マクロスプラス reverberation of Sharon   作:gad

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第8話 死闘

 VF-19とVF-22は、ともにスーパーノヴァ計画で次期主力戦闘機の座を争った名機である。ともに現在の人類が持つ最高レベルの戦闘機であり、最高レベルのパイロットの技量も要求するエース用の機体である。その名機たちが、また死闘を繰り広げるとはだれも思っていなかっただろう。

そんな、人類史に残る空戦がいま、人類の辺境の地でまたおこなわれている。今度は、技術競争ではなく、本物の殺し合いであるが。

 

 

 

「おうおう、聖剣エクスカリバーさんが3本もいらっしゃるとは、この機体もご先祖様の敵討ちができるってよろこんでるぜ」

 

 ブラボー1は陽気に叫びながらVF-22を駆っていた。先ほどのような雑魚ではなく、後ろを取られたらほぼ死ぬという状況ではあるが、陽気にミサイルを束のように浴びせかけあっていた。ファイターでまるで球の中を飛んでいるように、一定の間隔を取りながら、双方はミサイルをばらまきあっていた。

 

「おおおっと、危ない。隊長、この状況は非常に危険では?」

 

 レーザー機銃がうなり、直撃コースにあるミサイルを的確に迎撃する。ブラボー3もその球の中に勿論おり、敵編隊と激しい戦闘を繰り広げている。

 

「隙を見せたら、腕を食いちぎられるからな、まあこれもパイロットの楽しみと思っとけ」

 

「そうそう、おれたちゃSMSだ。そして、熱い火の中が、パイロットの腕の見せ所だ」

 

 

 エクスカリバーの三人も、先ほどまでとは違う笑みを浮かべていた。青いエクスカリバーは、人類がなしえる最高速度をぶっちぎりながら、光の刃をツバメの群れに浴びせかける。しかし、その刃は空を切り、闇の果てへと消えていく。

 

「さすがは傭兵の皆さんですわね、私のかわいい機体が、唸りを上げていますわ」

特に女パイロットは、彼女の持てる技術をたたきこめる場所を初めて見つけたように、聖なる剣を舞わせる。

 

「余裕を見せるなよ、奴らは雑魚とは違うんだ」

 

「そんなことは、わかってるぜ、で、隊長。ちょっとこれは時間がかかりそうじゃないか?」

 

 残りのパイロットも口では、注意を促すが笑みを浮かべて、機体のエンジンをうならせる。人の体では耐え切れないGの中、機体を思いのままに操る彼らもまた、自らの力を発露できる線上に喜びを感じていた。

 

 

 こんな、基地外じみた戦場のなかで、悪夢の名を冠した機体を操る二人は生き残ることにすべての意識をたたきこんでいた。敵を落とすことは機体レベル、技術レベルから言っても無謀なことであり、そんなことに意識を向けられる余裕もなかった。

だが、ナイトメアプラスも量産機とはいえ最も新しい統合軍の翼である。そう簡単には落ちることはなかった。

 

「敵ミサイル10、3時方向より。アリス1の直撃予想2!!!!」

 

「こなくそおおおお」

 

 対空火器が唸る。爆発。そしてその熱に影響されて誘導も狂い、残りのミサイルも彼とは違う彼方へと向かっていく。生存性を重視して作られたナイトメアプラス。防御力だけはトップクラスの出来。高速で舞う剣の放つミサイルでも連携を取っていれば守ることはできるのだ。

 

「しかし、なんなんだよあのVF-19は。本当に人間が乗っているのか?」

 

「さっき、通信もしてきたし最低でも人間っぽい宇宙人が乗ってるわよ」

 

「そんなジョークはいいから、まじめに考えてみろよ。あれは人間が堪えれる速度じゃないぞ」

 

そんな激しい戦闘の中、ユーリはあることに気付いた。22はともかく19の機動力が異常すぎる。無人機ならともかく、あの速度は人が堪え切れる速度ではない。ゼントラーディ系の血が入ったとしても厳しいGだろう。

 

「Gの負担を減らすもの…、まさかアリス1。相手はEXギアを使用しているの?」

 

「そうかもしれない、あとは何かしらの手段で耐えれる体作り…って後ろやばい!!!」

 

 このように敵について思考を巡らそうとする二人。だが黒いVF-19がは、彼らの思考など構わず弾を叩き込む。ミサイルならチャフでしのげるがビームは避けるしか手はない。   

 そのため、ランダム飛行を加えて、ユーリたちは生き残るための努力を続ける。光の帯を浴びないように。

 

 だが、そんな彼らの努力が、聖剣の女性には気に食わなかった。雑魚にしては頑張る。ただ所詮雑魚。そんな彼らが、この空で飛ぶのは美しくない。ある程度の美しさがない石は、商品棚から取り払われる。それと同じように消えてもらいたい。

 

「というわけで隊長。ちょっとここお願いします。私はさっさと片付けてきますので」

 

そして彼女はVF-22の相手からVF-171へと機体を向けていった。そし青い剣は、あっという間にVF-171の前方へと機体を踊らせる。通常ならば敵の前方は危険でしょうがない場所なのだが…。

 

「また、あいつの悪い癖が出ちゃいましたかあ、どうするんです、隊長」

 

「そうだな。だが所詮敵は、統合軍。あいつならすぐ終わらせる」

 

「そんなことより、俺たち2人で相手はキツイですよ。何とかしてください」

 

男の言葉通り、1機が抜けて、圧力が弱まった編隊へ向けて激しい攻撃が行われる。3機にばらけていた攻撃が2機に集中したから当然ではある。だが、彼らにはあまり意味がなかった。

