(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第169話

10人目の子供は港区のどこかにいることが判明し、拠点に定めた光が丘から港区に進軍を開始したヴァンデモンの軍隊の影響は、電波障害だけではなかった。

 

デジモンが中途半端に実態化して、空を飛び、地面を這い、海を泳ぐ度に、現実世界には結晶化したエリアが広がっていった。

 

それはデジタルワールド側からすれば副産物にすぎなかったが、デジモンを知らないこの世界の人々にとっては、奇怪な姿をしたつ鳥が石化した高層ビルの森の中を飛び交い、結晶化した海のほとりには、宝石をちりばめたような魚が紋章のようにきらめいているようにみえた。

 

夜になると、港区の大通りを金色の車のような腕をもち、頭は妖怪めいた冠をもった奇妙な人間が徘徊しているように見えていた。

 

なぜ結晶化が発生するのかは未だに不明なのだが、正規のデジタルゲートをくぐれば起こりえない問題であることは光が丘の事件で判明している。

 

それを知っているはずのヴァンデモンが自分以外の配下のデジモンたちを占拠している光が丘のゲートではなく、非認可のデジタルゲートから移動させたのは、間違いなく、結晶化が目的だった。

 

この結晶化現象には、特殊な効果があった。感染した物質が「ウィルス」のような状態になる特殊な効果があった。「ウィルス」というのは生物と物質の中間に近い存在で、活動していない状態の「ウィルス」は「死」に近い状態であり、「時間」が止まった状態にあるとも考えることができる。ある意味、それは絶対0度における冷凍保存に近いともいえるもので、「死」とは異なる。デジモンの中にも永遠の命を得ようと結晶化が進む森に侵入しようと試みようとして、ババモンが通じるデジタルゲートを閉じていたのだ。それに人間が気づいたらどうなるか。

 

その結晶化は、人間たちにとって「結晶化による死」をもたらす危険地域であると同時に「永遠の命」を得ることができる聖なる土地ともみなされることになるだろう。それは結晶化した港区が現実の外世界と精神の内世界が出会い、融けあう領域となることを示していた。

 

このままでは、多くの街が結晶化してしまうことになるだろう。街全体が結晶化してしまった東京から、海も結晶化してくるとしたら流氷に覆われたオホーツクの海よりもずっと美しい光景が日本の周りに広がることになるだろう。

 

時間も空間も世にいう瀕死の状態にある。そうなれば最期だ。もはや時間の進行の正常な連続さえも、信頼することはできない。明日は実は先週だったということが分かるかもしれないし、あるいは前世紀とか、ファラオの時代なのかもしれない。

 

そこは蝶や甲虫の標本よろしく宝石の煌びやかさを帯びている。霧に取り囲まれた場所へと進入する。降りていくのではなく、上昇するのでもなく、進入する。止まった時間の輪を成す層を進む。美術品のような廃墟を造形していく。生きて歩くことがそのまま芸術品を織りなすが、しかしその歩みを収める風景は死の額縁の中にある。

 

そんな世界をミスティモンは進む。水晶の街路樹には、ガラスの格子が垂れ下がり、涼しい風で揺れている。あらゆるものがクリスタルで包まれついる。街路樹の天蓋からは真っ赤な夕闇が差し込んでくる。

 

水晶化の現象は、ここから一段と進み始めるのだ。街路樹の柵は水晶を被り、1メートルにも及ぶ、ひとつの壁になりつつある。街路樹の天蓋から見えるコンクリートジャングルは、まるで宝石箱のように様々な色の水晶で覆われている。街路樹の根本の芝生は高級な緑の宝石のようにきらめいて、翡翠の塊があちこちに見える。

 

ここまでくれば、ヴァンデモンが居城を構える異空間はもうすぐだ。道路の表面は水晶の針とガラスや石英のトゲが一面に敷き詰められ、どんどん肥大化している。掻き分けながら先に進めば、宝石がちりばめられた螺旋の塔が見えてくる。塔に近づくほど時間の感覚がおかしくなり始め、方向感覚が狂い始めるが、ミスティモンは構わず進んだ。

 

 

一気に黄昏がせまる。ここからはすべてを覆う水晶の層が厚くなり、すべては鈍くかすんで見える。灰色が広がる。色彩豊かな色は消え去り、ほのかな琥珀色の輝きが広がった。やがてすべての世界は、こうなるのだ。

