(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第172話

田町駅から少し離れたところに広がる閑静な住宅街。その一角に広がるタワーマンションの一棟を尋ねるサラリーマンの姿があった。チャイムを鳴らして名前を名乗ると、すぐに鍵を開ける音、チェーンロックを外す音がして、一人の女性が顔を出した。表札には一乗寺の文字がある。そう、一乗寺賢の自宅である。

 

「お久しぶりです、及川さん!ようこそ、いらっしゃいました!」

 

関連省庁に出向中の技術者の及川は、一乗寺賢の母である女性にとって主人の同僚である。

 

しかも何度かプライベートの付き合いがあり、親しくなるうちに恩師の孫が光が丘テロ事件の被害者で記憶喪失だと愚痴ったことから、次男が全く同じ症状で悩んでいた主人と親交を深めることになった。電波障害に負けない都市計画プロジェクトの中心として出向を命じられた及川は、彼女にとっても主人にとっても期待している人でもあった。

 

だからなおのこと嬉しそうに及川を出迎えた。

 

「昨日はお電話いただき、ほんとうにありがとうございました。本当は主人とお礼を言わなければならないのに」

 

「一乗寺さんがお忙しいのはこちらも知っていますから、お気遣いなく。よく愚痴を聞いていますよ」

 

「ええ、ほんとうに、大変だと思います。及川さんもでしょうに、ほんとうにありがとうございます。昨日、下の子に話を聞いてみたらですね、ほかのお子さん方と同じように思い出したみたいなんです!」

 

「それは、ほんとうですか?」

 

「はい!光が丘テロ事件のことをニュースでやっているからなのか、似たような事件や事故が多いからなのかはわかりませんが、これでやっと肩の荷が降りました。光が丘のことを覚えている上の子には苦労をかけてしまったんですが、ようやく隠しごとをしないで2人ともカウンセリングにかかれます」

 

「そうですか、それはよかった」

 

「はい。本当はなにもない平和な時期に思い出してくれたらもっとよかったんですけども......。はやく、犯人捕まるといいですよね。主人は今日も帰れないそうで......及川さんもそうなんでしょう?それなのに貴重な時間を割いてまで教えていただいてありがとうございました。本当ならうちの子たちにも挨拶をさせないといけないんですが、あいにく2人とも昨日の集団昏睡に巻き込まれたチームメイトをお見舞いにいってしまっていないんです」

 

「お見舞い?入院ではなく?」

 

「ええ、私も驚いたんですが、上の子がいうには黒い煙が見えたから駅の外に逃げたから無事だったと聞きました。救急車が来るまで怖くて近くのトイレから出てこれなかったと。下の子が転ん擦りむいたくらいで、無事でよかったです」

 

「そうだったんですか、それはよかった」

 

「はい、チームメイトもコーチも、スタッフのみなさんも、さいわい命に別状はないし、今日中には退院できると聞いています。ただ、2人だけ無事だったことを2人ともとても気にしているようで、せめてお見舞いに行きたいといって聞かないので、送り出したところなんですよ」

 

「なるほど、だからお見舞いを......。お子さんが記憶を取り戻すことが出来てよかった。それでは俺はこれで失礼します」

 

「はい、ありがとうございました」

 

一乗寺家を後にした及川は、有料駐車場にいく道すがら、選ばれし子供の10人目が一乗寺賢でほぼ確定したことを知らせるために光子郎に電話をかけていた。

 

デジヴァイスの効果でデジモンたちの悪影響を受けないのが選ばれし子供の特権だが、同じ場にデジヴァイスをもったパートナーデジモンがいて、パートナーがいるのならそれは適用されるのだ。

 

問題は一乗寺賢のパートナーデジモンがヴァンデモン側に与するデジモンであること。洗脳を受けているだけならデジヴァイスのウイルスバスター機能を使えばことたりるが、ゲンナイさん曰く古代種のジョグレス体というディノビーモンに進化している以上、素体となったデジモンが安全かどうか保証はない。

 

主人格はパートナーデジモンと思われるが、どこまで自我があるかは不明だ。

 

