本宮大輔は「暗い」を経験したことはあっても、「真っ暗」を経験したことはない。本宮家では、寝室もリビングもキッチンも、ありとあらゆる部屋の電気を切ってから寝ることは暗黙の了解で禁止されている。
何故か必ずひとつは豆電球を付けた薄暗い明かりをつけたままにしておくことが、義務付けられていた。たまたま真っ暗な部屋があれば、わざわざ豆電球をつけるという不自然なまでの徹底ぶりである。
当たり前だと思っていた習慣が実は珍しいものである。それを知った大輔が、不思議に思って両親に聞いた限りでは、災害に巻き込まれた際に真っ暗なままだと困るという、やけに説得力のある真に迫った説明だった。
ああ、なるほど、とどこからの情報源であるのかまでは大輔は気にしなかった。だから知る由もないが、もし大輔が細部にいたるまで突っ込んでいたら、家族は一般論と正論、常識の言葉を積み重ねて誤魔化されていた。
それは、このお台場にある団地に住んでいるごく一部の家庭において共通していることだ。半ば暗黙の了解としてタブー視されている出来事がきっかけであるのだが、それらを大輔が知ることになるのはまだ先のことだ。
大輔が聞いた理由は、人は目が暗闇に慣れるには、個人差があるがある程度の時間を要する上に、身動きがとれないことはいざという時に致命的な時間ロスになるということだった。
それはジュンが中学進学と同時に念願の一人部屋を手に入れた大輔にも、自然と身についている習慣であり、まどろみに落ちるまでの数分間、まぶたの向こう側はいつもうっすらとオレンジを帯びていた。
それに寝付けなくてカーテンをめくれば、夜遅くまで勉強をしているのか、生活サイクルが違うのか、ベランダの向こう側のカーテンからはいつも光が漏れていた。ベランダの外に出て、遠くを見れば夜遅くまで高層ビルや大きなネオンの光が溢れ、行き交う車のライトが通りすぎていく。
小学校で雨の日の昼休みにかくれんぼをした時だって、掃除用具の中に隠れたとしても足元や上の方は光が漏れていた。
絶好のサボり場所として大人気の体育館の準備室だって、目の前のものの輪郭が確認できるくらいには薄暗い程度。
自分が立っているのか、座っているのか、どこにいるのか。感覚的に迷子になってしまうほどの縫い目のない真っ暗な世界など、寸分の光すら存在しない、真の意味での「真っ暗闇」など、現代を生きる子供たちがまず経験することはない世界である。本宮大輔は、気づくと生まれて初めて経験する真っ暗闇の中にいた。
無音の静寂があたりを支配する、ぞっとするほどの真っ暗な世界の真ん中で、大輔はそこにいた。見渡しても見渡しても、習字の時間に使う墨汁、若しくは絵の具の黒をぶちまけたような世界が広がっている。
おそるおそる、とんとん、と大地を踏みしめてみるとしっかりとした安定感があり、どうやら立っていることに気づく。慌てて太一たちを呼んでみるが、声は響くことなく暗闇の中に吸い込まれてしまう。
大輔の心のなかをあっという間に埋め尽くしたのは、この世界の中に一人ぼっちではないかという耐え難い孤独と恐怖、そして不安だった。ここから逃げ出したい衝動にかられるが、この世界がどうなっているのか全くわからないという、別の方向からの事実が震え上がらせた。
一歩踏み出して、実は奈落の底に続いていたらどうしよう。どこまでいっても真っ暗だったらどうしよう。込み上げてくる感情を踏みつぶすために、口元に手を当てて大声で仲間たちの名前を読んだ大輔は、かちゃかちゃという音が胸元にあることに気づく。
手探りで首もとにかかったままのデジヴァイスとPHSの存在に気付いた大輔は、祈るような気持ちで手を伸ばしたが、ディスプレイの光であたりが照らせるかもしれないという安心感は、あっという間に崩れ去った。
