マクロスプラス reverberation of Sharon 作:gad
ユーリたちが星を楽しんでいる中、ウンディーネ宇宙港ではコバヤシマルからの貨物の積み下ろしが到着してから、休みなく続けられていた。小型船が宇宙港に着陸し、荷物を下ろしたらまた軌道上に戻る。5隻の小型船がそのローテーションをずっと繰り返しては、アクアに物資を上陸させていた。
これは、コバヤシマルは大型輸送船なため、軌道上に本艦は残り、小型船が往復することによってエネルギーをより効率的に消費する輸送形式をとっているのだ。
手間がかかり、また時間のかかる積み下ろし作業の間は軌道警備も厳戒態勢を取っている。一番襲撃しやすい入港して船が全く動けない時間となるからである。そこにはもちろん、アクアのニューラングレー基地の軍人も駆り出されていた。とはいっても田舎の新統合軍。危険もないため、緊張感が薄い警備体制となってしまっていた。
そして警備内容も、電子戦専用機が哨戒しその周囲を護衛が付くというシンプルだが手間のかかる作業なため精神的に疲労がたまる作業となっていた。
「ふぁぁぁ。警備ってめんどくせえよなあ。実際襲ってくるバカもいるわけがないんだし、俺たちがいる意味があるんですかねえ」
「そうだよなあ。早く終わりたいぜ。けどあと3時間。だるいけどなんとか耐えようぜ」
このように空母の休憩室でも交代人員が、だるい、めんどくさい、やりたくないの三重奏を奏でていた。帰投直後ならともかく、次の交代要員である彼らが悪態をつくという誰もがやりたくない任務。それが警備任務であった。
「しかし何で、そこまでの大型船がアクアに来るのかね。もう大抵のものは自給できるようになっただろうに」
「さあな、そんなの俺たち下っ端には関係ない。どうやって次からの3時間に耐えようかのほうが問題だろ」
「まあ、何も起こらない仕事で給料もらってるんだ。少しはまじめにやろうや」
そんなだらけきった空気の中、突然甲高いアラートが鳴り響いた。そしてオペレーターの焦った声がスピーカーから流れてきた。
「警戒レベル1から5へ、警戒レベル1から5へ。敵襲です、敵襲です。これは訓練ではありません。敵襲です」
「うそだろ、おい。どこのあほだよ。統合軍相手に仕掛けるなんて!!」
「知らねえよ。くそ、面倒事ばっかりじゃねえか。だから警備任務ってだから嫌いだぜ」
アラートのなか、愚痴る統合軍の面々。自分たちの仕事の重要性は理解しているもののやる気といいうものをすり減らし続けた軍人の姿がそこにはあった。とはいえ、彼らもプロではある。休憩室からすぐさま自らの機体のところに向かう。さまざまな悪態をつきながらではあるが。
そして、そんな彼らより一足先に出撃するのは、無人戦闘機「ゴースト」であった。
中に乗るもののことを全く考えられていない、その機体は、次々に無茶な加速を行い、襲撃部隊のいると思われる想定宙域に飛び立っていく。熱核エンジンの性能をリミッターぎりぎりまで使用するその加速は、一本の線のように戦場へと延びていった。
「ゴースト部隊出撃完了、アップル1,2,3,4,5.すべて計器、通信に異常はなし」
「よし、とりあえずは奴らに任せる。有人機の連中はゴーストを抜けてきた敵を処理しろ」
無人機射出が完了したブリッジでは、次々と情報が舞い込んできていた、とはいっても戦力、機種が不明。犯行声明が事前に送付されてきたという謎めいた襲撃なため混乱もからりは見られている。先ほどの指示も通常通りの対応ではあるが、少しだけ不安を感じているブリッジの雰囲気であった。
「艦長、とりあえずはこれで安心ですね。」
「さてな、私の知る限りゴーストを超えた敵は無傷かボロボロであるかのどちらかだ。まあ大抵は後者だ。気楽に行きたいものだね。」
「まあ、あいつらを超えられるものはロイ・フォッカーとかイチジョーとかのような英雄だけでしょうしね」
そんな、オペレーターと艦長の希望的観測は、ゴースト部隊の全機ロストという凶報によって打ち砕かれるのであった。
そんなことが起こっていることを全く知らないユーリたちは、天文台から帰宅の途にあった。いまだ正式着任もしておらず、休暇中の士官ならば仕方がないことではあるが。
星を見た後のユーリの気持ちは晴れやかであった。星の海という言葉は知っていた。実際にその美しさも十分認識していたつもりだった。だが、星の美しさを楽しむという行為は、移民船団育ちの彼にはなじみが薄く、どちらかというと飛ぶための場所と思っていた星の美しさに感動したのだ。
「ね、来てよかったでしょ」
自慢げに彼に語る相棒、実際予約を取ったのは彼女の妹なのだが、なぜか自分の功績にしている。屈託なく笑い、自然体でいるまどか。いつものようにクールなわけでもなく、学校にいたときとは違う、そしてともに飛んでいるときとは違う彼女を見て、ユーリは少しだけ見惚れてしまっていた。
「ああ、とてもよかったよ、自分の飛ぶ宇宙、空の美しさを改めて知ることができた。ありがとう」
「あら、そこまで感謝されるとは思わなかったわ。ちょっとむず痒い感じがする」
「おい、そりゃないだろ。まあいいんだけどさ。」
彼らの後ろにはすみれもいるのだが、2人は勝手に盛り上がって軽口をたたきあっている。そのすみれとしては、久しぶりに帰ってきた姉が、自分のことを忘れてデートを楽しんでいるように見えた。このような姉を見るのは初めてだったのでかなり新鮮に感じていたのだが、はっきり言って居心地が微妙に悪い。台長も言っていたが馬にけられそうな気がするのだ。
「じゃあ、今日は先に私はうちに帰っちゃうね。お姉ちゃん。まだ2人は飲んだりするんでしょ」
「いやもう帰るわよ。今日はもう遅いし、父さんともまだ顔を合見せてないんだから。」
このように先に帰ろうとしたのだった。だが、その声で2人だけでないということを思い出したユーリとまどか。特にまどかは恥ずかしそうになりながら返答する。だが、そんな返答だけでは、すみれもとまらなかった。
「あら、本当にそれでいいんだ。まあ、2人がいいならいいんだけどね。それでユーリさんは今日は宿舎に泊まるってきいてるけど、父さんとかにあいさつにはいつ来るのかな?」
「明日には行くよ。バディだし、こんな機会はあんまりなさそうだしね。」
「本当にそれだけのあいさつで済むのかしら?父さんもユーリさんを見てどう思うかなぁ」
「もう、すみれったら。いい加減にしなさい」
こんな風にずっとすみれは2人をからかい続け、楽しい時間がいつまでも続くと思っていた。
彼らの上を、5つの流れ星が落ちていく。
「きれいな流れ星、お姉ちゃん。なんか願い事した?」
「さてね、すみれはなにかしたの?」
「お姉ちゃんたちがずっと仲良くなれますようにって」
「だから、すみれ。からかうのはやめなさいって」
そして、笑いあう2人。このように笑顔ばかりの楽しい一日はこうして終わった。
そんな彼らの休暇もあと1日。だが、その休暇の最中に招集がかかるとは誰もこのときは知らなかった。