(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第105話

冷凍庫を開いたエプロン姿の清楚な女性は、ひんやりとする冷気をそのままに、ほっそりとした手を伸ばす。昨日の晩、沸騰させた水道水を冷まし、ケースに流し込んで固めたケースのすぐ下にあるプラスチックケースに手を伸ばす。

 

氷ができると自動的に落下する仕組みになっているので、いつでも丸みを帯びた氷は透き通っている。付属の白いスコップで高級ガラスの紫がまぶしいわが子専用のコップに放り込まれたガラスは、からからからと清涼感ある音を立てて、コップの中で踊った。

 

そして彼女はすべて元に戻してから冷凍庫の扉を閉めて、テーブルクロスの上にいったんコップを置き、今度は冷蔵庫を開けるのだ。もちろん扉の内側には高級飲料から作られたキンキンに冷えた麦茶が常備されている。

 

あたりまえ、を許容している一人息子は両親の気遣いなんて気付きもしていないのだけれども。なにせこの子は4年前に一度光が丘テロ事件に巻き込まれて記憶を喪失しているのだ、養子であるという事実を打ち明けようか打ち明けまいかで両親が判断するうえで、大きな障壁となっているのは事実である。

 

また精神的ショックを受けて記憶が忘却の彼方になったのだとすれば、

せっかくサッカーを始めたことで、少しずつ元の社交的な男の子に戻り始めたというのに、また内気でふさぎがちで自室に閉じこもりっぱなしの男の子に戻ってしまうではないか。

 

だから偶然、わが子を部屋から連れ出してくれた八神家の長男とその妹が同じ問題を抱えていると知った時、泉家と八神家は共通のわが子に隠す悩みを抱える同士としての家族ぐるみのお付き合いを始めたのである。

 

もちろん子供たちは何も知らないのだ、大人に守られているという事実など。微塵も。

 

 

 

閉じこもってばかりだったわが子が突然サッカー部を始めると言い出した時には驚いたものの、外に連れ出してくれるお友達ができたと聞いた時には、涙ができるくらいうれしかったので、彼女は全力で応援することを決めたのである。

 

レギュラーになれなくてもいい、補欠じゃなくてもいい、外に飛び出して友達と遊んでくれるだけで、どれだけ元気を与えられるのかきっとわが子は知りもしないのだ。

 

だから彼女は良家の令嬢でありながら、不慣れな家事をすべてお手伝い業者に任せるのではなく、自分でするようになったのである。せめてものささやかな応援をするために。

 

わが子はどうやら母親と父親のことが嫌いなようで、サッカーの試合や練習の話題になるとあからさまに沈黙してしまい、ごちそう様、と逃げるように食卓から自室に吸い込まれてしまう。だから暗黙の了解なのだ。すぐにでも応援したくてたまらないのに。

 

お弁当を作って真っ白な日傘をさしてそれなりに人目を気にした格好をしてほかのご家族と一緒に応援に行きたいのだ、わが子が許してくれないからかなわない夢だけれども。

 

 

 

そして麦茶をたっぷり注いだコップをお盆に乗せて、お手製のケーキを乗せてわが子のところに行くのである。控えめなノックをすると返ってくる返事と共に、ガチャリとドアが開く。こうしないと鍵をかけて出てきてくれないのだ。

 

 

「光子郎さん、そろそろお茶の時間にしたらどうかしら?ずっとパソコンのお友達とお話ししていると疲れるでしょう?今日はレモンパイを焼いてみたんだけれど、どうかしら?

お口に合うとうれしいんだけれども」

 

「・・・・・・・・ありがとうございます。ちょっと今手が離せないので、あとでいただきます」

 

「で、でも、もう朝のご飯を頂いてからずっとお部屋にこもりっぱなしでしょう?目が悪くなったら、サッカーの試合……」

 

「大丈夫です、ちゃんと一時間をめどに休んでます」

 

「クーラーもあんまり体に良くないのではないかしら?」

 

「夏の間はクーラーを利かせていないと電子機器に支障が出ると前説明したじゃないですか」

 

「ごめんなさいね、お母さん、光子郎さんみたいにパソコンに詳しくないからついていけなくて」

 

「………っ!もう、いいですっ!用事を思い出したので、リビングに置いておいてください、あとで食べますから」

 

 

