魔法少女リリカルなのは 黒騎士の憂鬱   作:孤独ボッチ

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 投稿したのは、去年…。
 いや、ずっと順番に書いていたんですが…。
 書く時間が取れなくて、いつも以上に時間が掛かってしまいました。
 すいません…。
 では、お願いします。






第10話

              1

 

 ???視点

 

 自分の娘とも言うべき子供の身体で動くというのは、不思議なものだね。

 今、私は感染型魔力を使って、この子に憑依しているような状態だ。

 体毛が黒く変色した守護獣は、今は大人しく座っている。

 この子の魔力回路を使って逆に浸食するくらい余裕だからね。

 最初は、この子自身の実力に任せようと思ったが気が変わった。

 こっちの方が面白い結果になるように感じたのだ。

 非科学的だと感じる者もいるかもしれないが、こういう感覚的なものも重要なのだ。

それに、この子の資質だけに任せると電気系の魔法のみになってしまうからね。

 流石に彼女の相手をさせるのは厳しいだろうと気を回した訳だよ。

 いわば親心というヤツだよ。

 少し魔法を試したが、少し使い辛いくらいで問題はないだろう。

 我ながら中々の出来栄えだ。

 今は確保した拠点で、ゆっくりしていた。

 これからの実験に向けて。

 すると、デバイスが通信を報せて来た。

『フェイト。セーフハウスには着いたかしら?』

 ウインドウにはよく知る人物が映し出される。

「やあ!早速一個集めておいたよ」

『!?…そういう事…どういう積りなの?』

 この子の胸のジュエルシードを見て、瞬時に状況を把握したようだ。

 流石は、才媛プレシア・テスタロッサだね。

「何、ちょっとした協力さ。この子は私の作品であり子供でもあるからね。君の勝手で廃棄されては勿体ない。だから、性能試験がてら協力しようと思ってね」

 プレシアが胡散臭そうに睨む。

 心外だね。本心なのに。

『…本当に渡して貰えるのでしょうね?』

「勿論だとも。生憎、誓える神はいないがね」

『言葉を重ねる必要はないわ。余計に怪しいわ』

「酷いね。報酬はこの子を貰うって事でいいかな?」

 少しの沈黙の後、彼女は言った。

『好きにすればいいわ』

 そして一方的に通信が切られた。

 酷い扱いだね。

「いや、順当な扱いだろう。アンタの口は臭いからな」

 部屋の中に女性が入ってきて、開口一番嫌味を言った。

「おや?傷はいいのかい?」

「まあ、戦う訳ではないからな。陣中見舞いというやつさ」

「まだ、戦ってないがね」

「そりゃ失礼」

 彼女の顔が真顔になる。

 冗談はここまでという訳か。

「あまり趣味がいいとは言えないな」

 私も一応笑みを抑えて置く。

「そちらのやり方に口出しはしない積もりだ。だから、そちらも同様にして貰いたいが?」

 彼女は鼻を鳴らした。

「それで、彼女が本気でやる気になれば御の字か」

 それだけ言うと、彼女は背を向けて出ていった。

 本当にそれだけだったらしい。

 仕様がないじゃないか。

 

 楽しい趣向で再会したくなったのだから。

 

 

 

              2

 

 フェイトちゃんの身柄を奪われてしまってから数日後。 

 レクシアとして、なのはちゃんに会う約束を取り付けた。

 だって、次元航行船来るからね。

 彼女とユーノの事は、話しておかないといけない。

 あと、当然私を巻き込んでくれた説教もする。

 ユーノに近況報告がてら、白状させたから言うよ。

 お前が言えるのかって?当然言える。

 他人の事だから言えるんだ。

 因みに、ユーノは自分が人間であり男だと告白しているようである。

 原作よりも賢明と言えるだろう。

 動物だと思われたら着替えとかも気にしなくなったりするだろうし、普通に言っとかないとエロ扱いされるでしょ?って案件だしさ。

 という訳で、彼は着替えイベント確定の現場に付いていかなかったらしい。

 賢明だけど、それで結果が伴わないとは不遇な男だな。

 私が言える事じゃないけど。

 