パートナーとパートナーデジモンの絆がその全てを修復してくれることに賭けるしかないだろう。

 

それも含めて、及川は、連絡をとることができたシンの携帯を借りた太一と光子郎に、今すぐ昭和大学江東豊洲病院にいくよう告げる。

 

そして、近くのセブンイレブンで食料と水をたくさん買い込んだその足で有料駐車場に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧が濃いな......」

 

ヴァンデモンたちも一乗寺賢を探しているのだろう、あたりにまで霧が漂い始めている。及川はパソコンをたちあげて、デジモンを提供した見返りにもらったアプリを起動する。結界が発動する。これで襲撃に一時しのぎができるようになった。

 

デジタルワールドのセキュリティ側もようやく防衛する余裕ができたようで、及川が提供したネットワークを通じて結界プログラムを随時ゲートポイントを通じて各ユーザーのネット端末に付与して回っている。

 

おかげで一気に発動すれば人々が知らぬうちにバケモンたちを寄せ付けない巨大な結界となり、バケモンたちが人々を拉致することは難しくなってきている。これなら、昨日のような事態にはならないだろう、と息を吐く。

 

「石田くんたちは......」

 

同時に展開しているプログラムにより、太一たちに拾ってくれと頼まれた2人のデジヴァイスの反応がある。

 

「......ん?」

 

デジヴァイスのアプリをコピーしてパソコンに入れている関係上、自分も含めて3つしかないはずのデジヴァイスの反応が4つある。すぐ近くだ。及川は車の窓から空を見上げたが、はるか上空は霧がかかり、姿は望めないものの、なにかの反応がある。解析中の言葉が並んでいる。

 

「これは......?」

 

及川の眉に皺がよる。ゲンナイさんからはこのあたりにデジタルゲートを構築して、デジモンを転送する拠点にするとは聞いていない。

 

ということは。

 

いよいよこのあたりがヴァンデモンの勢力下になってしまった証だった。突如、ノートパソコンをERRORの言葉が画面を埋めつくした。そして、警告音が響きわたる。未承認のデジタルゲートが開かれようとしている証だ。及川はエンジンを切った。その数秒後、電気が根こそぎ奪われていき、あたりは暗くなってしまう。信号機が点滅し始め、アトランダムに表示を始める。危機感を募らせた及川は様子を伺うことにした。あいかわらずデジモンアナライザーは解析中の言葉がでている。

 

そうしている間にもデジタルゲートが構築されていき、デジタルワールドが知りえない未知のデジタルゲートが構築されていく。突如出現したワームホールがはるか上空に出現した。

 

「......あれは」

 

及川は目を見張った。デジタルワールドと現実世界の境界が急激にあいまいになっていくのを跳ね上がった数値とERRORが教えてくれる。逆さまになったデジタルワールドがそこにはあった。光が丘テロ事件の時と同じだ。このパソコンがなくとも及川は幼い頃から実体化していくデジモンを見ることができるし、あたり一体が光が丘のような危険地帯になったことがいち早くわかってしまう。

 

選ばれし子供たちの快進撃にイラついたヴァンデモンが新たな一手をうってきたのだ。

 

そこからぐにゃりと歪んだ空間が生まれ、亀裂が走る。そこから生み出された歪なデジタルゲートから、一体のデジモンが姿を表した。

 

デジモンアナライザーは解析中のままだ。

 

「......まさか、デジタルワールドが知らないデジモンなのか?ヴァンデモンは人工的にデジモンをつくって軍勢をつくっていた......。いったいどこから、そんな情報を......」

 

そんなことを考えていた及川の目の前で、正体不明のデジモンは高々と手を掲げた。

 

デジモンアナライザーが解析できたのは、そのデジモンが召喚した、たくさんの完全体たちだった。

 

「あ、あれは......」

 

及川は言葉を失った。デジモンアナライザーの画面をみなくても及川はよく知っていた。1946年の先代の選ばれし子供たちの冒険の中で、ミレニアモンの支配下にあったメタルエンパイアとの抗争は特に熾烈を窮めたと。4人が4人とも証言したからよく覚えている。

 

