(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第170話

「テイルモン、ディノビーモンは連れていかないのですか?10人目のパートナーなんですから、本能でどこにいるかわかるのでは」

 

「昨日、お台場にいるところを発見して接触をはかったそうなんだが、ディノビーモンの凶暴な本能に抗えず攻撃しようとしたらしい。今、ヴァンデモンさまのところで調整を受けているんだ。連れて行ったら騒ぎになる。偵察の意味が無くなる」

 

「そうですか......古代種の短命さを補うためにジョグレスの道を自ら選んだとはいえ、本能に抗えないのは大変だ」

 

「まったくだな」

 

「......テイルモン」

 

「うん?」

 

「この結晶化現象はどうにかならないのでしょうか」

 

「光が丘のデジタルゲートだと、うちの軍勢を連れて来れないんだ。仕方ないだろう」

 

「それはそうですが、ヴァンデモンさまは血が必要なんですよね?結晶化現象が広まれば、人間も結晶化しかねません。そうしたら、ヴァンデモンさまは食事が取れなくなるのでは」

 

「なにをいうのかと思えば、そんなことか。だから、わざわざ人間たちをデジタルゲートを通じてゲートポイントに拉致しているんじゃないか」

 

「それはそうなのですが、わざわざ軍勢をこちらにつれてくる必要はないのでは」

 

「......それは......」

 

言葉に詰まったテイルモンは視線をさ迷わせる。

 

ウィルス種しか通れない結界をテイルモンはパス代わりの宝石が刻まれたカードをかざすと、ワクチン種であるにもかかわらず通り抜けることに成功した。2体の目の前で、揺らめいていたなにかをくぐり抜けた途端、世界は一瞬にして様変わりする。

 

凍てつくような寒さに2体は身体を震わせた。タワーマンション、あるいは高層ビル、交通網に設置されている看板、信号機、あらゆる人工物から、つららが鈍く光っている。つららが、糸を引くように雫を落とす。その雫すらじゅずのようになってかかる。

 

往来の樹木の梢には、陽の高くなるまで氷柱の花がついていた。もはや大規模な氷柱が折り重なっているかのような迫力な一面の大地が氷瀑に包まれるところもある。

 

まるで寒波に襲われた東京のような光景だが、実際は結晶化現象に巻き込まれたがゆえの光景である。結晶が人間も動植物も関係なく全てを平等に包み込んで光り輝く世界へ取り込んでいる。全てが結晶化したことで停滞する空間は光や時間すら奪われ、凍てついた空間と化しているのだ。

 

結晶化によって対象の時間が止まるというのは単なる終末でなく不老不死や永遠を思わせるものがあり、煌びやかな森は綺麗に感じる。

 

結晶化する世界は美しいけれど、人間の作った人工物は非常に俗っぽい。宝石と癘病、幻想と現実、相反し相対する現象がすべてにおいて、といわんばかりの迫力だった。

 

その中をバケモンたちが徘徊しているのだ。なおのこと不気味である。

 

バケモンたちが隊列を組んで、侵入者たる選ばれし子供たちが現れたら、ただちに襲い掛かる算段ができている。地獄の絵を月夜に映したような怪しい姿である。きっとなにも知らないまま迷い込んだ子供たちは、悲鳴をあげるだろう。

 

テイルモンの存在に気づいたバケモンたちは道を開ける。相手は幹部クラスのデジモンかつ聖なるデジモンに進化する可能性を秘めたホーリーリングの持ち主、しかも紋章はなくともデジヴァイスを扱うことができるデジモンだ。テイルモンは逢魔が時の薄明かりに出て来る妖怪の山に印籠のようにかかげた。

 

デジヴァイスのウィルスを撃退するバスター機能が炸裂する。霊魂なんて所詮、焦立たしさと口惜しさの塊りみたいなものだとばかりに光が全てを退散させた。

 

結晶の間をすり抜けて、バルコニーのほうへどんどん歩いていき、窓ガラスに映るバルコニーの椰子や向かいのビルや星空に、一瞬まみれたかと思うとかき消えた。どうやらその向こうにもまた結界があるようだ。

 

ミスティモンと雑談している間でさえも、放置していたら結晶化していく人工物の波がどんどん広がり、最後の時点ではかなりの面積に影響が出てしまうだろう。ゾッとする話である。

