バカと、転生オリ主   作:ヒラメもち

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第6話 疑問

 

とある曇りの日。

突如、学校は召喚フィールドに包まれた。

 

猫娘、サキュバス、赤ずきん、狼男、そしてゾンビの山、このFクラスの教室に召喚された召喚獣の装備はいつもと異なる。さらにマスコットキャラクター化するはずの召喚獣が等身大である。

 

ムッツリーニや吉井たち男子は、鼻血をぶちまける。

木下の魅力の前に、敗れたのだ。

 

「……これはなかなか。」

 

「落ち着け。」

 

「えっ、あー、うん。」

 

抱きつき合う2人の召喚獣を、頬を紅くした木下さんがうっとりと見ていた。ムッツリーニが男好きということはあり得ないし、霧島さんの前で坂本が浮気するはずはない。

 

「システムの不調だろうな。」

 

「そうだな。すぐにババアが何とかするだろう。」

 

「学園長のこと、ババアって……」

 

「雄二。召喚獣の様子がおかしい。」

 

「あ?」

 

いつも通りの召喚獣に戻った途端、暴走。

もちろん、コントロールはできない。

 

「吉井、月村。学園長がお呼びだ。」

 

「鉄人、なにかあったのー?」

 

「西村先生だ。とにかく急げ。」

 

俺たちにこれといった害はないとはいえ、学園としては大問題らしい。観察処分者である吉井、そして俺は学園長に呼びだされることになった。成り行きで木下さんたちも付いていきた。

 

システムの不調かと思いきや、サーバールームの配線に問題があるらしい。サーバーへの直接干渉に対する防犯システムによってドアが閉まっているということは、普段侵入が許されていない場所へ誰かが立ち入ったことになる。

 

坂本や霧島さんも、同じ考えのようだ。

 

「さーばーるーむ?」

 

しかし今は、問題解決が優先か。

 

「……システムの心臓」

 

「そうさね。そこにある不具合を直してきてほしいのさ。」

 

「なんで僕たちが?」

 

「黒金の腕輪、それを使いな。そいつは不具合のあるフィールドからは別領域のシステムなのさ。それが使えるお前たちに任せるしかない状況さ。」

 

「よくわかんないけど、わかった!」

 

「月村。バカのフォローを頼んだぞ。」

 

「了解です、西村先生。……ですが、俺の召喚獣では物理干渉はできませんから、観察処分者である吉井がこの作戦の要になりますね。」

 

「そうか。僕がパーティーリーダーなんだね!」

 

「アキ!がんばりなさいよ!」

 

「吉井君、ファイトです!」

 

「えへへ~」

 

吉井君の扱い方わかってるわね。と木下さんに囁かれた。

 

 

「行くぞ、吉井。」

「うん!」

 

「「起動!そして、召喚!」」

 

ムッツリーニの秘蔵のビデオカメラを受け取り、召喚獣は通気口の中を走っていく。彼のおかげで召喚獣と視覚を共有することができるのだ。西村先生も事件完了しても一定期間は没収しないだろう。

 

『次は右じゃ!』

 

「ありがとう、秀吉。まるでRPGだね。」

 

『2人とも、止まって!』

『毒沼。気をつけるさね。』

 

「なんでそんなものがあるんだよ!」

 

「対召喚獣のトラップだな。」

 

「危ないじゃないか!こんなとこ通ろうとするなんて僕らくらいだよ!」

 

『ババアの見え見えなトラップに引っかかるのはお前くらいだ。』

 

「……吉井!召喚獣が来るぞ!」

 

「勝てるわけがない!逃げるんだ!」

 

まずは、吉井を後退させる。

霧島さんの召喚獣の攻撃を耐えたが、総合点は互角。

 

「木下さんに、工藤さんの召喚獣まで。」

 

「イタタタタ!!」

 

「挟み撃ちか!?」

 

雄二とムッツリーニの召喚獣。

 

ムッツリーニの召喚獣に吹き飛ばされ、馬乗りになって殴られ続ける吉井の召喚獣。そして、隣の吉井の悲鳴が聞こえたことで、俺は召喚獣の操作から意識を逸らしてしまった。

 

「戦死者は、補習!」

 

俺たちの召喚獣は0点になって、消滅したのだ。

 

 

 

****

 

吉井の召喚獣へのダメージは、フィードバック。

限界まで痛めつけられたはずの吉井はよく生きているなと感心する。

 

「もう僕は行きたくな~い!」

 

本人のやる気の問題については、姫路さんや島田さんに慰めてもらうしかない。

 

 

「まさか召喚獣が立ち塞がるとは。」

 

「ムッツリーニ、前回のテストの点数は?」

 