次第に荒れていく呼吸。目尻あたりに込み上げてくる熱がある。乱暴に拭った大輔は、何とかこらえようと深呼吸した。
その時、初めて大輔は寒いと思った。この世界に来る前の猛吹雪で感じた壮絶な冷たさが、大輔の口から肺いっぱいに満たされていく。まるでたった今、思い出したみたいな不思議な違和感があった。
まるで感覚が戻ってきたみたいな、微妙なズレがたった今修復されたみたいな、よくわからない何か。なんで今まで気づかなかったんだろうと首をかしげたくなるほどの寒さが、大輔を襲った。
吐き出された息が温かい。おそらく白い息が暗闇に溶けていくに違いない。思わずはいた息で少しでも暖かくなろうと手をこすり合わせるが、ますます手先が冷えていく。頭のてっぺんからつま先の指まで、震えたくなるような寒さが襲いかかった。小さく悲鳴をあげながら、大輔は縮こまった。びゅうびゅうといつの間にか耳元では、風の音が聞こえる。
真っ暗な世界に音が生まれた。感覚も生まれた。でも何も見えない凍てついた世界が広がっていた。まるで冬みたいだと大輔は思った。木枯らしが大輔の真っ赤になった耳を撫でた。
『―――――――――て』
びくりと大輔は肩を震わせた。風が泣いているのかと思ってあたりを見渡すが、暗闇のなかでただ木枯らしの音が響いている。小さな声だった。聞き逃してしまうような、小さな小さな声だった。でも聞こえた、そんな気がした。
人間なのか、デジモンなのか、それともあんまり考えたくないけれども、それ以外の幽霊とかそういったたぐいの何かか。さっぱりわからないけれど、大輔には、何かを紡いだ存在がいることがはっきりと感じ取れていた。
だれかいるのかと大輔は叫び返すが、その小さな小さな声は聞き取ることができない。かぜの音が強すぎてうまく聞き取ることができないのだ、すぐ側で何か言っているという感覚はあるのに。もどかしくて、聞こえないと大輔は叫ぶ。こっちこいよと大輔は呼ぶ。
一人ぼっちじゃないと、この世界にただひとり存在しているのでは無いのだという希望が、恐怖や不安を吹き飛ばして、大輔を積極的な行動に取らせた。
『―――――』
聞こえた、今度こそ聞こえた。風の音じゃない、気のせいなんかじゃない、誰かの声が聞こえた。はっきりと聞こえた!確信した大輔は一目散に走りだした。風の向こうにだれかいる。はっきりといったのだ、来てと!
全速力で走る大輔。進行しているのか後退しているのか感覚が迷子になり、方向すらわからないがただ一直線に大輔は走った。一人は寂しい。一人は嫌だ。そう思って、懸命に走った。息が上がり、走るのが辛くなり、やがて体力の限界が来るが大輔は走った。
そして息が上がりきり、膝に手を当てながら体全体で呼吸した大輔が、再び走ろうと前を向いたとき。突然、光が現れた。今にも消えてしまいそうな、暖かな光だった。ふわふわと大輔の目の前で浮かんでいる。
「蛍?」
ぽつりと大輔がつぶやいたとき、ぱちりと目が開いた。ぼんやりとした世界がやがてひとつの輪郭を形作っていく。だいすけえ、と心配そうに顔を覗き込んでいるブイモンがそこにいた。
「…………あれ?ゆ、夢?」
「大輔え、大丈夫か?なんかうなされてたけど」
「ブイモン……あー、なんだ、夢か。なんか。変な夢見た」
「どんな夢?怖い夢?」
んー、と寝ぼけ眼なまま、ごしごしと目をこすった大輔はブイモンに話そうとするが、えーっと、と間延びした言葉の先が紡げない。あれ?どんな夢だっけ?ふああ、と豪快に大きなあくびをして、涙目を再び乱暴に拭うが、さっぱり思い出せない。
まるで砂漠に垂らした一滴の水のように、思考の彼方に沈んでしまった夢の断片は、もうすくいきれないほど曖昧になっていた。夢をみたという自覚はあるし、変な夢をみたという感覚もあるし、モヤモヤとした不安が漠然と残っているものの、大輔が現実に戻ってきたときにはそれは霞の彼方に消えてしまっていた。