 

自然と手が白くなるほど力が強くなっている。

 

結晶の中にある港区はバロック芸術の複雑に入り組んだ紋章や巻軸装飾に覆われている。あるいは、それ自体の空間量以上の空間を占めていて、まぎれもない不死性の予感を与えてくれるような錯覚を覚える。それがたしかに存在していた。

 

全てが水晶のように結晶化する恐ろしくも美しい、そして幻想的なSFの世界。そこには圧倒的な色彩の美しさがある。人間には太刀打ちできない大きすぎるエネルギーへの畏怖と憧憬、諦念などを感じさせる。これは本能からの警鐘なのだろう。

 

選ばれし子供たちはなにも知らないから、気持ち悪いなあとしか思わないだろう。

 

「ミスティモン」

 

「はい、なんでしょうか、テイルモン」

 

「さっきいったヴァンデモンさまの矛盾についてなんだけど」 

 

「はい」

 

「たしかに人間の血が欲しいなら結晶人間にさせるのは本末転倒なのに、わざと部下たちを結晶化現象の起爆剤にするのはおかしい。お前のいうことは正しい」

 

「そうですよね」

 

「ああ......ずっと考えていて、思い出したんだ。光が丘テロ事件が起きてからゲートの管理を任されていながら、今の今までヴァンデモンさまが強硬手段に出られなかったのは、結晶化現象があるからだ。この現象自体、全ての進化を否定する概念を象徴するような事象だ。この現象に呑まれた万物は死にながら不死になる。デジタルワールドにすら劇薬なこの現象をこちらの世界に持ち込んではいけない。そう、いっていたはずだ。はずなんだ。どうして忘れていたんだ、私は......」

 

「ヴァンデモンさまの研究そのものはデジタルワールドを思ってのことですから......」

 

「傍らで手伝っていたから、感覚が麻痺していったんだろうか」

 

「私も気づいたのはつい先程でした。気づくタイミングなんていつでもあったのに。今の今まで視界にモヤがかかったかのようでした」

 

「......」

 

「......」

 

「なあ、ミスティモン」

 

「はい」

 

「私たちですらこれなんだ。ヴァンデモンさまは、大丈夫なのか......?」

 

テイルモンの言葉にミスティモンは答えることが出来なかった。この美しく煌めく静寂と色彩の世界という天国が、明るい地獄だと知るのはだれもいない。魅せられたくはないと思っているのも、急激な水晶化の中に取り残される魂の軋む感じに怯えているからだということも。そこは宇宙的な異変により存在が凍結し、全てが妖しく光り輝く結晶と化していく世界の中心だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

大輔たちが乗り込んだ自動車には、帽子と制服の間から見える顔の部分が黒い影となっており、そこに黄色く光る丸い目が見えるというユニークな姿をしている男がひとり、運転席に座っていた。制服は紺色で、丈の長いダブルボタンの外套を着用しているため、ズボンが目立たない。

 

「銀河鉄道999の車掌みたいですね」

 

「あー、あの?」

 

「じゃあ、ほんとはゴーストデジモンだったりするのかい?」

 

興味津々で聞いてくる子供たちに運転席のデジモンは首を振る。寡黙なデジモンだ。よくよくみれば袖と手袋、あるいは首のあたりからは包帯が巻かれているのがわかる。念には念を入れて隠しているのか、もともとそういうゾンビみたいなデジモンなのかはわからない。

 

なにせ、普通なら車すら動かないはずの完全体のデジモンが運転出来ているのだ。普通のデジモンでは無いのはたしかだ。このデジモンを構成しているテクスチャ自体は及川さんがこちらの世界で作り上げたデータであるために、電気で再構築するときに軽減できているのか、省エネなのか、はたまた親和性が高いのか。わからないことだらけだが、選ばれし子供たちにとって心強いデジモンなのはたしかだ。

 

レインボーブリッジを通り、待ち合わせ場所である浜離宮恩賜庭園まで車を走らせてくれる。ラジオからはニュースが聞こえてくる。さっきまで丈たちが戦っていた怪獣騒ぎについてさっそく速報が入っていた。どうやらテレビ局のヘリも飛んでいたようなのだが、完全体同士の死闘は電波障害も一時的に深刻化してしまったようで、ヘリ自体飛ばせなくなったようだ。おかげで決定的瞬間を撮影されずにすんだものの、野次馬が集まっているようだ。

