魔法少女リリカルなのは 黒騎士の憂鬱   作:孤独ボッチ

6 / 13
 今回は少し短いです。
 それではお願いします。


 


第5話

              1

 

 あっという間に運命の三年生に進級してしまった。

 その間、せっせと勘を取り戻すべく、珍しく頑張っている日々が続いた。

 リニスは、私の守護獣というより、両親の手先となっている感が強い。

「今日は、ここまでにしましょう」

 そんな事を言って、サッサと鍛錬を終えてしまう。

 精々六時間位しかやってないんだからさ。もうちょっと付き合ってよ。

 ベルカ時代なんて出来るまで寝れないとか、珍しくなかったんだから。

 まあ、ある程度はどうにかなったんだけどね。

 

 そして、今日も今日とて鍛錬である。

 相手はリニス…ではなく。次元犯罪者。

 今回の相手は人身売買組織。若い女、子供を拉致して売っている連中。

 遠慮は無用な連中だが、殺す訳にはいかない。

 ベルカ時代なら、サーチ&デストロイで片が付いたんだけどね。

 法律って、面倒な側面があるって思う時がくるとは思わなかった。

 精霊の眼(エレメンタルサイト)で攫われた人達の位置を確認済み。

『リニス。先に攫われた人達を確保する。私が先に突入するから、後から

突入して逃げる連中を確保』

 念話で守護獣であるリニスに指示を飛ばす。

『分かりました』

 実戦訓練はリニスに不評の為、返事も少し不機嫌な声だ。

 だが、女子供に手を出す連中には、怒りを感じているようで協力自体は

してくれている。不機嫌なのは、実戦訓練の名目で行われる金稼ぎだろう。

 私は素早く建物で攫われた人達の場所へ、最短で行ける場所へ陣取った。

 血中から、剣と金稼ぎするようになって造ったシルバーホーンを取り出す。

 左手でシルバーホーンを構え、魔法を使用する。

 雲散霧消(ミストディスパージョン)で壁を分解し、静かに分解された壁が砂状に崩れる。

 私は躊躇なく、突入していく。

 そして、私は壁を分解しながら、真っ直ぐに攫われた人達の元へ向かう。

 最後の壁を分解した時に、悲鳴が上がる。

「大丈夫だ。助けにきた。私の後に付いてきて」

 因みに、私の今の姿は大人バージョンだ。

 子供がこんな事言っても、言う事を聞いてくれそうにないから。

 騎士甲冑もミッドチルダに合わせて、軽鎧にコート姿だ。

「考えている時間が惜しい。助かりたい奴だけ付いてきて」

 私は冷酷に言った。

 私の言葉に弾かれたように全員が立ち上がる。

 子供が泣きそうになっているが、若い女性が泣かないように言い聞かせ

ている。まあ、泣いてもいい。どうせ、もう見付かっているから。

 そんな事を考えていると、早速魔力弾の弾幕が私に集中する。

 後の攫われた人達のみ魔法でガードして、自分にくる魔力弾は全て剣で

無効化していく。この時も丁寧に、そして正確に素早く振る事を心掛ける。

 弾幕が弱まる瞬間に、前に出る。

 案の定、弾幕で足止めし、本命の接近戦タイプがこちらに向かってきて

いた。弾幕が弱まったとはいえ、それでもかなりの攻撃である。それを

ものともせずに前に出た私を見て、接近戦タイプの敵は目を見開く。

「邪魔だ」

 敵の手には槍に双剣、ナックルと様々だが、使い手として二流以下。

 私は即座に、そう見抜いていた。

 だから、基礎訓練通りに剣術の技量のみで剣を振るう。

『魔力強化すれば子供でも大人と遜色ない一撃が打てるのです。しかし、

その後はどうなります?止めるのに、又は再度攻撃するのにどれ程の魔力

が掛かりますか?それだけ魔力が無駄になるのですよ』

 パナメーラ師の言葉が思い浮かぶ。

 自身の身体の使い方が分かっていなければ、魔力強化も意味がないのだ。

 飛燕のように剣が一切の無駄なく、力を失う事なく銀光の軌跡を残し、

通過する度に敵が倒れる。

 勿論、非殺傷設定だから死ぬ事はない。

 まどろっこしいし、甘いが仕様がない。

 一度も武器で打ち合う事なく、敵が全て地面に倒れ伏した。

 本来なら、いくら実戦訓練といってもこの程度の連中では鍛錬にならない

が、縛りプレイのように魔力を極力使わないようにして、やっている。

 サッサとアジトから出ると、魔法障壁で攫われた子達を護る。

「ここにいなさい。残敵を掃討したら戻る。大人しくしてて」

 私はそれだけ言うと、返事を聞かずに踵を返す。

 