 

「所詮SMS。金の兵隊だ。私を落とせるはずがなかろう」

 

 その言葉とともに、かれのVF-19はさらに速度を上げる。襲いくるミサイルを速度だけで翻弄し、さらにはVF-22の翼へ、ミサイルを打ち返す。

 

 

 

 

「そろそろ死になさい。あなたたちは十分目障り。でももうこれでおわりよ」

 

 ユーリたちの目の前に出た、青い剣は先ほどよりもさらに容赦なく攻撃を浴びせかける。人類の限界を超えたスピード、そしてそれが操る高い火力は、ユーリたちの機体を落とすには、過剰ともいえるほどであった。

 しかし、彼らはなんとかこれを乗り越えようとした。

 

「ミサイルだけなら何とかしてみせる!!」

 

「まだ、まだ私はこんなところで落ちるわけにはいかない!!」

 

 さきほど活躍した対空火器、さらには搭載されているフレアをばらまき、直撃するミサイルの嵐をどうにか振り切ろうとする。対ミサイルでは現行機ではトップクラスのナイトメアプラス。戦意とそこそこの技術があれば、最新機の火力にもそう簡単は落とされないのである。

 

「だから、それが無駄な抵抗なの。さっさと死んで!!」

 

 だが、彼女にとっては、それこそが目障りであった。落ちないだけで刺激のない相手。勝負の相手としては、まったくもってつまらない。

そこで、彼女は避けようのない武器、防ぎようのない武器を選択した。彼女のVF-19につけられた追加武装、50mmビーム機関砲。戦艦クラスの主兵装といわれている高火力兵装である。

 

「ロック…ちまちま動きますわね、あなた方は。落ちなさい!!!」

 

 

 その言葉とともに、放たれたビームは、まどかのナイトメアプラスの翼に突き刺さった。羽をむしりとられ、いびつな姿になる悪夢。

ユーリは、その姿を見て、感情的に言葉を発した

「まどか!!!」

 

 なかなか答えは返らない。まさか死んでしまったのか。そう考えそうになり、暗い気持ちとなる。

 

「おほほ。一機は落ちたようね。さて、あなたも彼女のところに行きなさい。」

さきほどと同じように、ビーム砲がユーリの機体にも襲い掛かる。しかしロックされる瞬間に彼は、変形を行った。いわゆる、ガウォークへの変形を利用した、回避機動。「エーレマンズターン」である。エーレマンという反統合パイロットが、統合戦争時に開発したといわれる。伝統的な回避起動である。

 

「ちいいいい、しぶといわね。さっさと死になさい。目障りよ。」

 

そのとき、彼女の後方からビーム砲が襲いかかった。

 

「まどか!!生きてたのか」

 

「まだ生きているわよ…でももう落ちるのも時間の問題ね。」

 

 何とかコクピットへの直撃は免れた彼女は、つらそうに答える。機体が半壊しているから、つらそうなのは当り前であるが。

 

「おほほほほ、ざまあないわね。もうあなた方はおしまいなのよ」

 

 そこにさらに追い打ちをかけてこようとする、VF-19。しかし、そこにある意味昂揚感ゆえに致命的な隙が生まれた。50ミリビーム機関砲は、VF-19の正規兵装ではない。特殊チューニングにより、熱核エンジンよりエネルギー回路をつなぎ使用可能としている。

 

 つまり、一瞬機動性が落ちるわけである。そこに死に掛けの機体に乗るまどかが、攻撃を仕掛けた。

 

「ただやられるのは、私の趣味じゃないのよ、お礼をくらいなさい!!」

 

 そして、悪夢からビーム砲が放たれた。被弾しているため、出力がそれほど上がらなかったものの、そのエリコーン社製のビーム砲は聖剣の翼を切り裂いた。

 

「さすがアリス2、僕も!!!」

 

 そこにユーリのガンポッドがさらに、エクスカリバーの胴体を傷つける。通常ならば致命傷となる損傷である、しかし、聖剣は折れなかった。折れなかっただけでなく、その後記動力も先ほどと比べて落ちたものの、なお十分の速度を保っていた。

 

そんなときである、VF-19の隊長機が撤退信号を出した。

 

 

 

「もう時間だ。思った以上に時間をかけすぎた、次はまだあるんだ、帰るぞ」

 

しかし、ユーリたちに傷つけられたパイロットは我慢ができない。とてつもない屈辱が彼女を襲っているのだ。

「私は、まだ、この傷の礼をしていないのよ!!!」

 

「それでも、もう時間だ。それとも一人でこいつらの相手をするか?」

 

「はは、そりゃいいや。テストとしてお偉いさんも喜んでくれるかもよ」

 

そんな風に言われたら帰るしかない彼女。しぶしぶという形で了解する。

 

「ということよ、あなたたち。命拾いしたわね。次があなた方の最後よ、アリスのお二人さん」

 

 こんな捨て台詞を残しながらではあるが…

 

 

 

 ユーリたちも限界を迎えていた。まどか機は半壊。ユーリの機体も弾切れ寸前。よく生き残ったなという状況である。そのため、敵の撤退を見届けたのち、すぐさまコバヤシマルに帰投したのであった。

 

 

 その後、半日がたったのち、統合軍の救援部隊、そしてSMSの追加派遣隊が防衛任務に入ることになった。なんとか次の襲撃を受ける前に防衛体制を整えることができ、この戦いは一応の終わりを迎えたのである。

SMSには、一機負傷兵をだし、アリス小隊も半壊、統合軍護衛部隊の全滅という結果を残して。

 

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