魔法少女リリカルなのは 黒騎士の憂鬱   作:孤独ボッチ

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 比較的、適度な長さ…なのかな?と思います。
 それでは、お願いします。


 


第6話

              1

 

 いつ頃、ロストロギアが落ちてくるか予想はつく。

 だが、ずっと空を監視するのも怠い。

 でも、今は苦労をするべきところだ。

 あれから少しは、前世の技術はマシな完成度になった。

 元の子供の状態と、賞金稼ぎをやっている大人形態で別けて訓練するという

面倒をやった甲斐もあった。そう思いたい。

 無駄な訓練時間の浪費などと考えてはいけない。

「美海。星を観る趣味がある…訳ないですよね?」

 横で招き猫が失礼な発言をする。

 確かにないけど。

 こういう時に便利なのは…。

「勘かな?最近、嫌な予感がしてね」

 招き猫ことリニスが胡散臭そうに私を見る。

『臣下であれば、主を信じて待てばよい。なっておらんぞ、駄猫』

 血液の中からバルムンクが立派な事を宣う。

 口を開けば、ムカつく苦言しか最近言わないアンタが何を言う。

「長年、放置されて文句言っていた剣が言っても、説得力ありませんよ」

 リニスも皮肉っぽく応戦する。

『「……」』

 互いに無言で圧を掛け合っている。

 最近、こいつ等、仲がいいんじゃないかと思い始めてきた。

 好き勝手な事をしている奴等に青筋を立てつつ、精霊の眼(エレメンタルサイト)で空を監視して

いると、祈りが通じたのか魔法の反応が爆発的に高まり、空から何かが落下

してくる。

「きた!!」

『「っ!?」』

 私の鋭い声に、リニスとバルムンクが反応する。

 リニスが空を見上げ、何かが落下してくるのを確認しているようだ。

「ロストロギア!?」

 その可能性が高い反応だ。

 おそらく、魔法の遠隔攻撃による事故に偽装した襲撃であった為に、ロスト

ロギアが魔力に反応して、分かり易くなっているのだ。

 バルムンクは、私を通して空を見ているだろうが、無言で警戒しているよう

だ。いつもこのくらい黙っているといい。

 内心で文句を言っていても、私は既に飛び出している。

 高速でロストロギア・無印で重要アイテムジュエルシードに迫る。

 某願いを叶えてくれる玉みたいに、その場で掴んでしまえば面倒がない。

 探す手間が省ける。

 この為に、今まで守護獣の招き猫に色々言われながらも、監視を続けて

いたのだ。

 グングン目標に近付いていく。

 もう少し。一つ目に手を伸ばした時だった。

 晴れているにも拘わらず、突如として稲妻が走った。

 明らかに魔法によって発生した稲妻。

 落ちるところまで、監視してたのか!暇人か!?

