(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第174話

「デスペラードブラスター!」

 

ギガドラモンたちが一掃される。

 

「エクスキャリバー!」

 

バケモン、ファントモンたちが掃討される。

 

全てを倒す必要はない。正体不明のデジモンに届く最短距離の道を切り拓けばいい。倒しても倒しても敵の守るデジタルゲートからリアルタイムで軍勢が補充されているのだ。その全てがヴァンデモンの配下であり、蘇生を繰り返されていることは明らかだった。

 

彼らをヴァンデモンから解放するには、頭領を倒すほかに道はないのだと誰もが理解し始めていた。

 

二体が開いた活路を逃すことなく、アトラーカブテリモンに乗ったワーガルルモンが突入する。ホーリーエンジェモンとパイルドラモンもまた後方から強力な必殺技で援護した。海上からの妨害はズドモンの応戦で対応する。強烈な地響きがした。どうやら海上はズドモンの独壇場である。

 

そして、援護ゆえに距離があり、威力がその分落ちてしまうとはいえ、2体がかりの必殺技による爆炎と聖なる光の斬撃のその先には、正体不明のデジモンの姿があった。

 

「聖なる力が効いていないのか、相手との格が違いすぎるからか、わからないな」

 

闇の僕には絶大な効果を発揮するはずのホーリーエンジェモンの必殺剣だが、敵は微動だにしていない。

 

「効いてると思うよ、メタルファントモンの時みたいに感覚が遮断されてるんだ。しかも機械化してるからわかりにくいけど、翼がえぐられてる」

 

「なるほど、相手は機械化している分通りが悪くなっているということだな。厄介な」

 

ホーリーエンジェモンはこの瞬間にヘブンズゲートにより相手を異空間に転送するわけにはいかなくなった。ここまで聖なる力の通りが悪いとなると、経験値の不足をほかのデジモンたちのエネルギーで補い、退化させてまで発動するにはリスクが高すぎる。万が一突破されたら残されるのは幼年期だ。なっちゃんだけになってしまう。それはいくらなんでも無謀といえた。

 

そのデジモンはどこかデビモンに似ていた。おそらく原型はデビモンのような堕天使型のデジモン、白銀の仮面が顔に直接打ち込まれ、自分では絶対に外れなくなっている。体は改造時に亀裂が入ったのか真っ赤なビスで固定されている。なんとも痛々しい。四肢の長さが不自然なまでに長いのも、人為的につなぎ合わされたからだとわかる。かなり強化されており、個体の意思までも完全に制御された人造デジモンだとわかる。

 

仮面の向こうに煌々とひかるのは赤い光。メタルファントモンと対峙したときの不気味さを大輔とパイルドラモンは思い出していた。

 

顔面を覆うマスクはパワーを制御し、意思をコントロールするために付けられ、完全に痛覚もなにもかも遮断されているのはたしかだった。

 

一言も喋らないのだ。

 

敵はツギハギだらけの腕を高々とかかげた。風が生まれる。次第に大きくなっていった竜巻は突風となり、デジモンたちの攻撃を薙ぎ払ってしまう。それどころか威力を拡大しながら迫り来る嵐が襲い掛かった。

 

何とか避けようと散り散りになった子供たちは無慈悲にもその半径が異様に成長した嵐に巻き込まれて巻き上げられてしまう。はるか上空に投げ飛ばされ、逆さまのデジタルワールドがすぐそばに見えた。

 

デジヴァイスの加護があっても結晶化現象は防げないと知っている彼らは四肢が結晶化し始める。バランスを崩して落下する。

 

そこにギガドラモンたちの一斉砲撃が襲い掛かった。

 

そこに突き抜ける光がある。かろうじて下に逃げていたホーリーエンジェモンがソウルキャリバーで漆黒の嵐を叩き切ったのだ。あまりにも眩い光に焦点がズレたのか、彼らは直撃を回避することに成功した。

 

「大丈夫か」

 

ホーリーエンジェモンはすかさず治癒の魔法を全員にかけた。結晶化は動きさえすれば振り払われる。

 

「ありがとう」 

 

「礼はいい、また来るぞ!」

 

ホーリーエンジェモンの言葉でなんとか避けることができたが、また別の突風が選ばれし子供たちに襲い掛かったのだった。

 

 

 

 

