バカと、転生オリ主   作:ヒラメもち

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第7話 バカ

 

島田さんと木下さんによって朝から吉井が関節技を受けて、いつものドタバタな日々が始まりを告げた。基本的には俺たちはFクラスで授業を受けるのだが、体育の時は誰もいなくなる。

 

坂本は婚姻届を失くし、ムッツリーニが全女子のバストサイズ一覧を失くし、秀吉がナース服を失くし、島田さんが秘蔵の写真を失くし、姫路さんも封筒を失くした。Fクラスのメンバーが全員体育に出ていたとなると、Fクラス以外のメンバーがこの事件に関わっていることになる。

 

「鉄人が金庫に持って行ったらしいんだ!」

 

「ダンボールの中に大切な物が入っていてな。」

 

「それを間違えて持って行ったらしいのじゃ。」

 

「まあ、協力はするが……」

 

「サンキュー」

 

「恩に着る。」

 

焦っている彼らについていけば、大きな金庫の前。

 

「どうだ?」

 

金庫というより金庫室、よくルパン三世が侵入するようなものだ。どうやら普段は重大な倉庫として使っているので、理由を言ったとしてもそう簡単に許可が下りることはないだろう。

 

「今開けなきゃダメなのか?」

 

「「「ダメ!」」」

 

「……そうか。」

 

まあ、俺ならどうなってもいい。

 

開けるには、パスワードと鍵。

鍵は教師の誰かで、特に西村先生が持っている可能性が高い。パスワードについて知っている教師もそう多くはない。また、物理干渉ができる吉井の召喚獣なら力づくでも破壊できるが、その手段はない。

 

「やっぱり、月村もそう考えるか。」

 

「まあな。」

 

ノートパソコンを膝の上に置き、コードでサーバーと繋ぐ。

 

「何をするのじゃ?」

 

「パスワードを探す。」

 

「でも、下手に打ちこんだら警報が鳴るらしいわよ。」

 

「誰から聞いたんだ?」

 

「根本ってやつだ。」

 

「……そうか。」

 

坂本が特に気にしていなら、問題はないだろう。

俺は構わず、操作を続ける。

 

「……それなら、警報が鳴らない。」

 

「以前、サーバールームに入った時、端末にアクセスするパスワードがわかったんだ。それを使って、何か手がかりがないか調べてみる。」

 

「「「おおっ!!」」」

 

そこまでは複雑ではないから、俺でも操作できる。

 

召喚システムはまさにプロトタイプと言えるもので、オカルトの要素さえなければ動かせないことは確かだ。だから、積もった情報の中に金庫のパスワードが残されていてもおかしくはない。

 

「あった。」

 

数字4桁。

学園長のガサツさがわかる。

 

「これなら鍵さえあればなんとかなるね!」

 

「ここからは俺たちの出番だな!」

 

 

数十分。

吉井が包帯を頭に巻いているとはいえ、生還。

 

これで、鍵は手に入った。

 

「よしっ、開けるぞ。」

 

積もれたダンボール。

各自の探し物も、ちゃんと取り戻せたようだ。

 

「ほんと、よかった。」

 

「そうだな。よかったよ。」

 

「あんたは?」

 

「根本君だよ。ここにあるって教えてくれたんだ。」

 

「有能だったよ、君は。」

 

俺の肩を軽く叩き、根本はダンボールの中からプリントの束を1つだけ取り出す。

 

「試験問題か。」

 

「そんなっ!」

 

「それってカンニングじゃない!」

 

「そうだな。お前らも一緒に見るか?」

 

「……乗せられた。」

 

「くそっ! 最初からこういうつもりだったのかよ!」

 

「は? ま、まて。坂本雄二。あんた、気づかなかったのか?」

 

「すまん。」

 

「ははっ、俺はつくづく運がいい! バカがまちがってダンボールを運び、気が動転した坂本は真意に気づかず、そしてバカ正直な有能君がいてくれた! 最低で屑で、踏み台には相応しいんだよ、Fクラス。」

 

「そんなこと! Fクラスはみんな、やさしくてあったかくて。最低なんかじゃありありません!」

 

「はっ、勝手にほざいてろ。」

 

「「てめぇ!」」

 

「お前らは共犯者さ。バレれば一緒に停学。運が悪ければ、退学さ。」

 

「くそっ、そんなこと怖くない!ぶん殴ってやる!」

 

「まてっ、明久!」

 

「でも!」

 

「このことは秘密にしようぜ。お互いのためにな。」

 

「根本、ロクな死に方はしないぞ。」

 

「おおっ、こわ。じゃあな、踏み台のバカたち。」

 

―――賢く生きようぜ

 

嗤いながら去っていく、根本。

俺たちは、沈黙を続けるしかない。

 

「とりあえず、ここから出るぞ……」

 

「そうだね……」

 

「システムのことはやっておく。だから、鍵持って帰ってくれ。」

 

「あ、あのっ。」

 

「全部、俺が後始末するから。俺があいつを道連れに」

 

