魔法少女リリカルなのは 黒騎士の憂鬱   作:孤独ボッチ

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 随分と時間が掛かっていますが、折れていません。
 長くなってしまった…。気を取り直して、それでは
 お願いします。





第7話

              1

 

 翌朝、私は不機嫌さを隠さずに目を覚ました。あれからどうなったかって?

 フェレットことユーノを回収して、現場を立ち去ったんだよ。地滑りでも起こしたような有様だから、関係機関が押っ取り刀で駆け付けてきたから。

 化物が破壊した結果だとは流石に思わないから、自然災害ってことになると思う。そして、ここからが前夜の回想だ。

 

 私はまず安全な場所までユーノを連れて退避した。パトカーやら消防車やらのサイレンを背に感じて。

「ここら辺でいいかな」

「もうかなり離れましたしね。結界がいきなり解除された時はどうなるかと思いましたけど」

 そう、当然の帰結だけど結界を張ったのはユーノ。その術者が意識不明になってもある程度結界を維持していたのがレイジングハートってとこだ。私達がユーノを保護したので解除した訳だ。ユーノの魔力残量の関係もあっただろうけど。

「取り敢えず応急処置で治療しよう」

 私は、薄汚いフェレットと化したユーノに治癒魔法を施す。再成を使うまでもない傷ではあるからこれでいいだろう。だが、治療中に問題が発生した。

『誰か…助けて下さい。この声が聞こえる人…』

 無意識なのだから仕様がないが、助けてやったのに助けて下さいとはね。

 しかも、これで大々的になのはちゃんや下手をしたらはやてにも伝わった可能性が高い。これは提督に探りを入れて貰わないといけない。初っ端で下手を打ったな。これは今後の活動で挽回する必要がある。それを考えて眉間に皺が寄る。

可能性が高い。これは提督に探りを入れて貰わないといけない。

「取り敢えず、この迷惑な奴を起こそう」

「事情は分かりませんが、そういう言い方は酷いですよ」

 リニスが私のセリフを窘める。

『愚かと言わんだけ優しいと思うがな』

 バルムンクが一番容赦なかった。

 傷は、もう問題がないから多少揺さぶってやる。最初は反応しなかったが、流石に何度もやると漸く意識を取り戻した。

「ここは…」

「地球だよ。管理外世界97番。それより自分がどうなったか覚えてる?」

 意識を取り戻したユーノの寝言に等しい問いに答えてやると、ユーノは勢いよく起き上がる。フェレットじゃ様にはならないけど。

「ジュエルシードは!?」

「待った」

「っ!」

 ユーノが今気付いたとばかりに私達を見て驚く。取り敢えず、記憶の欠落がないか確認して置かないといけない。

「貴方、名前は?なんでアレと戦ってたの?」

 私は既に答えを知っている訳だから、白々しさ大爆発だ。だけど、ユーノがキチンと回復したか確認しないと次に進めない。いちいち眼で確認するのも面倒だ。

「そう言う貴女は?」

 ユーノが警戒心を滲ませた顔と声で私達を伺う。

「私はレクシアとでも呼んで。職業は賞金稼ぎ。今回は管理局からの委託でロストロギアの回収をやってる。なんなら管理局のお偉いさんに通信繋ぐけど?」

「賞金稼ぎ…。そんな職業があるとは聞いてはいましたが、実際に会うのは初めてです。管理局へは、僕から連絡してもいいですか?」

 成程。こっちが繋いだ通信じゃ、偽物の管理局員かもしれないって訳か。

 用心深くて結構だけど、それはこんな事をやる前に発揮して貰いたかった。

「いいよ。ギル・グレアム提督に確認とるように言ってね」

「……」

 ユーノがレイジングハートを前足で抱えたまま固まっている。そうだよね。

 連絡出来ないよね。まあ、表向き事情を知らない訳だから容赦はしないけどね。

「どうしたの?連絡していいよ」

「あ、あの!その前に訊いていいですか?」

「どうぞ」

「賞金稼ぎが管理局の委託で動くなんてあるんですか?そういう場合、嘱託魔導士とか使うんじゃないですか?」

 思わず笑ってしまう。局員自体が全く足りない現状で嘱託魔導士がそんなにいると思っているのか。ユーノは笑われてなんだかムッとしているようだ。

「ああ、悪いね。気を悪くさせて。正論だけど人手不足は深刻でね。私が丁度現場にいるからやむを得ない処置でってヤツだよ」

「……」

「君もいい加減腹割って話そうか」

 ユーノは、フェレット形態でも分かり易いくらいに悩んでいる。そろそろ事情をゲロして貰わないと、邪魔しないように拘束してアースラが来るまで休憩して貰う事になるよ。

「分かりました…」

 彼の自己紹介から開始してポツポツと話し出した。聞いた事情は大体私の知っているものだった。

「いくらなんでも無謀だ」

 聞いた上で私はそう断言してやった。現に被害が出ている以上、これは言うべき事だろう。管理局が、不用意に与えた情報をもとに、ここまで来た情熱というか責任感は凄いが正直迷惑だった。