 なのはちゃんは、約束の場所にいた。

 まあ、真面目な子だから、すっぽかすとは思ってなかったけど。

「お待たせ」

 声を掛けると、なのはちゃんはビクッと反応する。

「は、はい!」

 ユーノの目は早くも死んでいる。

 まあ、ユーノが異変に気付いても、なのはちゃんが独力で解決しちゃったからね。

 サポートと師匠としての役割を果たせていないから当然と言える。 

 気付いてから移動したって間に合う筈もないしね。

「まずは初の戦闘はどうだった?」

 ジャブを最初に入れてみる。

「済みません…。巻き込んじゃって…」

 素直でよろしい。

「悪いと思うなら、気を遣って上げる事だね」

 自分の待遇をさり気なく要求する私。

「戦闘は?」

「…訓練通りにいかなくて」

 そりゃそうだ。

 実戦ともなれば、不確定要素が付き纏う。

 それを上手く捌いて初めて一人前だ。

「ユーノは、少し一緒にいるべき時とそうでない時を見極めるように」

 言われたユーノは、項垂れた。

 自覚はあるようで結構。

 取り敢えず話し合いで詰めていって貰おう。

「君も自分の魔力を過信しないように。いくらデバイスからサポートがあるといっても、使い手がダメじゃ仕様もない」

「はい…」

 なのはちゃんも項垂れる。

 それからデバイスの記録映像からダメ出ししていく。

 魔力運用から発動から魔法のセレクト、空中機動から見逃した隙、全て指摘し終えた時には、二人共小さくなっていた。

 そこから良かった点を上げて、褒める。

 突き落として、少し引き上げる。

 これがないと、あっという間に折れるから。

 折れても私は困らないけど、教えている以上は必要な事だと思う。

 そして、満を持して本題へ。

「それと、残念ながら本題はそこじゃないんだ」

「「?」」

 二人に?が浮かぶ。

 

「連絡あってね。管理局もう来るから」

 

 

 

 

              3

 

 ユーノの顔が強張る。

 動物形態でも分かるくらいに強張った。

 器用だな、と他人事のように思っていると、なのはちゃんの目が点になっていた。

「管理局、話くらいは聞いてるんでしょ?」

 あんまりななのはちゃんの反応に私は尋ねる。

「そんなところから聞いてユーノ君がこっちに来たって事は…」

 私は、思わずユーノを睨む。

 さては、どうせ後回しになると高を括って詳しく話さなかったな。

 ユーノもまさかこれ程早く来るとは思っていなかったのか、汗が滝のように流れていた。

 色々とバレたら管理局からも言われる事請け合いだからね。

 仕様もない。

 私は管理局について、改めてなのはちゃんに説明してやった。

「そうなんですね?」

 なのはちゃん、分かってなさそうだな。

 そりゃ、次元の海を航行する戦艦とか管理世界とかピンとこないのも無理はない。

「まあ、実際来たら会って貰うから。黙ってる訳にもいかないしね」

「は、はい」

 なのはちゃんは、よく分からないけどみたいな感じで頷き、ユーノは冷汗を流しながらカクカクと頷いた。

 

 そして、あのクソ野郎は出てこず、管理局が来る日が来た。

 

 

 

              4

 

 落ち合う場所に一番目立たない場所という事で、海鳴公園の展望台を指定した。

 時間帯によっては閑散としている。

 夜に海を眺めに来る地元民などいないし、観光客が訪れるスポットでもない。

 故に夜に三人で並んで待っている。

 因みに、なのはちゃんは親に一応断ってきたらしい。

 どんな言い訳をでっち上げたかは聞かない。興味ないし。

 見晴らしはいいが、地元民は見飽きているから結構人が来ないし、接近してきても一目で分かるのがいい。

 ユーノは人間形態で直立不動で固まっていた。

 なのはちゃんも若干緊張気味といったところか。

 私はといえば、溜息を吐きたくなる。

 今回の事では私も言われる側だから。

 

