マクロスプラス reverberation of Sharon   作:gad

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第16話 Sharpening our sword

 ブリーフィングは終了した後の、部屋の空気は異様に冷えていた。先ほどまでうつされていたスクリーンに映されていた、「毒りんご」

 シンプルな策とはいえ、どう考えてもおとりの生存性をあまり考えていない作戦。

そんな作戦を示されてパイロットはもちろん、作戦スタッフもわかっていたことでは、暗い表情を見せていた。

 

「さて、作戦概要は、これで終わりだ、あとの細かいところは後ろのスタッフと詰めてくれ。この危機に対してのもう一つの手を私なりに準備しなければならないからね」

 

 満足気に時分の仕事は終わったとばかりに去ろうとするマルティン。当たり前のように彼にはパイロットたちから罵声を浴びさせられるのだが、まったく意に関しないかのように自動ドアを開け彼は去って行った。

 

「おい、司令はこの事態をどうみてるんだよ、171で19とまともにやり合わすつもりなのかよ。常識的に考えてできるわけがないだろう」

 

 副司令への罵声が一通りおさまったのちに、一人のパイロットが作戦スタッフに問いかけた。先日、宇宙港の警備にあたっていたパイロットの一人、赤毛のフィリップが怒鳴るようにである。どんな軍人にだってわかるレベルの性能差がそこにはある。当然だろう。

 

「司令は、このような事態のためにパイロットの訓練を他基地より重点的に進めてきた。諸君たちの実力を見せるときであるとは副司令の言葉の通りです。ですが、ただ無策で事に当たれと言っているわけではありません」

 

 彼女はマイム周辺宙域を映しているモニターを拡大図表に戻した。

 

「現状、171の装備ではキルレシオは7対1でも厳しいでしょう。特に今回の相手はユーリ少尉たちが移動中に襲撃してきた19と同タイプ。今回の未確認機の目的が何なのか分析するにあたってマイムを取り戻すの今回の目的ですが、まず普通にやっても勝ち目は薄いのは確かです」

 

 ブリーフィングルーム全体に諭すように話すグエンドリン大尉。来たばかりのユーリたちでも、彼女がパイロットたちから信頼されているのがわかる雰囲気である。いくらやるきがない警備やごくまれに現れる海賊相手でも作戦が必要であり、それを作り上げてきた実績が彼女にはあるのだ。

 

 

「最初のあの副司令の作戦では、2体を囮に集中砲火を浴びせる計画ともいえない作戦でしたが、これではどうしても19の機動性に翻弄されてしまいます。」

 

 最初の副司令案、20機投入して半数が生き残るか怪しい作戦図が、モニター上で展開されている。自分たちの技量機体が低いと示されているのだが、19はそれだけ圧倒的な性能を持った機体である。誰からも不満は示されない

 

 そして、拡大図表はアクアも示されるレベルまで広がっている。通常衛星近辺戦闘をするならば示す必要がない範囲である。

 

「そこでです。この基地の中央司令部。タイタン型空母 マクロスヴァッサーの主砲を使うのです。ここの主砲は旧型とはいえマクロスキャノンとしての名に恥じぬ威力があり、19といえどもこのレンジからの火力には対応できないでしょう」

 

 モニター上にはニューラングレーから一本の光が放たれる仮想図が示されている。一本の光の筋がマイムに到達するまで3秒。そしてこのときまでに、予想される宙域に19を火力の網で閉じ込めていく図が示される。そして19に直撃するマクロスキャノン。シミュレーション上では、2機の中破と3機の小破でラングレーの部隊は、人的被害ができる限り少ない状態で作戦は終了している。

 

「しかしだ、この状況下でも解決できていない問題が一つある。おそらくこちらの被害は相当抑えられるであろう作戦だ。だが最初の囮の2機はどうしても敵による狙撃から逃れられるとは思えないんだが」

 

 そう問いかけるのはリード少佐、どう考えても新入り2人にやらせる仕事ではないし、他がやっても同様に生存可能性が低そうな部分が全く解決していない。

 

「そうです、対峙した自分たちの感覚からしてもこの囮をやるには、命がいくつもあっても足りません、命令といえどもこれは少し…厳しすぎるのでは?」

 

 ユーリも自分の命がかかっている。ただ単に命令通り出撃して落とされる任務などたまったものではないからだ。ただ的になる未来しか今のままでは見えない。

 

「そこに関しても、対策はしてあります。まああなた方の実力に左右されるところがあるとは思いますが、メルチェイさん。あれを出してください」

 

グエンドリンから声をかけられたのは、大柄な女性。作業着のままブリーフィングに来ている少々ふくよかな女性である。

 

「はいよ、グウェン。前から計画されていた171のスーパーパック、初公開ね」

 その言葉とともに、モニターに示されたのは、緑の翼に黒いブースターが追加された、ナイトメアプラスであった。

パイロットたちから、歓声が上がる中、メルチェイはモニターをさらに操作し、スペックを示す。

 

「もともと、171は扱いやすい高性能ステルス量産機として開発されたのは周知の事実ね。しかしAVFに対抗できないことも開発初期段階からわかっていたのも事実。そこで、開発当初から準備されていた対抗手段が、このスーパーパック。推力と火力だけなら負けてはいないわ。あとは扱う人材だけなのだけど・・」