「……」

「何はともあれ、君は大人しくしてて貰うよ。ここは私の住んでる世界なんだ。荒らされたら困る」

「住んでる!?」

 ユーノが驚きの声を上げる。ああ、そうか。違法に住み着いてると思ったか。

「出身世界がここだから」

「あ、そうだったんですね…」

 一応、管理局の仕事してる時点で察して貰いたいけど。もうすぐ管理局の局員が到着すると説得して、どうにか納得して貰った。

 

 これで、なのはちゃん魔法入手はどうなるか。

 

 と、ここで冒頭に戻る訳だ。あのユーノを私の家に居候させる気はない。

私の正体は管理局に知られる訳にはいかない。全て終わった時に姿を晦ますのに不利だから。やる事をやったら関わりは断つ積もりだ。あの忌々しい闇の書を葬り去って終わりだ。ストライカーズ?そんなもの知らん。火の粉が降り掛かるなら払うまでだ。

 随分と脱線してしまった。ではユーノはどうしてるのかと言えば、動物病院に放り込んできた。だってフェレットだし。私が弱ってるところを拾った事にして、動物病院に放り込んだ。勿論、大人の姿でだ。ホテル代は後で管理局に必要経費で頂く。それまでは私が立て替えている。仕事で暫く引き取れないと病院の先生にも言ってあるし問題ない。問題があるとすれば、ユーノの全方位の念話だ。あれではやてに影響がないといいんだけど。原作じゃ無反応だったが、私というイレギュラーがいる以上、楽観視は止めておいた方がいい。グレアム提督にも素直に謝っておいた。

『それは仕様がないだろう。こちらで探りは入れておくよ』

 身内の調査で忙しいだろうに、ご丁寧に通信に出て対処を約束してくれた。

 初っ端に不始末を報告せざるを得ない事態に腹が立つ。目覚めが不機嫌になろうというものだ。

 

 

              2

 

「じゃ、いってきます」

 両親に挨拶して家を出る。こんな事があった次の日も怠い学校には行かないといけない。これも両親を心配させない為だ。

「美海。言うまでもない事ですが、気を付けて下さいよ」

 リニスが玄関先で山猫形態のまま、お見送りしてくれる。私は頷いて家を出た。

 

 スクールバスを停留所で待ち乗り込む。バスに揺られ考える事は昨夜の事

だ。あの思念体は明らかにおかしい。イレギュラーな存在である私がいる以

上、どういう変化をしていてもおかしくはない。だが、強さと思考力が思念

体の域を越えているような気がする。なんらかの介入があったと考えるのが

自然だろう。ユーノに関しては無策で動物病院に放り込んだ訳ではない。

 ユーノが察知されないように手は打ってある。これならユーノが、またも

や助けを求めてなのはちゃんが魔法を得る事態にはならない筈だ。転生する

前の凡人時代なら、彼女が魔法少女になった方が面白いと感じて、邪魔しな

かっただろうが、今は自分達がよければどうでもいい。場を引っ掻き回され

るより、彼女には一般人でいて貰った方が都合がいい。あとはリニスの義理

でフェイトちゃんをなんとかする。

 

 まあ、それもこれも繰り返しになるけど、ジュエルシードをなんとかした

後だ。

 

 

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 ユーノ視点

 

 レクシアと名乗った女の人は、僕を動物病院に放り込んだ。文字通りにだ

よ。信じられないと言いたいけど、僕は既に彼女が住む世界に被害を与えて

しまったのだから何も言えない。僕の安全も確保していってくれたようだし、

悪い人ではないのだろう。態度は刺々しいけど。

「大丈夫~?」

 動物病院の先生が僕が入れられているゲージを覗き込む。

「キュ、キュ~?」

 我ながら死にたくなる演技だよ!怪我はレクシアさんが治してくれたから

ないんだよ!?それなのに衰弱してる振りしてるんだよ!

「う~ん。君、ホントにフェレットなのかな?」

 先生が納得いかない顔で、僕をシゲシゲと観察する。スルドイですね。人

間です。僕は人間です。すいません。

「暫く、我慢してね!仕事が片付いたらお迎えが来るからね!」

 お迎え?僕死ぬの?かなり不機嫌な顔を思い浮かべると…いや、大丈夫…

だと思う。いい人そうだしね!

 

 この時、僕は気付いていなかった。外に紅い目のカラスが僕を外から見て

いた事を。

 

 

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 なのは視点

 

 家を出た頃には、あの不思議な夢の事は頭から薄れていた。だって夢だし。

 バス停でスクールバスを待っていると、あんまり待たずにバスが来た。窓

からアリサちゃんとすずかちゃんが手を振っているのが見える。私は手を振

り返してバスに乗り込むと二人のところへ行った。

「おはよう!アリサちゃん!すずかちゃん!」

「「おはよう!なのは(ちゃん)!」」

 お友達になってからの毎朝してる挨拶。こんな当たり前な事が凄く嬉しい。

『本日はルートを一部変更します。到着時刻は少し変わりますが、我慢して

下さいね』

 バスの運転手さんが、珍しくそんな事を知らせてくれた。ルート変更?

なんで?

