バカと、転生オリ主   作:ヒラメもち

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第4話 信じて

文月学園主催豪華賞品争奪オリエンテーリング大会。

 

「新作ゲーム、食券1年分だとぉ!」

「……カメラ」

「ずいぶんと大盤振る舞いじゃのう。」

 

図書カード、圧力鍋、洋服引換券、西村先生の熱血指導券、遊園地のペアチケット、そして『シークレットアイテム』などなど。クラスメイトは最高潮の盛り上がりを見せている。

 

試験の答えをもとにxyz座標を決定し、その場所にある商品を得ることができる。しかも2クラスずつで行うのだからかなりサービス精神溢れる学校行事だ。だがしかし俺たちFクラスはAクラスと合同なので、かなり辛い戦いになるだろう。

 

「一体、あのババアは何を企んでいるんだ。」

 

「訳アリだろうな。」

 

「ああ、ロクでもないことだろう。」

 

学園長は、システムの管理人である。

あの実力主義者がこんな生徒が喜ぶイベントなんて、何かしら意図しているはずだ。

 

「ストラップセット! これだ!」

 

「吉井君、こういうの好きなんですね。」

 

「ふっ、訳アリなのさ。」

 

「アキが言っても、バカっぽいわよ。」

 

「バカとはなんだ!?」

 

 

 

時間は放課後。

 

与えられた学園の地図には座標軸があるが、z軸については階数に影響を及ぼすくらいだ。今回重要になってくるのはxy座標だ。課された問題も大学入試レベル、しかも複数の問題を解いてようやく1つの値を出すようになっている。

 

英語なんて、長文読解問題である。

 

「ほれ、頼んだぞ。」

「いや~、伊月がいてくれて助かったよ。」

 

吉井と坂本に、俺を加えた3人チーム。

 

この2人の手綱を握れ、ということだろうか。

ムリだ。

 

「1つ座標を決めたら向かうのでいいか?」

 

「いや。3つくらいは決めておこう。いちいち戻ってくるのも面倒だ。」

 

「どういうこと?」

 

「早い者勝ちで、景品の数は限られている。」

 

「そして、もしAクラスのやつらに鉢合わせたとしても。」

 

「勝てるわけがない!だから、僕たちは早めにゲットするしかないのか!」

 

「そういうこと。」

 

「よくわかったな。」

 

「それならいそがなきゃ! 選択問題は得意だし!」

 

鉛筆を転がし始めた吉井の、今日の運勢次第だろう。

 

「まあ、がんばれよ。」

 

 

さて、どの問題を解くかにもかかっている。

 

例えば、理科だ。

複数の分野がある以上、各問題を解く人数は分散される。

 

 

「……まて。ペアチケットだと?」

 

寝転がって、商品一覧を見ていた坂本の目つきが変わった。

 

「霧島さんと行くのか。本気出さないとな。」

 

「ちっがう!?」

 

照れてるのか。

 

「くそっ、誤算だった。あのババア、俺を陥れるつもりなのか!?」

 

頭をかきながら、問題に向かう彼は必死。

 

科目は英語。

かつて神童と呼ばれた彼なら、ある程度単語の意味も推測できそうだ。

 

 

「僕はもう5つも候補が出たよ!」

 

「ようやく、2つ。」

 

物理と数学、それぞれ1つずつだ。

英文を読み進めていた坂本も、机に勢いよくペンを置いた。

 

「とりあえず、1つだ! すぐに行くぞ!!」

 

「いそごう!」

 

Fクラスの教室。

 

初めから吉井の出した座標に行ったのだが、坂本はかなり冷静さを失っているのだろう。だがしかし吉井の星占いは1位だったらしいし、バカにできないだろう。姫路さんのバスケットを手にしたとき、姫路さん自身に声をかけられた。

 

「吉井君、言いそびれていたんですけど……今日、実はシフォンケーキを焼いてきたんです♪」

 

「あっ、うん、ウレシイナー」

 

「吉井、よかったな。」

 

「ドンマイ」

 

「よかったら、お2人もどうぞ。あっ、私は美波ちゃたちを待たせているので、先に行きますね!」

 

まるで天使のような笑顔だった。

ほんわかとして、悟った表情の吉井は坂本の口にシフォンケーキを押し込み、勢いよく自分も口に入れる。

 

 

もう少し味わって食べればいいのに、そう思いつつ俺も残りのシフォンケーキをありがたくいただくことにした。

 

刺激臭が口いっぱいにひろがって

 

 

 

そこまでは、記憶がはっきりしていたはず。

 

「あんたは……?」

 

いわゆる神様っぽい人に手を振られているのが、ぼんやりと―――

 

 

 

 

 

「起きるんだ!!」

「「はっ!」」

 

「くそっ! 30分もロスしたぞ!?」

 

どうやら俺たちは気を失っていたらしい。

 

 

「今回も生きてたなぁ……」

 

「体育館に急ぐぞ!」

 

次の吉井の座標へ、一直線に向かっていった。体育館倉庫をドッタンバッタン散らかしながら探す彼らは、よほど譲れないものがあるのだろう。俺の足元に転がってきたカプセルを拾う。

