「いいわ、貴女を認めてあげる。
私の本気の弾幕を見せてあげるわ」
「…はあ、はあ、やっとだ。
ここから、はあ、やっと面白くなってくる、ところか。
ゲホッ、ゴホッ!」
魔理沙の体は既に限界だった。
常に自分の全力を休むことなく、魔女の一挙一投足に注意をしながらの弾幕展開は想像を絶する程の疲弊を招くだろう。
それでも魔理沙は諦めていない。
自分の体がボロボロになっていようが、自分より強い強者との戦いだろうが関係ない。
なぜならーーー
「貴女はそんなにボロボロなのに、どうしてまだやるのかしら?
絶対に勝てる訳が無いのに」
「言っただろう。
勝てるか、勝てないかじゃ、ない。
はあ、はあ、私は勝つって」
ーーー魔理沙は自分が勝つと信じてるからだ。
「本当にそう思ってるのかしら?
本当に…貴女が、私に勝てると本気で思ってるのかしら?
それなら滑稽な話ね。
唯の人間が少し齧っただけの魔法が、本物の魔法使いの魔法に勝てる訳がないわ
アリが人間に勝てる訳が無いように、貴女が私に勝てる訳がない」
「……すう、はあ。
お前の言いたい事はそれだけか?
それならお前に教えてやるよ
世の中は本の世界より奇妙な事で満ち溢れているって事を。そして、唯の人間が魔法使いを倒す事だって出来るかもしれないだろう?」
「ふん! そんな事は絶対に有り得ないわ
例え、本当に世界が奇妙な事だらけで、毎日が摩訶不思議な事が起こったとしても、貴女のは唯の有り得ない妄想。
教えてあげるわ。
どんなに頑張っても、どんなに考えても、決して越えられない種族の壁がある事を。
食らいなさい! 火符「アグニシャイン」」
魔女のスペルカードは自身の周りに魔方陣を展開し、自身を中心に炎の玉の弾幕を展開する。
それを見た魔理沙は箒に股がり宙に浮かんだ。
「へっ! それがお前の弾幕かよ
穴だらけでそんなの避けるの何て余裕だぜ!!」
魔理沙は弾幕の間を通って魔女の所に向かおうとした時に違和感に気づいた。
…あれ?
この弾幕ってこんなにデカかったっけ?
魔理沙が感じた違和感は魔女の弾幕の大きさだ。
最初は手の平に収まるぐらいのサイズの弾幕は、通ろうとした時には自分の両手では収まらない程の大きさになっていた。
そうこうしている内にも弾幕はどんどんと大きくなっていた。
「…!!? これが何か分からないが、速めに避難しないとヤバイ!!」
魔理沙は魔女から逆方向に進路を変えて避難する。
その後に魔理沙が居た所の弾幕はどんどんと膨張していって最後には大きな爆発を起こした。
「ふう、危なかったぜ!
私があのまま突っ込んでたら、間違いなく全身を焼かれてただぜ」
魔理沙は弾幕から距離をとる。
いくら時間差で爆発する弾幕とはいえ、遠くに離れてさえいれば、その弾幕は効力を失う。
「ふーん、考えたわね
私のアグニシャインの爆発範囲はそんなに広くはない。
貴女の考え通り、遠くに離れていれば私の弾幕の攻撃は貴女には届かないわ。
だけど、貴女はそこからどうやって勝つのかしら?」
「さあな?」
「えっ?」
魔女はこの戦いで初めて疑問の声をあげた。
「どうやって勝つかは考えていない
だけど、私はお前には勝つ!」
自信満々に魔理沙はそう答えた。
その言葉に魔女は苦虫でも噛み潰したような顔をした。
「勝ちへのイメージも無いくせに、勝利宣言とかなめてくれるわね。
これだから貴女みたいな人間は嫌いなのよ」
魔女の心からの本心。
例えようのない不快感は魔女の声に、顔に、思考に、そして、行動に出た。
「消えなさい! 「火符」アグニシャイン!!」
今までの彼女からでは考えられない様な直情的な攻撃は魔理沙にとって絶好のチャンスだった。
その一瞬の隙を魔理沙は狙っていた。
「行くぜ! 「恋符」マスタースパーク!!