メタルエンパイアが開発した陸海空の部隊に名を連ね、幾度も先代の選ばれし子供たちをくるしめたかつての敵、かつての部隊が、よく似た光景が、今まさに現実世界のはるか上空に展開されているのである。

 

いよいよあたりは騒然となった。完全体のサイボーグ型デジモンたちが人々に目視できるほど実体化してしまっているのである。

 

完全体の中の竜型サイボーグデジモンの中で最強最悪のパワーを誇るといわれている暗黒竜デジモン、メガドラモン、そしてメガドラモンと同時期に開発され、更なる改造で完全武装した戦闘竜ギガドラモンたちは咆哮をあげた。

 

正規のデジタルゲートではないゲートから出現したデジモンの軍勢の影響で、あたりは一気に結晶化現象が始まる。ギガドラモンやメガドラモンたちが攻撃した場所は破壊される代わりに、全てが結晶に覆われていった。

 

正体不明のデジモンがなにやら指揮するのが見える。

 

機械型デジモンには見えないが、真っ黒な翼を見るに堕天使型のデジモンだとしたらヴァンデモンの幹部クラスのデジモンだろうか。それにメガドラモン、ギガドラモンが指揮下にあるということは、まさかヴァンデモンが作り上げた人工デジモンの一種だろうか。

 

わからないことだらけだが、及川はいよいよ車から1歩も外に出ることが出来なくなってしまう。東京タワーのあたりから加速度的に落ちてくるのは機動力に優れているギガドラモン。逃げ惑う人々はとりかこまれ、行く手は破壊力が勝るメガドラモンの強烈な有体体系ミサイルが破壊しようとするが交通不能となるほどの巨大な水晶体が形成されるだけだった。

 

「......ただ暴れてる訳じゃない?まさか、さそいだしているのか?」

 

全てが結晶化現象に変換される奇妙な軍勢とはいえ、高層ビルに突撃してしまえば、おそらく倒壊するだろう。そうなればあたりは阿鼻叫喚の地獄絵図とかすが、なぜか彼らは人々が外に逃げるのを待っているかのように、威嚇射撃を繰り返す。広がるのは結晶化現象。焦土と化す力がありながら、なぜか彼らは人間が外に出てくるように誘導するように攻撃を繰り返すのか。及川はその意図がわからず困惑しきりだった。

 

「まさか、一網打尽にするつもりなのか!」

 

及川が気づいた時には、人々はギガドラモンたちにおいつめられ、悲鳴をあげていた。

 

及川は空を見上げた。先程よりデジタルゲートが巨大化しているのがわかる。もうここまでくると黒い霧があそこから噴出しているのがよくわかる。

 

及川の予想は的中した。人がギガドラモンたちに捕まり、空高く連れ去られていく。掴まれたところから結晶化が始まる異様な光景だった。デジタルゲートが閉じてしまう。正体不明のデジモンもろともいなくなってしまう。

 

気づけば静まり返る田町周辺である。ようやく及川は車を出すことが出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマトとタケルを無事拾うことができた及川は、セブンイレブンの袋を渡した。太一からこっちの世界だと食料調達が大変だと聞いたからなのだが、まさか幼年期にまで退化するほどの連戦をしながら徒歩で進んでいるとは思わなかったのである。

 

トコモンとツノモンがエネルギーを取り戻すべく一生懸命ご飯を食べているのを待ちながら、及川はハンドルを握った。

 

「ありがとうございます、及川さん」

 

「いいんだ、俺にはこれくらいしかできないから」

 

「でも、お金......」

 

「これから連戦になるかもしれない。話を聞いている限り、ヴァンデモンの幹部クラスのデジモンは完全体しか出てこないみたいじゃないか。唯一の成熟期であるテイルモンですら、メタルグレイモンを吹き飛ばす実力があるのなら、君たちも完全体に進化するのは最低ラインだと俺は思う。できないから負けたら、こちらの世界もデジタルワールドも終わりだよ」

 

「そう、そうですよね、ありがとうございます」

 