「わかんねーや」
「そっか」
「あーもう、だめだ、寢らんねえ」
すっかり目が醒めてしまったらしい頭は冴え渡り、眠気が全く訪れないことに気付いた大輔は小さくぼやいた。ようやく慣れてきたあたりを見渡せば、みんな思い思いのリラックスする体勢のまま、深い眠りに堕ちている。
いびきが聞こえたり、寝言が聞こえたりしている。ここでだらだらとブイモンと喋っているのもいいけれど、外を見れば相変わらず変な色をした紫色の空と薄暗い外が広がっている。時間はわからないが、夜なのは分かる。ぼんやりとオレンジ色の光と二つの影が見えた。
そういえば、太一、ヤマト、光子郎、丈の順番で、かわりばんこに見張りをすることになったと大輔は思い出した。俺もやりたい。夜の焚き火で見張り番とかなんかワクワクする、と好奇心を刺激されてブイモンと立候補したことも。
太一の影響を受けたのか、大輔だけずるいと思ったのか、タケルが僕もやるといいはじめて、二人でごねたのだが、結局太一とヤマトに危ないから駄目だと却下されて拗ねたまま寝てしまったのだ。そーだ、と大輔はいいことを思いついたと笑う。首を傾げるブイモンに内緒話。
「ブイモン、ちょっと外いこーぜ。太一さん達と一緒なら、怒られないだろ」
一人とデジモン一匹で危ないのなら、見張りをしている太一達上級生と一緒なら大丈夫だろうという屁理屈にも程がある理由づけ。だが、どうしてこうも、こっそり抜けだして夜の散歩というシチュエーションは、冒険するみたいなわくわくを生むのだろう。
抗いがたい好奇心に抵抗できず、ブイモンも頷いた。折角みんな寝ているのに、起こしてしまったら悪い。大輔は、電車の椅子からそっと足音を立てないように降りると、そっと外に抜けだしたのだった。
「すっげー!」
手が届きそうな満天の星空が、大輔とブイモンの頭の上に広がっている。この世界の空は大輔の知っている色ではない。真っ黒な空に紫色を混ぜあわせたような、奇妙なマーブル模様を描いている。
それはこの世界にきてからずっとそうだった。青空は気持が悪いくらいの水色。空は青や水色や藍色が混じった変化があるものだと知っていれば、一色しか無い空なんて、それこそ小学低学年が描く絵画の世界である。
夕焼けだって赤とオレンジと茜色がグラデーションを描くのではなく、マーブルクッキーのような中途半端な混ざり具合だった。これはこれで面白い光景である。頭上に瞬く星々は、白だったり黄色だったり青だったり赤だったりするが、星座や宇宙について微塵も知識がない大輔は綺麗だとしか思わない。
家のベランダから見る空はネオンの光に遮られて、
月はおろか星の姿さえ見せてくれないことを思えば、この光景は十分感動ものである。
北極星がないから、北半球ではないこと。でも、南十字の星座が見えないから、南半球かも怪しいこと。知っている星座が一つでもあって、星を見ただけで結び付けられるような知識と経験、そして冷静に考えられる現実を見通す目があったら、こうものんきに口をとじるのも忘れて見入ることなんてなかっただろう。大輔はまだ小学二年生である。理科なんてまだ習っていない。
夕食時に丈や太一、空たちが空を見上げて深刻そうに話をしていたのは知っているが、好奇心を満たすのに毎回大忙しの大輔である。わざわざ面白くもなさそうな話に首をつっこむはずもなかったので、無理も無い。
一つのことに夢中になると気が済むまで全力で突っ走る、よく言えば集中力がある職人タイプ、悪く言えば配慮が足らない子供は、ちょいちょい、と服を引っ張られ、だいすけ、とブイモンに名前を呼ばれて振り返った。
「なんだよ、ブイモン」