 

いつしか冷たい風が吹いている。冷気は深まり、顔が無感覚になり、両手がもろく骨になる錯覚を覚える。すべての輪郭を包み込み、ぼやかし、夕暮れの闇が押し寄せる。全身にこびりつく水晶の粒子を払いのけても、ここにいるかぎり水晶の作用は加速する。氷のように灰色の空間にある色は、頭の上のわずかな隙間から見える夕闇だけだ。

 

 

黄色と虹色のトンネルがみえた。

 

 

ミスティモンはモザイク彫刻のドアに手をかける。猛烈な冷たさで指がじいんとなったが、構わず開く。夕闇に没していく世界から逃れ、ミスティモンは空間転移した。方向感覚を見失い、ゆくてを阻まれる錯覚を覚え、右往左往しそうになる。今だに慣れない浮遊感を残して、どこまでも続く地下洞窟の地下城にたどり着いた。幹部クラスのデジモンにあてがわれた部屋の扉をあけた。

 

 

「ノックもせずにどうしたんだ、ミスティモン。ずいぶんと慌てているようだけど」

 

「テイルモン、あなたに伝えることがあります」

 

「浮かない顔だな、誰かやられたのか?」

 

ミスティモンの膝までしかない小さな体が立ち上がる。先を促され、ミスティモンは頷いた。

 

「メタルファントモンがやられました」

 

「......そうか、銀座の人間たちは?」

 

「選ばれし子供たちに奪還されたあと、現実世界に戻されました。エージェントたちにより、デジヴァイスの結界機能が近くの電子機器に付与されたのか、バケモンたちは拉致できないようです」

 

「へえ、選ばれし子供たちもやるじゃない。見直したわ。200年間も遅れをとってるくせに」

 

「そうですね。下っ端たちは守護デジモンやエージェントたちに送還され続けているので、ヴァンデモンさまは10人目がいる選ばれし子供が住んでいるであろう港区に配下を向かわせているようです」

 

「そうか......」

 

「テイルモンはいかがでしたか」

 

「それを私に聞くのか?」

 

テイルモンは笑った。

 

「ヴァンデモンさまの絶望は計り知れなかったよ。デジタルワールドとこちらの世界の時間の流れの乖離は、想像以上に酷かった。しかも先代の子供たちが残してくれた予言書とはなにひとつ違う歴史を歩んできた世界があるだけだ。どうやら世界線が変わってしまったらしい。なにせ先代の子供たちはもういない。誰一人な。病気だったり、事故だったり、色々あるけども死んだのは同じだ、変わらない。皮肉なことに、デジタルワールド側の判断は正しかったということだ。新しい選ばれし子供が現れるまでなにもできないんだから、現状維持をしろというのは、あっていたらしい」

 

「......そう、ですか」

 

「ヴァンデモンさまの今までの行動はすべて無駄だったようだ」

 

「......」

 

重苦しい沈黙がおりた。

 

「なあ、ミスティモン。私はどうしたらよかったと思う?生きている、と嘘をつく?適当な人をでっちあげて連れてくる?それとも......いや、無理だ。今のヴァンデモンさまにはなにも届きはしないだろう。このままでは報告した私を殺しかねないから近づくなと言われたばかりだからな」

 

テイルモンはためいきをついた。200年間、ずっと傍らでヴァンデモンの手伝いをしてきたテイルモンはなおのことヴァンデモンの絶望がわかってしまってつらいのだ。

 

ヴァンデモンはずっと先代の子供たちを探し続けていた。その理由を知っているのは幹部クラスのデジモンだけだ。

 

今は複数あるデジタルワールドも歴史をたどれば一つの世界にたどりつく。その一番最初に作られた世界でのお話だ。世界で一番最初に作られたパソコン、エニアックを自称する存在がホメオスタシスの前身として存在していた。5人の子供がデジタルワールドに召喚され、「非進化」と「進化」の概念の争いに巻きこまれた。5人の子供たちは「進化」の概念に味方して勝利をおさめ、ダイノ古代境に碑文を残し、帰還した。四聖獣が「非進化」の概念を封印する楔となり、世界は安定した。そして世界は複数に分岐していくことになる。

 

 