 

「これじゃないか?」

 

「よっしゃー!!!」

 

遊園地ペアチケットの引換券。

坂本は、泣き崩れるほど嬉しいことのようだ。

 

「よしっ、次に行こう!」

 

「まあ、吉井の運のおかげだしな。付き合ってやるよ。」

 

 

俺や坂本の答えを見てきたが、ハズレ。

 

どうやらダミーもいくつか混じっているし、すでに回収された物もあるらしい。すでに諦めモードで、少しずつ校庭で談笑する生徒が増えてきた。

 

だが吉井は諦めず、鉛筆を振り続ける。

俺たちもすでに誰かが解いたかもしれない問題に取り組む。選択問題であって、そしてx,yの値は有限である以上、試行回数が多ければ多いほど、当たりを見つけられるのは確かだ。

 

 

 

「答えが間違っていたか?」

 

屋上、ここにも見当たらない。

 

「でも、伊月が得意な数学じゃんか!」

 

「翔子に匹敵するんだ。もっと自信を持て。」

 

「……ありがとな。」

 

すでに回収されたのだろう、残念ながら答えが間違っているのだろう、そういった考えで次の場所へ移る生徒は多い。だから、今残っているカプセルはそう簡単に見つからないはずだ。

 

 

「ここに大切な物を隠すなら、どうする?」

 

「ふっ、そうだね。家族にいかに見つからないように、でも取り出しやすいように。今時、ベッドの下なんて時代遅れさ。」

 

「ふっ、そうだな。翔子にも見つからないようにするには、それなりの工夫が必要だ。」

 

「2人は、ずいぶんと得意分野らしいな。」

 

俺は苦笑い。

そして、頷き合う。

 

3人で屋上の床をさする。もし隠した後に板を被せたと考えるのなら、ガタッと揺れる場所を探せばいい。

 

「あったー!!」

 

吉井が、カプセルを掲げた。

 

 

 

「あら、奇遇ね。」

「それってもしかしてチケット?」

「もらってみればいいよ、そういうルールだもんね。」

 

マズい、俺たちの考えはその1つだ。

 

Aクラス代表である霧島さん、そして木下さんと工藤さん。彼女たちも諦めるとこなく、あちこちを探していたチームらしい。

 

「「「召喚!」」」

 

科目は数学だ。霧島さんと俺が互角とはいえ、合計のステータスの差は歴然。そして真っ向勝負を挑むしかない今の状況では召喚獣の操作性で勝つしかない。

 

「こうなったら、やけくそだぁー!」

「「「召喚!」」」

 

 

チャイムが、鳴る。

 

 

つまり制限時間ということで、召喚フィールドは自動的に消えていった。もしかすると、Fクラスの教室で気を失っていたことさえも、運が良かったからかもしれない。

 

「ペアチケット……」

「「どんまい。」」

 

しょんぼりとする霧島さんは、2人に慰められていた。

 

 

 

****

 

賞品を引き換えた俺たちはFクラスの教室まで戻ってきた。

遊園地のマスコットキャラクターのキーホルダーを知り合いの女の子に渡せるということで、吉井は嬉しそうだ。

 

「よかったな。」

 

「ああ、ほんと。」

 

「いやー、伊月のおかげだよ!」

 

なんていうか、むず痒い。

吉井はバカみたいに本気でストラップを探していて、彼の力になれたのだ。

 

「運や、物を隠すことの上手さ。たぶん俺の回答だけじゃ見つからなかったと思う。」

 

「へへっ、そうかな~」

 

「おっ、他にも何か入っているぞ?」

 

 

黒金の腕輪。

召喚獣システムに関わる物らしい。

 

 

「「「起動!」」」

 

フィールドが形成され、召喚獣が呼びだすことができた。教師の承認のもと、基本的にフィールドは使えるので、生徒個人が使えるようになるのだ。どのクラスも喉から手が出るほど欲しいアイテムだろう。

 

戦略の幅が、広がるのだ。

 

「こいつはすげぇな!」

 

「すっごーい!」

 

坂本の召喚獣にノイズができ、やがて消えた。

いまだ不備があるという注意書きは、こういうことらしい。

 

「バカにしか使えないはずの腕輪だが、月村が使えるのはどういうことだ。吉井はともかく。」

 

「誰がバカだって!? 雄二もバカだろ!」

 

「じゃあ、至高のバカだな。」

 

「しこう……?」

 

「何はともあれ、いいものゲットしたな。」

 

「だな。」

 

「あっ、僕は先に帰るね!」

 

 

葉月ちゃんに渡しに行かなきゃ、と駆けて行く吉井。

悪寒がする、と必死に走っていく坂本。

 

 

「俺も早めに帰るか。」

 

 

教室の戸締まりをしながら、机に置いていかれたペアチケットを手に持った。

 

「……霧島さんに渡しておけばいいか。」

 

黒金の腕輪のことですっかり忘れていた。

まだAクラスにいるかなー、っと

 

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