最大出力だぁーー!!!!!!」
魔理沙は箒に乗り、魔女の弾幕にマスタースパークを放つ。
魔女の弾幕は一瞬でかき消え、マスタースパークは威力を弱めずにそのまま魔女へと直進していく。
「なっ!? 私のアグニシャインを全て打ち消したと言うの!!」
「喰らいやがれ! これが私の魔法だぁぁぁぁぁあ!!」
魔理沙のマスタースパークが魔女に直撃し、激しい光と黒煙を発生させている。
「はあ、はあ、はあ……」
魔理沙は息を整えながらもゆっくりと下へ降りていく。
地面に足がついた時に魔理沙は体勢を崩してしまい、床に大の字で寝転がる。
「…はあ、はあ。
へへ、へへへ…やってやったぜ
勝ったんだ、人間の私が勝ったんだ!」
魔理沙の弱々しい勝利宣言は確かに図書館に響いた。
だが、その声に反応する声は無かった。
「……さて、異変の首謀者らしき奴は倒したし帰るか。
霊夢の悔しがる顔が今にも目に浮かぶぜ!
…いや、霊夢なら楽出来たから喜ぶかもな」
魔理沙はガクガクと震える足で懸命に立った。
「へへ…本当にお婆ちゃんみたいな気分だぜ!
そうだ、この時の為に作った魔法薬があったんだ」
魔理沙はおもむろに自分の帽子に手を突っ込む。
帽子からはフラスコの様な物に緑色の液体が入っている薬が出てきた。
「さてさて、効果はどんなものかな?
…んぐんぐんぐ、ぷはぁ。
うげぇ~、味はめちゃくちゃ不味いな。
魔力回復率と体の疲労効果も大した事はないな
もう少し改良の余地があるな
さて、残りも全部飲むか」
魔理沙が残りの魔法薬を飲もうとした時にーーー
「ぐっ!? なんだ!!」
ーー魔理沙の魔法薬が爆発した。
魔理沙はすぐに本棚の影に隠れ、自分を攻撃したヤツを確認する。
辺りを見回してもそれらしい影は居なかった。
「くそ、誰だ!出てこい!!」
魔理沙の声に反応をする様に大量の弾幕が撃たれた。
「まだ終わっちゃいないわ、人間」
声は魔理沙の真上から聞こえきた。
「お前は!?
嘘だろ…私のマスタースパークは確かにお前に直撃した筈だ!
それなのに何でまだ動けるんだ」
「…ええ。
貴女の攻撃は確かに私に届いたわ。
お陰で左手はほとんど使い物にならなくなってしまった。
だけど、間一髪で私のスペルカードが間に合ったお陰で私はまだ戦える」
紫の魔女は一呼吸をおいて魔理沙を睨み付ける。
「よくも私に傷をつけてくれたわね、人間。
お前は私の手で完膚無き迄にぶちのめす!
絶対に許しはしない」
紫の魔女のさっき迄の冷静な表情からは考えられない程に怒りを顕にしている。
「…は、はは、あははは!」
「何が可笑しいのよ
貴女は私をバカにしているの!」
紫の魔女の怒りや、憎しみは魔理沙を昂らせた。
「…すまん。
気分を悪くしたなら謝る。
私は嬉しいんだ!!」
「嬉しい? 貴女は何を言っているのかしら。
恐怖の余りに頭が可笑しくなったのかしら」
「いや、違う。
お前が私を敵として認めてくれたのが嬉しいんだ!」
魔理沙の声は図書館に響いた。
「私が貴女を敵として?
そんな訳無い、私が人間の貴女に敵意なんて……」
「いや! お前は私を敵として認めたんだ!!
さっきの怒りや憎しみ、殺意がその証拠だ。
最初の石ころを見る様なお前と、今のお前の眼は全然違う!
殺意を持って私と戦おうとしていーー」
「うるさい!
あんたの声なんてもう聞きたくもない!