ひとつのデジタマが現実世界の光が丘に召喚される運命的なアクシデントがあり、急速な進化を促す力が発見された。パロットモンの持ち帰ったデータから、子供の精神的特質が急速な進化を促す可能性をもっていることが判明する。やがて時は流れ、その子供と特殊な繋がりをもつデジモンが出現した。そのデジモンは、デジタルワールド内の過剰な闇や光を駆逐する性質があり、子供はパートナーと呼称されるようになる。ホメオスタシスは心の動きを伝える装置としてデジヴァイスを作り、増幅器兼リミッターとして紋章を作った。

 

 

問題はここからだ。光の紋章はデジタルワールドにもともとあった力。急速なのが特殊なだけで、昔から進化を促す力なんてのはたくさんあった。デジメンタル、生命、進化、美しさ、真実、いろんな言葉で呼ばれていたが生命の源の総称であることはかわらない。

 

ホメオスタシスがその特質を光と名付けた。その力が使える人を総じて選ばれし子供と定義した。選ばれし子供が世界を救うために召喚されると定義した。

 

ホメオスタシスの定義はデジタルワールドすべてに反映される。もちろん歴史は改変されて、テイマーだった先代の子供たちもまた、初代の選ばれし子供と後付けされた。

 

選ばれし子供が冒険したことになった。

 

デジモンワールドが生まれた時、『非進化』と『進化』の2つの概念が争った。やがて『非進化』の概念は火の向こう側に追いやられ、『進化』の概念がデジタルワールドという世界の法則になった。デジタルワールドに住むモンスターたちはもちろん、デジタルワールドそのものも『進化』する道を選んだのである。その過程で、デジタルワールドはホメオスタシスというセキュリティシステムを作りだした。ホメオスタシスは実体がないため、自立型エージェントをつくり、セキュリティシステムの末端の仕事を任せた。ホメオスタシスは光と闇を均衡させる機構である。だからどちらの力も過剰になることを嫌う性質がある。そして『進化』の概念に反する者を嫌う性質がある。たとえそれが世界に『進化』という概念をもたらしてくれた英雄であるとしてもだ。

 

 

彼らは四聖獣と呼ばれている。デジタルワールドの四方の方角を守護し、デジタルワールドの安定を保つ4匹のデジモン達のことだ。

 

 

北方を守護するは水の力を操る玄武、シェンウーモン。東方を守護するは雷の力を操る青龍、チンロンモン。南方を守護するは炎の力を操る朱雀、スーツェーモン。西方を守護するは鋼の力を操る白虎、バイフーモン。

 

 

四聖獣の特徴は4つの目、12個のデジコア、を持っていること。基本的に「四聖獣」はデジタルワールドのバランスを保つ存在であるため、自ら行動を起こす事は少ない。

 

 

かつてデジタルワールドが『非進化』の侵攻にあったとき、世界で初めて冒険した選ばれし子供たちのパートナーデジモンだった。彼らはもともと普通のデジモンだった。しかし、『非進化』の概念に直接接触してしまった影響で究極体という存在になった。『非進化』との争いの中で、世界で初めて生まれた存在である。 究極体は『これ以上、進化の仕様がない』形態だった。進化の果て、行き止まり、これはまさしく『非進化』と同じ存在だ。デジタルワールドも、安定を望む意思機構であるホメオスタシスも、存在を許容できなかった。

 

 

『非進化』の概念の先駆けのような存在であり、あまりにも強大な力を持っていたからだ。彼らが意識しなくても、デジタルワールドはすさまじい影響を受けてしまう。究極体という概念が広がることを避けるためにも、長くデシタルワールド内に留めるのは好ましくないと判断された。そのため四聖獣はデシタルワールドを思い、それぞれが四方の最外部に向かった。同じところにいると、歪みが生じてしまうからだ。

 

 

『非進化』の概念を火の壁の向こう側に封印するための楔となった四聖獣は、いつしか方角を司る存在として崇められるようになる。それは一体でも欠けるとパワーバランスが崩れる状態になってしまったともいえた。そのためか四聖獣はデジタルワールドの最深部に存在して、ほとんどの内部の事象にかかわってこようとしない。

 

 

それが、歴史は改変され、意識は変化する。当たり前になる。幾度かの危機はそうやって乗り越えられてきた。

 

今回の後付けの改変は、とんでもない現実改変を引き起こすこととなった。

 

 

選ばれし子供のパートナーデジモンはパートナーと離れ離れになった場合、弱体化する不都合が存在する。それが四聖獣にも適応されてしまったのだ。

 