ばたん、と閉められてしまった扉である。ああ、まただ、と彼女は落胆するのだ。どうしてもわが子はお母さんと口にするたびに不機嫌になる。扉から出てこなくなる。母親でありたい彼女が母親となろうとするたびに、どんどんかたくなになっていくのである。

 

やっぱり早く養子であることを正直にわが子に告げて、しがらみをなくしてから一緒にお墓詣りに行って、家族を始めたいと亭主に申し出るのだが。わが子の精神状態を鑑みるとまだ光が丘テロ事件のことも八神家は話していないのにこちらが話したら連動して迷惑をかけてしまう。

 

また精神的ショックを受けて記憶喪失になったらどうする、原因はいまだにどんな精神科医に見せても首を振られるだけなんだぞと反対されてしまうのだ。逃げられない人間関係、牢獄の始まりである。

家族ぐるみのお付き合いがありながら、どうしてあちらのご家族はサッカーの試合に見に行けるのに、私はいけないのだろうか、と彼女はひとり苦悩を抱えながら、どんどんぬるくなっていく麦茶を見つめながら泣くのである。

 

傍らには一緒に食べようと思って準備していたケーキと麦茶があったのに。

 

 

 

 

 

 

 

ガジモンたちの休憩所にやってきた光子郎をみたガジモンたちは、ぎょっとして心配そうな顔をして近づいてきたのである。大丈夫か?と意味不明なことを聞かれて光子郎は疑問符だ。

 

とにかく早くデジモンアナライザーをテントモンに見せて喜んでもらいたくて、ほめてもらいたくてすごいでんなあって言われたくて仕方ないのである。そのために頑張ってきたのだから。ガジモンたちは顔を見合わせた。

 

 

「なあ、選ばれし子供にとって、パートナーデジモンって大事なんじゃねえのかよ?」

 

 

テントモンがどこに行ったか知らないか、と聞きに行った光子郎を待っていたのは、ガジモンの不思議そうな声である。

 

 

「え?あ、うん、大事ですよ?」

 

「じゃあなんでほっとくんだよ、一週間も」

 

「え?一週間もたってたんですか?」

 

「おいおいおい、大丈夫かよ、体内時間むっちゃくちゃじゃねえか。ナノモン様に付き合ってたらぶっ倒れるから止めてくれってテントモンに言っといたのに。てっきりお前と一緒にいるもんだと思ってたから、知らねえぞ?なあ?」

 

「おう。俺たち、いやってほどナノモン様にこき使われてきたから、わかってんだよ、何事もほどほどが大事ってな。あそこ時計ないから、ナノモン様に付き合ってたら、昼と夜逆転しちまうんだよ、こえええ。

 

テントモンは俺たちで探しとくからさ、お前、まずは寝とけ。まずはその死にそうな顔何とかしろよ、見てるこっちが心配になんぞ」

 

「ったくもー、せっかくこっちは何度も休憩しろってノックすんのに、

ぜーんぜん気付かねえとかどんだけ集中力してんだよ、おかしいだろおい」

 

「徹夜は慣れてますから」

 

 

ガジモンたちのぶしつけな視線を頂戴した光子郎は、パイナップルマークのノート型パソコンを抱きしめたまま、なんですか?と聞くのだ。

 

 

「・・・・・・・なあ、お前、いくつよ?選ばれし子供ん中じゃちっせえけど、俺たち助けてくれた選ばれし子供と一緒位か?」

 

「ちっちゃっ!?ち、違いますよおおおっ!僕は小学校4年生です!

大輔君より2つも上ですよ!年上です!」

 

「ちっちゃすぎるだろ、身長」

 

「う、うるさいなあ!人が気にしてること、とやかく言わないで下さいよ!」

 

「いやそれ、明らかに寝てねえからだろ」

 

「え?」

 

「人間とデジモンはかわんねえってことは、大輔だっけ?あの選ばれし子供といろんなこと話すうちにわかったんだけどよ、あっきらかにお前がちっせえの徹夜ばっかで寝てねえからだろ?お前らってあれだろ?

 

幼年期か成長期くらいのデジモンと一緒だろ?水色のやつ、目を離すとすぐに寝ちまうんだよ。進化してもすぐに寝ちまうのは変わんねえらしいぜ?