 深く考えるとブーメランだろうが、私は大真面目にそう思った。

「プレシア!?」

 リニスが覚えのある魔力に反応する。

『呆けるでない!!』

 バルムンクの叱責が飛ぶ。

 稲妻がジュエルシードを護るように走る。

 私は舌打ち一つして、誘雷の魔法で稲妻を逸らしつつ、血液中からシルバー

ホーンを取り出す。

 魔法式の発生場所を特定。

 照準。

 引き金を引く。

 稲妻が魔法式をバラバラにされた事で無力化される。

 だが、それと同時に分かった。

 精霊の眼(エレメンタルサイト)で監視していなければ、気付かなかった。

 魔力を似せているだけで、これはおそらく本人の物じゃない。

 パターンを似せれば、それっぽく仕上げる事は出来るが、私は兎も角リニス

まで騙されるレベルとなると、犯人は限られる。

 向こうも気付かれた事は察したようで、取り繕う事を止めた。

 複数の魔法式が同時に別の場所で展開され、空を狂ったように魔力が渦巻き、

大気が乱れる。

「こ、これは!?」

 リニスも流石に、おかしいと気付いたようだ。

「リニスにとっては、朗報になるか分からないけど、これは元の主人の仕業

じゃないみたいよ」

「では、誰が!?」

 さてね。

 私は稲妻を回避しながら、魔法式の発生場所を読み取り、立て続けに魔法

式を破壊していく。

 リニスも自らの雷で迎撃しつつ、ジュエルシードを追う。

 私は空中に足場を作成し、それを器用に踏んでドンドン加速する。

 片手で稲妻の魔法式を破壊しつつ、血液中から精霊鋼の剣を取り出すと、

魔力を籠めて一気に振り抜いた。すると、稲妻が一気に斬り飛ばされた。

 傍から見たら、冗談のような光景だろうが、私は稲妻であろうが斬れる。

 リニスが驚いたように、私を振り返る。

 私は、それに反応する事なく、下を見て舌打ちする。

 稲妻にかまけている間にジュエルシードが落下してしまったのだ。

 ジュエルシードが稲妻の影響でどこに落下したか、分からなくなったのだ。

 稲妻は、ジュエルシードの落下場所を特定させない為に、ある物は飛ばし

ある物は弾いて、落下場所を変えていた節がある。

 これで原作知識でジュエルシードを探すという手が、どこまで通じるか

分からなくなった。

 だが、やられっぱなしではない。

 私は監視しているであろう犯人に向けて、剣を血液中に収納すると、挑発

するように、指の間に挟まっている二つのジュエルシードを見せ付けた。

 魔法式に注意を向けていると見せ掛けて、物体を引き寄せる魔法で、回収

出来る物はしていたのだ。

 リニスも舌を出すと、そこには一つジュエルシードが輝いていた。

 だが、相手は挑発に乗らずに、魔法の痕跡を消し去ると、退いていった。

 空にあれだけ渦巻いていた魔力が、跡形もなく消えている。

 制御能力も化物クラス。

『退いたようですな。退き際も見事ですな。普通は勝っていると踏み込んで

しまうものですがな』

 バルムンクが言葉とは裏腹に、不機嫌そうに言った。

「あれは…プレシアではなかったのですね?」

 リニスが深刻な声で、私に訊く。

「まあ、私は貴女の元主の魔力を知らないけど、偽装していたみたいだね」

「……」

 リニスが考え込む。

「まあ、関わりがないって事はないだろうから、会うんじゃない?元主に」

「そうですね…」

 リニスは複雑な表情だ。

 まさか、ここまで早い再会になるとは思っていなかっただろう。

 だが、警戒すべきは、魔力の偽装であれだけの事をやってのけた相手。

 偽装するだけで、魔法の工程が増える訳だから、負担は相当なものの筈だ。

 にも関わらず、相手は完璧に制御して見せた。

 その手腕は、プレシア女史を下手をすれば上回る。

 

 全く、楽はさせて貰えないものだ。

 

 

              2

 

 ???視点

 

 少しロストロギアをバラ撒く後押しをして、仕事は終了。

 その積もりだったが、思わぬ事が起こった。

 すぐに回収しようと動く者があったのだ。

 まだ、私が表立って動く訳にはいかない。

 故に、プレシアの魔力を偽装して稲妻の雨を降らせた。

 結果的に、バレてしまったが、そんな事は些細な事だ。

 ()()()()()()()()()()()

 あんな事が出来るのは、数多ある世界で過去現在でも彼女しかいない。

 ああ!我が宿敵よ!

