マクロスプラス reverberation of Sharon   作:gad

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第九話 休息

「よくまあ生き残れたわね」

 

「本当に…」

 

 ガレージの中には壊れかけのナイトメアプラスが置かれている。もう少しで二人と死んでいたのが、非常にわかりやすい形になっている。そしてその目の前で2人は、もう少しうまくやれたのではないか、そんな無力感を感じつつ、それを眺めていた。

 

 

「ようお二人さん、よくやったな」

 

 ブラボー1は、そんな彼らをたたえるように声をかけてきた。

 

「いえ、あなた方SMSがいなければ、確実に落ちてましたよ。」

 

「わはははは、それでも初陣がVF-19相手で生き残るなんて、ふつうは誰も経験できないことだ」

 

 確かに、そんなことは誰にも経験できないことではある。だが、彼らの中ではほとんどが逃げ回っていたようなものであり、素直にそう考えることはあまりできなかった。2人とも、自らの力不足を痛感させられたと一番強く感じているのだ。

 

「なんか難しい顔をしてるな、ヒヨっこ共よ。でももうちょっとシンプルに考えろ。人生は、生き残ったら勝ちだ。昨日に手を振ってTRY AGAINできるんだからな。」

 

「だけど、隊長ってシンプルすぎる時もありますよ。全機、突撃ラブハートって、演習の相手に合わせて叫ばなくても」

 

 このようにきれいにまとめようとした隊長に向けて、いつの間にかいたブラボー小隊員がからかいの言葉をかけた。

 

「まあでも君たちはよくやったよ。俺の初陣ならあんな状況ならまず逃げ出すね。十分やったさ。」

 

「そうだ、このような変人たちよりはどう考えてもお前たちは、見所がある。SMSでも十分鍛えればやれるぞ」

 

 そんな風に、ブラボー小隊の面々は彼らをたたえてくる。共闘した相手の様子を見に来るついでだったのだろう。ほぼ全員が、アリス小隊が待機しているガレージにきていた。

 

「まあ、俺が伝えたいのはよく生き残った。それが大事なんだ」

 

 

 この言葉を残して隊長は去って行った。そのあとをブラボー小隊の面々が軽口をたたきながらついていく。そして、またガレージは彼ら二人だけとなった。

 

 

 

 

 

「生き残ったか…そうね、本当に生き残ったのが一番大事なのかもしれないわね」

 

「次があることを喜ぶべきなんだろうね。」

 

 2人だけになった、ガレージでそうつぶやく2人。生き残った、というより生き残れた、という感覚の2人だったが、少しだけ、考え方は変わっていった。言われたように、生き残った喜びを感じることにしたわけである。

 

「しかし、本当にまどかが生きていてよかった…一瞬通信が途絶えたとき、本当に心配したよ」

 

「にしては、冷静に回避機動とってたわよね、もっと心配してくれてたらあそこで落ちてたんじゃない?」

 

 こんな風にバカな軽口も叩き合えるように、ポジティブに考えることにしたわけである。大体の戦場で任務を終えた兵士が、喜びを爆発させるように酒を飲んだり、あそびにいったりする。そんな風に彼らも考えれるように思考を作っていく一歩を踏み出したのだった。

 

 そうなると自然と彼らの話題は次の任地での仕事になる。彼らが、任地でどのように働くか。そして、そっちで活躍するために必要なものは何か。そうすると、彼らの機体のことに話が移るのは当然であった。

 

「それより、私たちは任地でもこの機体を使うのかしらね。」

 

「そりゃそうじゃないかな、いくら半壊とはいえ一応高価な機体。新人の僕らにポンポンくれるわけがないよ。」

 

 

 そう、派手に壊れた機体や限界まで空戦を繰り広げたナイトメアプラス。これが任地で使えなければパイロットとして、働くことはできない。陸に上がった魚のようなものである。

 

 

「まあ、なんとかなると思うしかないわね、考えてもどうしようもないことなんだし」

 

「そうなるか…、何とかしたいけど僕らにはできないことだしなあ」

 

 どうしようもない状況にすこしうつむく2人。だがさきほどよりはとても明るい。無茶な戦いよりは、新しい仕事について考えるほうが気持ちとしては楽しいのだろう。それからは、ずっとガレージで仕事について、アクアについてのことを話し続けるのであった。