 

「にしては、こちら側は静かですね」

 

「そうだね」

 

「みんな怖がってるのかな?」

 

「いつ光が丘みたいなことになるかわからないしねえ」

 

「たしかに」

 

浜離宮恩賜庭園は、東京湾から海水を取り入れ潮の干満で景色の変化を楽しむ、潮入りの回遊式築山泉水庭。江戸時代に庭園として造成された。園内には鴨場、潮入の池、茶屋、お花畑やボタン園などを有する。元は甲府藩下屋敷の庭園だったものが、徳川将軍家の別邸浜御殿や、宮内省管理の離宮を経て東京都に下賜され、都立公園として開放された。

 

元々甲府藩の下屋敷があったものが、甲府藩が絶家になると徳川将軍家の所有となり、以後代々庭園として造園されていき11代将軍家斉の時に今の形になったそうだ。

 

回りはビルに囲まれているものの敷地は広大。海の水を引いたという池にはサギがいたり、お花畑には季節に応じた花が咲くなど、都会にあるオアシスといった表現がぴったりの場所だ。

 

同じ江戸時代に整備された小石川後楽園や六義園に比べると、こちらは広さがあるためか整然としている印象だが、これらの庭園にも合わせて訪れて違いを感じるのも面白い。

 

まさに都会のオアシスだ。様々な木々や花々が織りなす美しい風景に癒される。ゆったりとした時間を過ごせるので、リフレッシュしたい時に最適な場所だ。入園料は一般300円、65歳以上150円。開演時間は9時〜17時(入園は16時半まで)。

 

とても広くてゆっくりまわると2時間近くかかる。お金はかかってしまうが、緑豊かなその庭園は、デジモンたちを覆い隠してくれたのである。

 

太一たちをのせたシンのレンタカーもやってきた。

 

朝、色々な用事をでっちあげて用事を聞いたのだが、小学校のクラブ活動、委員会活動に出かけている子や学校で育てている植物の水やり当番、動物の餌やりにいっている子。家で宿題をしている子。塾や習い事で出かけている子とバラバラなようだ。

 

一乗寺賢については及川さんが調べてくれているため、残りの4人を手分けして選ばれし子供たちは調べることになったはずなのだが。

 

1時間後、芝公園近くでしばしの休憩をとる太一たちの姿があった。

 

「見つからないわね......」

 

「電波障害を怖がってるにしても、学校にも家にもいないなんて」

 

「というか、あれだよな。さっきから全然車とすれ違わないし、人がいなくないか?」

 

「お兄ちゃん、昨日の光が丘みたいだよ?」

 

「やっぱそう思うか、光?」

 

「うん」

 

「ってことはやばいな、デジタルワールドと現実世界の境界線がかなりあいまいになってるんじゃあ......?」

 

「まさか、このあたりの人たちも銀座みたいにバケモンにゲートポイントに拉致されたんじゃ......」

 

昨日の今日だ。10人目の子供を見つけ出すには埒が明かないと判断したヴァンデモン側が人間を拉致するついでに子供をその中から探すことにしているのだとしたら。吸血鬼がモデルのデジモンだ。ヴァンデモンは間違いなく、夜行性だろう。そこまで考えて、太一たちは港区の戦場は港区ではなく、港区に張り巡らされたネットワークの中なのだと気づくことになる。

 

シンに借りたノートパソコンにデジヴァイスを繋ぎ、太一はゲンナイさんの隠れ家にアクセスした。

 

そして、太一たちはシンにパソコンを頼むと、ゲートポイントに飛び込んだのである。

 

「真っ暗......」

 

「なんも見えないな」

 

「昨日の銀座のゲートポイントみたいだわ......やっぱりヴァンデモンの勢力がここまで来ているのよ、太一。多分この辺りに住んでたり、働いてたりする人はみんな、誘拐されちゃったんだわ」

 

「えええ!?大変、はやく助けなくっちゃ!」

 

「光、離れんなよ」

 

「う、うん......」

 

選ばれし子供たちはパートナーを進化させ、移動手段を確保する。辺り一面、怪しげな濃霧がたちこめる暗闇が広がっていた。

 