 戻ると既にリニスが始めていた。

 派手にアジトが壊れている音がするが、気にする必要はないだろう。

 私はリニスと挟み撃ちの形で人身売買組織を制圧していった。

 

 そして、最後の扉を蹴破ると、丁度組織のトップが逃げ出すところだった。

 分かってたけど、秘密の通路から外に出る気らしい。

 行動が遅い奴だな。だけど、そっちは地獄だと思うけどね。

 案の定、白い大きな獣の足がトップを薙ぎ払った。

 

 あのトップが逃げ遅れた理由は、証拠になりそうなデータを消していた

からのようだ。だけど、残念。私の得意分野なんだわ。

 リニスが白い犬のような戦闘形態で、倒した敵を睥睨している。

 正体がバレないようにリニスには、特殊なデバイススーツを着用させて

いるので、性能試験もこれでクリアだね。

 勿論、倒れた敵全員意識などないが、余程頭にきているようだ。

 子供達をフェイトちゃんにでも重ねているのかもしれない。

「証拠の確保は出来そうですか?」

 リニスが敵を睥睨したまま、私に声を掛ける。

「制圧が早かったからね。これなら復旧出来るよ」

 私は連中がデリート中だったコンピューターのデータを復元している

最中だ。ベルカ時代に使う事がなかった特典が、今役に立っている。

 私は最後にキーを軽く叩くと、復元されたデータが姿を現した。

 それを手早く保存する。

「完了」

「お疲れ様です」

『大分、勘が戻ってきましたな』

 私の言葉にリニスとバルムンクがそれぞれ言う。

 私は頷くと、リニスを振り返って言った。

 

「それじゃ、()()()()()()()()?」

 

 私は、実戦訓練をやるだけでなく、小遣い稼ぎもしていた。

 管理局の手配している連中に掛けられた賞金で。

 そう。所謂、賞金稼ぎという奴だ。

 

 

              2

 

 連中を押っ取り刀で駆け付けてきた管理局に引き渡してやる。

 まさか、同じく管理局にとって害になる奴が、何食わぬ顔で賞金稼ぎを

しているとは思うまい。

 

 場所が変わって管理局・本局。

 私は今回の事に対しての説明を求められ、態々出向いていた。

 目の前には青筋を浮かべて不機嫌全開のお人がいる。

「事情は分かりました。…でも、言いましたよね!!()()()()()()()()

だけでいいって!!」

 賞金を払ってくれる担当部署の局員・ジーン・トワイトさんである。

 最初は、捜査員が説教していたが、無駄と分かったのか怒るのも彼任せ

になった。

 本来の賞金稼ぎは、犯人を検挙までしない。

 だって私人だものな。

 アジトを通報して賞金を貰うのが常道だ。

 だが…。

「サッサと突入しないと、攫われた人達が出荷されたかもしれないんだ。

 なら、行くしかないでしょうが」

 事実、危ないタイミングだった。

 買われた先で洗脳などされていたら、社会復帰にどれだけ時間が掛かる

か分からない訳じゃないだろう。

 洗脳されると魔法で即回復とはならないのだ。

 根気強く精神科の医者が治すしかない。

 トワイトさんが、重い溜息を吐く。

「本来なら逆に逮捕される案件なんですよ?もっと気を付けて下さい。

 それに、そんなに正義感があるなら管理局に入って下さいよ。前から

お誘いしてるじゃないですか」

 人手不足が深刻な状況なのは知っている。

 賞金稼ぎとして関わっていてさえ、察せられる位だ。相当なものだ。

「肌に合わない」

 それに尽きる。

 トワイトさんが、更に重い溜息を吐いた。

「兎に角、今回は賞金から保釈金を引くしかありません。異議は認められ

ないでしょう。理不尽でしょうけど、これが私達に出来る精一杯です」

 本来なら逮捕だが、それを省略して保釈金を払って出た事にしてくれて

いるのだ。向こうも面倒な手続きを省略出来て、私は無駄な時間が掛から

ないので、まあWIN-WINと言っていい。

 好意は無駄にはならない。

 いつもこの調子では不味いけど。

「有難う。差っ引いた残りは、いつもの口座に」

 トワイトさんが返事の代わりに溜息を吐いた。

 組織一つ丸々だ。

 残りの幹部や関連組織、買い手まで突き止めたのだ。

 かなりの額になる。余裕で差っ引いても金が残る。

 

