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1
???視点
最初は黙って観戦する積もりだった。
あの地での心躍る遊びの日々が再び来ると、そう思っていた。しかし、あの傲慢なまで獰猛な輝きは失われていた。
嘗ての彼女であったなら、自分の存在を嗅ぎ付けたら探し出し食らい付くまで止まらなかった。
彼女の興味深い能力は、唯一私の造り出す芸術的な作品に匹敵していたのだ。
それなのに、今の彼女はどうだ。
対処方法だけを管理局や他人に投げ渡し、自分は積極的にやろうとしない。臆病になったとすら言える。
それではダメだ。楽しくなんてない。楽しくないものは必要ない。これで目が覚めないならば、彼女とはここでお別れとなるだろう。
苛立ちから、私の娘ともいえる子の精神を乗っ取るというらしくない行動を取っている。
ならば思い出させてあげよう。そんな事で私を止められないという事に。
2
リニス視点
白と黒が激突する。
白は私、今の私の身体。目立つからとかなり不細工な姿に変えられたけど、この真の姿は気に入っている。
何故、この姿で小さくしてくれなかったのか分からない。いえ、目立つからだと分かっていますよ?でも納得出来るかは別でしょ?
今は、そんな事より相手の方です。
嘗ての教え子と言っていい子。アルフ。今は浸食されて黒い狼と化しています。
「狂気に囚われ、他人の魔力で底上げしてその程度ですか!?」
狂ったように突撃してくるアルフをいなし、身体を素早く回転させて体当たりをして吹き飛ばす。
操られているとはいえ、この子はこんなに弱い子ではない。もしかし、彼女が抵抗しているのかもしれない。
それは、勝負が着いてから確認するとしましょう。
「それで終わりと言うなら、ここまでです!」
魔力を素早く身体中に巡らせる。身体が帯電していく。そして、一気に魔力を解放する。爆発的なスピードで竜巻のようにアルフの周りを回る。あまりのスピードにアルフが反応出来ない。
遂に、アルフが隙を晒す。それを見逃さずに私はアルフの胴体に向けて突っ込む。だが、次の瞬間にアルフの身体から紅い魔力が噴き出る。
不味い。
このまま突っ込んでは危険だ。私の野生が警報を鳴らす。プレシアは野蛮だと嫌がっていたが、私はこの感覚を信じている。警報が鳴った時には必ず悪い事が起きる。
私は紅い魔力に接触する寸前で、魔力で足場を作成し、それを蹴ってアルフをやり過ごす。
すかさずアルフが私を追って飛び込んでくる。紅い魔力を纏ったまま。
私は身体に纏った雷を放つ。溜め込んでいたいたものが無駄になるかもしれないが、相手の手の内を見る為には惜しまずやるべきです。
そして、私の野生が正しい事が証明される。
紅い魔力が、生き物のように伸びて口を開き雷を食らったのだ。それだけではなく、アルフの身体が一回り大きくなった。食らった魔力を自らの糧として成長したのだ。
おそらく、私の身体も食べられる筈だ。そうじゃなければ、避けない訳がないから。
厄介ですね。どうやって攻撃すればいいでしょうか…。美海ならば、魔力を無力化するのですが…。
こうなったら、私も多少無茶をしますか。本当は安易に無茶をするのは好まないのですが、後を任せても大丈夫なマスターも居ますし、やりましょう。
アルフの身体中から紅い魔力が文字通り牙を剝いている。こちらに対抗手段がないと高を括っていますね。
宜しい。勝負といきましょう。
その時、アルフが前足をヒョイと上げ、ウインクした。
これは、私の予想が当たりなのか、それとも罠へ誘い込まれているのか…。
悩む余地などありませんね。手札的に。私の出来る手段は限られているのですから。
再び、身体中から帯電させ、身体が青白く輝く。
全力でいきます。
帯電した雷を頭上に集中させていく。まるで、太陽の光のように煌々と辺りを照らす。まずは一発。
気合と共に放つと、アルフは避ける気配もない。当然だ。自分に利のある事なのだから。
雷光が紅い魔力に接触すると、みるみるうちに食い尽くされていく。
想定内です。まだまだいきます。
今度は複数同じものを造り出す。わざわざ動き回って隙を窺う必要はない。何しろ相手は避けないと分かっているのだから、余計な手間というものだ。
ドンドン撃ち込んでいくと、みるみるアルフが大きくなっていく。