「ああ、なんかね崖崩れっていうか、地滑り?みたいなのがあって危ないか

らルート変更するみたいよ」

「そう言えば、物凄い音がしたらしいね」

 アリサちゃんとすずかちゃんが、原因を教えてくれた。バスのルートを変

えるという事は、結構近く?私が考えているとアリサちゃんが声を上げた。

「ホラ!あそこ!」

 いつも通る道路にお巡りさんが立っているのが見えた。そして、お巡りさ

んの誘導で道を逸れて迂回ルート?へバスが入っていく。

「あれ?」

 私は思わず声を上げちゃった。

「どうしたの?なのはちゃん」

 すずかちゃんが不思議そうに私に訊いてきたけど、私は答えられなかった。

だって、夢で男の子が戦ってた場所にそっくりだったから。

 

「カァ!」

 

 突然、カラスが大きな声で鳴いた。思わずビクッてなっちゃった。

「何よ、あのカラス!なんか不気味」

 アリサちゃんが不機嫌な声で怒ったように言った。

 

 不気味…。

 

 そのアリサちゃんの言葉はピッタリだと思った。だって、気の所為かあの

カラス、こっちをジッと見ていた気がした。

 

 それに気の所為だと思うけど、目が真っ赤に光ってた気がした。そんな事

を考えている間に、バスは小学校の前へと着いていた。

 

 

              5

 

 今更、小学校に通うのは辛い。あれ?そうだったんだ…と思う事は勉強し

直していると感じる事はあるけどね。恥ずかしながら。言い訳だけど、三十

年以上こういう勉強から遠ざかっていたからね。忘れるさ。それでも進学校

といえどもやった事のある内容だ。大半は覚えている。だから辛い。そして、

何が一番辛いかと言えば。

「美海ちゃん、おはよう!昨日のスナップの番組観た!?」

 これだ。スナップというのは、凡人時代にいた超人気のアイドルグループ

のバッタものみたいなアイドルの事だ。男六人、のち五人になるんじゃない

かな?どちらにしても男のアイドルに興味なんてないわ。

「いや、観てないよ」

 本来ならばハブられる事間違いなしの発言を平然とする私。だって、深く

親しくなる必要はないし。いちいち話を合わせる為に観たくもない番組を観

る気はない。それでもハブられない理由。それは魔法です。違法?ここは管

理外世界だ。知らん。

 魔法で私に大して興味を持たないように誘導しているのだ。だから、彼女

は話たい事をただ話したいだけなのだ。だから、こう言ってやる。

「どんなだったの?」

 彼女は我が意を得たりとばかりに笑顔で話し出す。私は作り笑いでただ聞

いて上げる。それだけ。

 

「おはよう!」

 そう言って聞いた事のある声が教室に入ってきたのは、私が彼女の話を大

体聞き終えた後だった。アリサ・バニングス嬢だ。その後に月村すずか嬢、

そして主人公・高町なのはちゃんが入ってきて、教室の皆に挨拶をしていく。

 流石カーストトップ集団。一気に耳目を掻っ攫っていった。魔法が使い易

い。私は精神干渉魔法を極小で発動して、こっちに関心が向かないようにし

て存在感を消す。

「おはよう!美海ちゃん!」

 席が近いすずか嬢が、私に挨拶してきたので軽く返事して終了。他の二人

も軽く挨拶する程度の仲だ。なのはちゃんは私があの時の汚幼女が私だと気

付いていない。そりゃそうだと思う。今は癖毛ではあるものの髪は整ってる

し、身綺麗にしてるからね。

 

 そして、暫くしてチャイムが鳴った。

 

 

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 放課後になり、あっという間に夜になる。勿論、放課後もジュエルシード

探しは継続したが、見付ける事は出来なかった。これは本格的に何者かの介

入を疑った方がいい。今更だな。

「発動している物は、一つは確実にある筈なのに何も掴めない。そんな事が

あるんでしょうか?」

 リニスが参ったとばかりに声を上げる。彼女は昼間も山猫形態で探索して

いる。勿論、母上の手伝いの合間にだ。

『馬鹿者が!主の前で泣き言を言うとは何事か!』

 バルムンクが、人の血液の中からリニスを叱責する。いつものバトルが開

始されると長い。ここは割って入っておくべきだろう。

「異常事態である以上、そう喚くな。彼女はよくやっているさ」

『……』

 バルムンクは、私に窘められて不機嫌に黙り込む。ここで反撃に転じない

リニスはバルムンクより大人だ。まあ、面倒なだけだろうけど。

「もっと深いレベルで眼で観るべきかな」

「深いレベルですか?」

 私の言葉にリニスが不思議そうに訊いた。私の精霊の眼(エレメンタルサイト)は元ネタ以上の

性能を誇る。ただし、性能をフルに活用する為には集中して観ないといけな

い。つまり、不意打ちされる恐れが出てしまう。そこを説明してリニスに護

衛を託す。

『しっかり務めるのだぞ』

 バルムンクが小姑の如くリニスに言った。

「お任せ下さい」

 リニスは面倒臭いのか、大して反応せずに引き受けた。

 