 それぞれが色々な感情を抱いて待っていると、私の眼に97管理外世界付近の次元の海にアンカーがセットされるのを見た。

 流石に次元航行船は、あまり見かけないから新鮮な気持ちだ。

 そして、転移反応。

 二人の人間が姿を現した。

 一人は子持ちとは思えない若々しい女性。

 それにチビの黒尽くめ。

 言わずもがなハラオウン親子である。

 意外と顔とか覚えてるもんだな。

「貴女が賞金稼ぎのレクシアさん?」

 リンディ・ハラオウンがまず口を開いた。

「ええ。それで、貴女は?」

 流石はリンディ・ハラオウン。

 気に入らない存在だろうに、表面上は穏やかな友好的な態度を保っている。

 それに身が入っていないとは、気付く人間は少ない事だろう。

 隣の執務官殿は、敵意すら感じられるっていうのにね。

「済みませんね。グレアム提督から話は聞いているものだから、知り合いのように感じてしまったわ」

 笑顔でそんな事言っても信じないよ。

「リンディ・ハラオウン提督よ。今回の捜査の責任者をさせて貰います」

 笑顔一つ見せない私に、ピシリと敬礼するリンディ提督。

「執務官のクロノ・ハラオウンだ。捜査の指揮を執る事になる」

 クロノは、チラリとユーノやなのはちゃんを見る。

 私も視線を向ける。

「あ、ぼ、僕はユーノ・スクライアです」

「高町なのはといいます!」

 リンディ提督が笑顔で二人の目線に合わせて屈む。

「よろしくね。詳しい話を聞かせて貰えるかしら?」

「「は、はい!」」

 

 こうして、楽しい顔合わせは終了した。

 

 

 

              5

 

 詳しい話は流石に立ち話という訳にはいかず、次元航行船の中で行う事になった。

 なら、最初からそっちに呼べばいいんじゃなかろうかと思ったが、大方の目的は察しがつく。

「デバイスを持っているなら、ここで預かるよ」

 クロノが艦に入るなり、そう言って私達に手を差し出した。

 なのはちゃんは、デバイスを素直に差し出した。

 私はシルバーホーン二丁を懐に手を入れて、血液中から出すと懐から取り出す振りをした。

 クロノは無言でそれらを受け取り、ユーノを見る。

「僕のは、なのはが今使ってるレイジングハートを使ってたから他にありません」

 少しの間、ジッとクロノはユーノを見たが、嘘を吐いていないと判断したようで短く分かったと告げた。

 