「そうだよ。ギリギリ完全体にみな進化できたようだし、なによりだ。ただでさえテイルモンがそれだけ強いんだ、ヴァンデモンが古代デジタルワールド期に味方だった個体と同じというのなら、同じ完全体でも実力はあちらの方が上だと思った方がいい。助けたい気持ちもわかる。痛いほどわかるが、対応を間違えたら君たちもただではすまなくなる。気をつけるんだ。俺はもう誰も失いたくはないんだ、頼んだよ」 

 

「は、はい......」

 

及川から話を聞いたヤマトは、こちらに来るまでに撃退したスカルサタモンの軍勢を召喚したデジモンと、及川がみたデジモンが同じだと気づく。バケモンたちによる拉致ができなくなったために、人間の誘拐方法を切り替えたのは間違いなさそうだった。

 

「タケル、タケル、みて!大変だよ、結晶世界が広がってる!」

 

「ほんとだ......!!」

 

「結晶世界?あ、ほんとだ!」

 

「どうしよう?タケルも結晶化してたんだもん、連れ去られたは人たち、早く助けないと大変なことになっちゃうよ!」

 

「デジモンたちも大変なことになる!」

 

「裏次元が......裏次元があふれて来ちゃってる......そんな、ロゼモンが絶対に広げちゃダメだっていってたのに......」

 

結晶化現象が肥大化していく様子を食い入るように見つめていた後方座席の会話が聞こえてきたものだから、及川は聞き返した。

 

「裏次元?」

 

「ロゼモンがね、ええと、始まりの町の守護デジモンで究極体なんだけど、そのデジモンがね、結晶化した世界を広げないために1人でずっと頑張ってたんです。裏次元てところに閉じ込めてた。それで、結晶化すると、えーっと、時間も光も死んじゃうから、死なない代わりに結晶になっちゃうから、絶対に広げちゃダメだって、なのに敵が来て」

 

「ボク、あのときはまだ、完全体になれなかったんだ。相手がみんなを幼年期にしちゃうティンカーモンってデジモンで、それで、おっきな機械のデジモンも来ちゃって、ロゼモンがあとは任せたから先にいけって、それで」

 

扉の向こうに消えたロゼモンを思い出したのか、タケルの目の中に絶望の色がうつろい。顔から希望の色が蒸発していく。云い知れぬ失望の色が幼い少年たちの表情を横切った。ヤマトは無言のまま頭を撫でた。

 

「ティンカーモンがか......そうか」

 

「知ってるってことは、前の子供たちから、話を聞いた事があるんですか?及川さん」

 

「ああ、聞いた事があるよ。人工デジモンながら、味方になってくれたと」

 

「そっかあ、そうなんだ......」

 

「1946年か......」

 

「......ティンカーモン、いってたんです。なんで逢いに来てくれないんだって。前の子供たち、みんな死んじゃったの、知らなかったみたい......」

 

「デジモンたちは知らなかったんだ。デジタルワールドでは仲良くできた子供たちの国は、1年前まで戦争していたことも。日本人が海外にいくのは何十年もあとになってからだったということも。そうなれば子供は大人になる。自由に行き来できるようになっても、デジタルゲートは開かなかった。だから、先代の子供たちもまた、時間の流れがえげつない程の差があることを知らなかったようだ」

 

「ブイモンいってたね、世界が広がる度に時間は遅くなって、空間は広がっていったって。古代と今は時間の流れも世界の広さも全然違うって」

 

「......何度聞いてもやり切れないな」

 

「......考えただけで辛くなっちゃうね......」

 

「光が丘テロ事件さえなければ、予言の書に近い世界になったはずだった。だが、ならなかった。みんな、引っ越しただろう。バラバラになってしまった。デジタルワールドのゲートが開くのはさらに先延ばしになってしまった。どうしようも無いとはいえ、やりきれないのはたしかだよ。もし、君たちにあわなかったら、俺はほんとうに、やりきれなかった」

 

「及川さん......」

 

「俺は一度だけデジモンを見た事があるんだ、幼い頃に。親友のヒロキと共に。それからは八神光くんのように、光が丘テロ事件の時や今回のようにデジモンを見てきた。デジタルワールドの記憶操作がなぜか作用しなかった。恩師が生きている間にデジタルゲートが開いてくれればと思っていたんだが、まさかデジタルワールドがずっと暗黒の力と戦っていたとは思わなかったよ。戦いはまだ続いていたんだ。なにも知らなかったのは、お互い様だよ」

