

「隠れてて!」

「…う、うん」

 てってってーと物陰に隠れる。

 さて、これで安全に暗躍可能…。

 私は咄嗟にバックステップすると、温かい拳が壁を粉砕する。

 おい、高町タゲチャンととっとけ。

『アレに注意を引き付けるなんて芸当を期待する方が間違っておりますな』

 バルムンクが呆れたような声を出す。

 ああ!教えてないしな!悪かったな!

 バルムンクが鬱陶しいので声をシャットアウトする。

「綾守さん!」

 飛び上がり魔力弾で攻撃しているなのはちゃんだが、温水魔人ガン無視。

 こっちを脅威と感じているって事か。

 キッチリ魔力も隠しているんだけどな。

 魔法生物みたいなもんだから、何かしら感じているのかもしれない。

 なんにせよ、この位置ならなのはちゃんから見えない。

 再び振るわれた拳の風圧で吹き飛ぶ振りをして、指から極細の紅い糸を伸ばす。

「空斬糸」

 これはレアスキルだから魔力はない。

 なのはちゃんからバレないナイスな力だ。

 まあ、戦船とか鍛えられた騎士の魔法となると、すぐに修正されたりと欠点も多いからそんなに使わない技だけど。

 ベルカ時代に漫画やアニメの技の再現に血道を上げていた頃に習得した。

 空斬糸を弦のように張り巡らせると、人間の耳には届かない音を奏でる。

 すると、温水魔人の動きが鈍り一部温水が人型を維持出来ずに崩れる。

 温水魔人が腐った巨神兵みたいに前のめりに倒れる。

 温水が襲い掛かってくる。

 更に流される。

 身体が一部崩れたんだから温水がこっちにくるわな。

「綾守さん!?」

 私の事はいいから、そっちを片付けろ。

 流されて恰好が付かないが、なんにも出来ない奴アピールは出来たから、よしとしたものだろう。

 空斬糸もまだ張り巡らせてあるし、音を継続して発して置こう。

 普通の糸なら水に濡れれば厄介だが、私の血液製の糸だ。

 このくらいじゃ、扱い辛くならない。

 眼でなのはちゃんを観察すると、腐った温水魔人に相変わらず苦戦を強いられていた。

 何せ身体が水だから魔力弾が貫通するばかりで、ダメージが入らないんだ。

 いい加減コアを封印する方法を考えてみようか。

 動きは随分鈍くなっているんだし、君なら出来るでしょう?

 うん。流石にデバイスがアドバイスしたな。

 動きが変化した。

 無理に攻撃して弱らせる方針から、コア狙いに漸く変えたようだ。

 それにしても、このデバイス動きが鈍くなったとはいえ、飛行制御をなのはちゃんに渡したみたいだ。

 今までの無駄のない飛行じゃなくなっている。

 温水魔人の拳のラッシュもキレがないので、なのはちゃんもギリギリ避けられている。

 それにしても度胸あるな。

 避けながら接近してるよ。

 ベルカに転生したばかりの頃は、こんな事私には出来なかった。

 主人公って事なのかね。

 懐に入り込んだところで、温水魔人がなのはちゃんを抱き留めようとする。

 勿論、そのまま潰す算段だろう。

 だが、なのはちゃんも闇雲に突っ込んだ訳ではないようだ。

 瞬時に魔力自体を身体から発する。

 力業だな。

 なのはちゃんは、まだ複数の魔力弾を誘導弾にして放てないから苦肉の策だ。

 温水魔人の腕と胴体の一部が吹き飛び、無防備にする事に成功した。

 デバイスが、この時を待っていたとばかりに変形し砲撃モードへ移行する。

 ジュエルシードが、胸の中央に輝いているのが確認出来る。

 大きく胴体を抉った事で見えたのだろう。

 だが、向こうも大人しく封印されたりする気はないようで、腕が駄目なら倒れて押し潰そうと前のめりに傾こうとしていた。

 仕様がないな…。

 空斬糸を維持したまま、別の武器を血液で造り出す。

赤い剣(ブラッディソード)