 だが、その必要は今日に限ってはなかった。私は血液中から剣を取り出す

とダラリと剣を下げたまま周囲を見渡した。

「どうかしたのですか?」

『鈍感め!野生はどこへやった!』

 疑問を呈したリニスにバルムンクの叱責が飛ぶ。これは少しリニスを擁護

出来ない話だ。何故なら、薄っすらとはいえ嫌な気が私達の周囲を取り囲み

だしていたからだ。

「喧嘩は後にしろ。リニス。ユーノのところへ急げ」

「え!?彼の!?」

「この気配、ユーノを襲っていたヤツと同一だ。それが足止めするかのよう

に動く。こういう時は、狙いは別にあるのが定番だ。そして、今回私達と関

係あるのは、ユーノだけだ」

「しかし、彼には用心の為、察知されないように魔法で処置したのでは!?」

「確かに居場所を()()()()()()()()()()()()()()()はした。

 だけど、()()()()()のであれば、話は別だ」

 例えば、動物を操って探させたりしたなら意味をなさない。あそこで引い

たという事は、向こうも私相手だと勝ち目が薄いと気付いたからだと思って

いた。まさか勝ち目がない戦いを強いられる私の庇護下のユーノを襲わない

だろうと高を括っていたが、なんとしても仕留めないと気が済まないらしい。

だが、甘い。

「すぐ追い付く。道は開くから迷わず突っ込め!」

「分かりました!」

 リニスの返事を合図にしたかのように、カラスが一斉に私達に向かって

突っ込んでくる。カラスからは薄っすらと魔力反応が感じられるが、どうも

質が普通の魔力と違っている。感知し辛いのはこの所為だろう。私は一切の

躊躇なく剣を振るおうとして、目を見開く。カラスの体内から生命力が膨れ

上がるように膨張したからだ。

 

 これは!?

 

 剣が届かないギリギリまで近付いたところで、カラスが爆発する。

 

 

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 ユーノ視点

 

 動物病院は夜には人が居なくなる。もしかしたら、目が離せないような状

態の動物がいる場合は違うのかもしれないけど、今はいるのは僕一人(断じ

て一匹ではない)で、なんちゃって衰弱の仮病患者だ。残る必要はない。

 言ってて虚しくなる。何気なくゲージの外から夜空を眺める。月の光が差

し込んで綺麗だ。ゲージの中じゃなければ。溜息を吐いた時、大きな音を立

ててカラスが窓の外に止まった。今は外へ自由に出れるカラスが羨ましい。

そんな羨望の眼差しを注いでいたカラスの眼が一際紅く輝いた。背筋に悪寒

が走る。すぐさま魔力を使ってゲージを破ると外へ飛び出す。その判断は正

しかった。直後、轟音と共に僕が居た場所が押し潰される。僕は逃げつつ後

を確認すると、僕を殺す寸前まで追い込んだジュエルシードの思念体がそこ

にいた。

「まさか!?僕を殺しにきたっていうのか!?」

 思わず声を上げてしまった。声に反応して思念体がゆっくりと顔を上げる。

僕と目が合ってしまった。思念体が目を細める。

 

 笑っている。

 

 何故か、そう確信出来た。全身の毛が逆立つような悪寒が走る。どうする!?

 戦っても勝つ見込みは、残念だけどない。蛇に睨まれた蛙みたいに動く事

が出来ない。レクシアさんを呼ぶか?呼んできてくれるのか?思考が悪い方

に向かっている。大丈夫、迷惑は掛けたけど助けてくれる!僕がそんな事を

考えている間、相手が待ってくれる訳もなく。アッサリと睨み合いは終わり

を告げた。向こうが嬲るように手を伸ばしたのだ。身体が咄嗟に動いたのは、

偶然だ。小さい身体もこの時に役に立った。的が小さければ当て辛い。動物

形態は当然好きじゃないけど、今は感謝してもいい。咄嗟とはいえ、身体が

動いた事でいつも通りに動けるようになっている。

『レイジングハート』

『開けます』

 首輪のように僕の頸に着けれれているレイジングハートが、僕の思考を正

確に察して僕の魔力で扉の鍵を解除して開け放つ。魔力は大体のところは回

復している。この程度の魔力消費はどうにかなる。相手が舐めてくれている

内にレクシアさんが来てくれればいい。

『レクシアさん!』

 念話を彼女に向けて送ると同時に、遠方で爆発音が響き渡った。

 

 なんだ!? 

 

 

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 なのは視点 

 

 夜、いつもなら普通に宿題が終わってる時間になっても、私はまだやっと

半分位終わったところ。なんか、物凄くザワザワする。外からそんな空気っ

ていうのかな?上手く言えないけど、気になって集中出来ないの。それは物

凄く良くないもの。そんな気がして仕様がない。外が気になってシャーペン

をクルクル回しちゃう。

 そして、物凄い音がした。なんか爆発したみたいな!慌てて窓を開けて外

を見る。皆、一斉に窓から顔を出しているのが分かる。でも、その後、信じ

られない事が起きた。空に澄んだ楽器みたいな音が鳴って、波紋みたいなの

が広がった後、空があんなに光ったのに皆興味をなくしちゃって、窓を閉め

ちゃったの!

「ええ!?」

 思わず大きな声を上げるけど、現実は変わらなくって。その後、それ以上

に信じられない事が起こったの!三角の透明の膜みたいなのが広がったの!

物凄く変な感じ。私は慌てて下の階に降りていく。

「お父さん!お母さん!」

 あれ?いる筈のお父さんもお母さんもいない。家の中を探したけど、お兄

ちゃんもお姉ちゃんもいない。さっきまでいた筈なのに…。何が起きてるの!?