 そして、私を中央に三人で座り、向かいにリンディ提督が座り、クロノは後ろに立って控える。

 クロノは、いつでも動ける態勢だ。

 犯罪者という訳でもないのに、随分な警戒だ。

「それでは、詳しい話を聞きましょうか?」

 リンディ提督が穏やかに微笑みながら話を促す。

 まずは、私の事情を話す。

 まあ、建前だけだけど。

 まさか、グレアム提督の信用を得る為にやっているなどと言えば、なけなしの好感度が無くなるだろう。

 個人的にはどうでもいいが、今はあからさまに敵対する訳にはいかない。

 次はユーノの事情である。

 本人は緊張している為に、たどたどしいが最後まで話し終えた。

 ところどころなのはちゃんが、協力したい理由やフォローを入れる。

 それを二人は黙って聞いていた。

 全て聞き終えて一言。

「立派だわ」

「だが、言語道断な行いも含まれている」

 リンディ提督の発言が甘いと感じたのか、クロノがすかさず厳しい発言をした。

「責任感があるのは良いが、自分で回収しようなどと無謀過ぎるし、魔法文化のない世界の、それも子供に魔法を渡すなど言語道断だ」

 クロノが険しい顔で首を振る。

 ユーノも自覚があるので、項垂れる。

 まあ、当然の感想だろう。

「クロノ。その辺にしておきなさい」

「母さん!」

「今は艦長よ」

「失礼しました…」

 リンディ提督の言葉に、クロノが苦虫を嚙み潰したよう顔で言葉を絞り出す。

 ああ、そういえばこんなやり取りしてたな。

 なのはちゃんは、そのやり取りに思わず微笑みを浮かべる。

 それをリンディ提督は目の端で捉えていた。

 計算か。

「取り敢えず、回収したロストロギアを渡して貰える?」

 私達は、素直にジュエルシードを渡した。

「確かに」

 そして、真剣そのものな表情に切り替え宣言した。

「これからは、管理局が回収を担当します。協力には感謝しますが、これからは予想出来ない程の危機があるでしょう。関わらせる訳にはいかないわ」

「私は関わるよ。グレアム提督に協力を約束してるからね」

 子供は、それで黙っても私は黙らないよ。

 リンディ提督が一瞬困ったような顔をした。

 ほんの一瞬なので、気付く人間は少ないだろうが前世が濃かった私は見逃さなかった。

「別に邪魔する積もりもないから、心配しないでいい」

『こ奴等には、いるだけで邪魔なのでしょうがな』

 今まで大人しかったバルムンクが我慢出来なくなったのか、余計な感想を口にする。

 リニスと話す時と違い、念話のようなものなので、向こうには聞こえないけどウザい。

 暫しの間、無言で視線をぶつける。

 先に根負けしたのは、リンディ提督だった。

「それなら、率直に訊きましょう。貴女はグレアム提督に取り入って何を狙っているの?」

 随分と悪意的な捉え方だね。

『的を射ておりますがな』

「平穏を」

 バルムンクの茶化しを無視し、本音を告げる。

 本気で言っていると流石に分かったのか、親子の顔が怪訝なものになる。

「自分の家を火付けされて、穏やかでいられる程豪胆じゃなくてね」

「「……」」

 親子は無言で私の発言を考えている。

「何度も言うけど、ロストロギアに興味はないよ。全部引き渡したでしょ?実力は実績が示してる筈だよ」

 管理局には稼がせて貰った。

 お互い視線を逸らさない。

「…いいでしょう。グレアム提督からも協力させてほしいと言われてますし」

「かあ…艦長!」

 リンディ提督の言葉にクロノが目を剝いて声を上げる。

「そのロストロギアを回収に現れたという女の子の正体も気になるわ。身体を乗っ取る事が出来るのも脅威だし、対抗手段がある彼女の協力は必要と判断しました」

 内心では認めたくなかっただろうに。

「それでは、宜しく。術式は置いていくよ」

 言質が取れたので良しとしておく。

「待ってください!私も協力したいです!」

 なのはちゃんが纏まり掛けた話をややこしくしてくれた。

「なのは…」

 ユーノは、ちょっと感激したような顔だ。

「お願いします!」

「ぼ、僕も最後までやりたいです!」

 二人揃って頭を下げる。

 リンディ提督は、私の方をチラッと見てから二人に視線を向ける。

 これは、メリットデメリットを天秤に掛けてるな。

「君達は一般人なんだぞ。ここから先は、どんな危険があるか分からないんだ。止めるべきだ!」

 クロノは、言い方は厳しいが一番管理局員らしいな。

「二人共、一度帰ってゆっくり考えてから、もう一度答えを聞かせて貰えますか?一度冷静になった方がいいわ」

 リンディ提督は、私と同じような事を言った。

 この人と私と違って諦めて欲しい訳じゃなさそうなのが、気に掛かるが。

「艦長!」

 クロノが非難の籠った声を上げるが、リンディ提督は微笑んだまま二人を見ていた。

 

 これ以上、聞いてくれなさそうな空気に二人は黙って言う事きくしかなかった。 

 

 

 

              6

 

 二人を先に地球に転送し、私は術式の供与と話し合いの為に残っていた。

 本当は術式だけ置いて帰ろうとしたが、止められた。当然か。

 術式の方は記述したものをエイミィに渡した。

 それをクロノと二人で調べている。

 珍しいだろうが、変な術式が紛れ込んでいないかのチェックである事は明白だ。

 失礼とは言わない。

 私は向こうからしたら、怪しい賞金稼ぎなのだから。

『しかし、この分だと先が思いやられますな』

 バルムンクが若干不満気に語り掛けてくる。

 正しいと認めても、疑われるのは気持ちのいいものじゃない。

 それは私も同感だ。

「それで、現れた少女とは知り合いなの?」

 リンディ提督が訊いてくる。

 言わずもがな、フェイトちゃんの事だ。

「面識はないね。でも、これだけは言える」

「何かしら?」

「あの子は、助け出さなければならない子だ」

「…それはそうでしょうけど」

 訊きたい事は理解しているが、馬鹿正直にリニスに頼まれたなどと言う積もりはない。

「ロストロギアを回収するから、どうせ助ける事になるけどね」

 私は、リニスの依頼をおくびにも出さずに嘯いて見せた。

 リンディ提督は笑顔だが、眼はずっと笑っていなかった。

 

「それで、捜索の方はどうなってるかしら?」

 クルーにリンディ提督が、ジュエルシードの捜索状況を訊く。

「少なくとも一つは、話に出てくる少女が稼働状態の物を持っている筈なんですが、反応がありません。これは難航しそうですよ」

そりゃそうだろう。

 あの野郎は、性格最悪で能力も最悪だ。

 居所をそう簡単に掴ませないだろう。

 流石に私も、あの野郎の事まで話していない。

 前世だのと、説明するのは御免被りたい。

 だから地道に別のヤツから回収すべきだろう。 

 尤も、それも奴の掌次第の可能性大だけどね。

「ロストロギアの反応をキャッチしました!」

 これをフラグ回収というのだろうか。

 