まだまだいけますよ。ありったけの魔力を籠めて攻撃を繰り出す。ただし、最低限は残さないといけない。加減は難しい。変に魔力を残そうとケチれば失敗する。思い切りよくやり過ぎても駄目です。
「はあぁぁあーーー!!」
全て撃ち切り、全てが直撃。だが、相手は無傷。
息が切れる。魔力で身体を維持出来ず。無様な招き猫形態へ戻ってしまった。
それでもまだ、空中に意地で留まる。
ここまで魔力を使ったのも久しぶりです。
アルフがニヤリと嗤い、動き出そうとしてよろめく。
魔力が明らかに循環異常を引き起こしている。
今度は私がニヤリと笑う。
そう。幾らでも食べられて力を付けられるのでしょ?でも、アルフの身体は違う。扱える魔力の総量は私達使い魔は、主と身体に依存する。
アルフの身体では、今の操られているフェイトの魔力に自分の総量を越える魔力を流せば身体は壊れる。
アルフが藻掻き苦しみ始める。身体が壊れる寸前。
フェイトを操る者が、対処を始める。魔力の回収を開始。そこを突きます。
今、助けますよ!
私の今の主が作成した術式。浸食型魔力の対策術式。私にも施されているものなのだから、術式を観る事は可能だ。そして、複製も。
使えないと分かれば、切り捨てる。美海の言った通りですね。寧ろ有難いですよ。
今までにあった異常なまでの制御能力が失われ、魔力が暴走状態になっている。
つまり、魔力が粗い。付け入る隙がある。
目を凝らして、魔力の流れを観る。勿論、突っ込みながら。今の私ではほぼゼロ距離で撃ち込まないと、あの薄い層の部分ですら弾かれそうです。
こっちを気にしている暇が向こうにないのも最高です。
今。
静かに狙いを定め、術式を組み込んだ魔力を撃ち込む。
物凄い悲痛な咆哮が上がる。アルフ、もう少しの辛抱です。
力を使い果たし、落下する。魔力がほぼ空なのだから仕方がないでしょう。それでも姿を維持出来ているのは、美海とのパスのお陰。
『アタイさ。前足上げてから走る方が気合入るんだよね。合図はそれでいい?』
在りし日の記憶が蘇る。
『貴女は大体そうじゃありませんか。それじゃ連携の合図としては不十分です』
小さなアルフが唸り声を上げて、頭を抱える。頭を使うのが苦手な子でしたね。
『じゃ、じゃあ!ウインクするよ』
『は?』
『前足上げて、ウインクするよ』
『ダメです。分かり易過ぎます』
そう言っても直らなくて、こっちが折れたんでしたか。
私の未来があまりなかったから、連携する事はありませんでしたが、こんな時に使うとは思いませんでした。
美海。フェイトの事を頼みましたよ…。
何か暖かいものに包まれたような感触を最後に、意識が途切れた。
3
なのは視点
龍は、8つの首からホントに怪獣みたいに光線を吐く。首を滅茶苦茶に振るから光線があちらこちらへ飛んでいく。
私は回避しつつ接近してレイジングハートを構える。砲撃を撃つと見せ掛けてバインドを設置して逃げる。勿論、攻撃しようとしたけど光線の攻撃が激し過ぎて駄目だった風で。
一つのジュエルシードだったら良かったけど、アレは8つのジュエルシードから生まれた思念体だから、封印砲は確実に8つ封印出来るくらいの威力を出せるくらいの隙を作らないと駄目だ。
ユーノ君もバインドで行動を止めようとしてるけど、あの大きい身体とパワーで簡単に引き千切られちゃう。
他の管理局の人まで見ている余裕はないけど、きっと大丈夫だ。だってクロノ君が経験のある腕のいい人達だって言ってたから。それに砲撃で攻撃してるみたいだし。クロノ君だって指揮を執って戦っている。
『来ます』
レイジングハートから注意で、気付いた。龍が足に力を籠めてる。これは…。
そんな事を考えた瞬間に大きな身体が飛んだ。こっちに向かって。左右への回避は間に合わない。なら、後ろ。足に生えた光の羽が私の意志に反応して輝き羽を伸ばす。
高速での後退しながら、レイジングハートを構える。
『アクセルシューター』
誘導弾を放つ。顔目掛けて勢いよく飛んでいった光弾は、首を振る事で軽く避けられるけど、これは誘導弾。私は素早く光弾を操作すると、避けたと思っていた龍の横顔に光弾が直撃する。
首の一本だけの事だけど、気は逸れた。
その事が分かってるみたいで、他の首7本が私を襲ってくるけど、気が逸れた首を楯に隙を作って7本の首を回避して懐へ飛び込む。
レイジングハートを砲撃モードにして構え、頭の中でバインドを一気に起動!