 血液の剣を高速で振り抜く。

 子供で魔力強化がなくとも、この剣は重みはあまりない。

 技術のみで死角から足を少し斬るくらいどうという事もない。

 ほんの少しとはいえ、斬られた事で咄嗟に足を踏ん張り行動が僅かではあるが遅れた。

「ジュエルシード封印!」

『シーリング』

 なのはちゃんが封印砲を放つ。

 僅かな遅れが命取りとなり、封印砲はジュエルシードを捉えた。

 強力な魔力は、抵抗すら許さずにジュエルシードを無効化した。

 流石は馬鹿魔力。

 なのはちゃんが無力化したジュエルシードをデバイスに収納する。

 私は密かに空斬糸を回収する。

「あっ!綾守さん!大丈夫!?」

 なのはちゃんがパタパタと駆け寄ってくる。

「ごめんなさい!巻き込んじゃって!」

 私は無言で首を横に振った。

 これ以降は注意すればいいんじゃないかな。教訓として。

 私もそう思う事にしてる。

 出来れば、早く自分の世話は自分で出来るようになってほしい。

「あのね…出来れば、この事は誰にも言わないでほしいんだけど…」

 困った顔でなのはちゃんが言った。

「こんな事、誰も信じない」

「そ、そうだよね!」

「コスプレして戦う趣味がある事は黙ってる」

「う、うん!ありが…って違うよ!これはそうじゃなくて!」

 私は分かってるよって感じで頷く。

「分かってないでしょ!?」

 このくらいの意趣返しはさせて貰う。

 

 なのはちゃん、ジュエルシードゲット。

 

 

 

              8

 

 封鎖領域を解除して通常空間に戻した途端に、知った顔が突撃してくる。

 幸い突然現れるなどという超常現象は見られなかった。

「なのは!なんか変なのいたよね!?」

「なのはちゃん、いなくなるから心配したよ!」

 お馴染みのアリサ・すずかコンビである。

 因みに私が厄介になっているグループは後で空気になっている。

 分かるよ。割って入れないよね?

 何気に私、無視されてるしね。

 好都合だから、この隙に逃げよう。

 だが、いつの間にやら腕がなのはちゃんにロックされていた。

 何やってんの?

 当のなのはちゃんはといえば、苦笑いしつつアリサ・すずかコンビの相手をしている。

 いいから放せ。

 なのはちゃんは、下手にカバーストーリーをでっち上げるより、なんだかよく分からないで押し切る作戦のようだ。

 消えた件についても、自分達もみんなを見失ったとすっ呆けた。

「そう?」

「……」

 二人共なんだか怪しんでるぞ。

 それでもなのはちゃんは小動もしない。

「ところでなんで綾守掴んでるの?」

「うん!一緒にアリサちゃん達を探してたんだよ!その時に友達になったんだ!」

 いや、なった覚えはない。

 これは流石に訂正する必要があるだろう。

 口を開きかけた私に、なのはちゃんがジッと私の目を覗き込む。

 訴え掛けるような視線に、私は心中で顔を顰めた。

 つまり身近において監視しようと?

 意外な慎重さだな。まあいいだろう。

 私は渋々ではあるけど頷いた。

「そう!じゃあ、私達とも友達って事ね!」

 ちょっと何言ってるか分からない。

 アリサちゃんが謎の論理を展開した。

 何故か、それにすずかちゃんも笑顔で賛同している。

 これはアレか?私がなんちゃって女子だから分からないのか?

 因みに、佐伯さん達は私を売る事にしたようだ。

 取巻きの如く賛同している。

 アリサちゃん達はハイソな人達だ。

 彼女達とは一緒にいても、どこかで線引きしている。

 真剣に仲良くなろうとすれば、彼女達の圧倒的な差に嫌気が差すだろうから。

 そこを気に入っていたのだが、カースト上位の決定に迎合し現状維持を選択したのだろう。

 どうでもいい私という存在を売って、自分達の世界を守れるなら安いだろう。

 正しい決断だ。

 だが、私はそれなりのものを彼女達に返すだろう。

 裏切りは許してはいけないのだ。

 

 今度は私が巻き込んでやろう。

 

 