 よりにもよって反応を示したのは、市街地だった。

「艦長!現場に急行しまず!」

 クロノが真っ先に出ていく。

 それを私は後から追う。

 制止の声は掛からなかったから、別にいいだろう。

 協力しますよ。近い未来の為にね。

 しれっと武装局員達を率いて出動しようとするクロノ達に交じって転送される。

 

 フェイトちゃんから、あの野郎を叩き出さないとね。

 

 

 

              7

 

 なのは視点

 

 私達は結局帰るしかなくて、帰って来た。

 危険だというのは分かってる。

 戦うのは、物凄く怖い。

 でも、私は強くなるってレクシアさんに言った。

「ユーノ君…」

「うん。僕もこのまま任せきりで帰りたくない。ごめん、なのは。協力してくれないかな」

 私の決意を感じ取ってくれたのか、ユーノ君が同じくキッパリとした声でそう言った。

「管理局の人には、僕が話すよ。ようは僕達を使うメリットを売り込めばいいんだ。レクシアさんみたいにね」

 そっか!レクシアさんは、もっと前からそうなるように提督さん(来た人と別の人)に信用して貰ってたんだものね。

 それにしても、ユーノ君は凄いな。

 管理局の人に納得して貰う当てがあるんだ。

 私なんて、頑張ります!とかしか言えそうにないよ。

「うん!頑張ろう!二人で!」

「改めてよろしく、なのは!」

 私達が自然と握手して、家への道を急いだ。

 だけど、突然レイジングハートが輝く。

 原因は私達にも分かった。

 物凄い魔力が柱みたいに立ち昇るのが分かる。

 身体が冷たくなる。

「「ジュエルシード!?」」

 私達は互いを同時に見た。

 考える事は一緒。

「「行こう!」」

 私達は走り出した。

 ユーノ君は、まだ人の姿でいるのが辛いみたいでフェレットの姿に戻り、私の肩に乗る。

「ごめん…。まだ魔力が回復しきらなくて」

「大丈夫!頑張ろう!」

「うん!サポートは任せて!」

 勢いよく頷いたけど、やっぱり私の脚はあんまり速くない。

 カッコ悪いよね…。

 

 汗を物凄く掻いて、息も上がっているけど意外に場所が近かったお陰で危ない事が起きる前に到着出来た。

 もう何度目かの結界が張られようとしてた。

「なのは!飛び込んで!まだ、入り込める!」

 私は何か考える前に身体を動かした。

 転がるように前へ。

 景色が変わる。

 結界の中だと確信する。

「まだ、完全に構築される前だったからね。タイミングはギリギリだったよ」

 ユーノ君の言葉に返事は出来なかった。

 次の瞬間には物凄い光が辺りを照らしたから。

 そして、人が次々と落ちていく。

 ジュエルシードの前には女の子が浮かんでいた。

 歪んだ笑みを浮かべて。

 

 それがあのカラスみたいに不気味だった。

 

 

 

              8

 

 転送され、すぐさま市街地へ。

 私は既に騎士甲冑を纏っていた。

 そして、市街地に転送された瞬間に狙い澄ました魔法が放たれた。

「っ!?」

 武装局員は防御が間に合わずに、雷に焼かれて落ちていったが、クロノだけはどうにか防御に成功していた。

 勿論、私も成功している。

 あの精度と威力は、フェイトちゃんじゃ出せそうにないな。

 流石と言ったところか。

 それだけではなく、私の場合だとすぐに血液中から剣を取り出して、空中に造り出した足場で踏み込み一瞬で奴との距離を詰める。

 フェイトちゃんの顔をした奴は、ニヤリと嗤う。

 ジュエルシードが妖しく輝く。

 紅い柱となって私を吹き飛ばそうとする。

 大人しく吹き飛ばされても、はたまたどうにか向かっていっても奴の想定内だろう。

 だから、私は拳をジュエルシードに叩き付けた。

 血液による強制封印。久遠棺封縛獄(エーヴィヒカイトゲフエングニス)

