マクロスプラス reverberation of Sharon   作:gad

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第6話 First flap

 フォールドの目的地は、基本的に周辺に障害物がない宙域である。そのため、コバヤシマル周辺には小惑星もあまりない、漆黒の闇が浮かんでいるはずである。だが、炎の花、火の糸がとびまわる宙域に現在コバヤシマル周辺は変貌している。

 

「チッ、敵の数が面倒だ。おいブラボー3。一緒に来ている統合軍はどうした。奴らは後方で待機しているはずじゃなかったのか」

 

 華麗に攻撃を仕掛けたSMSブラボー小隊、だが彼らは思わぬ苦戦を強いられていた。10機だけだと考えていた敵の数は15機にまで増え、1人当たり3機を受け持たなければならない厳しい状況になったのである。

 

「わかりません、しかし、先ほど入ったブリッジとの通信によると統合軍も襲撃を受けた模様です」

 

「で、それは何機なんだ、たしか統合軍は2小隊でこの輸送船を守っていたはずだ。危険な前方は俺たちに任せたって感じでな」

 

 戦況を確認する通信のさなかでも、海賊の攻撃は続いている。ファイターで引き離しつつ裏を狙いたい彼らであるが、3機もいると反撃も難しい状況なのである。そのため、敵バルキリーのガンポッドの蜘蛛の糸のように絡み合う火線を避けながら必死に反撃の機会を狙っていた。

 

「わかりません、あっちと通信がつながらないんです」

 

「あらまあ・・・天上の世界に行ってしまわれたようだな、統合軍は」

 

「で、どうするんです、この状況。後ろの敵がやってきたらかなり面倒になりますよ」

 

 統合軍が抑えていたらしい敵の接近は、彼らの寿命を縮めるのは間違いないであろう。ちょっとどころかかなり心配になったブラボー3。今後の作戦展望を考えるとそうなるのも当然である。

 

「俺たちゃSMS。スピードでもミラクルでも海賊ごときには負けんよ、っとおらああ」

 

 そんな中ファイターモードでロールを繰り返し、敵の遅れを誘っていたVF-22S。隙を逃さず裏を取っていた敵の後ろに変形で回り込みビームガンをたたきこんだ。その急激な機動変化に対応できなかったVF-11はその胴体にビームを浴び、宇宙のチリへと変貌させられたのであった。

 

「これで、一機。さっさと後の奴らを片付ければ問題ないだろ」

 

「確かにそうでしたね、隊長。ちょっとネガティブに入ってました」

 

「ブラボー3、お前はいつも元気がなさすぎるんだよ」

SMSの小隊を率いる隊長、その実力ならばこのくらいの危機は「ちょっと大変だ」程度で終わるのである。ほかのSMS隊員も多かれ少なかれ修羅場をくぐってきた猛者たちである。このくらいの危機で音を上げる隊員は一人もいなかった。

 

 しかしコバヤシマルブリッジはそう考えていなかった。姿形はVF-11とはいえ、VF-22の裏をとれる推力のある熱核エンジン、また15機以上ものバルキリーを動員できる能力を持つ敵勢力が海賊だとは考えられにくい。

 

 そして彼らが統合軍から頼まれた荷物は、ユーリたち士官やバルキリーだけではないのである。むしろユーリたち士官や民間輸送は今回の輸送のおまけにちかいものなのだ。これを守るためにはおまけにも頑張ってもらわなければならないとブリッジ上層部は考えた。ふがいない統合軍護衛に文句を言いながらであるが

 

 

 

 ユーリとまどかは、結局VF-171のコクピットに座っていた。結局あの後に、彼らの部屋に通信が入ってきたためである。しかもその内容はユーリがジョークで言っていたのを命令にしただけのようなものであった。

 

「統合軍軍人の村雨少尉、河野少尉2名に大規模輸送艦艦長に与えられた非常時指揮権限を行使し、任務を与える。当艦が輸送中であるVF-171にて本艦を襲撃中の敵勢力を撃退してもらう」

