マクロスプラス reverberation of Sharon   作:gad

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第14話 Supercalifragilisticexpialidocious

 

ニューラングレー。そこはアクア全体の軍事を統括する基地であり、アクア方面新統合軍の総本部である。とはいっても、そこ以外にはほとんど駐屯地もない名ばかりの総司令部ではあるが、規模としてはマクロスシティの半分というなかなかの大きさを誇る基地である。中央司令部にはミニマクロスともいわれる、タイタン級空母が鎮座しており、遠目から見るとプチマクロスシティともいえる形容である。

そこに、一台の地上車が走っていく。ユーリとまどかが乗っている民生用の地上車である。招集時間の30分前という軍人としてはぎりぎりの時間ではあるが、なんとか彼らは準備を整え到着することができそうであった。

 

 

「何とか召集には間に合いそうだね」

 

「何とかで本当に良かったわよ、このアクアじゃほとんどありえない渋滞にかかるとか私たち、ちょっとどころかかなり運が悪いわ」

 

「まあ、初陣が任地に向かう途中とか、ふつうはありえないような出来事ばっかり当たっているしなあ」

 

アクアの人口規模と開発具合からして渋滞はほとんどありえない、そういった常識は今回は裏目に出たようである。そして初陣が輸送中なのもこの平和な時代では天文学的にありえない事態である。

 

そんなことを話しているうちに車は、基地備え付けの民間用駐車場に到着し、そしてそこから降り立つ二人の姿は、もちろん軍服である。ただ、アクア到着のころの礼服とは違い実用的なシンプルなデザインの服であり、この上にヘルメットをつけるだけでパイロットスーツ代わりになる、とんでもない代物だ。

そんな格好の二人は、車を止めた直後からものすごい勢いで走り出す。新任としての初めての任務に遅れるわけにはいかないためではあるが、通り過ぎる人からは、

 

「何であんなにあわててるんだ?」

 

といった視線を浴びせかけられている。そんなことより自分たちの遅れであわてている彼らは何も気にしない。

 

「さて、ここからは正面受付で認証を受けてから、ブリーフィングルームに直行すればいいわけだ」

 

「そうね、グエンドリン大尉の連絡では受付横に、自動運転車を用意してくれているそうだからそれにのって、奥のブリーフィングルームのあるところへ行けば間に合うはずよ」

 

というまどかの言葉通りに話は進んでいった。正面受付の個人認証は地球ではありえない速度で終了し、話通りのオートカーが準備されてあり彼らを基地心臓部へと運んでいく。緊急事態とはいえ簡単に中央部へと進んでいく状況にちょっとだけ不安を覚えつつも、彼らは時間前、30分の時間でブリーフィングルームへとたどり着いたのであった。

 

 

「お、やっと新入りのお出ましか、余裕の到着だな」

 

「そりゃ、お前よ。あのお二方は地球で士官教育を受けたエリート様だからな、殿様出勤でも問題ないのさ」

 

急いで彼らが、ブリーフィングルームに到着したのは0900と開始前としては、ぎりぎりの状況。ほとんどのパイロットが部屋には詰めている状態に走りこんだわけだから、目立たないわけがない。からかう声が四方から飛んでくる

「申し訳ございません。出頭命令を受領後急ぎ準備したのですが…」

 

「まあ、こんな星の緊急任務だなんてたかが知れている。そんな感じで大丈夫だ。ラングレーへようこそ、お二人さん」

 

「そうそう、死なない程度に頑張る。そして平和を守るためにやれる範囲でできる限り頑張る。これが統合軍人として理想的な生き方さ。」

 

2人をからかったパイロットたちだが、アクアの状況は、先日の警備上のトラブル以外緊急事態といった緊急事態は過去なかったため、かなりおおらかである。平和だからこそ生れたゆとりともゆるみとも言えるものだが、この状況だからこそか、彼らの関係はいつも良いものであった。

 

「さて、突っ立ってばかりでもなんだ。ブリーフィングが始まるまで簡単な経歴を教えてくれや、これから一緒にやる仲間なんだ。」

 

「と、隊長もおっしゃっている。ちなみに俺はマルス。生れはボルカン。何の因果か、適当に暮らせる異動先を探してたらここにきた、この中では若者を名乗っていたが、そろそろきついな。モンスター乗りなんだが、ここのはぼろくてなあ」

 

「じゃあ次は私だな、名前はボルズ。生れは一応ニューエデン。あのエースの出身地として有名なところだが、まあ私は後方の狙撃担当なんで。あまり期待はしないでくれよ」

 

 

そんなゆるい雰囲気の中なので、新入りとも打ち解けようとしていく雰囲気をうまく作っていく先任たち。次々と自分の経歴やポジションを紹介していく

そのなかでも、ブリーフィングルームで一番だれた雰囲気で座っている男が最後にあいさつをする。

 

「で、最後に俺だな。リード、空を飛びたくてここまで来たおじさんさ、というわけでいろいろ長くなったがお前らの自己紹介、頼むぜ」

 

「隊長、それじゃよくわからないですよ。一応この基地で一番勲章を持ってるんですから、エースとしてそれらしくしてくださいよ、ってことで君たち、リードヒギンズって端末で調べてみな。なかなかすごいおじさんなんだから」

 