 

 一応、将来の指揮官候補であるユーリたちはスーパーパックをつけた17 ナイトメアのシミュレートやAVFの19のシミュレートは過去重ねてはある。だが171はぶっつけ本番になりそうではあるが…

 

 そしてその彼女の発言を引き継ぐように前に出てきたグエンドリンは、パイロット全員を見つめる。これですべてが終わったかのようにである。

 

 

「さて、これが今の作戦の概要です。何か質問は、では村雨少尉」

 

 ちらほらと手が上がる中、まず最初に指名されたは最後尾に座るユーリであった。いまだに納得がいかない点があったからだ。

 

「あらためて、不思議な点があるのですがなぜ我々が、2機の囮になっているのでしょう新人の我々より技量の高いパイロットは、この基地に多数いるはずでしょう」

 

 誰しもが思う質問、そこに関してまたモニターがアップされる。昨日作戦スタッフが必死で作り上げたシミュレートである。各パイロットの組み合わせがずらりと並んでいる。ほおっという声が並ぶ中、ユーリたちのエレメントでの生存率が示されている。

 

「おわかりでしょうか?このモニターが示す通り、エレメントでの生存率をシミュレートした結果がこれです。あなた方は士官学校からのコンビネーションが期待されているんですよ」

 

この基地にもエレメントが複数あるが、それと比べてもユーリたちの数字が高く見えている。

 

「さすが地球のエリート様、実力もありますなぁ」

「年季が入った夫婦には勝てませんか」

 

 軽口が飛び笑いが飛び出てくるブリーフィングルーム。実際地球の士官学校はエリート養成校としては、辺境のパイロット教育と比べると差があるのは事実ではあるが、それでも目立つレベルのコンビネーションを彼らは期待されていた。笑い声が続く中、またリード少佐が質問を出す。

 

「さて、こっちのことは大抵わかった。でだ、敵の目的は分からんのか?マイムなんぞただの通信設備しかないだろう」

 

 そう、衛星マイムにあるのは通信設備と自動補給装置。ゲリラ戦を展開するにしてもあまり使い道がない衛星である。目的が想像しにくいところなのである。

 

 

「それは、まだこちらでは把握していません。通信設備に何らかのアクセスがあった模様ですが、アクアとの通信も中央との通信にも何も影響は無い様なのです。」

 

「だからこその強行偵察か。しかし19まで出してくる組織なんかがこんなど辺境に何の用なんだか」

 

 彼の言葉通り、アクアは比較的成功している開拓惑星とはいえ、中央から見たら辺境の果てである。わざわざ超高性能機でちょっかいを出しても何も出てこない、ふつうの星なのである。しかもそこそこの規模の新統合の基地がある、リスクが大きすぎる攻撃を仕掛ける理由がどこにもないのだ。

 

「だとすると、私たちがきたときに一緒に積まれていた積荷に何かあったってことかしら?そう考えると襲撃ともつじつまがあうはずだし」

 

その答えをユーリにつぶやくまどかだったが、グエンドリンはその言葉を逃さなかった。

 

「その通りかもしれません。今回のコバヤシマルの積荷を総ざらいしてみる必要がありそうです。急ぎウンディーネ宇宙港の査察の手続きを配備します」

 

 手元のデバイスを素早く操作し、それまでの段取りを一瞬で決めるグエンドリン。そんな彼女に見慣れている基地の人は何も思わないのだが、ユーリたちは驚きを隠せない。普通ではない技術である。

 

「さて、他に質問は・・・・ 無いようですね。では作戦開始時刻1700まで各自待機をお願いします。機動射出用のカタパルトの点検。10機分をそれまでに技術班に済ませておくように。あと村雨、河野、ヒギンズはスーパーパックの慣らしのシミュレータをでは解散。」

 

 そういうと、彼女はモニターを切った。そして流れで散っていく作戦スタッフ。残されたのは出撃予定の20人のパイロットたちであった。

 

 

「で、村雨さんよ。自信のほうはどうなんだい。エリートとしての技量を示せるのかい」

 

 そう声をかけてきたのはフィリップ。一応警備経験だけはずば抜けて多い、つまり飛行時間はベテランのパイロットだ。どちらかというとからかう形であるが緊張をほぐそうとしているのも感じ取れる。

 

「さてどうなんでしょう。171のスーパーパックのうわさを聞いたことがあるとはいえ、そんなものをぶっつけ本番で使わされるとは思ってもいませんでした」

 

「あのグエンの姉さんの作戦だ。いけすかないマルティンの作戦がもとだとはいえ何とかなると思っとけ。まあ俺があんたの仕事じゃなくてよかったとは思うがな。」

 

 

 彼の言葉の通り、他のパイロットも少し同情する目で彼らを見ている。先ほどまでは新型パックのお琴で盛り上がったとはいえ、やはり相手が19。となるとこういう雰囲気になるのも仕方のないことではあるが。

 

「まあ私とのコンビネーションを見せつけるしかないわね。頑張りましょう。というかそれしかないわ」

「そうだね、やるしかないか」

 

そのような雰囲気の中ではあるが、明るく振舞おうとするまどか。それを見て口笛を吹く男たち。こんな形で作戦開始までの時間が過ぎて行くのであった。

 

 

 

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