マクロスプラス reverberation of Sharon 作:gad
統合軍のパイロット、ハビエル・ウルキアガ少尉は、今回の輸送船護衛任務もいつもと同じ、出世のためのポイント稼ぎと考えていた。いつものように、簡単なお守りをして、危ないところは傭兵どもに任せ、おいしいところを自分たちが頂く。それが彼の日常であり、彼にとっての護衛任務というものであった。
そして今回の任務は、いつもと違い、無人戦闘機を5機も付け、しかも2小隊計12機のVF-171と傭兵の高価な機体で守るといういつも以上に楽そうなフォーメーション。
仲間とともに目的地のアクアでの夜の遊びを楽しみにこの楽な任務をさっさと終わらそう、そんな気持ちが彼の中には5分前まではあった。
しかし、そんな楽観的な展望はたった数機のバルキリーによって崩されたのであった。
「ひいいいいい、俺はこんなとこで死にたくない、死にたくないぃぃぃ」
彼のRVF-171は必死で彼がバカにしている傭兵どものに助けを求めに驀進していた。熱核エンジンの限界性能まで引き出し、彼の今まで経験したことのないスピードで脱兎のように逃げていた。
「なんなんだよ、なんなんだよ、あいつらは。あんなの人間業じゃねえよ・・・・」
すでに仲間たちのシグナルは途絶している。おそらく奴らにやられてしまったのであろう。あっという間に狙撃でゴーストを4機も片づけた敵である。立ち向かえるはずがない、仲間を見捨てて逃げてしまったも彼のせいではない、強すぎるやつに突っ込むのは無謀なだけだ。と彼は自己暗示をかけていた。
そんな、こんなで必死に逃げる前方のほうに戦闘の光が見える、どうにか逃げられると彼が思った時だった。光の刃がRVF-171の翼に突き刺さった。その衝撃できりもみ回転する機体。
「おい、おいっ俺のモニターには何も・・・」
そして彼が、そんな嘆きを叫んでいる間にもう一撃が、次はエンジンに突き刺さった。今度こそ彼の機体は、光の中に包まれ、爆散したのであった。
そんな光景を見つめる視線が3つあった。彼の部隊を全滅させたバルキリー隊である。
彼らは、バトロイドで、RVF-171を狙撃し、撃墜の確認をしたところで通信に入った。
「統合軍が12機、ゴーストが5機。こんなもろい奴らとはいえ非常に堅い守り。間違いないな」
「ああ、情報通りだ。あの輸送船に『アレ』が乗っているのは間違いない」
「とうとう、『アレ』が手に入りますのね、隊長」
「まあ、だがまだ敵が残っている、気を抜くな」
「了解」
統合軍の守りから、非常に重要なものがコバヤシマルに積み込まれていると確信した3機。青く染め上げられた翼を次の獲物に向けてはばたかせるようにファイターに変形し突撃していった。
コバヤシマル前方に15機いた敵はすでにSMSにより5機落とされ、10機程度になっていた。さらに増援できたユーリたちによって戦場のバランスは、完全に防衛側が主導権を握る状況おなっていた。
「よし、そこっ!!!!」
そんななかブラボー1の後ろについていたVF-11は、ユーリたち2機の激しい攻撃に追い詰められていた。いくら換装したとはいえ、もとがVF-11.では限界はある。そのためユーリたちのガンポッドの嵐にさらされている。
「おい、ひよっこアリスちゃんたち、さっさと仕留めてくれよ。ちょっとばかしやばそうなやつが来るらしいぜ」
ブラボー1は、そんな彼らを叱咤するように声をかける。ブリッジから彼らが初出撃であると聞いてからはできるだけ面倒を見てやろうと思ったからだ。
「アリス1、そんなのわかってます」
「変なおっさんに言われなくてもわかっているわ。っとフォックス3!!」
そんなことを言われながらも攻撃をつづける2人。ユーリがガンポッドで作った隙にまどかがマイクロミサイルをVF-11に叩き込んだ。チャフをばらまきながら、回避行動をとるサンダーボルトだが、その努力は圧倒的なミサイルの数の前には意味がなかった。嵐のように発射されたミサイルは機体に突き刺さって爆発、また一つ宇宙の花を作り上げる。
「ナイスキル、アリス2。さて俺も若人ばかりに任せないで魅せてやろう」
後ろに張り付いていた機体から圧倒的な機動力で翻弄していたブラボー1、だがこの機体のもう一つの売りをまだ見せていなかった。
それは、バトロイド時での圧倒的な格闘能力である。ゼントラーディのバトルスーツのようなフォルムのVF-22 のバトロイドによる接近戦の能力は、現在最も高いといわれている。