 楽しいダンスがまた踊れるようだ。

 三つ程回収されてしまったのに、忍び笑いが漏れる。

「しかし、よかったのですか?」

 我が子と呼ぶべき女性が、私に問う。

 彼女は、ずっと私の傍でデータを記録してくれていたのだが、堪り兼ねて声

を掛けたのだろう。彼女は合理的に事が運ぶのを好むからね。今回の件は無駄

だらけに感じるだろう。だが、楽しむ事も人間にとって重要な要素だ。思考の

柔軟性もなければね。これからの教育では、そこも教えていかないといけない。

 おっと、そろそろ答えて上げないとね。

「何がだい?」

「素直に回収させればよかったのでは?」

「ああ、プレシアにかい?」

「はい」

 私はニヤリと笑う。

「それじゃ、()()()()()()が動いているところが観れないじゃないか」

 あの子も、私にとって重要な成果の一つなんだ。

 キチンと実用に耐えると証明されるか。これは重要な事だ。

 プレシアの事だ。ここで回収出来てしまえば、あの子を用なしとばかりに

始末し兼ねない。全く、勿体ない話だ。ならば、こちらで、あの子の動く理由

を作ってやればいい。

 仕事の結果は知りたいのが、人情というものだよ。

「成程、データ取りですか」

「君は、まだ硬いな。もっと人間らしさを覚えなさい」

「…努力します」

 表情を変えずに、彼女が頷く。

 だけど、私は気付いている。返事に間があったね?それこそが人間としての

感情のある証。ゆっくりといこう。時間はまだあるのだから。

「さて、私達の娘と我が宿敵。どれ程、食い下がれるだろうね?」

 私は、こちらにロストロギアを見せ付ける彼女を見て、楽し過ぎて笑った。

 

 そして、私はラボにいる()()()()に振り返る。

 

「君も、取引損にならなかったようじゃないか?こんな形とは思わなかったが

ね。君にとっては最良か」

 

 もう一人は、壁に背を預けたままニヤリと笑った。

 

 

              3

 

 結界は大事だ。

 こんな魔法文化のない世界だと。

 ただ回収して終了すると高を括っていた。

 それなのに、遠慮なく稲妻が雨霰と降り注ぐ事になり、早々に撤退する羽目

になった。間抜けな結果でも甘んじて受け止めないといけない。

 この世界でも勘の鋭い者は、気付く可能性が高い。

 例えば、なのはちゃんとか。

 最悪、取りこぼしはそのまま地上に拾いに行けばいいと思っていたが、原作

通りに落ちてくれなかったので、何度も言うが諦める。

 まあ、サンプルが手に入ったからよしとする。

 

 家に戻って、予定通りにグレアム提督に連絡を入れる。

 勿論、変身済みで。

 繋がるまでに少し時間が掛かるのは、向こうが忙しいのだから仕様がない。

『管理局に通報するのですか?』

 リニスが繋がった時の為に、念話で訊いてくる。

『そりゃそうでしょ?何しろロストロギアなんだから』

 私はなんて事ないように言ったが、リニスは例によって胡散臭そうに目を

細めた。

『主の成す事に一々五月蠅い奴よ』

 バルムンクは、退屈なのか参戦してリニスをイジる。

 リニスは青筋を浮かべて、黙り込んだ。

 この性悪の剣は、言い返せば喜ぶといい加減悟ったのだろう。

 漸く繋がり、グレアム提督がウインドウに映し出される。

『済まないね。出るのが遅れてしまった』

 なんの悪びれもない顔だが、別に気にしない。

「いいんですよ。突然の連絡ですからね。多忙な提督と連絡が取れるだけ

よしとしたものです」

 嫌味ととられ兼ねない言葉だが、向こうも気にしない。

『それで、どういった用件かね?』

 私は、ジュエルシードの映像を向こうに表示する。

 グレアム提督は、眉を顰めて映像を観た。

「実は先程、こちらの世界にそれが降ってきましてね。三つ程回収したのです

が、どうにも危険物のようなので、連絡したのです」

 グレアム提督は、私が送り付けた映像をジッと睨んでいる。

「これについて、心当たりが?」

『全ての仕事を把握している訳では当然ないが…。少し待って貰えるかね?』

「勿論です」

 グレアム提督は、何やらコンソールを高速で操作する。

 目的の情報にアクセス出来たのか、顰められた眉に更に皺が増えた。

『つい最近に発掘された物のようだ。管理局に知らせが有り、回収に向かった

ようだが…流石にまだ、それからの情報はないな』

 私はグレアム提督の次の言葉を待つ。

『こちらで回収に向かった艦に問い合わせよう。こちらから連絡するよ』

 そう言って、グレアム提督は通信を切った。

 

 私は、フッと息を抜く。

 だが、リニスがジト目で私を見上げる。

「美海。なんだか悪い顔をしていますよ」

 失礼な。

 非常にいい事をしているでしょうが。

 

