「えっ?ちょ…え?」
「あら、今の自己紹介はかなり分かりやすくする為に譲歩したつもりなのだけれど」
いや、分からないのでは無く理解が出来ない。
意味は同じに聞こえるかもしれないが私にとっては月とスッポンだ、サーヴァント?グランド?ディーヴァ?召喚?挙げればキリがないが一つだけ確認せねばならない事がある。
「あの、女神様……マスターって」
「カリオペイアよ」
「あっえっはい、カリオペイア……さん、そのマスターって言うのは?」
カリオペイアと名乗る少女、身長は私より小さいけれど、何とも言えない神々しさで場を蹂躙する彼女はこう語った。
曰く、私と彼女はマスターとサーヴァントなる主従の関係である事。
曰く、マスターはサーヴァントに対して実質3回まで強制的に命令を下せる事。
粗方の事情を聞いた所でますます分からなくなる、元より彼女は何故私と主従の関係を結ぶに至ったのか?
「今回の召喚は特殊なのよ、貴女に言っても分からないと思うけれど、順序が逆なの」
「順序が逆?」
「本来だと、仮に貴女が私を喚ぶのであれば私に関する聖遺物を………あ〜ごめんなさい悪かったわ、要は私を喚びやすくする為の道具が必要なの、それで運が良ければ成功、晴れて貴女は私を喚ぶ事が出来るわ、でも今回の私は誰にも喚ばれずに現界した、その後に貴女が選ばれたのよ」
「私が……カリオペイアさんのマスターに選ばれた……」
「ホントに意味不明よね………まあ何となく、貴女が選ばれたのは何か意味があると思うのだけれど……」
「意味……?」
「さっきの説明で特殊な召喚だって事は分かってもらえたと思うけど、それもちょっと違うわ、確かに私は『誰か』に召喚されて現界した、けれど現界した瞬間には貴女が目の前に居たわ、………恐らくそいつは私を召喚したようだけど、この世界に召喚したのであってサーヴァントとしての契約では喚び出していないのかもしれないわね」
それに、とカリオペイアさんは私の手の甲を見て目を細めた。
「貴女に令呪が宿っている時点で、この召喚は誰かに仕組まれたって考えた方が良さそうね」
「令呪………?」
カリオペイアさんの視線を追うと、思わず短い悲鳴を上げてしまった。
「な、ななな何ですかこれ!?」
「気づいて無かったの?さっき説明したサーヴァントに3回だけ強制的に命令できる権限、そして私との契約の証…それが令呪よ」
自身の左手の甲に刻まれた真紅の紋様、一目で分かる程の異様な力の波動、いつの間にこんな恐ろしい物が植え付けられたのか、焦燥が卯月をみるみる呑み込んでいく。
「安心なさい、それは貴女に害を及ぼす事は無いし、いざという時には役に立つのよ?」
「いざという時……これってどうやったら消えるんですか?」
「簡単よ、私に命令すれば一画消費されて紋様の一部が消えるわ……今使うのはあまりオススメはしないけれどね」
そうカリオペイアさんが言うのであればそうなのだろう、しかし命令をするとなれば何を命じれば良いのか?一刻も早くこの令呪を手の甲から消したいが、カリオペイアさんには今使うのは得策ではないと言われてしまった……
「そんなに気にしなくていいわよ?流石に令呪を見られるのはあまりよろしく無いから、私が他人には見えない様に工面するわ」
「そ、そうですか……どうやって?」
「こうする」
カリオペイアさんが近付いてくる、間近で見るとその美しさの輪郭が鮮明になり、思わず見蕩れてしまいそうになる、そんな私に構うこと無くカリオペイアさんは私の手の甲に手をかざし令呪が光ったと思うと
「ってえええええええ!!!??」
「うるさいわねぇ……何?召喚やら令呪やらの話をしたのに今更驚く事も無いでしょ」
「そうは言っても実際に見ると驚き位はしますよ!」
しばし卯月でも気づいていなかったが、カリオペイアという超常の存在に卯月は少なからず興奮を覚えていたのだ、そこに自分の常識では考えられない様な事が起きれば誰だって我を忘れてしまうだろう。
「もっもしかして……これって魔法…?」
「………なんていうか、無知って怖いわね」
「違うんですか!!?」
「急に目がキラキラしてきたわね……そうね違うわ、これは魔法じゃなくて魔術、根源に至る為の秘匿されるべき技術よ」
そういいカリオペイアは卯月の手を離した、確認すると物の見事に手の甲からは令呪の紋様は消えていた。
「貴女に施したのは認識阻害の魔術、貴女を含めて一般人にはその令呪は見えないわ」
「凄いです!これって……私にも使えたりするんですか!!」
「………………………まあ、私をこの世に繋ぎ止めれると言うことは、それなりの魔力は持っているようね」
「ホントですか!?」
「でも私は教えないわよ」
その言葉を聞いて卯月は愕然とした。
「何でですか!!?」
「一般人が魔術なんて使ってみなさいな?もしそれが他の魔術師にバレでもしたら貴女殺されるわよ?」
「こ、殺される……」
その口調から嘘ではないのは分かった、どうやら私が思うほど魔術はメルヘンでは無いらしい、幼少からの憧れが一つ砕けた感触を覚え、やや落ち込み気味の卯月にカリオペイアは何か思い出したのか口を開いた。
「そういえば私、貴女からまだ聞いていない事があるわね」
「聞いていない事?」
「名前よ名前、マスターの名前も知らないなんておかしな話でしょ、それにずっと貴女呼びは疲れるわ」
そういえば名乗っていなかったなと卯月は失念する、カリオペイアのようにはいかないが少しだけ気丈に振る舞い口を開ける。
「島村卯月、17歳です!何だがよく分からないけど……カリオペイアさんのマスターとして頑張ります!!」
「卯月ちゃん誰と話してるの?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
突然の声に驚き振り向く、どうやら帰ってきたトレーナーさんに見られてしまったようだった。
「あっあの、トレーナーさんこの人は…」
「この人?」
「えっとその……なんというかその……」
「大丈夫?卯月ちゃん、私達以外には誰もここに居ないわよ?」
「…………え?」
後ろを振り向く、カリオペイアの姿は何処にも無い。
「あ、あれ?………」
「もう卯月ちゃんたら、レッスンを頑張るのも良いけど、頑張りすぎるのもダメよ?」
「あっ……はい、気をつけます…?」
どうにも腑に落ちない、カリオペイアは何処に行った?、疑問だらけで混乱するがトレーナーさんはそんな私に気付くことなく話を続ける。
「それでね卯月ちゃん、今日は貴女に会いたいって人が来てるのよ」
「会いたい人?」
ガチャリ、と養成所のドアが開く音が聞こえた、トレーナーさんがあの人よ、というと黒いスーツを身にまとった背広の広い男の人が静かにお辞儀をした。
(へぇ………いきなり呼ばれて、無理やり帰ってしまおうとも思ったけど、なかなかどうして面白いのがいるじゃない、それにあの子…魔術師でもないのに魔力を保持してる?……よく分からないけれど今還るのは早計のようね)
やっぱりオリ鯖は動かしやすいですね。
異聞に逆らう者達では不死や狩人が何かするたびゲームの方で確認取ったりしなければいけないので。