「お待たせ」

 私は外で待っているリニスに声を掛ける。

「…早く出ましょう」

 リニスにしてみれば、居辛い場所だろうから流石にいつもの落ち着き

がない。

『堂々としてればバレないよ』

 招き猫のアンバランスな愛らしい後ろ姿に、念話で声を掛ける。

『私はそこまで肝が太くないんですよ!!』

『ふん。だらしのない奴よ』

 バルムンクが呆れた声で感想を述べる。

『普通の感覚ですよ!!』

 招き猫の顔に青筋が浮かぶ。

『まあまあ、それで使い心地は?』

 リニスの偽装も兼ねたデバイススーツの調子を尋ねる。

 幾度か実戦を熟したものの、不具合が出ていたら事だからね。

『魔力の消耗が戦闘形態になるとキツイですね』

『魔力の自動吸引スキームを見直すか』

 デバイスにやらせれば多少負担も減るだろう。

『それよりもデザインの是正をお願いしたいんですが?』

『却下』

 念話なのに、不満気な唸り声が身体から漏れているように感じる。

 そして、不意に私は立ち止まる。

 突然、立ち止まった私にリニスが訝し気な顔をする。

「どうしました?」

「ごめん。先に帰ってて。換金してくるの忘れたわ」

 指定口座から引き出し、地球の日本の金に換金する必要があったり

する。換金出来る場所は、かなりダーティーな場所だったりもするが、

仕様がない。管理局にとって地球は管理外世界なのだから。

「待ってますよ?」

 リニスが言うが、それでは困る。

「母上の手伝いがあるでしょ?先に戻ってよ。大して時間掛からない

からさ」

 渋るリニスを帰らせ、私は管理局内の食堂へ向かう。

 何故、換金場所に向かわないのか。

 勿論、換金云々は口実に過ぎないからだ。

 ここだけは用のある人物は、一般人でも使用出来るようになっている。

 何も私が賞金稼ぎなどして、管理局に関わっているのは金稼ぎの為や

ら、実戦訓練の為だけではない。

 ある人物が念話圏内に入ってくるのを、ジッと待っていたのだ。

 滅多に自分の執務室と転送ポート以外に来ないから、時間が掛かった

が漸くだ。

 

『初めまして。()()()()()()()()()

 

 

              3

 

 :グレアム視点

 

 通常業務を熟しつつ、目的の為に動く毎日に不満はない。

 私の身体が決着まで持てばそれでいい。

 通常業務を終わらせて、残り時間を進捗状況を確認し、ハイスピード

で処理していく。

 だが、年には勝てないもので、身体が疲労を訴えていた。

 老眼鏡がないと、ウィンドウを睨むのも辛い。

 老眼鏡を外して、目頭を揉む。

「お父様。最近、休んでいないじゃありませんか。少しでもいいので、

休んで下さい。あとはロッテと私でやっておきます」

 アリアが何時からいたのか、背後から声を掛けてきた。

 いかんな。熱中し過ぎて気付かなかった。

 本来なら休んでいる暇などないのだが、このまま続けてもいい結果に

繋がらないだろう。

 私は一つ溜息を吐いて、頷いた。

 

 娘達にすぐに戻ると念を押して執務室を出る。

 本来の業務ではない作業だが、過去の功績の貯金のお陰で何も言われ

ずに済んでいる。

 市販の紅茶を飲む気になれずに、食堂まで足を延ばす事にした。

 私は英国人にあるまじき事に、市販の紅茶擬きでも平気だ。

 いや、慣れたというべきだろう。

 事件を抱えていると、それを気にしている場合ではないからだ。

 だが、今回ばかりは少しはマシなものが飲みたくなったのだ。

 食堂のものの方が人が淹れている分、マシな出来栄えだ。

 