 招き猫のジト目という、得難い経験をして待っていると、すぐに返信が

返ってきた。ウインドウを表示すると、グレアム提督は渋い顔だった。

『今、調べて貰った。輸送任務中に次元嵐に巻き込まれ、()()()()()()()()

ロストロギアをロストしたとの事だ』

 グレアム提督の言葉で、容易に担当者が事故を主張しているのが窺えた。

 襲撃されたとなれば、それを奪われたに等しい。

 出世に響くミスだろう。

 だから、あくまで自然災害によるものと主張している訳だ。

 多少しか変わらないと思うが、少しでも度合いを軽くしたいのが人情だろう。

 管理局員としては、グレアム提督が渋い顔なのも仕様がない。

 ピンポイントでカーゴ部分を稲妻が撃ち抜いたなんて、どう考えてもおかしい

だろうと気付くだろうに。

 次元航行船が、その程度で穴が開くかという話だ。

 重要な品を運ぶ艦なのだから、そこら辺は頑丈に造られている筈だ。

 明らかに自然の稲妻ではあり得ない。

 だが、輸送責任者は、それを認めないだろう。

 何故だか知らんが。この一言にグレアム提督の感想が透けて見える。

「で?どうなります?」

 私は内心でニヤリと笑いつつ、グレアム提督の意向を確認する。

『優秀なチームに、私の伝手ですぐに動いて貰う事にしたよ。それでだが、君

の回収した三つを、そのチームに渡して貰いたい』

「信用が置けますか?輸送ルートは普通…」

『分かっているよ。それに関してはこちらで対処する必要があるだろう。信用

面は私が保証するよ。ハラオウン。聞いた事があるんじゃないかな?』

 リンディ・クロノ親子か。原作通りだ。それに評判は聞いている。

「最年少で執務官になった英才だとか。不甲斐ない結果を出す管理局内で、

一人気炎を吐いているらしいですね」

 グレアム提督が苦い顔で一瞬黙る。

『容赦のない意見だが、彼等の評価はその通りだ。そこで頼みたいのだが…』

 きた。

 そう、彼はこの件を放置出来ない。

 既に時期的には、はやては闇の書を所持している。

 原作では影響が出なかったし、彼も関知していなかった部分もあっただろう

が、今回は私が教えている。

 下手をすれば、はやてがジュエルシードを使うなどという最悪の事態は、

起こり得る。無視は出来ない。

『出来れば、他の散らばったジュエルシードもチーム到着まで、回収を継続

して貰えないだろうか。本来なら、外部に頼むのは規則に反するが、緊急時

という事で、私が話を通すよ』

 パーフェクト。

「信頼して頂いたのならば、応えないといけませんね。お任せを」

 私は神妙な態度で、依頼を快諾した。

 

 これで、公的に大手を振って動ける。

 

 

              4

 

 グレアム視点

 