「水符」プリンセスウンディーネ!!」
紫の魔女は水の弾幕を展開し始めた。
水の弾幕はドリルの様に先端が鋭くなり、細くなっている。
人を殺す事に適した弾幕。
「おいおい、随分と物騒な弾幕を使うんだな。
名前からは想像出来ない程に殺意が高いぜ!
本当の、お前の弾幕はもっと美しいんだろうな…」
「うるさい!うるさい!!
知ったような口を聞くんじゃない!」
魔女の弾幕は、魔女の言葉を皮切りに発射された。
魔理沙は箒に乗り、弾幕を避けていく。
「なんだよ、その大雑把な攻撃は!?
全然当たる気がしないぜ!もっと本気で来いよ!!」
「調子に乗るな、人間!」
魔理沙の挑発が頭にきた魔女は更に弾幕を展開していく
「ちっ! 流石に避けずらくなってきた。
こうなったら覚悟を決めるしかないぜ!」
魔理沙は紫の魔女へと方向を替え突進する。
「ふん! 何をしてくるかと思ったら、そのまま突進するなんて余程死にたいようね!
なら、お見舞いしてあげるわ! 私の弾幕をーー」
向かってくる魔理沙に弾幕を構え、放つその時に魔女は口元を抑え、動きを止めた。
「弾幕とアイツの動きが止まった? 何が起きてるか分からないが…今しかねぇ! 行っけぇぇぇぇぇえ!!」
魔理沙の渾身の突進に魔女はガードも、弾幕による迎撃も間に合わずモロに喰らってしまった。
突進を喰らった魔女は3~4mは吹っ飛んでいった。
「ぐっ! は、っあ! はあ、ゲホッ! ゲホッ!!
ふ、ざける、なぁ! 何で! よりによって!!
こんな時に、喘息が! ゲホッ! ゲホッ!
あと…少し、ほんの…ちょっと、ゲホッ! ゴホッ!!
だった、のにぃ!」
魔女は咳をしながらも懸命に立とうとしていた。
「…紫の魔女よ、私の勝ちだぜ」
魔理沙の囁く様な小さな声は静かな図書館では大きく聞こえた。
「ふ、ふざけ、ゲホッ! るなぁ! ゴホッ!」
紫の魔女は魔理沙の言葉に反応した。
肩を震わせながら怒りを顕にしている。
「お、前達、ゲホッ! 人間は少し、有利になった、ゲホッ! ぐらいで、勝った気になる! ゴホッ!
まだ、終わっちゃいない、わ!」
「……ああ、お前の言うとおり私たち人間はちょっと有利になると直ぐに慢心をし、手を抜くだろう。
これが人間の悪癖であり、美徳でもある」
魔理沙は紫の魔女に近づいていく。
「なにを、ゲホッ! ゴホッ! ゲホッ! はあ、はあ、
する、つもりなの?」
「お前や妖怪達は自分の邪魔になる者、不要な者は直ぐに殺してしまうだろう。
お前達は自分の事が一番大事で、他人なんてどうでも良いと考えてる筈だ。
だが、人間は違う。
人は一人では生きていけない。
もし、人間がお前達みたいに自分優先の考え方をしていたら人間なんて直ぐに滅びるだろう。
だから、人間は慢心をし、手を抜き、人を助ける事が出来る。
私は人間に生まれてきて良かったと思ってるんだぜ?
目の前で死にそうな魔法使いを助ける事が出来るんだからな」
魔理沙は倒れている紫の魔女を起こし、自分の魔法薬を飲ませた。
「っ!? あなた、いったい、何を飲ませたの」
「何って、魔理沙さん特製の魔法薬だぜ!
ちょっと飲んで寝て起きたら全快復するような奴だぜ!」
「ふ、ざける、なぁ……」
魔女は最後の言葉を言う前に眠りの世界へ行ってしまった。
「ふ~、相変わらず凄いな。
この薬一口飲んだら寝て起きたら全快するけど10時間は寝続けるから、あんまりこういう異変解決の場では使え無いから、新しい薬を作ってみたけど…あっちは眠くならないけど、回復量が無いから使えないし…さて、どうしたものかな~」
久しぶりです!
1年間以上失踪してたfate信者です
今回は書きたい部分を書いたら凄い量になってしまいましたが見て頂けたなら幸いです。