 

だから、あーなんだっけ、成長期になったらどーんってでっかくなるんだって言ってたぞ、なんつったっけ?」

 

「寝る子は育つだっけ?」

 

「それだそれ!」

 

「・・・・・・・・そうなんだ。そういえばブイモン、チビモンよりすごく大きくなりますね」

 

「デジモンは寝てる間におっきくなるんだよ。人間も同じなんじゃねえのか?」

 

「さ、さあ?僕、まだ保健の授業習ってないからなあ……」

 

「興味のねえことはからっきしかよ。ナノモン様と一緒じゃねえか。

とりあえず、寝ろ。今すぐ寝ろ。とにかく寝ろ。

 

ぶっ倒れたらテントモンに怒られるの俺たちじゃねーか。鏡見ろ、鏡、

どんなひでー顔してるかわかるぜ。

そんな顔で会ったって心配されて、そのパソコンのやつなんて喜んでくれるわけねえだろ、あほか」

 

 

古代種の名前は分からないけれども、現代種の名前はわかるガジモンたちである。突きつけられた鏡を見て、ようやく光子郎は今にも死にそうな顔をしている自分に気付くのである。

 

連日徹夜で、さすがにお風呂と朝の支度はするけれども、空のコピーが寝ていた診察台を借りて寝ていたのだ、そんなもの寝てないようなもんである。

 

体を休められるわけがないだろう、早く早くと体が急いて、せっかくバスタブあるのにシャワーで済ませたのだ。

 

ああ、そういえば、とようやく変なテンションになっていたと気付いた光子郎は、ガジモンたちに無理やり風呂場に放り込まれ、そのまま死んだようにまともな睡眠をとるために、ソファに沈んだのである。夢すら見ない深い眠りについたのである。

 

 

 

そして、翌日。

 

 

 

光子郎はすさまじい轟音と揺れる振動で、ソファから落っこちたのである。顔面直撃である。悶絶する光子郎のところに飛び込んできたのは、敵襲だ!というガジモンの声だった。

 

ピラミッド迷宮は大騒ぎになったのである。テントモンがいないことはもちろんのこと、突然上空からUFOが現れて、上から電撃で攻撃してきたのである。まるでピラミッド迷宮を探すかの如く。

 

隠れ家とするために大穴はいわゆる落とし穴のプロフェッショナルであるガジモンたちのカモフラージュと、ナノモンのホログラム技術により完璧な隠れ家となっているのだが、こうも上から攻撃されては揺れる揺れる。

 

立って歩くのもやっとなくらいの振動の中、光子郎はあわてて最深部にあるナノモンの古代遺跡まで転がるようにガジモンたちと共に突撃したのだ。

 

 

「見ろ、敵だ。まずいことになった、テントモンを探せ!」

 

 

ガジモンたちはあわてて上層部に向かう。あわてて光子郎はパイナップル型のノートパソコンにあるデジモンアナライザーを起動させた。UFOから顔を出したのは、典型的な宇宙人を模したようなへんてこりんなデジモンだった。

 

ベーダモンという完全体のデジモンである。宇宙人に分類されているデジモンなのだが、これは移動式のUFO由来であり本体は正体不明だ。

実際は植物から生まれ変わったデジモンではないか? との研究報告もあるが、頭部が大きいだけあり、とても頭がいいようだ。

 

必殺技は巨大なハート型の投げキッスで相手をフヌケにする悪魔の投げキッス、そして光線銃から輪のような光線を放つアブダクション光線。

得意技は自作UFOから怪しい光を発するミューティレート。

 

 

「完全体!?どうしよう、まだ、テントモン進化できないのに!早く探しに行かなくっちゃ!」

 

「紋章とデジヴァイスは絶対に離すな!やつらの狙いは選ばれし子供たちをおびき出すつもりだ!私はここの防衛で手いっぱいで動くことはできん!くれぐれも無茶はするなよ!」

 

「はいっ!」

 

 

ガジモンたちの休憩室にとんぼ返りした光子郎は、紋章の入ったタグを首にかけ、リュックの背負う部分にひっかけてあるデジヴァイスを抜き取ると、ガジモンたちが待っているであろう最上階に向かったのである。

 

 

 

ホログラム越しのピラミッド迷宮のあたりはひどい有様だった。スフィンクスもどきのライオンの石像はすでにUFOから発射された謎の光によってなんと突然消えてしまったのである。

 

忽然と姿を消してしまった。まるでなかったかのごとく更地が広がる。

これではもうあちらにまで行って、ワープゾーンである古代遺跡のトンネルを使って逃げることができない。

 

