マクロスプラス reverberation of Sharon   作:gad

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第1話 もしも英雄ならば

 星の周りに、白い首輪がきらめいていた。それも一つだけではない、数えきれないほどの首輪が、青い星、地球の周りを取り囲んでいた。

 

「こちら、アリス1、これから地球圏へ突入する」

 

 村雨ユーリの声が、その星を前にして響く。VF-171ナイトメアプラス、統合軍の誇るバルキリーを駆り、地球へ突っ込んでいく。

パイロットスーツに身を包み、軍人らしい体つき、しかし、ヘルメットの隙間から見える顔はまだ若い青年である。

 

「こちらアリス2、私も突っ込む」

 

 彼の相棒、河野まどかの透き通った声も響く。彼女もナイトメアプラスを駆り、彼とともに宇宙を舞う。

そう、彼らは、地球にバルキリー2機だけで突入という、なかなか無謀なことに挑戦しているのだ。

 

 遠い昔、もう半世紀前に地球は破滅の危機に陥った。かつて宇宙で一大栄華を築いたとされているプロトカルチャーが生み出したゼントラーディの戦いに巻き込まれたのである。

そこで人類の大半を失った地球は、二度とこの悲劇を繰り返さないためにも徹底した防備を図ることになったのである。

 それこそいま彼らが突っ込もうとしている首輪、防衛衛星の帯なのだ。

 

 

 警告音がコクピットに響き渡る。地球に接近しすぎたため、首輪からロックオンされたのである。さらには警告信号、この宙域から去らなければ攻撃を加えるというものだ。

 

「まあこんなものは無視よね、邪魔なあれは壊してさっさと突入しましょう」

 

「アリス2よ、まあ簡単に言いますな。ただやってみせる」

 

2機は当たり前のように警告を無視し、速度を緩めず、突っ込んでいく。もちろん、そんなことをされたら首輪は黙っていない。搭載されているミサイル、ロケットランチャーを嵐のように浴びせかけた。

 

宇宙に、白い閃光が放たれた。

 

「アリス1、機体は大丈夫?」

煙の中に少しだけ消えた相棒を少しだけ心配する声。

 

 煙の中では対空迎撃レーザーが舞い、彼の機体が健在なのを示していた。エネルギー転換装甲も破片ぐらいは簡単にはじく。つまりほぼ無傷である。

 

「まあ当たっていないよ。さてこちらも反撃だ。アリス1、フォックス3」

 

 ナイトメアプラスの翼からもマイクロミサイルが斉射される、糸を引くように舞うミサイルは先ほどとは違い、防衛衛星に直撃、炎の花を次々と咲かせてゆく。

 

「私も続く、フォックス3」

 

 続けて放たれた追撃により、首輪は次々と落ちていく。こんなにもろくていいのかわからない防衛装置。ただし、ただ落ちるだけではなく、嵐のような攻撃は続く。

 

 それに対し、彼らは、ある時はガウォークに、ある時はファイターにと変形しながら、スラスターを噴射させながら避けていく。しかし、さすがに無傷とはいかないようだ。

 

「アリス2、右腕にミサイルの欠片被弾、まだやれるが十分ごまかせるレベルまで落としたわよね」

 

「アリス1、こちらは右足部被弾、まあ何とか突っ込める、そろそろ紛れ込みますか」

 

 まあ、過去の英雄が行ったようにはいかないまでも、彼のまねをするくらいの実力はある彼ら。少々の損傷をもらいながらも初期の目的、地球圏突入に移るようだ。

 

必死に回避をし、ファイターで離脱、突入を図る。AVFシリーズではないもののこのVF-171、あのVF-17を一般向けに改良したものとはいえ従来機の中ではトップクラスの加速性能を持つのだ。

 

この機体は、彼らの望むように火の花に隠れることに成功し、地球圏へと降り立ってゆく。

 

「まあ1stステージはクリアってことね、アリス1」

 

 首輪からのロックもはずれ安心して地球に降りれるようになったまどかの声が聞こえる。

 

「まあ、これは予定通り、損傷も予定よりはだいぶ抑えられた。本番は意外と何とかなるものだね」

 

「本番は次よ、ユーリ。次に出てくるあれをどうにかするのが私たちの目的なのだから」

 

 そう、彼らは地球にある、ある物を壊すために降りるのであった。

 

 

 落ち着いて、降下できたかのように見える彼ら、安定したファイターによる飛行体制が整ったかどうか位の時に、また警告音がコクピットに響きわたった。

 猛烈な速度で彼らに向けて突撃してくる何者かをレーダーがとらえたのだ。

その速度は人間が乗っているならば、確実にブラックアウトするであろう速度だ。それが示すのは、この機体の正体である。

 

「お目当てのものがお出迎えしてくれるみたいだよ、アリス2」

 

「そうみたい、練習としてもあれだけには負けたくない、アリス1、援護よろしく」

 

 軽く会話をしているつもりだったユーリ、しかしまどかは何を思ったか、その高速機、無人戦闘機ゴーストに向けて突撃していく。

 

「私は、こいつにだけは絶対負けたくない、アリス2フォックス3!!」

 

 この言葉とともに、マイクロミサイルが今度は空を舞う。しかし相手はゴーストX9、ただの牽制のミサイルにあたるわけがない。その機動性を生かし、ミサイルを振り切って、速度を緩めずに彼らに突っ込んでくる。

 

「まあ、それは分かっていたわ、こっちが本命よ」

 

と、彼女は肉薄する敵の目の前でバトロイドに変形し、ガンポッド、レーザー機銃を全弾ばらまくように打ち始めた。突然の変形と攻撃に一瞬だけ、躊躇を見せてX9は回避行動に専念する。

 

「後ろの尻拭いするこっちの身になってくれよまどかさん、ってわけでフォックス3!!」

 

 ユーリ機がその隙を見せたX9に向けてマイクロミサイルをたたきこんでいく。20ほどの糸が、直撃したかのように見え、X9がいた空域に煙がもくもくとたちのぼる。

 

「やったか」

 

「こんなにもろいはずがないわ。防衛衛星より楽なわけがないじゃない」

 

その言葉の通り、煙の中に姿を隠していたのは一瞬であった。

煙を切り裂くかのように出てきたX9は上空で変形し、隙だらけのまどか機におそいかかる。

 

「当たるわけにはいかないのよ、こいつだけには」

 

そんな彼女の言葉とは裏腹に、ビーム砲がVF-171の翼を切り裂く。機体の警告音はパイロットに脱出を呼びかける、しかし、そんな余裕もなく、第2撃が彼女の機体に突き刺さった。

 

「まどか!!!!このちっくしょう」

 

彼女を救おう突込んできたユーリ機にも、X9は牙をむく、まどか機を落としていないビーム砲が彼の予測される進路にくけて、繰り出される。

 

「簡単に落ちてたまるか!!」

 

 その予測を外すためにこれまた目の前でガウォークに変形し、突撃を仕掛けるユーリ。しかしこれもまたX9には読まれていた。

 

 その修正進路にミサイルがばらまかれる、糸のように線を引くミサイルが彼の機体にハリネズミのように突き刺さり、爆発。彼の機体も地面へと落ちていくのであった。

 

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