混乱してたら、外でまた爆発するような音がした。もう我慢出来ない。私は

心の中でお母さん達に謝りながら外に飛び出した。ホントはこんな時間に外

に出ちゃいけないんだけど!夜の街を走るけど、私の脚は遅い。凄くもどか

しい!慌てて音がした方へ行こうとして、角を曲がったら何かにぶつかった

の。胸の辺りに。気付けば私の胸にフェレット?が張り付いていた。

「「ええ!?」」

 お互いに驚いた声を上げちゃった。上げちゃったんだけど…。

「え?…喋った!?」

「なんで結界内に人が!!ってレクシアさん!僕も結界から弾いてくれれば

いいじゃないですか!!」

 なんか、アリサちゃんが言っていたような気がする。自分より慌ててる人

を見ると落ち着けるって。なんか、今そんな気分。胸にへばり付いてるフェ

レット?を、引き剥がす。

「ああ!そうだ!き、君!急いで逃げて!」

「え?」

 そうだ。私、危険な所に行こうとしてたんだった。夢中で忘れてたかも…。

 だけど、思い出すの少し遅かったみたい。だって、いきなり暗くなったか

ら。恐る恐る上を見て後悔した。なんか黒くて大きいものが頭の上に落ちて

きたから。

「ふぇぇぇぇえぇ!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 二人?同時に悲鳴を上げた。

 

 だけど、緑色の綺麗な光が黒い大きいものを遮って私達は助かった。

 

 

 

              9

 

 ユーノ視点 

 

 爆発音を聞きながら、僕はなるべく人に迷惑を掛けないよう逃げようとし

たけど、圧倒的に向こうの方が速い。また迷惑を掛けてしまうなと、レクシ

アさんの冷ややかな顔を思い出して冷汗が出た。そしたら、空に魔力の波紋

が広がり結界が展開されるのが分かった。よかった!あんな事をするとすれ

ばレクシアさんだけだろう。魔力反応が、あの人分かり難いけど直後にこの

世界を気遣う結界が展開されたところを見るとレクシアさんは無事だ。思っ

てみれば僕が結界を張ればよかったんだよな。つくづく僕は戦闘に向いてな

い。現実逃避気味に自分を掠める攻撃から必死に逃げ回る。

 

 そして、曲がり角を曲がった瞬間に運命に出会った。じゃない。丁度向こ

うから女の子が来ていたから、ぶつかってしまったんだ。正確には女の子に

へばり付く格好だけどね。

「「ええ!?」」

 お互いに我に返って、驚きの声を上げてしまった。

「え?…喋った!?」

「なんで結界内に人が!!ってレクシアさん!僕も結界から弾いてくれれば

いいじゃないですか!!」

 思わず愚痴のような文句が口からついて出る。でも、なんで結界内にこの

子はいるんだ!?僕なら囮の時間稼ぎ辺りで残された可能性はあるけど、こ

の子はどう見ても普通の子だ。魔法の才能はあるみたいだけど…。それでも、

レクシアさんが入れたとは思えない。だとすれば…。

「ああ!そうだ!き、君!急いで逃げて!」

「え?」

 急いで逃げるように言ったけど、そこに黒い傘が僕等の上に出来上がる。

咄嗟に上を見上げた。

「ふぇぇぇぇえぇ!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 押し潰される寸前で、頼れる相棒レイジングハートが防御してくれる。物

凄い音で思念体が止められるものの、長くは持たないのは明らかだった。

「走って!」

「う、うん!」

 女の子は僕を抱え直すと走り出した。レクシアさんはまだ!?彼女が多分

いるだろう方向へ視線を向けると、空に閃光のような光が飛んで行った。結

界をすり抜けて。

「ええ!?」

 女の子は、逃げるのに必死で僕の声には気付いていない様子だった。そし

て、着弾(?)。轟音と土煙を上げながら、僕等から何かが遠ざかっていく。

 何が起こっているのか分からないけど、明確に彼女の邪魔をしている存在

がいる。とすれば、応援がくるまで凌ぐのは難しいかもしれない。女の子に

抱えられながら、そんな事を呑気に考えていたけど、そんな場合じゃなかっ

た。女の子の足が突然止まった。

「考え事なんてしてる場合じゃなかった…」

 自分の呑気さに呆然としそうになった。僕等の周りには黒いカラスが紅い

眼を光らせて包囲していたから。これは実体じゃない思念体の一部だ。魔力

反応からそれを察したけど、それが役に立つ訳じゃない。襲われたら実体だ

ろうが、違おうが一緒だ。カラスの爪か嘴が掠めたのか、女の子が悲鳴を上

げる。見ると二の腕の袖が切れて血が滲んでいた。

「っ!!」

 僕があんなものを発掘したから!そんな傲慢な考えがチラリと浮かぶのを、

首を振って打ち消す。今はそんな事を考えている余裕はない。

 

 この子には魔法の才がある。

 

 僕の脳裏にそんな悪魔的な思考が過った。抱えられて確信した。この子に

は、リンカーコアがある。魔力量なら僕を凌ぐ予感がある。あとは覚醒しな

い事には判断が出来ない。

 

 レクシアさんの冷たい表情が思い出される。

 