 

という通信が彼らの部屋に入ってきたわけである。というわけで彼らはVF-171に乗り込むこととなった。

 

「とうとう初めての実戦か・・・」

 

「そうよ、実戦よ。もうシュミレーターみたいにミスは許されないわ」

 

「それは分かっている、僕が軍に入った理由。それを実現するために命を懸けるのは怖いけどやるしかないんだ」

 

「私も同じね、やるしかないの」

 

普通なら新任士官がエレメントだけで出撃すること、しかも初出撃をさせることはない。そのため普通以上に出撃の緊張が高まっていた2人はいつも以上に固くなっていた。ただ、彼らは統合軍の士官教育を受けた軍人である。どうにかできることを期待されている。

 

その期待に応えるためではないが、1分間ほどユーリたちは自分の緊張を抑えるために努力を繰り返した。彼らが軍に入り、何をなしたいか、そして何をなせるかだったりを考え、開き直り、切り替えを心の中で固めていったのだ。

 

「さて、そろそろ時間だ、頼むよアリス2」

 

「そっちこそ、アリス1。2人の実力をSMSに見せつけてやりましょう」

 

そのような精神安定を繰り返した2人は、宇宙で戦う心構えができていったのか軽く軽口をたたけるようになっていた。すでに起動させていた操縦支援AIは、彼らの出撃する宙域の情報をすでに大量に集めている。機体の動作チェックもオールグリーン。あとは飛び立つだけである。

 

「アリス1、アリス2.出撃は大丈夫か」

 

「アリス1、準備よろし」

「アリス2も準備OKよ」

 

それを見計らってか、ブリッジの管制からも声がかかる、大型輸送船のオペレーターともなると軍経験のものも多くいる。つまり空気が読める人々も結構いるわけだ。

 

「では、あんたらのフライトに祈りを込めて一言言ってやろう。グッドラック」

 

その言葉と同時に二機のVF-171はデッキへと移された。もうコクピットの周りは漆黒の宇宙である。しかし、所々で光が舞っていた。激しい乱舞である。ただ、もう彼らはそんなことを気にはしなかった。

 

「アリス1、VF-171 出る!」

「アリス2、VF-171 出る」

 

カタパルトによって射出され、熱核エンジンがうなり、2機のナイトメアプラスがはばたく。黒く塗られた機体が宇宙に溶け込むかのように美しく飛んでいく。エレメントとして美しく、2機は戦いの宇宙へと飛んで行ったのだった。

 

 

「切れる札は,切りましたね、艦長」

 

「ああ、統合軍の命令さえなかったら、彼らみたいな新人にいきなり実戦のために飛べなんぞ命令したくもなかったのだが」

 

ブリッジでは、おまけである彼らを出撃させたちょっとした後悔が漂っていた。金儲けのためとはいえ、そこまで非情になりきれるものでもない。艦長とオペレーターは少しだけ、落ち込んだ表情であった。

 

「これも、それも統合軍の後方護衛からの反応がないのが悪いと思っとけ」

 

「しかし、10機はいたはずです。まさかやられたのでは」

 

 通常10機の機体が連絡なしに全滅することはまずありえない。たいていは、救援要請や一機だけでも逃げてくる。とんでもない実力差や基幹艦隊、プロトデビルンのような化け物が出てこない限りであるが。

 

「その時はおとなしく、あきらめるしかない。ただ、何となく私の勘だが何とかなる気がする」

だから艦長は、そうつぶやいた。

ディスプレイ上では、コバヤシマルを守るVF-22が舞う姿、そしてそこに合流しようとするVF-171が映っている。あちらこちらで、炎の花が咲き、そこに黒い翼が飛んでいく。それは、見方によっては一枚の美しい絵のように見える映像でもあった。

 

 

 

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