 紅茶を受け取り、適当な場所に腰を下ろす。

 味わって飲むには物足りないので、胃に流し込むような飲み方になって

しまう。英国人とは掛け離れてしまったな。アルが見たら、けしからん

というだろう。結局、イギリスに帰ったのに本場の紅茶を飲み損ねたの

が痛い。

 そんな益体もない事を考えて飲んでいると、突然念話が頭に流れ込んで

きた。

『初めまして。ギル・グレアム提督』

「っ!?」

 辛うじて声を上げなかったが、過剰に反応してしまった事で周囲の目

を引いてしまった。

 私は何でもないというように、穏やかに微笑んで集中した視線に対処

した。少しずつ視線が外れていく。

 関係ない人間からの念話など、本来はシャットアウトしている筈だが、

どうやらそのプロテクトをいとも簡単に突破したようだ。

『貴方の守護獣とは会っていますがね』

 それで正体に察しがついた。

 それにしても守護獣か…。

『君は、あの騒動の時の女性かね』

『ええ。まぁ』

 アッサリと認めた。

 どういう積もりなのか。

『大胆というより、随分と迂闊なように見えるがね』

『そうでしょうか?あそこは管理外世界です。あそこで起こった事に

関しては、貴方に逮捕権はない』

 ついでに証拠は娘達の証言のみ、それも承知している訳か。

 あのロストロギアの残骸からは、何も分からなかったからな。

『それで、何か用なのかね?』

 私は諦めて本題を促す。

『提督のなさろうとしている事に関しての提案ですよ』

 今度は表面上は何も変化を見せずに済んだ。

 これも年の功という奴だ。

『さて、この年でやる事がまだ減らないからね。どういった事を指し

ているのかな?』

 鎌かけかもしれないから冷静さを保つ。

『こちらも率直に。闇の書の件ですよ』

 言葉を失ってしまう。

『八神はやて。現在の闇の書の主。貴方が確保している子ですね?

 率直と言ったので、ズバリ言います。協力しませんか?』

『協力?』

 はやての事まで掴まれているとは…。

 冷や汗が流れる。

 この女性も闇の書の封印を望んでいるという事か?

 それとも、私を強請り、闇の書を悪用する積もりだろうか?

『私にプランがあります。貴方のキャリアを台無しにする事なく、闇の書

()()()()し、因縁に決着を付ける事が出来るとしたらどうです?

しかも、八神はやてを生贄にする事もない』

『なっ!?』

 

 完全破壊だと!?

 しかも、はやてを犠牲にする必要がない方法!?

 

 そして、彼女はプランをザっと話してくれた。

 まさか、そんな事が出来るというのか…。

『いきなりこんな事を言っても信じられないでしょう。まだ若干の時間が

ある。ゆっくりと信頼を深めるとしましょう』

 彼女は今、賞金稼ぎとして本局に出入りしているらしい。

 最近、噂になっている賞金稼ぎが彼女だったとはな。

 大胆不敵もいいところだ。

 安易に手を取るのは危険だ。

 例え、それが喉から手が出る程のものであってもだ。

 

 取り敢えず、連絡手段を決めて彼女は念話を切った。

 

 

              4

 

 流石に有能な提督だけあって、老練な魔法の使い手だ。

 ギリギリまでこっちに来てくれないと、プロテクトに干渉出来なかった。

 勿論、実力的には強引にやれば出来るが、それで管理局に張り巡らされた

センサーにキャッチされ、管理局と揉める事にでもなったら最悪だ。

 提督とのホットラインは、持てた。

 今回はそれでよしとする。

 信用を得る算段はある。

 旨そうな餌をぶら下げられても、淡々と()()()()

 お互いに後ろ暗い秘密を共有しているとはいえ、どちらも決定打に欠ける。

 言い逃れはいくらでも出来るし、証拠はない。

 だからこそ、こっちに変な下心がない事を証明するのに、うってつけの事

がもうすぐ起きる。何しろアレは汎用性の高いロストロギアなのだから。

 提督を利用するより、着服した方が簡単だ。

 それを引き渡せば、多少の信頼の担保にはなる。

 あとは時間が迫れば、自ずと答えは出るだろう。

 そう、向こうは出来るならはやてを犠牲にせずに済むなら、無事に済ませ

たいと本音を見せている。誰も好き好んで小さい女の子を犠牲にしたくない

だろう。

 信頼は多少で十分。それだけで、取引は可能だ。

 あの提督は、はやてに罪悪感を持っている。

 闇の書の封印に関しては、あくまで封印であり、解除が可能という欠点がある。

 完全破壊出来るならしたいし、はやても助けられるとあれば、時間が迫れば多少

怪しかろうが、私の手を取るだろう。

 どうせ、リニスの関係でアレの案件に首を突っ込む事になりそうなのだから、

最大限利用させて貰う。

 それがなくても、自分の家が燃えているのに、居眠りする程呑気ではない。

 

