12番目の使徒 作:名無しの権兵衛
遥か昔、我が友が生誕するよりも前から形は変えど常に存在する不思議な神話群、日本神話の総本山の一つ『高天原』。その入り口で私は一人の男性と対峙している。
険悪な雰囲気ではないものの彼は私に対して警戒をしている。隠そうとはしているが隣のウェルギリウスがピクピクしている事で分かってしまう。
警戒するのも詮無きこと。我らはあまりにも蛮行を重ねすぎている。
「まずは謝罪させてほしい。突然の訪問申し訳ない。
「そうですか。ワタシは
「これは失礼した。私はユダ。訳あり今はダンテと名乗っている。本題だが、現在天使、堕天使、悪魔それぞれが聖書に記されるような本来の役割を見失い各々ほかの神話に迷惑をかける始末。赤竜の気配が日本にて発見されたため起点にしこれを正したいがそのためにここ日本で暴力を行うことになる。いくら現在人との関わりを希薄にしているとはいえ勝手に動くわけにはいかず、こうして許可を取りに来た所存だ」
私の思いを吐いた時、オモイカネ殿は驚愕の色を隠そうともせず、しかしすぐに普通の顔へと戻した後ウェルギリウスの方をチラと見て再び私と向き合う。
「貴殿の言葉に嘘がないこと、確認した。貴殿の思いは素晴らしいものだ。しかしそれを貴殿がなしえるか、その力量を試させていただく。暫しお待ちいただきたい」
「元よりすぐに許可をいただけるとは。貴方方の納得なさるためであらば、矮小な人の身であろうと力を尽くそう」
オモイカネ殿は私たちから距離を取ると懐から携帯電話を取り出してどこかへと電話をかけている。微かに聞こえてくる。『試す』『来てほしい』の言葉からおそらく私を試すための人物、神物? を呼んでいると思える。
ウェルギリウスは興味なさげな顔をしながら高天原の建物をちらちらとみている。見た事の無い建物に興味津々なのだろう。
「お待たせした。これから日本神話の軍神、
「ご紹介に与りました
「無論承知の上。私はユダ、しかし今はダンテと」
それからのことを、恥ずかしながら覚えていない。ウェルギリウスによると、剣戟の雨霰を何とか受け切ったと思ったら槍での激しい突きの嵐で瞬く間にボロボロになり、それでも立っているとフツヌシがにこにこして『結構本気で打ち込んだのを受け切り、致命傷を受けない技量。反撃の機会を虎視眈々と狙う精神。そして血を多く流しても気を失わない恵体。どれをとっても良しです。攻撃は巨人くんの方に任せるようですし、ギリギリ合格点です』と言って終了したそうだ。元一般人にしてはマシだとは思ったが、攻撃のウェルギリウスを入れてもギリギリ合格点なのか。
主神天照大神と開いた会食の結果は概ね及第点だ。条件としては《日ノ本の民への危害をなるべく抑えること》というとても緩やかなものしかつけられていないが最後に、私自身は厳しくきつくはしません。悪いことか否かは己の心の内に問われしものですから。というある意味最も拘束される言葉を使うあたり、やはり長年治めているだけの事はあるのだと再確認した。正座はとてもとても辛かった
星詠みの堕天使、コカビエルが例の街へと向かっているという情報までいただいてしまい、なおさら私の心は制限される。
「しっかし、あの星が好きなだけの小僧が戦争好きになるとは彼奴の死とはそこまで影響するか」
「それ以前に人を愛していない堕天使というだけで存在意義が行方不明だ。それを正していくのだからお前も少しは喜べ」
「しかしなぁ……あの小僧と戦ってもなあ……それならミカエルの坊やルシフェルの坊……って、そうかルシフェルの坊はもういないんだったな。ミカエルの坊と戦った方がましだ」
「寺を襲撃するか?それとも賽銭箱とやらを奪うか?」