「大輔はさ、どこにもいかないよな?」
「え?」
「大輔はさ、なんにも言わないで、どっかいかないよな?おいてかないよな?」
「どうしたんだよ、お前。なんかあったのか?」
心配そうに見つめる大輔に、ブイモンは、ちょっと思い出しちゃっただけだよって笑った。うれしいことも、たのしいことも、悲しいことも、不安なことも、今日という日は、ブイモンが今まで生きてきた中で、いろんなことが一気に押し寄せてくるような怒涛の1日だった。
それはブイモンだけではなく、他のパートナーたちや大輔を始めとした子供たち、みんなに言えることであり、都電のシートに横になった彼らがすとんと眠りに落ちるまでには時間がかからなかった。
夢も見ないほどの深い眠りに落ちていると休養という意味ではよかったのだが、体を休めるには不適当な柔らかさと広さは、大輔だけでなくブイモンもあまりよい睡眠を促してくれなかったらしい。眠りが浅くなるほどに人間もデジモンも夢を見やすくなるのは同じである。なんか嫌な夢でもみたのかと大輔にブイモンが尋ねられたのも、ブイモンがついさきほどまで経験したことだからである。
「大輔が悪いんだ。オレをおいてどっかにいっちゃうから、とっても怖かったから、思い出しちゃったんだよ、きっと」
「ブイモンは覚えてんのか?」
「うん。オレも大輔みたいになんにも覚えてなかったらよかったのになあ」
「ぼんやり思い出せないのもなんかやだな。なんかもやもやする。まあ、いいや。それよりブイモンはどんなことを夢に見ちゃったんだ?」
ブイモンはあんまり思い出したくないらしいが、喋った方が楽になることもあると背中を押される形で、ちょっとずつではあるが教えてくれた。チビモンだったころ、大輔と出会える日を待ち望みながら日々を過ごしていたころ。
拠点にしていたエリアは成熟期のデジモンが多く生息するエリアであり、幼年期だったチビモンが生きていくにはそれなりに大変だったエリアである。
興味がなかったブイモンは、そのエリアの名前を思い出すことはできないのだが、案内することはできる。ちょっと大変なんだけど。
なにせそのエリアに行くには通せんぼうしてくる意地悪な成熟期のデジモンの目をかいくぐり、あみだの森というとっても意地悪なみちを通らなければならないのである。迷いの森を抜けるにはいくつか道があって、その内の一つにあみだの森という特別な道がある。4つの直線が平行に並んでいて、お互いの線が斜めや直線、グネグネで結ばれている。
文字通り上空から見ればあみだのようになっている森である。その道を通るには特別なルールがあって、直線をまっすぐに進んでしまうと、どこからともなく大砲が飛んできて、ふっとばされてしまうのだ。あみだくじをするように進まなければならないのである。
分かれ道ができたら絶対に曲がらなければならないし、元来た道を戻ってズルをするのもいけない。どこからともなく大砲の弾が飛んできて、チビモンは何度となく死にかけたらしい。それでも、チビモンはめげることなく何度も何度もあみだの森に挑んでいた。
「チビモンのすんでるところからあみだの森ってことは、迷わずの森に行きたいってこと?あれ?チビモンってここの湖にも来てたんだろ?なんでまた」
「オレがここの湖に来れるようになったのは、オレにデジヴァイスを渡してくれたデジモンがさ、コロモン達がいたところに来ないかって誘ってくれてからだよ。引っ越したんだ。オレが住んでたところはさ、とっても意地悪な成熟期のデジモンが威張ってたんだ。ずっとチビモンなオレは、幼年期だから、よわっちいから、外に出ちゃだめだって。そのエリアから出ちゃダメだって言われてたんだ。酷いだろ?だから、そいつらに内緒であみだの森になんども挑戦してたんだ。いっつもいっつも見つかっちゃって連れ戻されてたんだけど」