言葉は途切れる。

頬の痛みが俺を襲い、胸ぐらを掴まれる。

 

「月村君!?」

「アキ、あんた!」

 

「ふっざけんなよ!誰がそんなこと頼んだ!僕たちが巻き込んだことなのに、なんであんただけが責任を取るんだ!」

 

「俺が勝手にお前らを信用して、俺が勝手にやっただけだし、これからも勝手にやる。……閉めるぞ。」

 

 

扉が、閉じた。

 

 

 

****

 

 

誰もいないFクラスの教室に入った。

 

真っ暗で、でも必要な物の場所はわかる。

彼らの私物を使うことは心苦しいが、仕方がない。

 

「伊月君、待ちなさい。」

 

細い腕だ。

振りほどくことも容易い。

 

「そんな怖い目をしているのに! 心配しない友達がいるわけないでしょ。」

 

「……なあ、俺ってバカなのかな。」

 

「どういうこと?」

 

「何も言わずに勝手にいなくなる。それをまた繰り返そうとしている。」

 

こんなに苦しいのだ。

転生なんて、しなければよかった。

 

「……伊月君のこと、私はほとんど知らないの。学校に来てなかった理由も、あまり自分のことを話してくれないから全然わからない。だから、まだまだいろんなことを聞いてみたい。」

 

―――あなたがいなくなるなんて、私は嫌よ。

 

「キツいな。」

 

「ええ。簡単には、逃がさないから。」

 

「関節技は、まだ経験したくないな。」

 

「そう、よかった♪」

 

「……決着をつけてくる。」

 

 

行き先は、学園長室。

まずやることは、土下座。

 

 

俺たちが金庫室に入ったこと。

テストの問題を見たのは、根本だけ。

 

 

全部、バカ正直に話した。

 

「……それを信じるバカがどこにいるさね。」

 

「学園の模範生である私が、バカ正直な彼を信じます。」

 

「そうかい。」

 

嬉しそうに、微笑んだ。

学園長は俺たちに背を向け、呟くように告げる。

 

「なぜパスワードがわかったのか疑問だろうね。」

 

「それは、まあ。」

 

「あんたの召喚獣は、あのバカのより特殊なのさ。なぜか意識を持ち、召喚していないときでもサーバーの中を動き回る。そしてたとえフィールドがなくても展開できる、あくまで今は腕輪を媒介としているだけ。まったくこれだから、召喚システムの研究は楽しいのさね。」

 

「俺の召喚獣、よっぽどの問題児らしいですね。」

 

「そういうことさね。だから罰の代わりに、これからは召喚システムの向上に力を貸しな。それで、お前は将来……。まあ、この話は今度にしようさね。」

 

 

窓の向こうでは、テスト問題が舞っている。

バカたちが、バカやったみたいだ。

 

 

「バカどもと一緒に、決着をつけてきな。」

 

 

扉が、蹴り開けられた。

 

 

「「やるぞ。試召戦争!!」」

 

「了解。」

 

バカは、転んでもただでは転ばない。

 

 

****

 

Bクラスとの決戦が始まる。

 

「開戦だ!」

 

「「「うおおおお!!」」」

 

Fクラスで突出した点数は、数学の島田さんと保健体育のムッツリーニ。そして、俺や姫路さん。しかし、気迫なら他のクラスメイトも負けていない。リア充であるBクラス代表を敵視した異端審問会メンバーは、Bクラスメンバーを集団で囲んで同士討ちにまで持ち込んでいる。

 

「なるほどな。ムッツリーニ、引き続き頼んだぞ。」

 

「……了解」

 

「まるでニンジャだな。」

 

「ああ。頼りになる。」

 

 

Fクラス教室のボロボロの扉が、開かれた。

 

「お客様が来たか。」

 

「いたぞ!坂本だ!」

「船越先生、頼みます!」

 

「承認しました。」

 

「「「召喚!」」」

「「召喚。」」

 

250点くらいが3人。

島田さんにも敵わない実力で、戦線の後方から乗りこんできた。

 

「300オーバーに、500オーバー……?」

「うそだろ。」

「なんでこいつらがFクラスなんだ。」

 

かつては神童と呼ばれた坂本なら、あり得る。

前世は理系学生だった俺なら、あり得る。

 

拳と大剣が、敵を蹴散らした。

 

「威力偵察だろうな。」

「ああ。引き際を間違ったな。」

 

「戦死者は補習!」

 

3人を抱えて、走り去っていく。

そして、教室の外から見ていたやつをわざと逃がす。

 

攻撃と防御、それぞれに人数を割く必要がある。Fクラスには切り札がある以上、一斉攻撃することは慎重派の根本は選ばない。じっくり追い詰めることをするからこそ、わざと戦線の反対側を開けているのだ。

 

「西村先生、戦場を駆けまわっているんだよな。」

 

「まさに鉄人だな。」

 

だからこそ、今回の鍵だ。

 

「雄二!伊月!」

 