 

              9

 

 なのは視点

 

 綾守さんに魔法を使ってジュエルシードを封印するところを見られてしまった。

 レクシアさんに知れたら、また物凄く怒られる気がする。

 でも、私としては良い事もある。

 実は前から気になってた子だったから。

 綾守さんは不思議な子だった。

 お話ししようとしてもすぐにどこか行っちゃうか、誰かに話し掛けられたりして話せない。

 挨拶するだけのクラスメイト。

 でも、何回かなら偶然だと思うけど、正直に言って毎回だとどうなっているのかきになってしまう。

 綾守さん自身に私達を嫌う様子はないから余計に目を引いた。

 最初は放っておけばいいとアリサちゃん達も言っていたけど、あんまりに話し掛けるところまでいかないから、二人もどうなってるのか興味を持った。

 プールも好奇心もあって誘っていた。佐伯さん達と一緒に。

 そして、今。

 私達が戦っていた最中に消えた理由を訊かれて誤魔化したんだけど、アリサちゃん達は疑っているみたい。

 実は私も結構困ってたんだけど、アリサちゃんが綾守さんを掴んでいるのに気付いて訊いてきた。

「ところでなんで綾守掴んでるの?」

「うん!一緒にアリサちゃん達を探してたんだよ!その時に友達になったんだ!」

 私は、この機会に飛び付いて言った。

 予想通り、アリサちゃん達の興味を別のモノに逸らせたよ。

 綾守さんの雰囲気が何かモヤっとしたのを感じて、お願いと念じて見詰めると綾守さんは納得したように渋々頷いた。

 これ絶対勘違いしてるんじゃないかな…。

 本当に友達になりたいだけなんだけど…。

「そう!じゃあ、私達とも友達って事ね!」

 もう追及するより、綾守さんの方へ話題が完全に逸れる。

 う~ん。これは後で説明しないと…。

 

 レクシアさんに怒られるという事から目を逸らして、そんな事を考えていた。

 

 

 

 

              10

 

 あれから大変だった。

 怒涛のメアド交換だったよ。

 たった3人、されど3人だ。

 疲れた。

 大体何故私が携帯を持ってるって知ってる。

 誰にも見せた事ないのに。

 実は無理矢理両親から持たされたんだけど、活用してなかったのだ。

 リニスと両親は、なのはちゃん達の話を聞いて物凄く喜んだ。

 ドツボに嵌まっているような気がする…。

 これどうにかならないかね…。

 

 ベットで不貞寝していると、リニスが招き猫形態で近寄ってくる。

「そんなに不貞腐れなくても…」

「私は必要最低限の事しか基本したくないんだ、今は」

「それはダメ人間です」

 放って置け。

 私は億劫だったがリニスに顔を向け、反論を口にしようとして止まった。

 

 魔力反応。

 

「フェイト!アルフ!」

 もう来たのか!

 だが、問題はそこではなかった。

「ジュエルシードが近くにあるだと!?」

 しかも発動している。

「美海!!」

 私は返事もせずに窓から飛び出した。

 

 あの子には、まだ感染魔力対策を施していない。

 

 

 

              11

 

 フェイト視点

 

「ここに母さんの求めるものが…」

 夜の街明かりを見ながら思わず言ってしまった。

「それじゃ、ちゃっちゃと集めて終わらせようよ!」

 使い魔であるアルフが軽い口調で言う。

 私に気を遣ってくれているのが分かるので、少しだけ笑顔で頷く。

 これが終われば、母さんのお仕事が終わる。

 これからは家族で静かに暮らせる。

 

 そんな事を考えていると、魔力反応を捉えた。近い。

「幸先がいいね!早速見付かるなんてね!」

 獲物を捉えた獣のようにアルフが獰猛に笑う。

「行こう」

「応さ!」

 