そこは冷ややかな薄暗闇に包まれている。夜にしては明るすぎるし、昼にしては暗すぎる。その奇妙な薄暗闇に包まれるとき、まっとうな方向と時間を見失ってしまう。

 

その先にさらに進んでいくと、待ち受けていたのは、恐ろしいほどの完璧な暗闇だった。 何ひとつとして形のあるものを識別することができないのだ。自分自身の体さえ見えないのだ。そこに何があるという気配さえかんじられないのだ。そこにあるものは黒色の虚無だけだ。

 

真の暗闇の中では自分の存在が純粋に観念的なものに思えてくる。肉体が闇の中に溶解し、実体を持たない観念がエクトプラズムのように空中に浮かびあがってくる。肉体から解放されているが、新しい行き場所を与えられていない。その虚無の宇宙を彷徨っている。悪夢と現実の奇妙な境界線を。

 

それはどんな理屈も通じない根源的な恐怖だった。太一たちは『何処どこ』というもののない闇に微かな戦慄を感じた。その闇のなかへ同じような絶望的な順序で消えてゆく私自身を想像し、言い知れぬ恐怖と情熱を覚えたのである。

それは遺伝子に刻みこまれ、太古の時代から営々と伝えられた恐怖だった。

 

そのなかでは太一たちは何を見ることもできない。より深い暗黒が、いつも絶えない波動で刻々と周囲に迫って来る。こんななかでは思考することさえできない。何が在あるかわからないところへ、どうして踏み込んでゆくことができるのか。勿論太一たちはそれでも摺すり足でもして進むほかはない。しかしそれは苦渋や不安や恐怖の感情でいっぱいになった一歩だ。その一歩を敢然と踏み出すためには、太一たちは我慢しながら進むしかないのだ。

 

心を強く持とうとしても、目はなかなか暗闇に慣れなかった。あるところまでは見えるようになるのだが、そこから先にはどうしても進まない。及び腰な子供たちを見かねてか、ある地点から殿をつとめていたアルケニモンを名乗る守護デジモンが前に進みでる。

 

「どうしたの?」

 

「行きどまりじゃないの?」

 

「道に迷ったかと思ったんだけど違うのか?」

 

「違うねえ」

 

「ほんと?」

 

「壁にしか見えねーけど」

 

「なるほど、ホントに見えてないんだね。なるほど、ここからはアタシの出番か」

 

アルケニモンが手をかざした瞬間、行き止まりだったはずの空間が歪む。ヒビが入る。それはたちまち砕け散り、ウイルス種にしか視認できていなかったトラップが明らかになる。隠しルートを覆っていた結界が弾け飛んだ。

 

「これは......!?」

 

「ゲンナイ爺がいっていたウイルス種にしか見えないトラップ、結界、そのたぐいだね。アタシがいてよかったじゃないか、いなかったら、今頃アンタらはいつまでたってもありもしない出口を求めて延々と迷ってたとこだよ」

 

アルケニモンの話を聞いて太一たちは背筋が寒くなるのを感じるのだった。

 

「な、なにこれ、結晶がたくさん......」

 

「冬みたい......」

 

「キレー!だけど、なんか怖いかも......」

 

「ここから先がヴァンデモンたちに支配された世界だよ。気をつけな。結晶化現象がかなり深刻化してる。下手したら、水晶の石像が並ぶことになるんだからね」

 

アルケニモンの言葉に太一たちはうなずくしかない。

 

すべてが結晶に覆われた世界だった。そこで無邪気な子供の笑い声が聞こえてくる。一人ではない、複数だ。太一たちは身の毛がよだつのを感じた。鬼ごっこをしている彼らは、みんな、透き通ったように透明なデジモンたちだったのである。

 

澄み渡る音がただただ恐ろしかった。

 

色のある生命体に興味を示したのだろう、水晶から掘り出したかのような、緻密な造形の子供達がこちらにやってくる。体の全てが水晶でできており、物理的な損傷はほとんど受けない、死なないデジモンたちがそこに居る。お腹がすいたからちょうだい、と水晶を指さされる。

 

