ペスト   作:ミルクティー365

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ペストの恐怖

ここに来てから何日たっただろうか、私の体は膨れ、黒斑も現れていた。

潜伏期間もすぎ、症状が出てきたようだ。

周りの人達は、知らない人達だらけだった。

人が居なくなってはまた増える。

いや、増え続けている。

人はどんどん行ってしまう、だけどそれよりも沢山の人がこの施設に来る。

治らない病気、感染者はどんどん増える、それが黒死病。

こんなこと考えてても気分が悪くなるだけなので、私は体を起こし部屋を出た。

私はこの施設での楽しみが一つだけあった。

それは友達と一緒におしゃべりをすること、それがこの施設での唯一の楽しみだ。

私は今日はどんな話をしようかなと考えながら、友達がいる病室に向かった。

 

「あぁ、そうか。」

私は現実の悲惨さを思い知った、辛さを思い知った、寂しさを思い知った。

いや、思い出しただけなのかもしれない。

私は立ち尽くしていた、友達がいるベッドの前で。

昨日まで一緒に笑いあっていた友達は、体をまともに動かすことすらできなくなっていた。

昨日まで元気だった友達が、一日でこうなるのか。

いや違う、元気とは言えなかった。

友達は辛そうにしてた、黒死病の症状も出てたし、体力も全然なかった。

まともに歩くことも出来なかったけど、私と会う時はいつも笑ってお話をしてくれた。

私は友達の辛さを気づかなかった、いや気付かないふりをしてた。

だけど友達のこんな状態を見ると、いやでも気づいた。

また同じ思いをするのか、お母さんが死んだ時のように。

友達との時間はそこまで多くはなかったが、私にとっては大切な友達だった。

大切な人を失うのはとても辛い、心が痛くて苦しくなる。

私は、もう喋ることすら出来なくなった友達の隣に座って、1人お話を始めた。

話をしていると、時期に睡魔が襲ってきて私は眠ってしまった。

 

私は夜の森を散歩していた。

私が寝ている時に友達は行ってしまった。

部屋に医師が来た時に目が覚めて、動かなくなった友達を調べた後に、友達をどこかに連れていった。

私は今まで何度も見てきたから、もう行ってしまったのだと直ぐにわかった。

お母さんも失い、大切な友達も失った。

お父さんはどこかでお仕事をしてて、全然会っていない。

もしかしたらお父さんも病気にかかってしまったのかもしれない、そう考えてしまう。

私は森の中で座った、一人で考え事をしたかったから、一人で考え事をしたかったんだけど。

 

「何してるんだ?」

 

私の後をつけてきた医師が話しかけてきた、声で私によく話しかけてくる医師と分かった、まぁこんな時間に出歩いたら後をつけてくるよね。

「別に、ただ1人になりたかっただけ。」

とりあえず返事はしておいた。

 

「そつか、だけどもうこんな時間だ、早く施設に戻るぞ。」

 

「なんで戻らないと行けないの?」

私はもう嫌だった、これ以上辛い思いをするのが。

「施設に戻っても病気は治らない、ただ辛い思いをするだけ。」

もう治らないなら戻る必要なんてない。

「もうこれ以上辛い思いはしたくない、お母さんも死んで、友達も死んだ。」

大切な人達がたくさん死んだ、村の人達もたくさん。

「これ以上苦しむなら。」

そう言って私はナイフを取り出し、自分の首に刃を向けた。

これ以上辛い思いをするなら死のうと思った。

 

後ろから頭を撫でられた、久しぶりに撫でられて、懐かしい気持ちになった。

私は後ろを振り向いて医師を見た。

そこにはマスクを外した医師がいた。

「お父さん?」

マスクを外した医師はお父さんだった、どうしてお父さんがここにいるか分からなかった。

 

「そう、私は君のお父さんだ。私は別の村でとある病気が流行ってその村の病気の治療をしていた。今まで見たことない病気で、次々と人が死んでいった。病気を恐れて、病気になった人は島に隔離する形で治療をすることになった。その病気は黒死病と言われ、世界各地でこの病気が発生していた。私は君の村で病気が発生したことも知って、この島に来ることも知っていた。君を見た時まだ症状は出てなかった、早く治療すれば治ると思った。ただやっぱり治らなかった、ウイルスによく効く薬がなかった。結果、治すこともできず、君を傷つけてしまった。治療すれば治ると言ったのに直せなかった、こんなんじゃ医者失格だ。」

 

お父さんの話を聞いて色々わかったけど、最後の言葉は納得が行かなかった。

「お父さんはすごい医者だよ、だって村で起きた病気とかを治してくれたり、ほかの村の病気も治してくれた。お父さんは今までたくさんの人の病気を治療してきた、お父さんは優秀な医者だよ。」

 

「だけど私はたった1人の娘を助けることが出来なかった。」

 

お父さんは目に涙を浮かべていた、今までたくさんの人を治療してきたけど、この病気は他のとは比べ物にならなくて、治すことが出来なかった。

そのせいでたくさんの人が死んでしまった。

だけど。

「お父さんは前言ってたよね、生きることを諦めるな、治療すれば治ると。だから治療をして、私元気になるよ。」

お父さんは驚いていた、そしてこっちに近ずいてきて私を抱きしめた。

 

「あぁ、絶対に治してやる、私は医者として、親として絶対に娘を助けたやる。」

 

私はお父さんを信じる、絶対に治ると。

そして私はお父さんと一緒に施設へ戻った。

こう言ったが私は治らないと思っていた、だけどお父さんが言うなら治るのだろうと私は思った。

だってお父さんは、私が尊敬するすごい医者なんだから。

私はお父さんからもう寝るように言われ、私は眠りについた。

 

あれから何日たっただろうか、黒死病の影響でヨーロッパだけで死者が2500万人に達した。

私は家族を守ることもできず、娘を助けることすら出来なかった。

この病気は恐ろしい、ウイルスに対抗するワクチンすらない、ヨーロッパの3分の1の人口が死に絶えた。

全国で見るともっと酷いだろう、14世紀を生きている我々には何も出来なかった。

未来はどうなっているのだろうか、未来の人達はこのウイルスのことを知っているのだろうか。

私は黒死病に効くワクチンは作れなかったけど、未来は大丈夫なのか。

未来は黒死病の死者は出てないことを願いたい、何世紀先の人達は、黒死病への恐怖心はないことを願いたい。

私の体はもう動かない、だけど未来は安全だと願って。

私は眠りについた。


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