 それを狙ったように紅い光を突き抜けて、奴が戦斧を振るう。

 だが、その戦斧が私に届く事はなかった。

 叩き付けた拳が戦斧を弾いたからだ。

 奴が不意を突かれたような顔をする。

 この封印は、基本的に封印が終わるまで片腕が自由に動かせない。

 故に片腕以外でどうにかするしかない。

 私が弾いたのは封印を行っていた拳。

 実は封印を実行したようなフリをしただけだ。

 疑似的な魔法式を構築して、それらしく見せただけ。

 こちらの手の内を知っているが故の早とちり。

 弾かれた戦斧を無理に引き戻す事なく、自分の得意分野を使う。

 一瞬にして雷の矢が無数に展開させ、射出。

 当然のようにホーミングが付いている。

 だが、それだけの筈もない。

 クロノと私を追尾する雷の矢をそれぞれ叩き落していく。

 でも、どうも二人分にしては数が少ない。

 なんて、誤魔化しても仕様がない。

 そんな中で悲鳴が上がる。

 下を向くと、やっぱりというか、なのはちゃんとユーノが当然のようにいた。

 クロノは流石管理局員の鑑と言おうか、庇う為に急降下していく。

 二人は、クロノに任せていいだろう。

 そして、奴に向かおうとして…。

 急停止。

 いつの間にか、魔法陣が出来上がりつつあった。

 雷の矢に紛れて反応を分かり難くし、術式を構築していたようだ。

 流石に綺麗な構築ではなかったが、アルハザードが使用している魔法である。

 それを見ただけで、凶悪極まりないのを察した。

 妖しげな紫の光が灯ると同時に、血液中からシルバーホーンを取り出して術式解散(グラムディスパージョン)を放つ。

 発動寸前に魔法陣を破壊する。

 シルバーホーンを持つ手に魔法の枷がはめられる。

 バインド!?

「いや、お手製の玩具だよ。魔法の気配なんて感じなかっただろ?」

 奴の手には、いつの間にか趣味の悪い爪が装着されていた。

 そこから、紅い糸が伸びており、よく見れば私の手の枷に繋がっていた。

「君の血液の技のリスペクトだよ。受け取ってくれたまえ」

 そう言うと、腕を振り上げる。

 飛行魔法で踏み止まろうとしたが、上手くいかずに空中に投げ出される。

 魔法が阻害されている。

 こっちが本命か。

 変身魔法の維持も厳しくなっている。

 早目に勝負を決める必要がある。

 満を持して魔法式が構築される。

 先程の魔法陣の比ではない威力の魔法。

「それでは、受け取ってくれたまえ!」

 紫色の光が靄のように発生する。

 わざと恐怖を煽る為の演出だ。

 腐蝕魔法。

 これに触れると、全てのものが塵となり消え去る。

 私は腕に力を籠めて拘束を引き千切ろうとする。

「無駄だよ。その糸は腕力では決して切れない」

 私はフッと笑みを浮かべる。

「丈夫で助かるよ」

「っ!?」

 気付いたようだが、もう遅い。

 私は頑丈な糸で腕を傷付けた。

 魔法は阻害されているが、体内の魔力まで無効になった訳じゃない。

「空斬糸!」

 流れた血から無数の糸が造り出される。

「そこまでだ!」

 はっ!?

 クロノが空気を読まずに突っ込んでいた。

 どうやら、私は技のチョイスを間違えたらしい。

 クロノは、私の空斬糸と奴の玩具を混同している。

 奴がニヤリと嗤う。

 くっそ!

「時空管理局・執務官クロノ・ハラオウンだ!デバイスを捨てて投降しろ!」

 格好よく決めた積もりかもしれないが、操られていると伝えた筈だが…。

 まあ、当人の意識があったとしても拒否しただろうけど。

 予め仕込んでいた術式を開放する。

 クロノ目掛けて。

 私は舌打ちする。

 平時なら兎も角、今彼を見捨てる訳にはいかない。

 これからの私の目標の為には、グレアム提督の信用が必要だ。

 強力な魔法で飲み込むという手もあるが、それではクロノやなのはちゃん、ユーノを巻き込んでしまう。

『なんだかんだで助けるのですな?』

 バルムンクが、余計な事を口走っるのが喧しい。

 精霊の眼(エレメンタルサイト)を使い、術式を打ち砕いていく。

 流石はアルハザードの魔法使いだ。

 認めたくはないが、発動スピードが化物染みている。

 いや、化物か。

 私も素早い発動が可能だが、奴のは桁が違う。

 クロノも迎撃しているが、威力が足りていない。

 空中で激しく態勢を切り替えて、両手はシルバーホーンに切り替えて打ち砕くと同時に、クロノを射線外に蹴り飛ばす。

『抜け!』

 そして、本命に気付きながら打ち砕き切れない。

 ここでバルムンクを抜けば管理局の事だから、私の正体に気付き兼ねない。

 一瞬の躊躇。

 その隙を見逃す程、甘い相手ではない。

 積層型魔法陣が完成し、一気に解放される。

 選択魔法はファランクス。

  