ボロボロの扉が勢いよく開かれて、壊れた。

彼は根本が警戒する、黒金の腕輪の持ち主の1人。

 

「目立つバカ。おつかれさん。」

 

「ずいぶん走り回ったみたいだな。」

 

「はぁはぁ……、奇襲をかけるよ!」

 

「「ああ!」」

 

さて、ここでこの学園の構造を説明しておこう。旧校舎にあるのがFクラス、新校舎にあるのがBクラスだ。それぞれの校舎は渡り廊下で繋がっていて、渡り廊下こそが戦争の中心となる。

 

島田さんと姫路さんがそこで今も戦っている。

 

「まったく、俺を使うとはな。今回だけだぞ。」

 

そして、BクラスはAクラスと向かい合っているのだ。

 

「頼んだぞ、鉄人。」

「よろしく、鉄人。」

「よろしくお願いします、鉄人先生。」

 

「月村まで……」

 

屋上から俺たち3人を抱えて、Aクラスの窓から侵入。

 

「「「鉄人、さっすがー!!」」」

 

木下さんと、俺は頷き合った。

 

 

「行くぞ。」

「「「ああ!」」

 

 

真向かいにある、Bクラスの扉を、蹴り壊す。

 

「「「根本、来たぞ!!」」」

 

「なにっ!?」

「代表!Fクラスに坂本も月村もいません!」

「バカ!ここにいる!」

 

秀吉の声真似や演技。

それで、とどめの一斉攻撃を行わせたわけだ。

 

「残念ながら、俺を過剰に気にしすぎたな。」

 

ムッツリーニによって情報操作は完璧。俺が霧島さんに匹敵するという情報は、慎重派の根本をさらに慎重にさせることは簡単だった。もし、俺を倒したければ保健体育でも持ってくればいい。

 

「鉄人!!科目は保健体育!!」

 

「承認した!」

 

坂本や吉井は、徹夜してムッツリーニの補習を受けたのだ。

 

「起動!」

 

そして俺は、保健体育以外の科目ならいい。

科目は物理。

 

俺の周囲だけは別科目で戦うことになる。

 

「運が良かったな。」

 

吉井たちは300点。

そして、俺は580点。

 

召喚獣の操作は、俺たちが上。

 

「姫路さんも、そろそろ到着する頃だろうね。」

 

「くそっ、お前ら!俺を守れ!」

 

護衛は10人。

慎重派の、根本らしい人数だ。

 

「「「ムッツリーニ!」」」

「……加速!!」

 

根本の召喚獣の首を、忍者が刈り取った。

点数は600点オーバー。

 

「まさか、お前らさえも囮だと……」

 

「そういうことだ。」

 

「……勝った。」

 

「戦争終結! 勝者Fクラス!」

 

「「「よっしゃー!」」」

 

Fクラスのメンバー、誰1人欠けてはならなかった。

バカができることをやったからこその勝利だ。

 

 

「これは罠だ!」

 

「は?」

 

「なぜAクラスから来て、騒ぎにならなかった! 他クラスとの協力は規定違反だろ!」

 

「雄二と協力……、ぽっ」

 

「一体、なにがあったのかしらね。」

「ボクたちのクラスに鉄人先生が入ってきたんだよね!」

「吉井君たちと一緒にね。」

 

「そう。俺たちは勝手に窓から入ったんだ。」

「最近暑いから、窓が開いていてよかったよ。」

「他の皆は、他の教室に行っていたみたいだな。」

 

「く、くそっ。お前らのせいだ!お前らが俺を守らない、から……」

 

駒として扱い、責任をなすりつける上司は最悪だろう。

 

Bクラスは3ヶ月もFクラス教室になるのだが、自滅。ヘイトを根本自身が集めてくれた。そもそも私物まみれのFクラス教室にはみんな愛着が湧いているし、教室交換は行われない。

 

「……後でお前はみっちり指導してやる。補習では済まないぞ。」

 

ともかく、Bクラス生徒は根本を睨みつけた。

鉄人先生によって、こってりしぼられるだろう。

 

「すっきりした?」

 

「……ありがとう。」

 

「ど、どういたしまして……」

 

頬をかく木下さんの頬は赤い。

もし木下さんがいなければ俺は、まちがい続けたと思う。

 

 

「明久君!やりましたね!」

「アキ!すごいじゃない!」

「柔らかいものと固いものに挟まれて!?」

 

明久は姫路さんや島田さんに抱きつかれ、秀吉やムッツリーニとも健闘を讃え合う。雄二も霧島さんの胸にうずめられて、顔を真っ青にしてイチャイチャしている。Fクラスをバカみたいに勢いづけるのは、やはり明久と雄二なのだ。

 

 

「「「異端者は、処す!!」」」

 

「なんでだよ!?」

 

「やっと解放されたんだが……」

 

ブラックリストに俺も載ってしまったなっと

 

「まあ。とりあえず」

「「「逃げる!!」」」

 

 

これ以上は、自分の気持ちから目をそらすことはできないだろう。

 

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