 

このようにして、ユーリたちにとっての初戦闘は、後始末を含め終わりを迎えた。

 

 

 

 その後、ユーリたちは、出撃前の部屋からランクが上の船室に案内してもらえることになった。新兵に負担をかけたという気持ちと感謝の気持ち、そして都合よく空いていた一等船室をとたまたまが重なったということもあるが、ありがたくユーリたちは、その申し入れを受け入れた。

 

 ちなみにどうでもいいことであるが、統合軍の軍人が軍艦以外で任地へ向かう場合、大抵は、3等船室、庶民が普通に長距離旅行をするときに使う部屋である。任地へ持っていく荷物等は、倉庫に置いたりするとはいえ少し狭いビジネスチックな部屋である。

 

 そして、ユーリたちが案内された一等船室は通常の5倍ほどの価格、広さは二倍、他諸々が一等にふさわしいもので揃えられている。この上に特等、VIP対応、とまだ上があるもののそこに案内された二人が、

「帰ったら父さんに自慢しよう」

「アクアについたら自慢のネタの一つになるわね」

という位には素晴らしい部屋である。

 

 この航行の間2人は、そんな素晴らしい部屋で戦いの疲れを取ったのであった。もちろん、まどかによるアクアの話やユーリの故郷の話等、個人的な関係を深めながらである。

 

 ブラボー小隊も戦いの後3日間ほどは、コバヤシマルに滞在をしていった。食堂で陽気に笑いながら宇宙を舞う先輩としての教訓を垂れたり、ただのバカ騒ぎをしたりとユーリたちに何かと絡みつつではあるが。

 

 

 このようにアクアへの航行に大きな問題は、これ以降発生しなかった。襲撃で懸念された損傷も、問題なしとされ、ほぼ予定通りに航行できることとなり、すべて順調に進んでいったのである。

 

 機体を酷使し疲労気味のSMSブラボー小隊には、交代に来たチャーリー小隊と入れ替えで護衛任務を終えていった。ユーリたちへは、

「何か仕事がつらくなったらいつでも転職して来いよ、まあ統合軍の任務ぐらいでへ垂れてもらっちゃ困るがな、ガハハハハ」

と隊長の笑い声と部下の面々の苦笑を残して。

 

そして、ユーリたちはとうとう惑星アクア、通称岩の惑星に到着したのであった。

 

 

「惑星アクア、宇宙港ウンディーネにはあと3時間で到着いたします、御乗船のお客様はお荷物の準備をお願いいたします。途中さまざまなトラブルがございまして申し訳ございませんでした」

 

アナウンスが、アクア到着3時間前を告げた。

 

「やっと、アクアにつくのね…長い二週間だったわ」

 

「そうだね、紺だけ疲れるとは思わなかったよ。」

 

 初戦闘、そして長旅の疲れは、一等船室とはいえなくなるわけではない。ユーリたちはやっと着いたことに対する喜びより長旅が終わることへの喜びを感じていた。そんな彼らの眼下には岩の惑星とはいえ、所々青くなっている惑星がある。

 

「かなりテラフォーミングは進んでいるようだね。まだ途中みたいだけど」

 

「私が最後にみたときよりももっと青くなっているわ。父さんもがんばってるのね」

 

 まどかの父は、自然技術者、「テラフォーマー」である。そのような技術者が、宇宙に散り、人類の生存圏を広げているのだが、意外と知名度は低い。宇宙を旅するものには当たり前の存在であるが、定住している人にはあまり関係ないからである。

 

 このように話だけは聞いている彼女の家族とアクアで長い付き合いになるだろうと思い、ユーリは尋ねた。

 

「そういや港にはまどかの家族が来るんだっけ、どんなふうにあいさつしよう」

 

「ううん、そうねって。ああっ、忘れてた!!」

 

 だがユーリの質問はまどかの叫びに持って行かれた。いきなり頭を抱え顔を赤らめながらちらちらユーリのことを見ている。

 

「おい、なんだよ、気になるじゃないか。」

 

「いや、なんでもないわ。多分小さいころの話だし、大丈夫。それより挨拶は普通でいいわよ、普通で」

 

 とてもあわてながらなんでも無い様に振舞おうとするまどか。この何でもないというのが後々宇宙港で爆発することになるのだが。

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