12番目の使徒   作:名無しの権兵衛

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そんなに長くは連載しないと思います。


プロローグ

 古き頃、主によってコキュートスに置かれていた私は解放された。それは私の罪が許されたわけではなく、私を捕らえていた魔王サタンが主の崩御により存在に矛盾が生じ、悪魔という概念となって消失したのだ。

 これに呼応して堕天使、魔獣の一部が概念に飲み込まれ悪魔として変質し地獄も巻き込まれ分解。私は晴れて地獄から解き放たれたわけだ。

 ああ、わが友よ。其方は今何処に居てこの事態を何故見過ごすのか。かつての其方であれば主によって与えられた使命を果たせぬ事態になった時点で地獄の門を開けるだろうに、其方と同士は今何をしているのか……否、其方に会いに行き、この事態をどうにかせよという今は亡き主の与えられ給うた試練なのかもしれないな。

 

『グギョァオオオオオ!』

「そうか、そういえばお前もいたな。主に逆らいし巨人、しかして生前に成した善行により鎖に繋がれるのみという慈悲に与る者。主が崩御なされた今、お前が鎖に繋がれ、言語野を封じられる謂れも無し。その封印、解こう」

『グ、ガ、ア、あ、あぁ……そうか、彼奴(きゃつ)めとうとう死に絶えたか。彼奴の死に際をしかと目に焼き付けたかったが、まあ仕方あるまい。して、彼奴は何ゆえに死に絶えたか、答えよ裏切りの代名詞』

「私も詳しくは知らなんだが我ら人の子の進歩に満足なされた主は暫しの運行を術式で作り給うた人形に後を託し、自然に還られ、人形も悪魔の頭領と相打ちになり消滅。これにより主が主たる証明は成されず、我は解き放たれ、お前も解き放たれた」

『く、くははははは! 愉快愉快! 自決を禁じた彼奴自ら自決を選ぶとは! それで、解き放たれたお主は何をなさんとするか』

 

 何をなす、か。愚問だな。だが、それでも、何の力も持たぬ私が八天へ赴くは困難を極めるだろう。それもまた試練として熟すもよいが、最優先事項は我が友と同士に事の如何を聞くこと。ゆえに。

 

「我は天へ赴き、我が同士に会いに行く。名も無き巨人よ、我と共に天へと昇らぬか?」

「おお! その言葉を待っていたぞ! 無論着いて行くぞ! しかし、名も無き巨人と呼ばれるのは癪だ。名を付けよ」

「それもまた然り。暫し待たれよ…………では、無事天の頂へと至らんため、かつてあった詩人よりウェルギリウスの名をお前に送ろう」

「ウェルギリウスか、それでは貴様はダンテといったところか?」

「なるほど。そのままの名で行く訳にもいかぬし、同士に会うまではダンテと名乗ろうか」

 

 名を互いに与え終え、一つ階層を上る。やはり地獄は機能しておらず、罪を背負いし魂は運行の流れに乗せられることなく放浪している。緊急事態故に本来行うべき浄罪は間に合わぬため魂の洗浄を行い染みついた記憶を洗い流し、運行へと戻す。

 また一つ、一つ、上へと魂の処理行いつつ上る。ついにアケローン川のほとりまで着いた。ここにカロンはおらず、そのまま泳いで渡る。

 門を開け、すぐさま隠遁の奇跡を行使する。しかし、私は驚愕する。奇跡を行使すると同時に流れてきた知識は、主の亡き後、天使、堕天使、悪魔が行った蛮行がありありと瞼に映し出されたのだ。もしやと思い、同士と我が友の気配を探る。昔と同じであれば気配は天の遥か彼方にあっても叩きつけられる様に苛烈なはずの気配は……集中すればかろうじて()()ことのみが分かるほど希薄になって地上にいた。

 私は絶望よりも先に()()を覚えた。()()に己は何をやっていたのだと()()()にも似た()()を覚えた。そして、何にもするわけがなかったのだという()()に暮れた。

 その気持ちに呼び寄せられたのか七種の魔獣が近づいてきて、忠誠の意を示した。

 

「傲慢のグリフォン」「憤怒のユニコーン」「嫉妬のマーメイド」「怠惰のフェニクス」「強欲のゴブリン」「暴食のケルベロス」「色欲の夢魔」

「「「「「「「我らが魔王、我らが主の因子をその身に宿し十二の使途よ。我らが思い、我らが願い、その御身に託さんと」」」」」」」

「っく、なんだダンテよ、大きさを変えられる無名の吾輩と違ってその魂の輝きを隠せぬようだぞ?」

「うるさいぞウェルギリウス。仲間が増えるのは僥倖だ。そして早速ですまないが作戦変更だ主のおらぬ隙をついて不逞を働く不届き者へ私刑を与えることにする」

「おおともさ。物騒なもんこそこっちにゃ願ったりかなったりだ。これより貴様とは一心同体だぞダンテ」

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