「いいんですか?リンディ提督もいい顔をしませんよ?」

 通信を切ると、秘書としての役割を熟すアリアが懸念を伝えてくる。

「リンディなら呑んでくれるだろう。寧ろ、クロノが嫌な顔をするだろうな」

 リンディは、人手が足りない現状をキチンと認識している。

 多少の規則違反も、上手くやる手腕を持っている。

 そんな事は、アリアも承知している。

 本当に言いたい事は、別だろう。

「ハッキリと言ってくれて構わんよ」

 だから、私はアリアに促してやる。

 懸念は出来る限り解消すべき事だ。

「…では、彼女は信用出来るのでしょうか?」

 疑念がありありと分かる声でアリアが言った。

 ロストロギアを、素直にこちらに知らせてきたのはいい。

 だが、私に直接となると、疑わしく思うのも理解出来る。

「完全に信用など出来ないし、あちらも信用して貰えるなどと思っていないさ」

「どういう事ですか?」

 私の言葉に、アリアが怪訝な顔で言った。

「彼女が言いたいのは、利害が一致していると強調しているのさ」

「……」

 何か企みがあるなら、ジュエルシードを着服しておいて損はない。

 エネルギー結晶体なのだから、なんにだって利用出来る。

 そんなものより、我々との協力関係が大事だと言っているのだ。

 それに、はやてに残された時間は、あまりないと推測される。

 ゆっくりと信頼関係を構築する時間はないと、彼女も思っているのだ。

 故に、今回の事件は都合がよかった。

 勿論、これが彼女の自作自演でないかは、念入りにこちらで調べる。

 だが、可能性は低いだろう。

 そんな疑いが残るような事で、協力関係を築けるとは、彼女も楽観的ではない

だろうし、私もそこまで低く見られていないだろう。

 今回の件で、彼女がどう動くのか、それも判断の材料となる。

 そんな事をアリアに説明するが、釈然としないのか、顔色は晴れなかった。

 まあ、これから色々と見えてくるだろう。

 今は仕事だ。

 

「輸送ルートの漏洩元も突き止めなければな」

 

 

              5

 

 翌日から、すぐに探索するという訳にはいかない。

 学校をサボる訳にはいかない。両親が怒るから。

 あくまで優先するのは、家族だ。

 だから、リニスに密かに探し回って貰う。

 主に人が密集している箇所だ。

 そこで発動でもされた日には、最悪家族が巻き込まれる。

 動物が発動した程度なら、被害は少なくて済みから後回しにしている。

 発動して場所が分かれば、話は別だけど。

 

 手に入れたジュエルシードで探索魔法を創作して、リニスに渡したものの、

発見の報はなく、あっという間に夜になった。

「申し訳ありません…」

 リニスは項垂れて流石にバツが悪そうだった。

 だけど、これはリニスが無能だった訳じゃない。

 大々的に探索魔法を使って調べれば、おそらく幾つか見付かっただろう

けど、それをやるとなのはちゃんとかはやてとかにバレて面倒になりそう

だ。不思議がるくらいならいいが、何かに触発されてうろつかれると、下手

をすれば、ジュエルシードに遭遇してしまう。必然的に最小限で使う必要が

ある。それだと、余程近付かないと反応しないのだ。

『フン。使えんな』

「うっ…」

 ここぞとばかりに、守護獣に不満を感じているバルムンクが嫌味を言った。

 いい加減、前の守護獣と比べるのは止めればいいんだよ。

「気にしなくていいよ。まだ発動はしてないんだから」

 私の方はバルムンクを無視して、リニスを慰めてやる。

 まあ、真実しか言ってないけどね。

「次は抜かりません」

 リニスが決意に満ちた声で宣言する。

 まあ、フェイトちゃん達にも関係してくるのが、リニスにだって予想出来

るだろうしね。

 

 夜の町を疾走して、かなり時間が経ったが一向に反応がない。

『これは、いくらなんでも反応しなさ過ぎですな』

 バルムンクが懸念を伝えてくる。

 私は黙って頷いた。

 町中がゼロって事はないだろう。

 可能性としては、もう誰か或いは何かによって移動している?

 私達が回収したジュエルシードに、自立行動出来る要素がない以上、その

可能性は高い。

 それか、もう既に私達が回収した夜に、魔力の影響でジュエルシードに

なんらかの影響が出ているというのもあるか…。

 あの魔力の稲妻は、私達の邪魔を目的としていた。

 ジュエルシードが願いを形にする魔力結晶だとすれば、私達の邪魔をする

という願いをジュエルシードが、魔法を通して叶えたという事になる。

 魔法は、意志の強さとかも関係しているから可能性はゼロではない。

 もし、これなら発動前のジュエルシードを確保するのは、事実上無理と

いう事になる。可能性としては、こっちは低いかな?