ピンク色の枷が首と脚・胴体・腕に嵌まる。でも、向こうも大人しくなんてしてくれない。暴れて身を捩ってバインドを振り解こうとする。バインドの強度は術者の力量と魔力量で変わる。クロノ君とユーノ君の授業で教わった。だから、少しの間くらいは持つ。でもそれじゃ足りない。そう考えた瞬間に緑のチェーンが絡み付いた。流石はユーノ君!それに続いてクロノ君の強力なバインドが放たれる。
「各自!バインドで拘束!一瞬でもいい!動きを止めろ!」
「「「了解!!」」」
クロノ君も、この隙は見逃さなかった。他の管理局の局員さんも。まだ、一人じゃ無理だけど、今はこの街を護る事が一番やるべき事!
封印砲のチャージが進み、今まで撃った事のない程の魔力が充填される。これなら!
「ジュエルシード!封印!」
『シーリング』
砲撃が一直線に龍に突き進む。全員がやったと思ったと思う。私もそうだ。でも、龍は口から紅い砲撃を放って迎撃してきた。封印砲と向こうの砲撃が激突する。
「くぅっ!!」
思わず私の口から声が出た。徐々に押されてきてる。ここで決めないと、魔力が流石に頼りない量になる。
『退避を!』
レイジングハートからの警告に、身体が勝手に反応して砲撃を切って退避行動を取る。一瞬遅れて紅い魔力が私の髪を掠めていった。威力を突然に変えてきたんだ!
でも、どうしよう?魔力が少なくなってる。今の威力の封印砲を撃つのは出来なくはないけど、もう後がない。それは今も同じだけど!
立て続けに紅い砲撃が首から放たれ、管理局の局員の人やユーノ君達にも向けられる。
「負傷した者は、下がれ!」
クロノ君の鋭い声が響く。怪我をした人が出たんだ!レイジングハートを強く握り締める。
速度を上げて、狙いを定めさせないように飛び、光弾で怪我をした人が逃げるのを助ける。
威力は、それ程高くないけど相手は無視出来なくて反応してる。
「無駄に魔力を消費するな!こっちは大丈夫だ!」
「なのは!僕が支援する。君は封印を!」
クロノ君とユーノ君が私に叫ぶ。
私は歯を食いしばって追加の攻撃を諦めた。
今は封印に集中する。封印すれば、皆が安全になるんだから。再び、近付いて離れるを繰り返してバインドを設置していく。
片足、片腕に設置したところで、8つの首が一瞬だけ止まる。私は考えるより早く龍と距離を詰める。
「不用意に突っ込むな!」
『退避を!』
クロノ君とレイジングハートの注意が重なる。
8つの首が一斉に私に襲い掛かる。今まではバラバラに攻撃してたのに!竜の口から魔力が漏れ出す。
『魔力砲のチャージを確認』
わざと近付かせて狙いを絞ったんだ!ただでさえ、封印する為の魔力が足りるか分からなくなっているのに、ここで防御すれば完全に封印に足りなくなる!
時間が飴の様に伸びる感覚。避けられる?8つの首は私を逃がさないように広い範囲を攻撃出来るようにしてる。
どうするの?どうするの?ここからどうしたらいい?
心臓が五月蠅い。汗が目に入るのに閉じられない。身体が固まったみたいに上手く動かない。
そんな時、頭の中で何かが弾けた。
何かは分からない。どう言ったらいいかも分からない。でも、そうとしか言いようがなかった。
8つの首の真ん中に微かに青い光が灯っていた。
あれはジュエルシード?なんなの?