「……保健体育は590」

 

「前より伸びてる。」

 

「呆れた点数ね……」

 

「それに、召喚獣の数も多い。」

 

「だから点数を稼ぐしかないな。チートでな。」

 

数学、いや算数だ。

四則演算どころか、足し算。

 

配点は、1問100点。

 

「アキの点数が、すごい!」

 

「10000点を超えましたよ!」

 

これで絶対的なステータスを俺たちの召喚獣を得た。

 

 

「起動!そして、召喚!」

 

 

ムッツリーニたちの召喚獣が襲ってくるが、敵ではない。

道中、見え見えなトラップも、大した痛手ではない。

 

「イタタタタ、やっぱり痛い~」

 

サーバールームには警報が鳴り続け、やはりシステムロックがかかっている。吉井には何もいじらないように言っておいて周囲の不具合を確認したが、ずいぶんとわかりやすい場所だった。

 

「学園長、ケーブルが抜けています。」

 

『それを繋いでおくれ。』

 

足元にケーブルを置くのは、危険だ。

一体、誰が躓いたのだろうか。

 

「美波!姫路さん!」

 

「くそっ、数が多い。」

 

次々と湧いてくる召喚獣で、俺も精一杯。

俺たちは、全校生徒を相手にしているのだ。

 

吉井の点数はすでに4000点を切っている。いくら吉井の召喚獣の操作が上手くても、最適化された動きには一歩及ばない。たとえステータス差があろうと、操作性次第で実力を超えて勝てるのが試召戦争だ。

 

そして、吉井の召喚獣にはフィードバックという弱点がある。

 

『吉井君、がんばってください!』

『アキ、なんとかできないの!』

 

「こんな、ところで……」

 

「これで、終わるのか……」

 

俺には何もない。

 

少しくらい年上だからっていい気になっているだけだ。ムッツリーニや木下は趣味や特技に誇りがあって、姫路さんや島田さんは好きな人のためにがんばっていて、坂本は本気を出せばまさに神童で、霧島さんは坂本のためならなんだってできる。

 

吉井は、バカだ。

バカみたいにいつも優しい。

 

『伊月君、がんばって!』

 

日本史なんて、もう勉強しないと思っていた。

 

木下さんは、こんな俺を初めて認めてくれた。

 

 

(がんばっている人を見るのが好きなんでしょ。だから、一緒に教師を目指しましょう。)

 

 

いまだエラーを発しているサーバー。

キーボードに、触れた。

 

「吉井! 俺がなんとかするから、耐えろ!」

 

「……わかった!」

 

『伊月君、私が時間を稼ぐわ!』

 

「ああ!」

 

エラーを修正する時間はない。

 

ターミナルを生成。

言語は、Fortan。

 

もしシャットダウンまでしてしまえば、吉井の召喚獣まで消えてしまう可能性が高い。だから、実行中のプログラムの中を探して、教師フィールド生成を強制停止。

 

 

起動された召喚フィールドは、俺たちの物だけ。

だから、教師のフィールドを媒介としたみんなの召喚獣は消えていく。

 

「つなげたぁ!!」

 

 

 

****

 

汗びっしょりな俺たちは、皆に出迎えられた。

 

なぜ木下さんの召喚獣だけコントロール下にあったのか、あの時一瞬だけ物理干渉を得たのか、そしてなぜ端末へのアクセスのパスワードが頭に浮かんだのか。

 

そんな疑問が湧いてくるけれど、オカルトのせいなのだろう。

人の意志なんてものは、ようやく研究が始まったところだ。

 

「戦死者は補習だ。」

 

「待て、鉄人!召喚獣が勝手に!?」

 

「みんな補習にしちゃったのか。」

 

「なんていうか、申し訳ないな。」

 

「はあ~、だが今回は免除だ。お前ら、今日は外で遊んで来い!」

 

「「「やったーっ!!」」」

 

どうやら杞憂だったらしい。

 

 

「ねぇ!みんなで行こうよ!」

 

「……プール」

 

「い、今からはちょっと……」

 

「無難にカラオケでいいだろ。」

 

「うん。最近できたところがある。」

 

「そこって個室がたくさんあるとこよね!」

 

「そう。いっぱい道具がある。」

 

「待て、翔子!今度は何を企んでやがる!?」

 

「ドリンクバー……、じゅるり」

 

 

特別な報酬はいらない。

ありふれた大切なものを、もらっているから。

 

日々を、俺は一度失った。

 

 

「姉上はどうするのじゃ?」

 

「も、もちろん。私も行くわよ……」

 

 

木下さんは音痴ということが、今日はわかった。

 

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