 

 そんな事を考えていたら、突如として不気味な魔力の反応が現れた。

 だが、この反応は…。

「ジュエルシード!」

「発動したんですか!?」

『それしかあるまい!下らん事を訊くな!』

 不幸中の幸いな事に、場所は山中だ。

 手早く抑える。

 私は血中から精霊鋼の剣を取り出し、風のように走り出した。

 リニスが遅れずに、ピッタリ付いてくる。

 結界が構築された反応が飛び込んでくる。

「結界っ!?一体誰が!?」

 リニスが驚きの声を上げる。

 ここは魔法文化がない世界。

 私以外に、今は真面に魔法を構築出来る人間はいない事になっている。

 この前みたいに、次元犯罪者が紛れ込んでいない限り。

「急げば分かる」

 私は、そう言い捨てて更に加速した。

 その甲斐あって素早く駆け付ける事は出来たが、結界内を見通すと決着が

着こうとしていた。

 そこにいたのは、敵に止めを刺さんと腕を振り上げるジュエルシードの

思念体と思われる黒い人型。それに止めを刺されそうなユーノだった。

 まだ、管理局すら到着していないのに、早いお着きだ事。

 戦闘が不得意なのに、出てきたのは頂けない。

 お蔭様で、周囲の被害が笑えない。これは結界解除しても影響が出るぞ。

 結界を破壊しないようには、結界の魔法式を精霊の眼(エレメンタルサイト)でハックして

入り込むと同時に黒い人型が腕を振り下ろしていた。

 大地が割れて、土砂と一緒に木が衝撃波でユーノに殺到する。

 既に戦闘開始から時間が経っていないにも拘らず、既にボロボロのユーノ

は、避ける事も出来ない態勢と有様だ。

 ユーノが悲鳴を上げてその奔流に流される。

 私は舌打ち一つして、血液に精霊鋼の剣を収納し、新たな剣を取り出す。

 出てきたのは、私が所持する剣の中で一番の大剣である。

 

 大地剣・ヴェルト

 

 その名の通り、大地を司る神剣である。

 大地を支配する権能は凄まじいものがある。

 それを素早く投擲する。

 大地剣は奔流に突き刺さると、その権能を遺憾なく発揮した。

 私の望み通りに。

 あれだけ荒れ狂った大地がピタリと止まり、土砂も木々も動きを止める。

「リニス。あの子を」

「お任せ下さい」

 私は、地上に降りるとリニスにユーノを任せる。

 リニスが素早くユーノの探索を開始する。

 大地剣を引き抜き、私は一閃する。

 それだけで衝撃波が発生する。

 一撃の強力さは、私が持つ剣の中でも上位に入る。

 黒い人型は、堪らず足を踏ん張る。

 そのお陰で無様に吹き飛ばされる事を避けた。

 黒い人型が、紅い目を細める。

 私は、無言で踏み込み、加速する。

 黒い人型は、私の速度に驚いたのか、紅い目を見開いて飛び退る。

 だが、遅い。

 大剣が黒い身体をゴッソリと削り取る。

 魔力の流れを見極めて大剣を振り下ろした為に、ジュエルシードを傷付ける

事なく削れた。

 ジュエルシードが露になった瞬間、黒い人型は足を地面に叩き付け、土煙

を起こそうとした。だが、残念ながら私の大地剣は、そんなものを抑え込む。

 私は、手首の返しと体捌きのみで勢いを殺さずに、大剣で二の太刀を放つ。

 黒い人型は叩き付けた足で、そのまま飛び上がり、大剣を蹴り付けた。

 足を犠牲にして致命傷を逃れたのだ。

 更に、黒い人型は身体を丸い形に変化させて、高速で遁走した。

 私がそのまま見送る訳もなく。

 シルバーホーンの引き金を引く。

 飛行魔法自体を阻害しようとしたが、向こうも素早く魔法をキャンセルし

抵抗する事なく破棄した次の瞬間、転移を実行した。

「っ!?」

 魔法を待機させてたのか!

 思念体だから、そんな知恵はないだろうと、高を括っていたのが災いした。

 高速で逃げられればよし。

 逃げ切れないのであれば、即座に転移発動という訳か。

 当然ながら飛ぶのと転移するのでは、消耗が違う。

 転移の方が消耗が激しいのだ。

 念を入れて準備していたという事は、高度に思考出来る事の証明である。

 思念体にそこまでの力はない筈だ。

 最後に私が上げた可能性、あれは冗談じゃないのか?

