12番目の使徒 作:名無しの権兵衛
ウェルギリウスの体の肉は隆々と盛り上がり、その影を変化させる。服は、ふむ、粒子に変換するか。服を戦うたびに作り直すのは面倒くさいからな。これは助かる。
其は巨人である。主が最も恐れ、尚且つ最もその力に信を置いた者。
其は名無しである。個を個として定めしはなく、それでも主は恐れた。今、其の力は足る。
其は無手である。完成された肉体に、武具など不要であるからだ。
巨人を見た御使いは驚愕し、それでも攻撃せんと根源からの力を槍として形成し巨人に投擲する。
巨人は防御せぬ。硬い皮に槍ははじかれ、砕け散る。当たり前だ。全能たる主でさえ殺し切る事能わなんだ巨人を熾天使ですらない天使が殺せることなど可能か、否、不可能だ。
大きな拳は御使いを捉え、えげつない衝撃を
「なんだぁ、歯応えがねえ。いくら封印されて長年経つっつっても限度があるだろうが。ミカエルの坊やルシフェルの坊はこれを何度も受けても無事だったぞ」
「熾天使と同じと思わないでいただきたい。彼らは天使の中では最強に近い力を持っているのだ。それを引き合いに出しては此奴に憐憫を感じてしまう。締めは頂くぞ」
「ああ、よいぞ。弱者をいたぶるほど慈愛を失ってはおらん」
御使いに近づく。聖書どころか、同士が執筆した書にすら書かれる事の無いほど下級の存在。かつては巡礼者が盛んであったであろう場所は手入れされていない事からも之は我が友に何の感慨も抱いていないのだとわかる。之に恨みなぞ無いが、我が友をぞんざいに扱った恨みは晴らさせてもらおう。
青銅の槍を取り出す。これは我が罪の表れ。これは我が友の死を確定させたもの。これを持って、之の死は確定する。
死ね
「懐かしい気配が来たと思ったら、怖い顔をしているよ。私は大丈夫だから。そんな顔をしないでおくれ」
あ
ああ
「ヨシュア、無事、だったのか」
「勿論。と、言いたかったけれど、実の所目を覚ませたのは君が近づいてきてくれたからなんだ。一度ならずに度までも辛い役目を背負わせてしまってすまないね」
「いいんだ。君が無事なら。そうだ、君の弟子は、私の同士は」
「私が目を覚ましたところで目を覚ましていってると思うよ。君がここに来ることによってカギが開くという、御使い様達からしたら不可能に近い事だったからね。あとは順次私の下へとくると思う」
友と話しているとウェルギリウスが話しかけてくる。今来た竜の気配に関してだろうか。
「なあダンテ、赤い竜が目を覚ましたぞ。向かうか?」
「ダンテ、ダンテと名乗っているのか。では私も君のことはそう呼ぼう」
「ありがとうヨシュア。ウェルギリウス、向かうぞ。赤い竜が目覚めたということはそこに人外が集まる。そこで本来の働きを見失った者たちへと私刑を行う。ヨシュア、優しい君からしたら辛いだろうが他の神話の方に迷惑をかけている彼らを放置できない。協力してくれなどと面の皮の厚い事は言わない。どうか邪魔だけはしないでくれ。再び君に相見えて嬉しかった。さらばだ、ヨシュア」
そうだ。私はどう言い訳を作ろうが友を裏切ったのだ。だから、私は私なりに動く。友よ、また会うときは敵ではないことを今は亡き主に祈ろう。君が敵となった時、私は私でいていられる自信はない。
行くぞ赤竜。汝が天敵は白竜にあらず。キリストの裏切り者であり、キリストの否定者たるこの私だ。
短縮の奇跡で日本の天、高天原の入り口に飛ぶ。我らが領地たらぬ場所で行う蛮行の許しを得るために。