12番目の使徒 作:名無しの権兵衛
多くの天使は死んだ。これについては何も言うまい。人形であることに気づかなかったとはいえ彼らは主の命に殉じ、その結果で死に絶えたのだから。
多くの堕天使も死んだ。これについても仕方あるまい。彼らは人を愛する、天使の代替品であり愛する人のために戦う者は主が御望みあそばせられた事に他ならない。
多くの悪魔は死んだ。これについてどうこう言うつもりもない。ただ、堕天使の人を誘惑し堕落させるという側面を抽出され、その結果天使と堕天使と戦うことになったのはある意味哀れだと思う他ならない。
だが、それを契機に多くの者たちが主の命とは異なる方向に歩みだしたのは我慢ならぬ。
セラフィムよ、その身にあてがわれた使命を果たすことを忘れたか。
グリゴリよ、かつてその身にあった人への愛を忘れたか。
悪魔どもよ、人を堕落の道へと誘い、主の否定の為に生きる道を捨て人の子を蔑むか。
我が友よ、我が同士よ、私はお主達の下へと赴き、その状態を打開しよう。
「ゆくぞウェルギリウス。まずは我が友に会うため、ゴルゴタへと行く。魔獣は我が同士がどこにいるのか情報を集めよ」
「「「「「「「御意に」」」」」」」
「それは良いのだがなダンテ、さすがに襤褸切れ一つはさすがの吾輩とて少し肌寒いぞ」
「わざわざ迂遠な言い回しをするな。服が欲しいならそう言え。織布の奇跡よ、ここに……現代でも違和感のない衣装だ。私も着替える」
さて、薄紫の無地のシャツに紺色のベスト。黒のスラックスに普通の革靴。黒いシルクのマリンキャップ。微妙にあってない気もするがまあいいだろう。
ウェルギリウスには黒のポロシャツに紺のデニム。濃い紫色の中折れ帽。粗野な雰囲気もこれなら野性味溢れる良い男程度に収まるだろう。知らんが。
普通に歩いていき、徐々に隠遁の奇跡の効果を弱める。一気に消してしまっては急に現れた二人の男というとてつもなく怪しい存在が出来上がるし、それで時間を取られるのは不服故に、若干印象に残りにくい雰囲気の男たちにしておこうという魂胆だ。と、ウェルギリウスに子供でも分かるようなかみ砕いた説明をするも興味が無いように受け流される。お前が言ったんだろうに。
幸い我々が地獄から出てきた場所はゴルゴタよりさほど離れていないためしっかりと近づく。
「ダンテよ、貴様は気づいているとみてもよいのか?」
「愚問だ。役割を見失っている使いとはいえ気づかぬ不信心ではない。わざわざこちらから売る道理もないからな。売ってきたら買う程度で良い。精々買い叩け」
「然り。が、どうやらわざわざ売り子が来てくれるようだ。これは俺が買ってもいいのか?」
「む、基本はお前が買えばいいが一つは買わせろ。さすがに何もしないのは友に示しがつかん」
「くか、そうだ。お主も人間なのだから欲を出していけ欲を。無駄に抑制するのは心に毒だぞ?」
「無駄に促進するのは体に毒だがな」
談話をしていると御使いが我が元に降り立つ。人除けの奇跡……待て、なぜ使わん。なぜよくわからんエネルギーをわざわざ御使いの根源から抽出し指向性を持たせる。不効率の極みといってもほどがあるぞ。
まぁ、よかろう。
「これより先は立ち入り禁止であるぞ。人間」
「うるせぇなぁ……買っていいか?」
「わざわざ私に聞くな。今買わずいつ買う」
「応よ」