 私は憮然とした面持ちで、シルバーホーンを下した。

 

『美海!見付けました!』

 

 そっちは無事かな。

 私は大地剣を血液に収納すると、リニスの方へ歩き出した。

 到着すると、ユーノは薄汚れたフェレットになっていた。

 魔力の回復の為だっけ?

 ただ、傷だらけの為に汚れは頂けない。

 やむを得ず傷の治療や消毒は、やってやる事にする。

『誰か…助けて下さい。この声が聞こえる人…』

 微かに意識があったのか、全方位に向けてユーノが念話を放つ。

 放ってしまった。

 思わず、舌打ちしてしまった。

 これで、なのはちゃんに聞かれたな。下手をすればはやてにも。

 

 妙な動きをしないといいけどね。

 

 私はフェレットを不機嫌な顔で見下して、そんな事を思った。

 

 

              6

 

 なのは視点

 

 私は今、多分夢見てる。

 でも、不思議な夢なの。

 私もお友達も一切出てこない。

 誰かの夢でも覗いてるみたいな不思議な感覚。

 

 男の子が、山?かどこかで、何か黒い大きな人影と戦ってる。

 その大きな人影は、人じゃないみたいで、顔に当たる部分?に紅い目が光って

いるの。

 その大きな影みたいなのが、大きく手をグーにして振り回すと、まるで嵐みた

いな強い風が吹いた。大きな腕が振り回されるだけで木々が風で倒れそう。

 そんな危ない攻撃を、男の子はバリア?みたいなのを張って、防いでる。

 でも、何度も攻撃されたバリアは、罅が入って破られそう。

 私は夢の中なのに、必死に逃げてと念じたけど、全然届かない。

 夢なんだから当然なのかもしれないけど、なんか嫌だ。

 思った通り、バリアはアッサリと壊されてしまった。

 ガラスが割れるような嫌な音が響く。

 私は男の子がペシャンコになってしまうと、思わず目を閉じたくなった。

 でも、閉じられないし、男の子はバリアが壊れる瞬間に身体を地面に投げ出し

て攻撃を避けていた。

 しかも、ただ倒れただけじゃない。男の子は何かをポケットから取り出すと、

手を黒い大きな影に翳した。

 手の平から出てきたのは、紅いビー玉みたいなもの。

「妙なる響き、光となれ! 赦されざる者を、封印の輪に!ジュエルシード封印!」

 なんだか魔法の呪文みたいな言葉を、男の子が唱えると紅いビー玉が物凄く

光り出した。

 黒い大きな影が、驚いたみたいに仰け反る。

 影が光に蹴散らされるみたいに、吹き散らされて、身体の中心に青い菱形の宝石

が見えた。だけど、宝石が脈打つみたいに震えると、影が光を押し退けた。

 影が元通りになると、怒ったような叫び声を上げて、男の子に突進する。

 男の子は、倒れたままだったから避けられないで、影に跳ね飛ばされた。

 男の子が物凄く痛そうな音と一緒に、遠くに飛ばされる。

 男の子は地面に叩き付けれて、ゴロゴロと斜面を転がって、木にブツかって

止まった。

 影は、それで満足しなかった。

 大きな声で叫ぶと、両手をグーにして地面を思いっ切り叩いた。

 すると、地面が割れて木と一緒に斜面を、物凄い勢いで流れていった。

 男の子は痛みに耐えて、なんとか逃げようとしたけど、木々に押し流されて

しまった。

 男の子の悲鳴が聞こえる。

 耳を塞ぎたいけど、夢だから出来なかった。

 私に出来るのは、ただ見て聞くだけ。

 男の子は、どうなったの?

 

『誰か…助けて下さい。この声が聞こえる人…』

 

 消えそうな掠れた声が最後に聞こえた。

 

 ピピピピピピピピ!

 

 私は、その音で跳ね起きた。

 音の正体は、目覚まし時計。

 

「変な夢、見た」

 

 この時、これが始まりだなんて思ってもいなかった。

 

 

  

 

 

 

 

 




 次回から無印本格始動です。
 少しでも暇潰しになっていれば幸いです。
 次回も時間が掛かると思いますので、気長に
 お待ち頂ければと思います。


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