 

ヤマトはミラー越しの及川の顔から突然すべての表情が消えるのを目撃した。そこにすわっているのは弛緩しきった残骸、夕闇の街路をふらふらと歩いているような不吉な亡者だ。深いしわの刻まれた額の下、窪んだ 眼窩 の奥に、誰も住んでいない部屋のような闇がひろがっている。だがそれは一瞬のことだった。

 

及川の目には明らかな光が宿っていた。幻滅と絶望の果てに、最後にヤマトたちに会えたことこそが、デジタルワールドの危機を救う手伝いができることこそが、ただ一筋の光となってこの人を支えているんだとわかった。

 

この人はとんでもなくつよい人だ。もっとどろどろして、もっと強く、色々思うこともあるだろうに、ヤマトたちにはそれをぶつけようとはしなかった。

 

「まさか恩師も親友もなにもかも亡くしたと思っていた俺が、こうして君たちを手助けできる日がくるとは思わなかった。生きていて、よかと久しぶりに思ったよ」

 

「及川さん」

 

「なんだい?」

 

「デジタルワールドが救えたら、全部終わったら、一緒に行きましょう。道案内なら任せてください。2ヶ月も冒険したんだ、詳しいですよ、俺たち」

 

「及川さん、デジモンと会ったことあるんですよね?光ちゃんみたいに、不思議な力でデジモンのこと忘れなかったんですよね?じゃあ、じゃあ、及川さん、大人になったけどパートナーデジモン、いるかもしれない!始まりの街、絶対守ろうね、トコモン。それでね、及川さんのパートナーデジモン探すんだ!きっと待ってるよ!」

 

ヤマトとタケルの提案に及川が笑い、目じりを拭うのをタケルたちは直視する事が出来なかった。束の間の休息だった。だが、そんな車内の空気などヴァンデモンの配下は読んでなどくれなかった。

 

及川はふたたびERRORを吐き始めたパソコンの警戒音に気づいて、車を路肩にとめる。ヤマトたちはそれに気づいて、デジヴァイスを仲間を探知する画面に切り替えながら、外を見る。今、及川の車内は3人分のデジヴァイスの結界により、かなり強固なものになっており、余程のことでなければ突破はされないはずだ。3つもあればかつて1946年に封印された暗黒の力を封印したうちの4分の3にあたるのだから。

 

それを知ってか、しらずか、ふたたび上空に姿を表したメタルエンパイアの再臨を思わせるデジモンたちの軍勢は、及川の車だけは素通りしてふたたび田町周辺を裏次元に作りかえる作業を開始した。そして、残っていた人間たちを1人残らず回収しようとしはじめる。

 

「ヴァンデモンは一乗寺賢君が豊洲にいると知っていながら、なぜここまで執拗に田町の人を襲うんだ?」

 

「一乗寺君はこのあたりに住んでるんですか?」

 

「ああ、そうだよ。あそこのマンションだ」

 

「じゃあ、家族も友達もみんな連れ去られちゃってるよ、お兄ちゃん!」

 

「まずいな、このままだと人質にとられたら、俺たちも何も出来なくなる」

 

「タケル、ボク、いけるよ!」

 

「おなかいっぱいになったし、休めたし、オレも大丈夫!」

 

2体の言葉を聞いた及川はふたたび拡大し始めたデジタルゲートの中心を指さした。

 

「あれだ、あのデジモンだ。あのデジモンがデジタルゲートをつくり、ギガドラモンたちを召喚している。あいつを倒せば攻撃はやむはずた。ギガドラモンたちにデジタルゲートを作る力はないと聞いた事がある。今のデジタルワールドは現実世界との境界があいまいになっているようだから、ここで倒した方がダークエリアに送れるはずだ。八神君たちはそうしたようだから、俺はゲンナイさんにデータの輸送依頼の連絡をいれよう。頼んだよ」

 

ヤマトたちはうなずいたのだった。

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