 ジュエルシードのある場所へは、すぐに辿り着いた。

 だけど…。

「発動してるのに、そのまま?」

 暴走もしてないし、思念体に変容してもいない。

 何か聞いていた話と違う。

「フェイト、取り敢えず封印しちゃえば安全なんだしさ!」

 アルフの言う事に一理ある。

 でも、なんだろう?もう凄く気持ち悪い感じだ。

「バルディッシュ」

『イエッサー』

 封印を施すと魔力反応も止まった。

 バルディッシュの中にジュエルシードを収納しようとした。

 だが、ジュエルシードはバルディッシュの中に入る寸前に軌道を変えた。

 ジュエルシードが妖しく光を放ち、私の胸に飛び込んできたんだ。

「フェイト!」

 私は勿論、アルフもバルディッシュでさえ、咄嗟の事で反応が遅れた。

 何か途轍もない悪意を感じたけど、一切抵抗も出来なかった。

 

 私の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

              12

 

 舌打ちしたくなるのを堪えて、すぐさま封鎖領域を展開し他人を徹底して排除する。

 これ以上、乱入者は御免だ。

 既にジュエルシードに接触しているのは、反応から明らかだ。

 到着時、既に手遅れ感が凄い。

 禍々しい魔力は、彼女のものと似ても似つかない。

 守護獣は、あまりの出来事に呆然としている。

『未熟過ぎるな…』

 バルムンクの溜息が漏れる。

「フェイト!」

 リニスが人形態で飛び出すのを、腕を掴んで止める。

 フェイトちゃんの身体は既に別人の気配がする。

 一歩遅かった。

「リニス!?アンタなんで!?」

 守護獣が戸惑いの声を上げる。

「再会のアレコレは後だ」

 フェイトちゃんが顔を上げる。

「いやいや、久しぶりと言うべきかな?」

 フェイトちゃんの口からふざけた口調の言葉が吐き出される。

「悪趣味だな」

「誉め言葉だよ、私にとってはね」

 そして、守護獣に手を伸ばす。

 私は無言でシルバーホーンを構えると、引き金を引いた。

「おっと」

 フェイトちゃんモドキが、当人が扱う以上のスピードで後退する。

 術式解散(グラムディスパージョン)の照準を外されたのだ。

 魔力影響を排除しようとした私の行動も外された。

「だけど、こっちは防げない」

 私は眼を見開く。

 アルフが突如狼形態に戻ると、苦しみだしたのだ。

「アルフ!」

 フェイトちゃんモドキが嗤う。

「おっと!おかしな真似はしないように。君が何をしようとしても、この子達を自害させるくらい容易いよ?」

 これ見よがしにデバイスの刃を頸に当てがって見せる。

「私も自分の子を殺そうとは思わないよ。ただ()()に付き合って欲しいだけさ」

「自分の子!?実験!?何を馬鹿な事を!!」

 奴のイカレ発言にリニスがキレる。

「君になら意味が分かる筈だ」

「一回死んだくらいじゃ、物足りないらしいな。いいだろうさ、殺してやるよ」

「そっくりそのままお返ししよう。では、今日のところは失礼するよ?」

 大人しくなった守護獣の背に飛び乗るフェイトちゃんモドキ。

 守護獣は、真っ黒に身体が染まり目は深紅に光っている。

「待ちなさい!!」

 私は、リニスの肩を掴んで止める。

「どうして止めるんですか!?」

「一番警戒してる時に襲い掛かったところで効果はない。下手をすればあの子が死ぬぞ?」

 あのクソが背中なんかタダで見せる訳もない。

 アレは誘っている。

「そんな!」

「心配するな。約束は守るさ」

 私は、その背をジッと見詰めた。

 

 フェイトちゃんモドキの姿が消えた頃、通信が入った。

 グレアム提督からだ。

『次元航行船はすぐにそちらに着くだろう。話は付いている。頼んだよ?』

 本来なら早い到着は、マイナスにならない筈だった。

 だが、今は事態がややこしくなりそうで、溜息が漏れた。

 一つ良い事があるとすれば、フェイトちゃんの心神喪失を主張出来るくらいだ。

 前向きに考えるならだが。

 

 面倒事は一気に押し寄せてくるものだ。

 

 

 

 




 少しは書き上げてモチベーションはマシになった
 ような気がします。

 来年も懲りずにお付き合い頂ければ幸いです。

 よいお年をお迎えください。




 
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