 そして、轟音と閃光が世界を包んだ。

 

 

 

              9

 

 なのは視点

 

 あの管理局の捜査官?みたいな子に助けられた。

 突然、速い矢みたいな魔法が降り注いだから。

「大丈夫か!?」

「う、うん。ありがとう!」

「僕もついでにありがとう!」

 管理局の人が眉を寄せて、不機嫌そうに頷いた。

「君達は、すぐに避難を!」

 すぐに管理局の人は飛んでいく。

 空では、もうレクシアさんが戦ってるけど、私じゃ高度過ぎて何が起こってるのか分からない。

 けど、レクシアさんが危なくなってる。

 何かしなきゃいけない!

 物凄い冷気に身体が竦む。

 そうこうしてるうちに管理局の人が二人を止めに入る。

「なのは!」

 ユーノ君の大きな声に、金縛りみたいになった私の身体はビクッと反応した。

「君のやり方でやって。僕は君を全力でサポートする。協力して貰ってる立場ではあるけどね」

 最後におどけたような声で、ユーノ君が言った。

 その言葉に私は笑った。

 うん!私はレクシアさんと約束した。

 やる以上は、レクシアさんが出来なかった事が出来る魔導士になるって。

 こんなところで止まってられない!

 私はレイジングハートを握り締める。

 空で凄い爆発が起きる。

 衝撃で転がってしまう私。

 でも、レイジングハートは手放さない。

 ユーノ君は無事なのか確認出来ない。

 でも、ユーノ君なら大丈夫だと信じる!

「レイジングハート!!」

『スタンバイ・レディ』

「セッ-トアップ!!」

 私は魔導士に変身する。

 魔力運用の応用で、身体を保護して立ち上がる。

 不気味な感じがする女の子は、こっちなんか見てない。

 だからこそ、今のうちにあの子を助ける!

 ジュエルシードは女の子の胸中央に貼り付くみたいに付いている。

 ここから封印砲を撃っても、躱されるかもしれない。

 なら、ギリギリまで近付く。

 最速で。最短で。

 いくよ!!

 足に光の翼が広がり、地面から弾かれるみたいに空へ飛び上がる。

 レイジングハートが砲撃する形へと変化する。

 女の子が興味のなさそうな目でこっちを見た。

 女の子までの距離は、あと五歩位のくらいの距離。

 ここまで近付けば、防御ごと貫ける!!

 女の子が手を伸ばす。

 その瞬間、女の子の腕に光の枷が絡み付く。

「なのは!!」

 ありがとう。ユーノ君。

「ジュエルシード、封印!!」

 封印砲が杖から出た。

 その筈だった。

 でも、次の瞬間、封印砲が粉々に砕け散った。

 魔力量はレクシアさんですら認めていたのに、この女の子は蠅でも追っ払うみたいに軽く手を振っただけで、私の封印を砕いてしまった。

 ユーノ君の拘束魔法も当たり前みたいに砕かれてる。

 これがジュエルシードの力なの!?

 呆然とする私に女の子がデバイスを振り上げる。

 冷たい眼と空気。

 レイジングハートがバリアを張ってくれる。

 その直後、デバイスが振り下ろされた。

 バリアもアッサリと壊れ、刃が私に迫る。

 時間が飴のように伸びた気がした。

 でも、その刃は私を掠めて外れた。

 髪が何本か切られた。

「っ!?」

 女の子の目が驚きで見開かれる。

 女の子の腕が震えている。

 私には判った。

 これは女の子本人が抵抗してくれているんだと。

 なら、私も最後まで諦めない。

 絶対に貴女を助けてみせる!

 私はレイジングハートを再び、女の子に向ける。

 それを鬱陶しそうに脚で蹴飛ばしてくる。

 腕が思うように動かないからだ。

 レイジングハートを飛ばされないように、必死で握り締めて抵抗する。

 我慢が出来なくなったのか、女の子が魔法を展開する。

 私じゃ、避けられる数じゃない。

 でも、決めたんだ。諦めない!