おかげで暗黒勢力の力を押さえ込んでいる四聖獣たちのちからは200年を境に、かつてより大分力が落ちている。急速な進化は今の選ばれし子供にとっては切り札たり得るが、パートナーがいない究極体である四聖獣たちには足枷にすぎない。

 

だが、四聖獣たちは、決して恨んではいないのだとテイルモンはヴァンデモンから聞いた事がある。

 

パートナーたる先代の選ばれし子供がいなければ、ここまでの境地に辿りつけなかった証明になるのだと。

 

だから、ヴァンデモンは先代の子供たちを探していた。その結果がこれだ。泣けるではないか、二度と会えないというのに、きっと四聖獣たちは静かにパートナーを弔うだけだ。

 

 

「やりきれないな、ミスティモン。パートナーと会えたのは運命だった、もうひとりの自分という特殊な繋がりをもらえたと喜んでる四聖獣を見るってのはこたえるとヴァンデモンさまはいっていた。デジモンと人間はどうしたって越えられない寿命という壁がある。なのに、その思い出を糧に生きていけるなんて、私には理解できない。到底わかりっこない境地な気がしてならない」

 

テイルモンは霊園を見てきたという。

 

「なんとも不思議な光景だった。絶滅した種族も別の種族として再構成される私達の世界にはありえない光景だ」

 

そしてテイルモンはありし日を思い出すのだ。

 

空から落ちてきたデジタマからユキミボタモンが生まれ、ニャロモンになり、テイルモンになった。サーバ大陸の過酷な環境を一人で生きぬくには、少しずつ進化するしかなかったのだ。

 

誰かを待ち続けていることだけ覚えていたテイルモンは、旅にでた。広大なサーバ大陸でも探し求める誰かは見つからず、やがて迷い込んでしまった。サーバ大陸に存在するこのエリアの名前は、闇貴族の城。ヴァンデモンが支配するエリアだった。

 

 

ヴァンデモンは、恐ろしい異能を持っていた。それは敵のデジコアを一度破壊し、悪質なコンピュータウィルスを侵食させながら再構成するというものだ。敵はヴァンデモンに対する忠誠心がデジコアに仕込まれ、アンデッドとして復活させられる。

 

あとはもう、ヴァンデモンの意識ひとつで生死を繰り返す羽目になる。テイルモンにおそいかかってきたのは、そんなアンデッドに身を落としたダークティラノモンだった。ヴァンデモンの眷属になるとウィルス種に変異してしまうのだ。テイルモンのよく知る大人しいティラノモンの面影はなかった。

 

 

ヴァンデモンの眷属として復活させられたティラノモンは、デジコアを構成するデータがバグを起こし、凶暴なデジモンに変貌してしまったのだ。体は黒く変色し、腕もティラノモンよりも強靭に発達し、攻撃力を増している。目の前に映るもの全てを敵とみなし、攻撃を仕掛けるバーサーカーと化した成熟期を正常化させる手段は、もうない。

 

テイルモンに出来ることはなにもなかった。腕に覚えのあるテイルモンも倒しても倒しても復活するダークティラノモンたちに疲弊し、ついに倒れてしまった。闇からコウモリが湧き出し、死を覚悟したとき。ヴァンデモンは配下を止めたのだ。テイルモンが紋章をもっていることに気づいたから。

 

 

そこでテイルモンは自分の生まれた意味を知ることになるのだ。

 

テイルモンは選ばれし子供のパートナーゆえに、現代種でありながら古代種のデジゲノムをもって生まれてきた特殊な個体だった。ゆえにワクチン種にしか進化できない。進化ツリーが著しく制限されている。ウィルス種になれば、暴走状態になる。ブラックテイルモンにするのはいけない、このエリアが壊滅する危険性があるにもかかわらず、ヴァンデモンは仲間として迎えてくれたのだ。

 

配下に加えるなら、ホーリーリングは取り上げた方がいいと進言するデジモンもいたが、それでは配下に加える意味がない。世界を統べる者はいかなる者も従えてこそだと笑っていた。

 

「ようこそ、聖なる者よ。せめてもの慈悲だ。ここで死ぬか、命ごいするか、選ぶがいい」

 

 

そして、テイルモンはここにいるのだ。

 

 

テイルモンの危険性を正しく認識出来るのは、その出自や未来を記した予言書をしるヴァンデモンだけである。そのヴァンデモンがいうなら、とほかの配下たちは引き下がった。それからテイルモンはヴァンデモンの監視下にあった。