 だけど、このままじゃ二人共助からない。こんなのは今からやる事の正当

化になんてならない。僕がやる事は間違っているだろう。だけど…。

 僕はレイジングハートを通じて魔力そのものを放出して、カラスを遠ざけ

る。

「お願いがあります」

 驚いている女の子に僕を意を決して口を開く。

「は、はい!」

「突然で驚くかもしれませんが、貴女には魔法の才能があります!このまま

じゃ、二人共死んでしまう。だから!貴女の才能に頼らせて下さい!」

 動物形態で必死に頭を下げる。

「危険な事です。怖い思いもするでしょう。でも、僕はこのまま死ぬ訳には

いかないんです!!」

 女の子からの返事はない。カラスが僕等を侮るように旋回している。どう

せ何も出来ないと高を括っているんだ。その間に説得しないと…。

「そしたら、助けられる?」

 不意に女の子の声が響く。

「え?」

 普通は戸惑う。ここが魔法文化がない事くらい僕でも分かるから。目の前

の光景だって、すぐに受け入れられないだろう。でも、この子は違う。僕を

助けようとしている。この状況を打開するには、どうすればいいかを考えて

いる。この子は魔導士に向いているのかもしれない。

「はい!」

 だから、肯定した。

「どうすればいいの?」

「まずはこれを!」

 僕はレイジングハートを差し出す。女の子はレイジングハートを受け取る。

「繰り返して!風は天に…」

 

 

「風は天に…」

 

 

「星は空に…」

 

 

「星は空に…」

 

 

「不屈の心は子の胸に…」

 

 

「不屈の心は子の胸に…」

 

 

「我が手に魔法を!」

 

 

「我が手に魔法を!」

 

「レイジングハート!セ~ットアップ!」

 魔力が奔流となって天に昇っていく。

 

 だけど、この時の僕は閃光のような光が巻き戻るように戻っていった事に

気付かなかった。

 

 

 

              10

 

「舐められたもんだな。この程度で足止めか?」

 爆発が収まった時、私達は無傷だった。この程度で死ねるかって話だ。窓

が開けられて、次々と人々が顔を出す。なんで探すだけで結界を張る必要が

あると思う?戦闘になってからでいいだろう、普通。仕様がないので魔法を

使う。カラスが大挙して飛んでくるが無視だ。私の手に魔力で造られた弓が

生み出される。その弓を空に向けて引くと、矢を番えていない状態で放つ。

 梓弓。元ネタでは人を落ち着かせる為に使ったが、私は人の興味を消し記

憶をすり替えた一瞬だけではあるけどね。すぐさま結界を張り、ここら一体

を封鎖する。カラスが襲来するが、私の表情は変わらない。

「リニス行け!」

「分かりました!」

 私の命令に一瞬の躊躇なく飛び出すリニス。カラスがリニスに襲い掛かろ

うするが、させる訳がない。私は情け容赦なく剣を一閃する。カラスが爆発

する前に、剣閃で真っ二つに切り裂かれて地面に落ちていく。可哀想?そん

な事は考えない。何時だって優先すべきものがある。それは少なくとも私の

中ではカラスではない。もしかしたら、心優しい魔法少女ならカラスも救っ

ただろうが、私はそんな情けは掛けない。カラスが前方からいなくなり道が

開かれる。リニスはそこを勢いよく飛び出した。だが、私はある反応から空

中に足場を造り、踏み込みと同時に加速。一瞬でリニスに追い付くと、彼女

の頭を押さえて下げさせると同時に手で超高速で飛来したものを掴み取った。

 

 これは!?

 

 結界をすり抜けるように放たれたのも信じられないが、これ程の威力で投

擲しただけでなく、間違いなく魔力だけでなく使い手が少ない気まで使用

していた。流石に空中で受け止める事が出来ずに地面にそのまま叩き付けら

れるように着地する。それでも勢いは殺せない。掴んだものの勢いのまま引

き摺られるように後退する。魔力だけでなく気を使い威力を殺す。かなり引

き摺られたものの、数十m程で止まった。精霊の眼(エレメンタルサイト)は投擲者を捉えている。

今更だが、掴んだのは槍だった。ただのなんの変哲もない鉄製の槍。それを

ここまでの威力で投擲するとは、ヤルものだ。相手は女で身体にピッタリの

ボディスーツを着用している。

「美海!」

 リニスが心配したのか、ユーノのところではなく私と所に来た。本来なら

叱責せねばならないが、今は優先すべき事がある。

「退け」

「は?」

 余程自信があるのか、まだその場に留まっている。つまりは反撃してみろ

という訳だ。上等。私は不敵な笑みを浮かべているのを自覚しつつも、槍を

クルリと回して投げ返した。リニスが咄嗟に頭を下げると同時に、先程とは

比べ物にならない程の威力で槍が持ち主に向けて放たれた。まさに流星みた

いに魔力光を放ち飛んでいく。向こうも今更不味いと感じたのか回避行動を

取ろうとしたようだが、間に合わない。結界を高速ですり抜けて海沿いの高

台の一つが削り取られ、やがて威力が減衰して海に着弾。大きな水柱が上が

るのが私の眼で捉えられた。死人怪我人なし。問題なし。

「逃げたな」

 残心を解いた。

「逃げたな…じゃありません!!」

 リニスの怒りの大声が耳朶を打ったが、私は反応しない。命令を実行しな

かった奴の怒りなど知らん。

「しかもユーノに怒っておいて自分も街壊してるじゃないですか!!」

 知らんな。

 だが、知らんぷりも通じない事態が起きた。

 