「レイジングハート!!」

『オーライ』

 レイジングハートも付き合ってくれる。

 レクシアさんみたいには出来ないけど、一点突破する。

 その決意でレイジングハートを握り締める。

 すると、突然別方向から魔力の壁が飛んできて、女の子がそれをデバイスで斬り払った。

 だが、それはすぐに次々女の子目掛けて迫って来た。

 飛んでくる方向を見ると、管理局の人を抱えたレクシアさんだった。

 すぐに、レクシアさんは管理局の人を放り出した。

 思わず声を上げそうになったけど、これも当たり前みたいに管理局の人は魔法でゆっくりと地上に降ろされた。

 レクシアさんは凄い人だ。

 ここまで凄くても出来ない事があるんだと言う。

 どれ程凄い努力をしたのかな…。

 斬っても斬っても壁は飛んでくる。

 斬り払われた壁は、魔力の粒になって消えていく。

「お返しだ」

 魔法が女の子の周りに一杯出来上がる。

 魔力の粒が広範囲に巻かれて、気が付かなかった。

 これを当たり前みたいに出来るんだ。

 女の子が不気味な笑みをまた浮かべる。

 女の子に魔法が殺到する。

「おやおや、幼気な女の子を囮に魔法の構築時間を稼ぐとは悪辣になったもんだね」

 殆ど躱す隙間なんてなさそうなのに、スイスイと魔法を回避して、そんな事を言った。

 多分、私が戦っている間に大量の魔法を使う準備をしてたんだと思う。

 でも、私はそれに文句を言う積もりも余裕もなかった。

 目の前の光景を目に焼き付けるように見る事しか出来ない。

「無駄にする積もりはない」

 造り出された魔力弾が残らず停止する。

 一瞬、驚き動きを止める女の子。

 だが、すぐにバリアを厚くしようとしたみたいだけど、レクシアさんが指を鳴らした瞬間に全てが爆発した。

 その爆発に躊躇いなく飛び込んでいくレクシアさんの姿が見えた。

 女の子が所々服に焦げ目を作りながらも脱出してきたところに、レクシアさんが銃から剣へと一瞬で武器を持ち換えて空中で踏み込む。

 物凄い音と共に閃光のような一閃。

 女の子の斧みたいなデバイスが切断され、身体が薄っすらと切り傷を残す。

 魔法で護られている筈なのに、そんなの全く関係ないみたいに斬った。

 女の子が微かに震える。

 顔だけは忌々しそうに歪んでいた。

「悪いが、ここで失礼しよう」

「ふざけるな。次などない」

 レクシアさんが剣を構える。

「いや、あるさ」

 そう言うと女の子が自分の首に手を掛ける。

「知っての通り、この子を殺したところで私は無事だ。どうするね」

「みっともないやり口だな」

「そうだね。言い訳を言わせて貰えば、お互いに本領発揮出来る状況にないからね」

 首に手を掛けたまま、女の子が空いた手を振ると、黒い獣がレクシアさんに突っ込んでいった。

 レクシアさんが体術のみで突進をいなしている間に、女の子は魔法の気配を一瞬させて消えていった。

「消えた…」

 私の間の抜けた声に反応したみたいに、黒い獣が逃げて行く。

 女の子は追おうとしたレクシアさんだけど、黒い獣は全く追わなかった。

 私は、ただ見ている事しか出来なくて俯いた。

「なのは…」

 ユーノ君がいつの間にか近くに来ていた。

「私もああなってたかもしれないんだね」

「なのは…」

「私はホントは分かってなかったのかな…。でも、私、あの子を助けたい!」

「…そうだね。これは僕の責任でもある。発掘したのは僕だから。助けよう。絶対に」

 もっと、教えて貰わないと駄目だ。今のままじゃ何も出来ない。

 管理局の人達にも、一生懸命頼もう。

 私は、この時にやっと本当に決意が固まったんだと思う。

 

 あの街中で発動したジュエルシードは回収された。

 あの女の子、いや操っている人が置いていったから。

 目を覚ました管理局の人は、怪我をした人達をあの戦艦に運び込むと、レクシアさんと帰って行った。

 管理局の人は、凄く怖い顔してたけど、無理はないんだと思う。

 力の差が凄かったんだから…。

 でも、あの人も諦めた風じゃない。

 私もだ。

「この状況なら…」

 

 ユーノ君の言葉が大きく響いた。

 

 

 

 




 あんまり話が進んでないって?
 次回からはスピードアップします。
 投稿スピードではないのが申し訳ないですが…。

 これに懲りずに付き合って頂ければ幸いです。



 
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