そういわれて、携帯端末をオープンし、軍用経歴のページで検索する二人。そこにはこのリード少佐が、かなり尊敬を受けているのがわかる戦歴が乗っていた。

15年前の軍システムダウンの際の反乱対応、10年前のラクテンスとビンディランスの内戦、ほか小規模なはぐれゼントラーディとの戦い等々さまざまな戦いに参加し、生き残ってきたのがわかる経歴。チタニウム勲章、シルバースター勲章等々ものすごい戦績を持った男であるのがわかる。

 

「だが、実態はこんなおじさんさ。まあ適当にやろうぜ。あくまで同じパイロットとしてみてくれよ」

 

そういってリードは、また深々と椅子に座った。経歴を聞いてからだとその恰好も歴戦の猛者に見えてくるのが不思議であった。おそらく聞いていないとうだつの上がらないサラリーマンにも見えてくるはずだが、人は見かけだけでは決められない一例であろう。

 

「さてやっと新入り達の番だ、じゃあまずは男のほうから」

 

 

「はい、では。村雨ユーリ、フロンティア船団出身でアカデミーを先月卒業したばかりの新入りです、なにとぞよろしくお願いいたします。」

 

「続いて河野まどか、村雨と同様、アカデミーを先月卒業したばかりの新入りよ。故郷はこのアクア。2人ともどもよろしくお願いするわ。」

 

とようやく二人の自己紹介に入ったときである。2人の見覚えがある金髪の尉官と一人の将校、そしてその後ろにオペレーター多識人物がぞろぞろとブリーフィングルームに入ってきたのであった。

それを見て、指定の位置に移るパイロットたち。なんだかんだ規律はしっかりしているのが軍隊ではある。姿勢を正し、一応指揮官の声を聴く体制に入る。

 

 

「諸君、今回の招集は、過去最大のアクアの危機である。心して聞くように」

 

そんな緊張の中、マルティン少佐が発した言葉に、笑いが出る。辺境の惑星の危機などそんなに大きくても海賊の襲撃ぐらいだからだが…

 

「過去最大って、なんでしょうかね?ゼントラでも来ましたか」

「笑うな!!貴様らが勝てないゴーストが5機落ちた。こんな状況で笑ってるんじゃない」

 

マルスの軽口に、過剰に反応するマルティン。マルティン自体がパイロットを信頼していない同様、マルティンも同様にみられているのだが、その言葉に部屋は凍りついた。エースクラスでなければ対抗できないとされているゴースト。それが5機も落ちたとなるとただ事ではない

 

「ゴーストを5機落とせる敵ですか…。ジャミングにやられただけじゃないのですか。」

 

そんななか、冷静に質問をしたのは隊長のリードであった。ゴーストを簡単に落とすのは至難、となるとからめ手になるのも当然のことだ。

 

「確かに強力なジャミングが要因の秘湯ではある。だが、この映像を見てもらおう」

 

そういって、マルティンがスクリーンに映し出したのは、混乱行動ののちに逃げ惑うゴーストと簡単にそれを落としていく2機の黒いバルキリーであった。詳細は見えないもののものすごい機動で追い詰めては落としていく。7

 

「あれは・・・・。例の19ですか?」

 

驚いたのは、ユーリとまどか。彼らを追い詰めた機体が次はアクアに襲い掛かってきた、そう見える映像だったからである。命がけで逃げてきた相手に今度はSMS抜きで戦う。不安にならないわけがない。

 

「さて、それはどうかわからん。だが君たち優秀なニューラングレーの精鋭ならなんとかしてくれると、基地司令は期待している。そこでだ、奴らの最終目撃地点、衛星マイム宙域にて強硬偵察を行う。まずは図を見てくれたまえ。」

 

 

そしてスクリーンに映し出されたのは、「poison apple」、マルティン肝いりの作戦で、

先日の作戦案からおとりの二機が、どうすれば生き残れるかスタッフが必死でくみ上げたその作戦だが、パイロットたちから見るとどう見てもおとりには死ねと言っているようにしか見えない作戦であった。

 

「中佐、本気でこの作戦を実施するおつもりですか」

 

これを見て顔色を変えたのは、リードである。どう考えても、生き残る可能性が5割しかない作戦など認めたくないのは現場指揮官としては当然だった。先ほどまでのだれた男とは同一人物とは思えない表情で疑問を上げる。

 

「ああ、後ろのスタッフのみんなが何とかしようと努力した作戦さ。やらないわけがないだろう、で配置がこうだ。一番うまく行く策さ。信じてくれたまえ」

 

そしてさらに驚きの配置図が示された。新人二人に死地に向かうポジションが示されたとたん、リードは本気で声を荒げた。

 

「中佐、これでうまくいくと本当にお思いですか?」

 

「ああ、機械なら確実にやれるはずさ。君たちエリートならもっと確実だろう」

 

そんな怒りの声を聴いても、マルティンは気にしない様子話を続ける。そのまま偵察、殲滅までの流れを自分の中で完結させつつ話すその姿は自己陶酔の極みであった。そして後ろで辛そうにする作戦部のスタッフたち、その対比が、ブリーフィングルームに満ちていた。

 

「さて、質問はあるかね」

 

「はい、おとりに指名された村雨ですが、私の相方の機体が中破したと認識なのですが」

 

「ああ、それは心配ない。こんな田舎とはいえ、旗艦軍事基地だ。整備能力は確かだ。4日もあれば相当修復できているに決まっているであろう」

 

こんな形で、疑問を上げても小ばかにするマルティン、先ほどまでのおおらかな雰囲気の部屋の空気は一転して、冷たい空間がそこに広がることとなっていた。

 

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