おそらくここで肥大化し続けている水晶を含んだ鉱物、もしくは上位のデジタルモンスターの常駐化で肥大化しつつける水晶達が主食なのだ。太一はそれを渡す。きゃいきゃい無邪気に笑う物乞い達は、そのまま取り合うように去って行く。

 

ここにあるものはすべて水晶で構成されていた。それ以外の何者も必要としないからだろう。接合技術はよくわからない高度なものが用いられており、おそらく強度的にはすさまじいものがあるはずだ。

 

子供しかいないのが恐ろしい。嫌でも目につく足下に転がる残骸達は、どうみても彫刻を粉砕したかのような塊だらけだ。それはきっと普通のデジモンとして生きてきた記憶があるからであり、死にたいと思ったときには自分では死ねない体になってしまうことへの絶望感からだと気づいてしまう。あの子達はなにもしらないんだと太一は気づいてしまう。無邪気に笑っていられること自体、異常事態なのだ。

 

「このままヴァンデモンたちが居座ったらどうなっちゃうんだよ、俺たちの街は!!」

 

太一の叫びに答えられる人はだれもいない。港区のネットワークは、なんとデジタルワールドと限りなく重なり合い、一体化しつつあった。

 

「どうやら、アンタらが来るのは予見済みのようだね。来るよ!」

 

アルケニモンがデジモンアナライザーの起動を促す。空は刺客に端末を向けた。

 

 

デスメラモン

世代 完全体

タイプ 火炎型

属性 データ

必殺技

・へヴィーメタルファイアー

・ヒートチェーン

 

高熱の青い炎に身を包んだメラモンの進化系デジモン。メラモンよりも高熱の炎のため、体から噴き出る炎は青く燃え盛っている。攻撃力・防御力共に数段アップし、炎の威力も加わって超絶な破壊力を持つパワータイプである。火炎型系デジモンは水系や氷雪系に弱いが、デスメラモンの火力の前には、焼け石に水状態である。必殺技は体内で重金属を溶かして、敵に吐きかける『へヴィーメタルファイアー』。

 

他にも複数のデータ種のデジモンたちがいる。

 

「相性と数で押す気だね。面倒な真似を......。アタシはまだ生まれて間もないんだ、選ばれし子供のパートナーみたいに歴戦の勇士じゃないんだ、勘弁しとくれよ」

 

アルケニモンのボヤキなどしったことではない、とばかりにデスメラモンの咆哮が轟く。

 

「光?」

 

後ろにいる光がさっきから違う方向を見ていることに気づいた太一は振り返る。

 

「どうした、光。まさか、別の敵を見つけたのか?」

 

「ううん、ちがうの」

 

「うん?なにがちがうんだ?」

 

「なんかね、ここに来てから、なにか不思議な感じがするの。懐かしいのかな、なにか......」

 

太一は光のいう先を見る。

 

「もしかして、光のパートナーデジモンも近くに来てるのか!?」

 

「わたしの......パートナー......?わたしの......」

 

光はもういちど先程感じた気配をたどってみるが、もうそこには誰もいなかった。光は寂しそうに顔を俯かせた。

 

「近くにいるかもしれない。さっさと片付けて、光のパートナーデジモンを探そうぜ、みんな!」

 

太一の言葉に空たちはうなずく。そしてデジヴァイスが紋章の光をとりこみ、光の柱が結晶世界に鮮やかな色彩をもたらしたのはほぼ同時だった。

 

「......あれが、選ばれし子供......あれが、わたしのパートナー......八神......光なのか......」

 

結晶化した世界に設置されているワープゾーン手前でテイルモンはその光から現れた完全体たちをみていた。彼らに力を与えている子供の中に八神光がいる。パートナーデジモンの本能がそれをたしかに教えてくれているのだが、どうしてもテイルモンはそちらに足が向かなかった。

 

「いいのですか、テイルモン」

 

「まだだ、まだ......ヴァンデモンさまに真意を問いただしてからでも遅くはない......。ヴァンデモンさまはただでさえ予言書から私がヴァンデモンさまを殺すものだと始めからそういう目で私を見てきた。選ばれし子供たちまで連れて行ったら、二度とヴァンデモンさまは私を見てはくれなくなる......」

 

「テイルモン......」

 

「まともに見てくれないのも、なかなかに堪えるんだ、わかってくれミスティモン」

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