『これは人々の願いを叶えてくれる。頼れない神に代って人を助けてくれるものになる』
これは、ジュエルシードに刻まれた記憶だ。
人を助けたい。ささやかな効果だけど、人の想いで起動するエネルギー結晶。
これを造った人は、分かってた。強い力が不幸を呼ぶ事を。だけど、途中で改変されたんだ…。それで壊れた。
『悪用される事のないように、これを残す』
緊急停止。自己診断プログラム。
まだ残ってるの?
微かに光る灯が教えてくれる。まだ残ってるって。
術式に似てるから覚えられてる。だから、
燃え上がるように紅い魔力を蒼い光が一瞬退ける。それで十分!砲撃が遅れる。それで掻い潜れる。
頭の芯が熱くなる。
「レイジングハート!これで魔法撃てる?」
脳裏に緊急停止の術式を描く。それをレイジングハートへと伝える。
『複雑なものではありません。実行します』
頼りになるね!思わず笑みが浮かぶ。今まで負けそうだったのに。
龍の動きは、ほんの少しだけど悪くなってる。避けながら近付ける。グングン龍の胴体に近付いていく。
ここ!
「レイジングハート!」
『緊急停止コード、撃ち込みます』
ピンク色の今までとは違う細い光線が走る。避ける気配も防ぐ気配もない。大した事のない一撃だから。
胴体になんの抵抗もなく命中する。龍の身体はどうにもなってない。でも、効果はすぐに表れた。
私の魔力が胴体から首へ、ジュエルシードへと伝わっていく。
そして、ジュエルシードが機能を停止して、エネルギー供給を止める。
効果はささやかなもの。ジュエルシードが止まれば、龍の姿のままではいられない。みるみるうちに身体が崩れていく。
でも、紅い魔力は未だ暴れている。けど、大丈夫。
「再起動。自己診断プログラム起動」
『……』
私は手を翳してジュエルシードにアクセスする。それに即座にジュエルシードは反応して、起動と同時に自己修復を開始する。
その間に紅い魔力が、またジュエルシードを使おうとするけど、私が同調する事でそれを防ぐ。だって、私の中にはレクシアさんがくれた備えがあるんだもの。それを願いと共にジュエルシードへ捧げる。
それだけで変化は起こったの。蒼い光が紅い光を駆逐していく。
「なんだ!?これは!?」
「こんなの…聞いた事もない…」
クロノ君の声とユーノ君の声が聞こえる。でも、今は先にやらなくっちゃいけない事がある。
私は再起動したジュエルシードへ手を伸ばす。
「辛かったね…」
私は集まったジュエルシード8つを胸に抱いて言った。造った人の想いとは違う使われ方をして少しづつ歪んでいったんだから。でも、もういいんだよ。
「おやすみなさい」
ジュエルシードは私の胸の中で光を失った。機能を停止したから。
私は呆然とする人達に微笑んだ。
4
ヤツが紅い稲妻の雨を降らせる。どうやら、フェイトちゃんの力以外は制限されているらしい。そうじゃなければ遠に使っているだろう。いや、駆け引きで控えている可能性もあるか。
稲妻を全て逸らし、埋葬剣を手に空中を走る。
『殺す気でやらねばなりませんぞ!』
バルムンクが血中で叫ぶ。そういう訳にはいかないでしょうが、リニスとの約束があるんだから。私の場合は、本当に殺しかねないからね。
剣で舞うように動く、身体に負担が掛からない動きで斬り掛かる。
奴は余裕を持って杖でいなし続けている。
しかし、焦りはない。身体がリズムを刻むように動く。それは単調なものでは勿論ない。次々と鋭い一撃を繋げていく。それがやがて嵐になる。