テントモンが探しにいけない。明らかに袋のネズミである。まずいまずいまずい、ここがばれたら入り口が丸わかりになってしまう。ハラハラしながら、光子郎はあたりをうかがう。テントモンの姿は見えない。

 

まさかあの光に?いやな予感が迫ってくる中、ベーダモンは手に持っている光線銃で手当たり次第に砂漠地帯を攻撃していくものだから、無差別に穴がどんどん開いていくのだ。ひいい、とガジモンたちは戦慄して悲鳴を上げる。

 

光子郎はデジモンアナライザーで懸命にベーダモンの突破口を解析する。すると、データが更新された。ナノモンからである。無線受信である。それを見た光子郎は、これ、持っててください!と横から覗き込んでいるガジモンたちにパソコンを押し付け、いきなり出口から外に飛び出したのである。

 

止めようとするガジモンたちを振り払って光子郎は笑った。もし徹夜のままだったら間違いなく危なかっただろう。ガジモンたちのおかげである。

 

 

「ば、ばか、どこ行くんだよっ!」

 

「大丈夫です、テントモンと一緒に帰ってきますから、待っててください!」

 

 

光子郎は一目散にUFOに向かって飛び出したのである。

 

 

「僕ならここです!逃げも隠れもしませんよ!」

 

 

選ばれし子供がまんまとおびき寄せられたとにやりと笑ったベーダモンは、光線銃を発射しようとした。しかし、それより前に、隠れ家を探すために無差別攻撃を仕掛けていたUFOの光線が出ている。光子郎は迷うことなく飛び込んだのである。

 

ガジモンたちの目の前で光子郎は跡形もなく消えてしまう。ばかあああ!というガジモンたちの声が響いた。光子郎には確信があったのだ。デジモンアナライザーには追記してこう書かれていたから。

 

ベーダモンの得意技であるUFOから放たれる怪しい光、ミューティレートを食らうと、宇宙空間に飛ばされる、と。

 

 

 

 

光子郎が飛び込んだ先に広がっているのは、宇宙空間である。無重力のさなか、光子郎は懸命に叫ぶのだ。

 

 

「テントモン、テントモンっ!ごめんなさい!僕のことを誰よりも気にかけてくれたのに、無視してごめんなさい!心配してくれたんですね?僕がどんどんやつれていくから、倒れるんじゃないかって心配だったんですね!

 

僕、自分のことばっかりに精一杯で、君がどんなときだってそばにいてくれたことすっかり忘れてたんだ!僕のパートナーデジモンなのに、ナノモンとずっと一緒にいてごめん!

 

いらないんじゃないかって家出させてごめん!それなのに、僕たちのいるピラミッド迷宮から少しでもとうざけようとして、一人ぼっちで立ち向かわせてごめん!

それなのに、それなのに、知的探究心が僕らしいから、大好きだって言ってくれてありがとう!テントモンッ!どこだよおおおおおっ!」

 

 

デジヴァイスが光を放つ。

 

 

その先にいたのは、泡のような姿をしていて、多彩に行動でき様々な表情を見せる幼年期。表面が泡のように不安定なため防御力が無く、生命力も微々たる物である。

 

口にくわえたおしゃぶりのように見える部分から、小型の泡を発生させ無限に増殖していく。バブモンと呼ばれた幼年期は瞬きをした。光子郎のデジヴァイスがバブモンを包んだ。

 

興奮するとモチのように膨らむことからその名前がついた赤ちゃんデジモンがいた。プヨプヨしていて、とてもやわらかい。また見た目からは想像できないほどの知性を備えており、人間の言葉も理解する事ができるため、コンピューター内の辞典システムから誕生したと考えられている。

 

体を自由に変形させ時にはコミュニケーションを求めてくることもある幼年期2のデジモンは、光子郎の名前を呼んだ。光子郎の雨粒が宇宙空間に飛び散って広がった。そして、幼年期は成長期に進化する。

 

 

「光子郎はんっ……!」

 

「テントモン!やっと見つけたよ!僕は、僕は、君に褒めてもらいたくて頑張ってたんだ!なんで忘れてたんだろう!僕がパソコンに夢中になったのは、お母さんに褒めてもらいたかったからなんだ!