 強大な魔力の柱が立ち昇ったから。こっちの柱は問題だ。

 

 

 

              11

 

 なのは視点

 

 この前の出来事で胸の奥で脈打っていたものが、私の中で激しく鼓動する

みたいに反応しているのが分かる。そこから力が溢れ出す。それが服となっ

て変わっていく。私は気付けば白い服(なんとなく聖祥の制服と似てる)を

着ていた。手には杖を持っている。

「成功だ!」

 男の子の声がして周りを見てみると、う、浮いてる!?慌てそうになった

けど、それが分かってたみたいにゆっくりと地面に降りて、静かに地面に足

が着いた。安心したよ…。って安心してる場合じゃない!カラスが一斉に私

達目掛けて降りてくる。勿論、怪我しそう。

『手を前に出して下さい!』

「は、はい!」

 なんだか分からないけど、声の通りにすると杖からピンク色の光が広がる

と、私とフェレット君?を覆う。カラスが光に当たると凄い音がする。雨み

たいに立て続けにぶつかる。思わず目をぎゅっと閉じちゃう。

『一気に振り切ります』

「え、ええ!?何!?」

『彼女の肩へ』

「え!?確かに残ったら死ぬけど…」

 どうも喋ってるのは、杖みたい。喋る動物に喋る杖。おまけに私は変身?

したし。

「ごめん!」

 フェレット君?が私の肩に飛び付く。置いてきぼりになってる私。

『行きます!』

 ピンク色の光が波打つみたいに上に集まると、爆発した。

「ふぇぇぇぇえぇ!!」

 爆発に少し遅れて空に私の身体が打ち上げられる。飛んでるんだろうけど、

全く私の意志が入ってない。空に打ち上げられた私達をいつの間にカラスが

囲んでいた。カラスが一気に襲い掛かってくる。また悲鳴を上げて目を閉じ

ちゃうけど、気が付くとまたピンク色の光が守ってくれていた。

「これは…?」

『どうも初めまして。私はインテリジェンスデバイス・個体名レイジング

ハートです。暫定的ではありますが、貴女のサポートを実行します。なお、

現在は他者の物ではありますが、結界が展開されています。ここで起こっ

た被害を防ぐ事が可能です。勿論、魔法の力量を超える被害は防げません

が。ですが、この結界の主は腕がいいようです。存分に力を発揮出来ます』

 自己紹介している間にカラスはピンクの光にぶつかって爆発している。

「あ、あの!結界とかの説明もいいんですけど!大丈夫なんですか!?」

『問題ありません。よい魔力量と質です。マスターより護り易い』

「すいません…」

 フェレット君?が項垂れてるの。

「それで!これ!どうすればいいんですか!?」

『片手を前に出して下さい』

「こうですか!?」

 私は言われるままに片手を突き出す。

『シュート』

 手から光が飛び出してカラスを吹き飛ばす。吹き飛ばされたカラスは溶け

るように形を変えてどこかに飛んで行って、一つに固まった。それから夢で

見た黒い大きい人影になっちゃった。それから何かを溜めるみたいにギュッ

と縮める。

『退避します!』

 杖が気の所為か慌てた声を上げると、黒い人影は一気に身体を開く。何が

起こったか分からないまま、身体がどこかに叩き付けられた。凄くぶつけた

筈なのに、あまり痛くない。起き上がって私は震えた。

 

 ここら辺の一帯の家が無くなっていたから。

 

「こんなの…」

 私はポツリとそれだけ口から絞り出すみたいに言った。

「こんなの…逃げ回って時間を稼ぐしか…」

 フェレット君が震えた声で言った。それでハッとした。

「ダメだよ!そんなの!」

「え!?でも!!」

「結界っていうので大丈夫でも、これが外に出たら皆が危ない!!」

「いや、助けが…」

「待てない!!」

 必要なのは今なの!

「あの!杖…さん?」

『レイジングハートとお呼び下さい』

「レイジングハート。私が攻撃防いだり出来るのは、貴女のお陰だよね?」

『その通りです』

「どうすればいい?私に出来る事はない?あれをなんとかしたいの!!」

『イメージして下さい。まずはそれを実行して下さい。それを私が形にしま

す。飛ぶ事を、先程のような攻撃をイメージして力を私へ』

「やってみる!イメージ…」

 自由に自分が空を飛ぶイメージ。そう、翼があったら!そう思ったら靴か

ら羽が生えた。光る綺麗な羽が。何かを蹴るように黒い人影がこっちに近付

いてくる。

「イメージ!」

 自由に空を飛ぶ!そのイメージまま靴の羽が羽ばたく。

「凄い!」

 本当にイメージ通り飛んでる!私はよし!って気合いを入れると片手を突

き出す。さっきと同じ攻撃を!胸の奥がドクンって反応する。紅い眼を細め

て追い掛けてきていた黒い人影が目を一杯に開いて驚く。

『「シュート!」』

 レイジングハートと声が重なる。近付いてくるまで引き付けた甲斐もあっ

て、向こうは腕で身体を守るのがやっとだった。当たった!黒い人影が攻撃

でまた吹き散らされる。なんか青い宝石みたいなのが見えた。

「あれは?」

「っ!?あれを押さえれば止められます!封印を!」

 肩にしがみ付いているフェレット君が声を上げる。なんだかよく分からな

いけど!