遂にヤツがいなしきれずに距離を取ろうと動くが、私は止まらない。魔法を打ち落とし、斬り落とす。
そして、隙を僅かばかり抉じ開ける。すかさずそこに斬り込もうとして、強引に剣を止めて身体を後退させた。
直後、眩い閃光が走る。
大きく飛び退き距離を取ったが、障壁を張らなければならない程の威力だった。
「電気の魔力変換資質を馬鹿にしていたかね?嘗ての君ならば、そんな無様は晒さなかっただろうに」
あんな魔法は、フェイトちゃんの手札にはなかった筈だ。だとすれば、ヤツが造った魔法だ。
「まあ、想像の通りだよ。即興だけどもね。プラズマもなかなかのものだろ?と言っても、魔力消費の割に威力がイマイチだから、改良の余地があるけどね」
こういう得意気に語っている時は…。
私は油断せずに周囲を警戒し続けていた。そして、それは正解だった。バラ撒かれた魔力が突然に弾けて、爆発したように雷光を放った。それもあちこちから。
魔力残滓に仕掛けられた分割型遅効性魔法。残滓をバラ撒き、分割された魔法式が結合した時に発動する遅効性の魔法を使った事は瞬間的に私の眼で理解した。
私は焦る事なく魔力で逸らし、回避し反撃の機会を窺う。勿論、こちらもタネが分かった手口にいつまでもやられる事はない。すぐに分割された魔法式を砕きに掛かる。
血中からシルバーホーンを取り出し、
その間も、ヤツから目を離したりしない。右手に握り込んだ埋葬剣でフェイトちゃんの解放を狙う。
私は魔法を迎撃しつつ、少しづつ接近していく。砕かれる魔法式と銀光を放つ剣閃で傍から見れば美しい光景だが、間違いなく攻撃が命中すれば死ぬ死の嵐だ。
向こうも、それは察していて一定の距離を嘲るような笑みを浮かべて取っている。
私は歩みを止めずにシルバーホーンを術式ではなく、ヤツに向ける。
ヤツは笑みを深くする。魔法では自分を傷付けるに至らないと確信しているからだろうが、これから使う魔法は食らった事のないものだ。
バリオン・ランス。原作では、銃剣型の特別なCADを使用するのだが、私の場合は飛ばす刃は血中にあるので、それを用いる。
一直線に凄まじいスピードで刃が飛ばされる。
ヤツから笑みが消え、ソニックムーヴで回避する。
だが、それが私の狙いだ。咄嗟の魔法起動。それによりヤツの魔法に刹那の間であろうが隙が生じる。
そこに乗じて本気の踏み込みで接敵する。
だが、その瞬間ヤツが嗤った。ヤツが自分を護るのを止めたのだ。
私は咄嗟に刃を止めた。フェイトちゃんを斬る訳にはいかないと感じて。そして、致命的な隙を晒してしまう。
閃光の如きプラズマの刃が私を捉える。なんとか障壁と身体で受け止めたが、衝撃まで殺し切れずに吹き飛ばされる。
無様な!!
内心で自分を罵る。
『美海。フェイトの事を頼みましたよ…』
パスを通じてリニスの声が聞こえた。
その瞬間に私の身体は動いていた。魔法で落下するリニスを受け止める。相対していた変質したアルフは倒しているようで、リニスは無事に下へ降りていくが、問題は私が隙を自ら晒した点である。
容赦のないプラズマ攻撃のオンパレードが襲い掛かってくるが、意識を失っているリニスに避ける事は出来ない。当然、私が盾になるしかなかった。
猛攻に防げているとはいえ、口から呻き声が漏れる。威力が洒落にならない。フェイトちゃんの身体への負担は想像を絶する筈だ。気持ちが焦る。
『いい加減になされよ!!』
「!?」
突如キレたバルムンクの一喝に驚く。なんだ?このジジィ、ボケたのか?
『何をやっておられるのか!
