12番目の使徒 作:名無しの権兵衛
誤字報告ありがとうございました。
手作りのチラシを握り潰しながらウェルギリウスは苦虫も噛み潰したような顔をしながら苦言を呈す。
「おいダンテ。俺は人の子の文化については疎いと十二分に理解している。しているが、これについては酷過ぎる事だけは分かるぞ」
「待ってくれ、違うんだ。私は正直な気持ちを書いただけだ。絵心が無いから仕方なく文字だけになってしまったし、文言も何やら不穏な空気を醸し出しているがいくらなんでもこんなので来るとは思っていない。今本職に依頼している。それまでの繋ぎだ」
私が必死に弁明するとウェルギリウスは呆れた様な溜息を一つ吐いて己の頬を挟み込むようにパチンと叩く。
態と別の話題に転換させる。赤い竜についてだ。その気遣いに感謝を思い、店の準備に掛かった一月の間で分かった事を昔よりもはるかに上質になった紙に書きだしていきながら口頭でも説明する。
「結論として言えばほぼほぼ確実に呪いの中心にいるのはこの赤い竜を宿した男だ。一月の間に二十数回も性的犯罪を起こしておきながら警察への通報はおろか学校側からの処罰もなく、あるのは両親からの多少の説教のみ。さらに悪魔への転生先では男性嫌いを自称する女に好かれる。まさに呪いの本質にある誰かを異常に褒め称える、機械仕掛けの神の作った作劇だ」
兵藤一誠の周りを二重丸で囲み、そこに向けて多数の矢印を書き込む。また、矢印の向きを無理やり変える模式的な手も書き加える。
この手を更に丸で囲い、ハテナマークを描く。
「ただしこの男の力量からして世界全体に向けて広まる呪いを古代より生き残る神々に違和感を抱かせる事無く掛ける事は不可能と断じていい。大方この世界から次元が幾つか上で、かつ神話をそこまで詳しく知ろうともしない者だろう」
「つまりこの世界は作りものだと? 俺の思いはすべて紛い物とでもいうつもりか?」
言葉に怒気を含ませながら詰め寄る。勘違いされかねない事であろうからすでに落ち着けるための文言は用意している。
「勘違いするな名も無き巨人。東洋には胡蝶の夢という言葉がある。作り物の体であろうがなかろうが、其処に有る心、精神は間違い無くお前の物に異ならない。裏切り者の第十二席に保証された所でなんだと思うだろうが保障しよう」
その言葉にウェルギリウスは頭を抑え、フラフラとアンティーク調の椅子に座り込む。あまりにも突飛な話過ぎてついていかないのだろう。私も何の前触れもなくこんな事を言われたら今のようになるだろうから咎めることなく冷やしたタオルと薄く塩を溶かした水を入れたグラスを傍のテーブルに置く。
その時だ。入店を知らせる鈴の音が鳴る。しばらく鳴る事は無いだろうと思っていたから度肝を抜かれ、思わずそちらを素早く見てしまう。
そこには開店の許可を出してくれた商店会会長の奥方がいた。許可をもらいに行った時と同様に濃紺の着物を見事に着こなし、大人の色香というものを正しく醸し出していた。
「いらっしゃいませ。申し訳ありません、今相方が体調を崩しまして接客が手当ての片手間となってしまいますがよろしいですか?」
「お気になさらずとも結構ですよ。今回は客ではなく、創世神が一柱としてお話ししに来ただけですから」
「ありがとうございます。今お茶をお持ちいたしますので少々お待ちください、