「そっかあ、大変だったんだなブイモン。……って、あれ?ちょっと待ってくれよ。デジヴァイスをブイモンにくれたデジモンがいるって話だけど、ホントか?もしかして、そいつからオレたちのこと教えてもらった?じゃあ、もしかしてオレたちがこの世界に来ちゃった理由とか知ってるんじゃ?なあなあ、ブイモン。そのデジモンに会わせてくれよ。今、どこにいるんだ?」
ブイモンは期待の眼差しには答えられないとかぶりを振った。
「えー、なんでだよ」
「さっき言っただろ、大輔」
真顔でブイモンは言い返す。しばしの沈黙。
ブイモンが怖い夢を見たのは、大輔が悪いとブイモンが言ったことを考えると、多分、大輔にべったりとすがりながらわんわん泣きわめいたことをいっているのだろう。遼との約束だから言えないけれど、チビモンは大輔がサイバードラモンに追い詰められ、崖が崩落しているところを目撃して、てっきり大輔が死んだのではないかと勘違いしていた。
それが引き金となってみたのだという過去の出来事は、どんなものなのだろう。導き出される結論は一つしかない。大輔は恐る恐るブイモンに聞いてみた。
「もしかしてそのデジモン死んじゃったのか?」
「知らない」
「知らないって」
「だって、突然いなくなっちゃったんだ。ずっと一緒にいてくれるって言ってたのにさ、大輔たちと会わせてやるから楽しみにしてろって笑ってたのにさ、何にも言わないでどっかいっちゃった。みんな、おいてかれちゃったんだ。みんなに慕われてるデジモンだったのに」
オレ、まだ名前訊いてなかったのに、ってブイモンはちょっと泣きそうな顔で言った。パートナーがいないチビモンは半人前だから、半人前に教えてやる名前なんてない、と茶化されてしまったのがチビモンにとっての最後の記憶であるらしい。
「オレがそのことを知ったのは、あみだの森から逃げだそうってこっそり隠れてた時なんだ。オレの住処で威張ってたやつと、オレのことを迎えに来てくれたデジモンがさ、こっそり話してるの聞いちゃった。すぐに見つかっちゃって、どういうことだって聞いたんだけど、誰も教えてくれなかったんだ。すぐに帰って来るって、心配するなって、そればっかり。でも帰ってこなかった。今もどこにいるのか分かんないよ」
「……そっか。ごめん、ブイモン」
「ううん。大輔が期待しちゃうようなこと言っちゃったオレが悪いんだ。ごめん」
「なあ、このことコロモンたちは知ってんのか?」
「知ってるよ。パートナーのことを教えてくれて、デジヴァイスをくれたデジモンだもん。でもさ、思い出すことはあっても、あんまり言わないようにしてるんだ。あのデジモンがいなくなったのは、ここにある木がまだこれくらいしかなかった頃だし」
広葉樹の巨木に手をかけたブイモンは、もうひとつの手で大輔の膝のあたりを指した。えええ、と思わず大輔は声を上げてしまう。樹齢何百年もありそうな巨木が苗木の頃なんて、ブイモンたちはどれくらいの間大輔たちを待っていたのだろうか。
もしかして、ブイモンってものすごく年上なんじゃないかって気付いてしまった大輔は、どう反応したらいいのか困ってしまい、しばしの間固まってしまった。
そんな大輔にブイモンは困ったような顔をして頭を掻いた。もう声も姿も思い出すことができない、想い出の彼方に消えかけているのだとブイモンは言う。だから、あんな想いをするのはたくさんだと思っていたのに、というわけである。
「だからさ、大輔。オレのこと、おいてかないでくれよ?何があっても、オレは大輔の傍にいるからさ」
わかった、と大輔は言うしかなかったのである。こくりと頷いた大輔に、ブイモンは満足そうに笑った。どちらでもなく、星空を見上げる。そこには沈黙が辺りを包み込んでいた。