そんな事って、助けるとか?いや、必要あるだろ。
『本当にそうですかな!?』
ナチュラルに心を読まれて沈黙する私。
楽観的にしてはいるが、この状況は不味い。切り抜ける事は可能だ。だが…。
『よく思い出してみなされ!過去の貴女の事を!助けるのに必要であれば、非難も恐れずに行動していたではありませぬか!』
私は内心では苦笑いする。やってたね。味方には、とことん不評だったけど。皆、民を護る為ならやむを得ない事と苦笑いして許してくれていた。今思えば、よくあんな真似をして戦っている奴に付いて来てくれたものだと思う。
でも、繰り返すだけじゃ、何も変わらない。あの人達の子供じゃない気がしていた。だから無意識に自分自身に心理的な制限を掛けていた。
でも、今それが必要なのは認めなければならない。このままじゃ、ズルズルと長引き、助ける事が困難になる。
リニスに託された以上、多少非難されるのも覚悟しないと駄目か…。
最低の剣王に戻る。
やる以上は、引っ繰り返す。なのはちゃんもジュエルシードを封印したみたいだし、私がチンタラやっている訳にいかない。
管理局の連中やなのはちゃんも加勢しようとしているみたいだし、余計な枷が増える前に片付ける。
なのはちゃんの原作にない謎パワーは気になるけど。今は自分の事だ。
過去の自分を再現する。培った技術、技能、魔法を。
決別した筈の人生を飲み込む。吐き気がする。だが、止めない。
その間も、身体を絶えず動かし続ける。
ヤツは嫌らしくリニスを狙うが、私は突如
リニスが吹き飛ぶ。あの招き猫の皮は厚い。耐えられる筈だ。
ヤツがニヤリと嗤い、魔法を使う。
プラズマランサー。槍が無数に造り出され放たれる。
私は槍を縫うように回避していく。これはヤツの思う壺だろう。分かっている。観えている。槍を回避した先に罠が仕掛けられていた。
突然、閃光が走る。散々改良がいるとほざいていた魔法だ。
私は、最小限の動きで直撃を避ける。直撃だったら一瞬行動不能になっていた。この場合の最小限は、致命傷にならない程度に避けたという事だ。普通に完全に避けられないタイミングだったから。
シルバーホーンを持った左腕が魔法防御すら抜いて炭化して落ちた。だが、その腕とシルバーホーンが一瞬で再生する。私は気にする事なく、そのままヤツに斬り掛かる。
ヤツは笑みを消して、フェイトちゃんの身体の魔法防御を一部消す。
今度は私が笑う。フェイトちゃんの胴がアッサリと斬り裂かれた。
憑依していたヤツは、目を見開いたまま血を吐いた。返す刀で杖を握る手を埋葬剣で両断する。ここで追撃の手は緩めない。剣を心臓へと突き込む。
流石に簡単にやられて堪るかとばかりに、魔力で傷を止血すると突きを魔力障壁で逸らす。
突きは、勢いを止められなかった場合は隙に繋がる。
すぐさまヤツが砲撃を一瞬でチャージして放とうとした瞬間に、
ヤツの顔に笑みが広がる。何を笑ってる。暫く動けないようにしてやる。
「次は本体を殺してやる。何度でもやってやる」
突きが逸らされた勢いを殺す事なく舞うように、横薙ぎを放っていた。
首が宙を舞った。
現場にいた人間の悲鳴や怒りの叫びが上がる。
フェイトちゃんから生命が消えると同時に、ヤツの気配が霧散する。
そのタイミングでシルバーホーンをフェイトちゃんの遺体に向けて引き金を引いた。
死の痛みや身体を乗っ取られる恐怖、それらがそのまま私に流れ込んでくる。再成。過去の記録を遡りフェイトちゃんがまだ無事だった時のデータを現実の身体に上書きする。
特典で軽減されて、濃縮されてやってこないとはいえ厳しい体験だ。流石に耐えるコツみたいなものは、何度もやって掴んだけど。
フェイトちゃんの目が開き、周りからどよめきが起きる。まさに驚愕といった風情のクロノが非難も忘れて浮いていた。なのはちゃんも混乱しているのか、アワアワとせわしなく動いていた。意味がある行動はない。ユーノも頻りと目を擦っている。
私は周りの反応を無視して、リニスにも再成を使う。リニスもすぐに意識を取り戻し、起き上がった。次はアルフに使ってやる。
「随分と無茶したようですね」
リニスが周りの反応から、私にそんな事を言ったが返事はしなかった。後悔はあるが、必要だと納得してやったのだから目を逸らす気はない。
「結果はいいんだから満足してよ」
「そう…ですね」
リニスは、無事にアルフと抱き合うフェイトちゃんを眺めて呟くように言った。
これが不評だったゾンビアタックだ。本人達は、一度死んだなんて認識はないだろうけど助けはした。気分はよくないが、救えないよりマシだ。
そうでも思わないとやっていられない。
5
クロノ視点
正直、目の前の出来事が信じられない。
謎の力でジュエルシードを封印したなのはに、自ら殺した人間を蘇生させる賞金稼ぎ。
許されるのか!?こんな力が!
