マクロスプラス reverberation of Sharon 作:gad
「統合宇宙航空士官学校卒業式にあたり、統合軍大将としてまずは心からのお祝いの言葉を述べたいと思います。みなさん卒業おめでとうございます。諸君の表情からは、士官としての振る舞いが感じられ、とても心強く感じております。」
あの日から1週間がたち、とうとう別れの日、卒業式がやってきた。今は、統合軍大将、アシュケナージ大将によるありがたい訓示を卒業生が受け取っている。ユーリたちも卒業式の会場、SDF-1の前の広場、通称マクロスホールで話を聞いている。
「今日、私たち人類は種の保存、文化の波及という崇高な使命に基づいて銀河各地へと散らばっています。その守り手となる統合軍の剣となる君たちには、この学校で学んだことを生かしてすぐれた人物となってもらいたい。諸君らの先輩は、銀河各地で血を、汗を流し人類を守っている。この誇りある伝統を君たちも守り続けてほしい」
このようにアシュケナージ大将は、統合軍の素晴らしい伝統を守ってほしいと卒業生に言葉をつづけた。しかし、この訓示、現在の統合軍をよく知る人々が聞くと大きな笑い声が上がるだろう。
現在統合軍は、7年ほど前に起こった地方分権主義、中央集権主義者の内乱でモラルは乱れ、あるメガロードに駐留している統合軍は無人戦闘機に防衛任務を任せ、民間軍事会社に航路予定宙域を偵察してもらうまでに落ちぶれたのである。
そのため、夢や希望を持ち、飛び立っていこうとする若人たちにはそれを打破する要因となってほしいと、軍本部は期待している。つまりは、この演説はそれを目的とした演説なわけである。だが、あまり期待通りに今まではいっていないのだが。
「人類の平和を担うのは君たち、統合軍です。諸君たちにはその誇りを胸に、また人民に奉仕する精神を忘れずにこれからの任務に励んでもらいたいです。では改めて、卒業おめでとう」
ありがたい訓示は、このような形で終わった。卒業生たちはこの言葉をかみしめているのかと思うと、突然首席であるヨハンの声が響き渡った。
「卒業生、全員起立!!2057年卒業生、解散!!」
するとこの言葉を合図に、卒業生は軍帽を高らかに投げ上げた。
これは統合軍の母体である旧アメリカ軍また日本の自衛隊の士官学校が行ってきた卒業式の伝統である。高く舞う赤い軍帽は彼らの卒業する大きな喜びを示していた。
このような形で、彼らの卒業式は締めくくられた。。
卒業式の後、彼らはすぐに会場を移動し立食パーティー兼任官式に出席することとなった。この任官式で本当に彼らは別れることになる。
このパーティーの会場は天球に星を映し出すドーム型のホールであり、宇宙に出ていく戦士たちを送り出すにはもってこいの場所である。
「俺たちの腐れ縁もここまでだなあ、ユーリよ。まあ飲もうぜ。」
「おいおい、首席のお前が倒れちゃ後の任官式が様にならないだろう。僕が面倒を見るのも嫌だぞ」
フロンティアにユーリが越してきて以来士官学校卒業式までずっと、馬鹿をやってきたヨハン、彼とユーリのつながりもほぼ確実に切れることとなる。少々感じるものがあるのかいつもの会話にも少しだけ寂しさが漂う。
「しかし、お前とここまで一緒になるとはなあ。あのへなちょこユーリと士官学校でともに競うなんて思わなかった」
「まあ、僕もヨハンとここまでつるむことになるとは思わなかったよ」
首席であるヨハンとそれなりに優秀なユーリが話をしていると周りにも人が集まってきた。彼らも共に3年の間切磋琢磨してきた仲間たちである。
「お前らのばか騒ぎも見納めか」「俺たちもまだまだお前らに負けてない、これからも勝負だ」とやる気がある声や名残惜しみあう声もあれば、「統合軍は楽らしいぜ」「接待とか楽しみだよな」と大将が危惧していた堕落した士官もいるのが面白い空間である
こんな感じでがやがやとにぎやかにやっているところに、まどかもやってきた。
「なかなか楽しそうにやってるわね。まあまずは、卒業おめでとう。で、私も混ぜて頂戴」
「まどかさん、あなたともう会えないと思うと涙が枯れ果ててしまいそうです」
「一生会えないわけじゃないだろ、で、まどかも卒業おめでとう。これから会えなくなると思うと少しさびしいよ」
2年間もの間、ユニットを組んだ2人の間にも、ついでにヨハンにも寂しさが漂う。これが別れの時だが、非常に静かな状況となっていった。
このように場が少し静かになったとき、パーティー会場の中央に学長がやってきた。手には、携帯タブレットを持ち、完璧な礼服に身を包んでいる。そろそろ任官の時間となるようだ。少し悲しい雰囲気を醸し出していた卒業生たちも、身を引き締め軍服にそでを通す。
「諸君、改めて卒業おめでとう。で早速だが諸君らの配属先がたった今私のほうに連絡がきた。略式だがここで任官式を行いたい」
このように話したのち、ヨハンのほうに学長は歩いてきた。首席であるヨハンから順に任官を行うと決めていたからである。
「ヨハン・アルトナー少尉、貴官を統合軍、統合軍第25次超長距離移民船団所属 アポロ中隊にての任務を命ずる。おめでとう、首席としての誇りを胸に頑張ってくれ」
「任務、了解いたしました。本官の職務を果たせるよう鋭意努力いたします」
さすがのヨハンも、任務を拝謁するときには、緊張したのだろう。妙にかしこまった態度であった。また自らの故郷であるフロンティアを守れる喜び、そしてレオン・三島へ直接恩を返せる喜びなのだろうか、うっすら涙を浮かべていた。
「続いて、ブルーノ・アイマーロ少尉。貴官を…」
その後次席のブルーノが続く。彼もまた別の移民船団に配属となった。彼らの後はファミリーネームのアルファベット順で次々と配属先が告げられていく。大体は移民船団、時々地球圏防衛部隊、開拓惑星防衛基地など、エリートらしい場所に配属されていく。
「河野まどか、村雨ユーリ、貴官らを惑星アクア、ニューラングレー基地配属とする」
そんな中、ユーリとまどかは2人で同じ基地に配属という人事となった。別れを覚悟していただけに少し拍子抜けしている2人ではあるが、緊張はとかない。
「あちらは、優秀なエレメントを探しているらしい。わが校でも有数の技術を持った貴官らなら見事その期待に応えてくれると信じている」
「了解いたしました。その期待に応えられるよう努力いたします。
エレメントリーダーとしてユーリがそれにこたえる。しかしはっきりとした声で対応はしているものの、彼らの内心はかなり混乱している。
確かに彼らはそこそこ優秀だ。エレメントで4機のフライトにシュミレーターで勝ったこともある。しかし、それだけで同期を同じ基地に入れることは非常に珍しい。
つまり、この人事は異例であった。さらに惑星アクアは現在地球と最も離れた位置にある開拓惑星であり、エリートが行くとこではあまりない。しかし命令は絶対である。
このように不可思議な人事もありながら、任官式は終了した。何か少しだけ嫌な臭いを漂わせながらではあるが。