 

劣悪な環境にはおかれないが、冷遇された。衣食住は保証されたが、いくら功績をあげても待遇がよくならない。いつまでも外からきた雇われ兵士の扱いだった。幹部になれたのは現実世界にきて、ヴァンデモンに命じられたからだ。

 

認めさせようと躍起になるが、意に介さないのがムカつく。嫌な奴だが嫌いではない。その関係性に暴力のような理不尽さが伴わないし、性質的に合わないだけで実力は認めている。そんな評価である。

 

 

 

ヴァンデモンは絶妙なバランスでテイルモンを扱っていた。ただでさえデジコアに制約があり、進化ルートがワクチン種に一本化され、それ以外に進化すれば暴走のペナルティがある。

 

それに感情や周囲との関係性、精神のあり方まで進化条件に設定され、満たされなければ暗黒進化一直線な中、一度も暗黒進化しなかったのは、凄まじい確率である。現場維持しか方法がなかったにしても、だ。おかげで順当に力を身につけ、知恵を身につけ、強くなった。幹部クラスに躍り出た。

 

なのに剣客から評価されることはない。それが悔しくてならないテイルモンである。それが結果として最良の結果を生んだ。実はエンジェモンをはじめとした聖なる者はダークエリアに近づくだけでも堕天する。ヴァンデモンのエリアのような闇の異空間にいるだけで堕天する。

 

それだけ聖なる者は染まりやすいのだ。聖なる者の根源とさえいわれるテイルモンはいわずもがな。そうすれば暗黒進化しかないテイルモンがテイルモンであれたのは、心を強くもったからだ。そういう意味でもヴァンデモンは扱いがうまかったのかもしれない。

 

予言書によればお前は私をいつか殺すのだから優遇してなんになると先代の子供たちがのこした予言書を突き付けられたときの絶望は計り知れないものがあった。

 

「私もウイルス種に進化したかった」

 

ミスティモンは首を振った。

 

「そんなこと、いうべきではありませんよ、テイルモン」

 

「......」

 

「たしかに私はウイルス種に進化しました。それは守護デジモンにさえ暗黒勢力側の不穏分子が巣食うというのに、ウイルス種に対する偏見が酷かったからでもあります。だが、あなたは違う。数少ない理解者だ、ワクチン種であるからこそ、説得力がある」

 

「まあ、どのみち私は異端だがな。闇の眷属化は不可能なんだから」

 

「......」

 

「ヴァンデモンさまは、ウィッチェルニーを存じ上げていましたから。それが配下に加わる理由でもあります」

 

「......しってるよ」

 

テイルモンは笑った。

 

「ヴァンデモンさまにお前を謁見させたのは、私なんだからな」

 

「懐かしいですね」

 

「そうだな......あのころはまだヴァンデモンさまも待てた」

 

「ロゼモンが行方不明になったあたりから、ですかね」

 

「おそらくは」

 

「ヴァンデモンさまは、10人目の選ばれし子供になぜそこまで固執するのでしょうか」

 

「......5人目の、未だに見つかっていない選ばれし子供について、記述があるからだと思う」

 

「どのような?」

 

「彼は、一乗寺賢と2000年にデジタルワールドにいったと話している。同じマンションに住んでいて、同じ学校に通う友達だと」

 

「......ああ、なるほど......」

 

「まだ、選ばれてない、と1999年の大晦日に選ばれし子供になると書いてあるのに、探しているんだ、ヴァンデモンさまは。希望を捨てきれていない」

 

「......」

 

「私は明日も調査を命じられている。お前も来るか?」

 

「そう、ですね」

 

重苦しい沈黙が降りたのだった。




時系列↓

ミレニアモン(ワンダースワン産)→この小説の古代デジタルワールド=ゲームのデジモンワールドのクロス世界をせめてくる→封印した子供たちはテイマー→光が丘テロ事件で進化の力=光の紋章の力と定義される→チンロンモンが光と希望を守護することになった→チンロンモン=先代のパートナー→ホメオスタシスが先代の子供のパートナーなら選ばれし子供じゃんとする→選ばれし子供と離れたパートナーは弱体化するため、四聖獣弱体化→ヴァンデモン「パートナーいないなら探さなきゃ」→封印中のミレニアモン(よっしゃ利用したろ)
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