脳裏に父の葬儀が過る。何かしらの制限は存在しているだろうが、出鱈目過ぎる。
僕にその力があれば…!無意識に握り締めた拳から血が滴り、我に返った。
僕には遂行すべき仕事がある。私情を殺して使い魔と抱き合う金髪の少女へと歩み寄った。
少女は、あれだけの魔力消費による疲労でフラフラしていたが、しっかり立って歩いている。常人であれば昏倒しているだろうに。凄い精神力だ。
使い魔もボロボロではあるが、こちらを警戒しているのが分かる。
「済まないが。話を聞かせて貰えるか?」
「「……」」
二人(一人と一匹)の顔が強張る。
「管理局にも温情はある。頼む。話を聞かせてくれ」
二人の視線から逃亡を考えているのが分かる。だが、僕も彼女達が逃げられないように少なくなった人員でも配置は済ませてある。
二人もそれは気付いている。公務執行妨害で拘束は出来ればしたくない。こんな子供が自らの意志で次元犯罪を起こす積もりだとは思い難いからだ。操られていた事といい、必ず大人が絡んでいる筈だ。
未来をドブに捨てるような事はするなよ。
「二人共、そこまでです」
不意に賞金稼ぎのレクシアの使い魔が口を開いた。それにしても不細工…いやユニークな使い魔だな。
「その声…!?」
金髪の少女が驚きの声を上げる。知り合いか?という事は…。
僕は、レクシアを睨み付ける。胡散臭い人物だと思っていたが、やはり裏のある人物か!
当の本人は、知らん顔して自分の使い魔と二人を眺めていた。
「どうしたの!?その姿!?」
「…ちょっと、訳がありまして…」
不細工な姿の使い魔が哀愁漂う声で言うが、姿が姿だから物悲しく感じられない。少女の使い魔の方は苦笑いしている。
「兎に角、君達にはアースラまで来て貰うよ」
僕は強引に割り込み話を打ち切らせる。
口裏を合わせるような暇は一応与えないようにしないといけない。
そして、忘れてはいけない一言を口にした。
「レクシア。君にも来て貰う」
6
???視点
「大丈夫か?それにしても、寝た子を起こすとはマゾか?」
精神を自分の身体に戻した瞬間に嫌味を言われる。
「感謝して貰いたいね。君もあのままじゃ詰まらないだろ?」
「まあな」
取引して私が身体を上げたというのに、酷い話だね。
そんな事で恐れ入ったりしないけどね。
更に口を開こうとした時、通信が入る。まあ、誰からかは考えるまでもないけどね。
通信に応じると、予想に違わぬ人物が大写しで現れた。映像の調整をキチンとして欲しいね。
『どういう事なの?あれは!』
「どういうとは、どれの事かな?」
しらばっくれると、プレシアが怒気を露に叫ぶように喚き立てる。
『フェイトは殺された筈でしょ!?なのに、生き返った!あの女を捕まえて、あの子を!」
「まあ、落ち着き給えよ。彼女の魔法は二十四時間以内でないと使えないんだ。君の子には使えないよ」
『知っていたのね!術式を手に入れる価値はあるわ!偉そうにしていた癖に失敗したのだから、貴方にも協力して貰うわよ!』
「アルハザードは諦めるのかな?」
『材料は多い方がいいわ!当然行くに決まっているでしょ!だから、ジュエルシードも手に入れる!いえ、私がやるわ。もう、貴方は引っ込んでいて!』
そして、通信が乱雑に切られる。
「全く、余裕がないね」
肩を竦めて私は苦笑いする。
「どうするんだ?引っ込むのか?」
「ふむ。どうするかな?」
お互いに楽しそうに笑う。
ちょっかいは出すかもしれないね。
3話辺りから書き直すか、とか悩みましたが続ける事にしました。
頑張って投稿は続けていく積もりではあります。
次回はいつに投稿出来るやら…。
お付き合い頂ければ幸いです。