 

お父さんに頭を撫でてもらいたかったからなんだ!ありがとう、テントモン!君のおかげで思い出せたよ!僕の知りたがりの原点を!」

 

「光子郎はんならわかってくれると思ってましたで。だたちょーっと一週間おそすぎやしまへんか?やりすぎでんがな」

 

「ごめん、本当にごめん!」

 

「さあ、いきましょ」

 

「うん。今ならきっと、僕たちならなんだってできるさ!ナノモン達が危ないんだ、助けに行こう!」

 

 

光子郎がテントモンの手をつかんだ時、デジヴァイスが輝いた。そして、光子郎の首元で宙に浮いている紋章が紫色の光を帯びて爆発したのである。紫色に変化したデジヴァイスは、灰色の光を放つ。そして紋章を貫いた。

 

知識の紋章が回転しながら宇宙空間に立ち上っていく。そしてその光がカブテリモンを覆い尽くした時、超進化は起こったのである。呆然としている光子郎の前で、完全体となったパートナーデジモンは高らかに咆哮した。

 

アトラーカブテリモンと名乗った新たな進化形態は、翼を広げて光子郎を乗せるべく手を伸ばした。アトラーカブテリモンは、カブテリモンが規則的進化したデジモンである。

 

体が大きく、昆虫型のデジモンの中でも目立っているのが特徴的で、青いアトラーカブテリモンとは違い、ジェット噴射で飛べる能力を身に付けた。頭のツノがさらにかたくなり、攻撃力もアップした。か弱いデジモンを守る、たのもしいデジモンだ。

 

必殺技は巨大なツノを突進し、突き刺すホーンバスター。メガブラスターも健在である。

 

 

「ベーダモンを甘く見ると痛い目みるわよおう!」

 

 

アトラーカブテリモンに乗って宇宙空間から脱出しようとする光子郎だったが、ベーダモンが立ちふさがる。悪魔の投げキッスがとんでくる。動きを封じられたアトラーカブテリモンは、電撃を食らってがくんと飛行能力が落ちた。

 

落っこちそうになりながら光子郎が見たのは出口の扉である。そうか、そこから入ればいいのか、よし。

ここはベーダモンの宇宙空間である。敵のホームグラウンドである。なら。

 

 

 

「アトラーカブテリモン、がんばってください!」

 

 

光子郎の声援を受け、アトラーカブテリモンはUFOの光線から吸い込まれてきたたくさんのピラミッド遺跡の残骸を投げ飛ばして、悪魔の投げキッスを封殺する。

 

そして、電撃がとんでくる前に、宇宙空間に散らばる隕石を豪快に投げ飛ばしてかく乱させる。加速することでメガブラスターで相手の電撃を相殺しながら突っ走る。

 

 

「いっけえええええ!」

 

 

真正面の隕石をホーンバスターで巨大な角で豪快に粉砕し、突進する。

隕石を破壊するのに手いっぱいだったベーダモンは、やがて突然現れた巨大な昆虫型デジモンの必殺技を食らって投げ飛ばされた。

 

その隙をついて、入り口に駆け込んだアトラーカブテリモンと光子郎である。光子郎は飛び降りて、宇宙空間に通じている扉を閉めて、鍵をかける。

 

そして、操縦者がいなくなったUFOが墜落する前に、アトラーカブテリモンに乗って、見事ベーダモンを撃破したのである。どおおおん、とUFOが墜落した。宇宙空間で反省でもしてるといいよ。

 

 

「やったあああああ!」

 

 

歓喜に沸く光子郎の声が響く。アトラーカブテリモンの声が響く。突然UFOをぶっ壊して現れた巨大な昆虫型デジモンに絶句するが、そこにいるのが選ばれし子供と気付いて、ガジモンたちはおーい!と手を振ったのである。

 

勝利の凱旋をしようとした光子郎とアトラーカブテリモンだったが、心なしか高度がどんどんさがっているような。

 

 

「あ、あれ?どうしたんですか?アトラーカブテリモン」

 

「・・・・・・・すんまへん、一気に進化したんで、疲れが」

 

「って、ちょ、待ってくださいよ、今、空飛んでっ!?うわあああああ!」

 

 

モチモンに退化してしまったパートナーデジモンと共に、光子郎は落っこちる。ガジモンたちはあわてて追いかけるが間に合わない。もうだめだ!と思った時、横から彼らを救ったのは。

 

 

「光子郎君、モチモン、大丈夫!?」

 

「な、なんで空から落ちてくるんすかあ、光子郎先輩たちい!」

 

「空さん!大輔君!チコモンにバードラモン!」

 

 

光子郎とモチモンは顔を見合わせていうのだ。おかえりなさい!

 

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