「お願いします!」

『お任せを。杖を向けて下さい』

「分かった!」

 私は指示通りに杖を突き出す。

『シーリング』

 杖からさっきの攻撃とは別の感じの光が放たれる。

「凄い魔力!」

 フェレット君が興奮した声で言った。確かに凄そう。だけど、当たる前に

黒い影が、大きい腕に変わって攻撃を受け止めちゃった。

「ああ!」

 フェレット君が、サッカーでシュート外した人みたいになった。それに反

応した訳じゃないだろうけど、黒いものが青い宝石に纏わり付くと逃げ出し

た。

「あっ!逃げちゃう!」

 慌てて後を追うけどそれが分かったのか、黒いものは三つに分かれて逃げ

始めた。

「ええ!?どれか分からないよ!?」

 私は速度を緩めずに追うけど、どっちかを追えば二つ逃げられちゃう。本

物を一つだよね?どうすれば…。

 

 私の頭に片手の攻撃が浮かぶ。私は空中で止まる。

 

「ど、どうしたの!?」

 フェレット君が驚いたように言った。

「ねぇ。さっきの飛ばす攻撃、もっと遠くまで三つ同時に出来る?」

 私はレイジングハートに訊いた。

『可能です。貴女がイメージして力を用意してくれれば』

 私は建物の屋上に降りる。

「ちょっと降りてて」

 私はフェレット君に言うと、彼?は慌てて肩から降りた。

『杖を構えて下さい。カノンモードへ移行します』

 杖を言われた通りに黒いものに向けると、杖がガッションガッションいっ

て形を変えた。胸の奥が今までにない程に反応する。

「こ、この子砲撃型!?」

 フェレット君の声が聞こえるけど、何を言っているか集中してて分からな

い。照準が三つ同時に現れる。これが重なった時に撃てばいいんだよね。辛

抱強く待つ。そして、重なった。

 

「封印!いきます!!」

『シーリング』

 

 三つの光が物凄い勢いで黒いものに迫る。避けようとするけど、もう捉え

てる。光が三つ同時目標を捉える。

「やった!」

 フェレット君の歓声で、やっと力が抜けた。でも光が治まると宝石は紅い

光を放っていた。

「あれ?様子がおかしいような…」

「あれでもまだダメなのか!?」

『追撃を!』

 フェレット君とレイジングハートが慌てた声で言う。も、もう一度!だけ

ど、それはする必要がなかった。別の黒い人影が紅い光を放つ宝石に拳を打

ち込んだから。

 

久遠棺封縛獄(エーヴィヒカイトゲフエングニス)

 

 何かが宝石の中に送り込まれるのが分かった。それで青い宝石は紅い宝石

に変わって黒い服?鎧?を着た女の人に回収された。

「大丈夫ですか?」

「わっ!」

 突然声を掛けられて驚いちゃった。いつの間にか茶色の髪の女の人が立っ

ていたから。いつの間に後に立ったんだろう?だけど、そんな疑問はすぐに

無くなった。物凄く冷たい視線を黒い服の人から感じたから。

「ピッ!」

 フェレット君が情けない声を上げて固まった。私もだけど。

 

 これがレクシアさんとの出会いだった。 

 

 

 

              12

 

 ???視点

 

「いやはや、悪かったな」

 私は間一髪で槍の反撃を逃げ切った功労者に感謝をした。受け止められる

と踏んでいたが甘かった。出来るだけ時間を稼ぎたいという奴の依頼で来た

が、逆に迷惑を掛けてしまったな。

「あの方の命でなければ助けなかった。精々感謝する事だな」

 私を助けた女は、抱えていた私を放り出すように放した。

 

 あの槍の反撃の瞬間、この女が私を抱えて離脱したのだ。これが魔力を使

わない力だというのだから時代は変わったものだ。感心していると紅い光が

消えた。これは彼女だな。救援は間に合ったようだ。あのままなら勝ったと

勘違いした未熟な魔導士が感染し、身体を乗っ取られていたかもしれないか

らな。魔力の主同様に質が悪いようだ。

「向こうも流石に彼女が出てきたら終わったな。感染型魔力に浸食された物

でも、血液と魔法式が融合した封印では意味もないか」

「御託はいい。さっさと戻るぞ」

「分かってるさ。向こうはまだ本調子という訳ではないようだが、あれだ。

この身体、もう少し使えるようにしないと駄目だな」

 女は忌々しそうに舌打ちしただけで何も言わなかった。

 

 精々利用すればいいが、私は私で勝手にやるぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 美海はベルカでは結界を予め張っておくという習慣はありません。
 常に戦場にいたので。どうしても後回しになってしまいます。暫く
 は治らないでしょう。

 ユーノの思いなどは、凍結した作品で語った思いがあります。それ
 も語る事があるでしょう。

 調子の良し悪しが激しく最近進みが余計に遅くなっています。
 次回も長くなると思いますが、気長にお付き合い頂ければ幸いです。

 







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