そのバトロイドを彼は、見せることとなった。後ろから迫ってくる敵に対し、急加速で距離を空け、バトロイドに一瞬で変形、前方に脚部の噴射ブレーキをかけ反転、獲物を待ち構える格好となった。
「ほら、海賊さんよ、あんたの大好きなキラキラだよ」
ものすごいGのかかる中、機体をきっちり制御し、完璧なタイミングでトリガーを引くブラボー1。予定調和のようにビームガンがVF-11に突き刺さった。
「あの動き…さすがだな、だけど僕たちもまだやれる!!」
「そうね、2人1組なら負ける気はしないわ」
彼の動きに刺激されたのかユーリたち、またほかのブラボー小隊の面々も動きに更なるキレが増していった。そんな彼らの標的となったVF-11はたたき伏せられる。もはや数の優位など全く関係がなかった、VF-171が、VF-22が撃つ、ミサイルをばらまく。
ただの的と化した、VF-11は10機が7機、7機が5機、5機が3機とあっという間に、数を減らしていった。
「こんなの聞いてねえぞ、おい。雑魚の統合軍を蹴散らす、そういう話だったんじゃねえのかよ」
VF-11のパイロットの一人は、作戦前のブリーフィングの話と全く違う現実に恐怖を感じていた。彼らVF-11のパイロットは、機体と金を与えられて、輸送船を襲撃する、壊さなかったら機体ももらえる、そんな甘い汁を吸いに来た傭兵である
傭兵といってもSMSのように皆から尊敬されるタイプではなく、ただ組織にいられないから出て行っただけのごろつきのような奴らである。
そんな彼らに豪勢に金を出し、しかも援護をつけてくれる、何ておいしい話だと思っていたのが彼らの間違いであった。獲物であったはずの統合軍は、いなくてなぜかSMSが相手。初めは数で圧倒できると考えたものの次々と落されていく同僚たち。
「やっぱり、甘すぎる話はなんか裏があるんだって考えておけばよかった、俺は何てバカなんだ」
そう考えた彼は、逃げ出すことに決めた。この悪夢のような戦場から離れれば護衛を中心とする彼らはそこまで追っかけてこないはずだ。
そう決めた彼は、2機の味方を見捨ててコバヤシマル後方へとバーニアを全力でふかし逃げ出した。
「一機逃げますが、どうします。隊長」
「逃げるやつは放っておけ、それより残りの奴を捕縛することをそろそろ考えろ」
彼の想像通り、ブラボー小隊は彼を見逃すことに下、残りの機体も2機、そろそろ捕縛して事実関係を調査したいと考えていたため、面倒な奴は放置することにしていたためである。
そんなときであった。逃げ出したVF-11にミサイルが突き刺さり爆散。後方からの攻撃である。
「なに?味方の反応はないようよ」
「じゃあ、誰が撃ったんだ、僕のほうからも見えなかった」
比較的後方を陣取っていたユーリたち、しかし彼らにも何が起こったか理解ができていなかった。そんなときである。オープンチャンネルから声が聞こえてきた。
「逃げ出すなんて馬鹿なお方、しかも一機も減らせてないじゃないの」
「おい、何全通信域で会話してやがる、って。しょうがない、SMSの皆さんと統合軍の新入りさん、聞こえていますよね」
「何の用だ。協力してくれるのか、という前にまずは所属姓名を明らかにしろ」
ブラボー1が、ふざけた連中に返事をする未確認機に対するごく標準的な対応を行う、当たり前だが警戒を強めている。
「ただの名無しのジョン・ドゥですよ。で、私たちの用はそこのVF-11さんはつかまってもらうとちょっと面倒だから死んでほしいだけです、ついでに皆さんもチリになってくれたらうれしいんですがね」
その言葉と同時に、超遠方からビームガンが残りのVF-11、2機に突き刺さった。もちろん爆散、パイロットの生存は非常に厳しいだろう。
「っと、もうおそいよ。ぶっぱなしてあいつらも片づけちゃおうよ」
「いたずらにはしゃぐな、我らの目的を忘れるな」
ビームを発射した女らしき声、そして先ほどとは違う男の声が通信機からは流れる。そして、その超遠方から青いVF-19が現れた。VF-22と同じAVF計画で生み出された人類最高クラスの機体である。圧倒的な機動力、火力、そして操縦性の難しさ。これを運用できるというのはエースの証拠であり、また組織力をもった敵であるという証明であった。
「なんだかわからんが危ない連中らしい、ブラボー小隊、アリスのひよっこ、気を抜くなよ」
この言葉を合図にブラボー小隊、アリス小隊と敵エクスカリバー隊は、接敵。先ほど、一瞬静まり返ったコバヤシマル周辺は、また鮮やかな光の渦に巻かれることとなった。