 私は、これ以降、闇の書を存在させる気はない。

 はやてには恨まれるだろうが、人の恨みを気にして剣など振れないのだ。

 

 

              5

 

 :プレシア視点

 

 懸案事項が片付いたが、肝心の情報はまだ届いていなかった。

 だが、あと一息だ。

 そう考えて、苛立つ気持ちを抑える。

 それが功を奏したのか、待っていた連絡が届いた。

『待たせたね。漸く発掘が終了し、全てを回収したとの連絡が入った』

 私の身体の状態から、これがラストチャンス。逃す訳にはいかない。

 それをおくびにも出さずに、素っ気なく頷く。

『通るルートは、送金と同時に送る』

 これもいつも通り。

 今更、不快に感じる事もない。

 ただ、私を裏切れば、どうなるかを分からせているから、持ち逃げの心配

はない。

 私は、隠し口座に金額を送金する。

 暫くすると、こちらに輸送ルートの詳細が送られてきた。

『どこでどうするかは、そちらの自由だ』

「勿論、迷惑は掛けないわ」

『信用しているよ』

 お互いに信用とは無縁だろうに、お互い笑顔で通信を切った。

 ただ利と実力で繋がっているだけの間柄に、信用などお笑いだ。

 

 私は輸送ルートから、()()()()()()()()()()()()()、慎重に魔法式を構築

していった。

 

 

              6

 

 小学校に登校して、周りの知り合いに適当に挨拶して、机に教科書を

仕舞っていく。

 昨日のどんな番組を観たかとか、他愛のない会話が周りで繰り広げられる。

 私は、それに参加せずに、暇つぶしの本を広げる。

 適度にクラスに馴染んでいればいい。 

 普通なら駄目な手だが、私には魔法がある。それも高度なテクニックが。

 気付かれない程の魔力で、思考を誘導するなどお手の物だ。

 だが、問題は存在している。

 

「おはよう!アリサちゃん!すずかちゃん!」

 

 転生者の宿命なのか、これ。

 そう、同じクラスなんです。

 なのはちゃん、アリサちゃん、すずかちゃんと。

 

 こんなテンプレいらん。

 

 

              7

 

 :プレシア視点

 

 慎重に次元航行船の動きを見守る。

 もうすぐ魔法を施したポイントへ船が到着する。

 あくまで事故でなくてはならないのが面倒だ。

 もう、どの次元世界にも未練はないのだから、あの提督への配慮などする

必要はないが、騒ぎを大きくして変に邪魔をされては堪らない。

 それにあの手の俗物は、自分に被害が及ぶとこちらを売るかもしれない。

 不確定要素は排除しておくに限る。

 

 集中力を極限にまで高め、いつでも魔法を発動出来るように備える。

 あと少し。

 きた。

 魔法を発動する。

 突如としえ空間が乱れ、プラズマが走る。

 船体が大きく揺れている。

 ロストロギアの保管場所へ向けてプラズマを走らせる。

 ここからだ。

 創った穴からロストロギアがこぼれる。

 それを散らばったように見せ掛けて、回収する。

 最後の仕上げだ。

 

 だが、上手くいかなかった。

 

 突然、身体が悲鳴を上げる。

 口から熱い液体が、逆流するように血を咳と共に吐き出す。

 当然、集中が乱れ、回収する筈だったロストギアは、見せ掛けでなく、

本当に次元の海に散らばった。

 

 発作が治まった頃には、ロストロギアは海に消えていた。

 舌打ちと共に、杖を床に叩き付ける。

 本来なら、ここで全て終わる筈だったのに…。

 だけど、落ち着きなさい、私。

 最悪に備えはあったわ。

 あの人形に関わらないといけないのはストレスだけど、こんな時の為

に飼っていたのだ。

 落下した場所を探ると、見事に管理外世界に落ちたようだ。

 無人世界にでも落ちてくれていれば最高だったが、落ちたのは人がいる

世界だ。97管理外世界。魔法文化がないところだ。これなら、あの人形を

使えば、楽に回収出来る。

 私は内心の苛立ちを押し込めると、人形を呼んだ。

 

「フェイト。話があるわ。すぐに来て頂戴」

 

 

 

 

 

 




 次回から原作に突入します。
 美海は先を見据えて動き出しました。
 相変わらず、彼女は家族を守る事第一です。
 これからどう変化するか、楽しんで頂ければ
 幸いです。

 かなり時間が掛かりますので、気長にお待ち
 頂ければ…。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。