アトラーカブテリモンから一気に跳躍したワーガルルモンは敵の仮面目掛けて飛びかかった。

 

「カイザーネイル!」

 

ボルトでガチガチに固定してある仮面に傷がつく。ヒビが入る。だが壊れるにはいたらない。それでも、不気味にならぶ6つの赤い目のうち4つは間違いなくズタズタにひきさかれた。

 

敵は唸り声をあげた。仮面の機能が一部破損したのか、あちらこちらから火花がちり、機械の異常な音がひびきはじめる。ばちばちと電気がはしり、敵はぐにゃりと体をゆらした。

 

「───────!?」

 

ワーガルルモンは至近距離にいたから敵の目とあってしまった。そこにあるのは虚無だった。感情が抑圧されているのではない、完全に破壊され、ただみているだけの目がそこにはあった。ただその奥底でひかる強烈な赤だけが煌々とひかっている。まるでその赤こそが本質だといいたげな輝きをしていた。

 

意思はないのに、標的にされたと感覚的に理解する。それは本能からの警鐘だったのかもしれない。

 

「───────ぐあッ!!」

 

ワーガルルモンの体に敵の腕が貫通する。いや、血は出ていない。魔術かなにかでテクスチャを無視してデジコアに侵入したのだ。ワーガルルモンの体が激しく痙攣した。それはまさにデビモンがレオモンを洗脳したときに使用した必殺技に酷似していた。

 

間違いない、このデジモンの素体となった堕天使型デジモンは、デビモンだ。

 

「ワーガルルモン!」

 

敵は選ばれし子供のパートナーゆえにデータを直接かきかえることで闇の力にデジコアを染め上げることは困難と判断したのか、デジコアに最大出力の電撃を叩き込んだ。

 

そして、そのまま鋭い爪でワーガルルモンのデジコアをえぐる必殺技が放たれ、ワーガルルモンの口から血が舞った。デジコアの粒子が虚無の穴からこぼれ落ち、ワーガルルモンは力なく落下する。

 

敵は容赦なく闇に染まる風で追撃をしかけた。

 

それを横からワーガルルモンをキャッチして飛んでいったのはホーリーエンジェモンだった。

 

「ワーガルルモン大丈夫か、しっかりしろ!」

 

治癒により傷は塞がっていくがワーガルルモンはぐったりしたままだ。追撃の嵐はかけつけたヤマトのデジヴァイスの結界が弾き飛ばした。

 

「ワーガルルモンに近づくな!」

 

ハンマーに叩きつけられたあたりは一瞬にして凍りつき、強固な壁が救護にかけつけた仲間たちを守ってくれた。

 

「ハンマーブーメラン!」

 

はるか上空から攻撃の体制に入った敵の攻撃もろとも破壊する。だが敵はぐらついた程度で微動だにしない。代わりに被弾したギガドラモンたちが次々と破壊され、火花と衝撃波を残して消えていく。ズドモンは戻ってきたトールハンマーをその剛腕で受け止めるとそのまま敵を睨みつけた。

 

「どないします、光子郎はん」

 

「あの技は明らかにデビモンの必殺技だよ、でも電気属性が追加されてるし、闇の嵐も起こせるなんて。洗脳する力の代わりに純粋に能力があがってるのかな。近づいたらワーガルルモンの二の舞だけど、特殊な攻撃はあまり通らないみたいだ」

 

「それなら、さっきハンマーブーメランが効いてました!」

 

「よし、それなら......」

 

光子郎はどうするか考えあぐねている選ばれし子供たちに呼びかけた。

 

「どうやら敵は物理的な攻撃の方が通るようです!距離を離して攻撃してください!ワーガルルモン、大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫。ホーリーエンジェモンたちのおかげで持ち直した」

 

「いけますか」

 

「大丈夫か?」

 

「ああ、大丈夫。任せてくれ」

 

邪魔な取り巻きたちを排斥し、今度は物理攻撃を中心にデジモンたちは攻撃を開始した。だが、ダメージはあるのだが、敵の技の威力は増すばかりで減る気配すらない。それでも、だんだんわかることがあった。あの仮面だ。あの仮面さえ射抜けば、あのデジモンに暗黒の力を直接注入していると思われる供給源を絶つことができるだろう。それにはどうしても近づかなければならない。そこで、今度は両腕を集中的に攻撃した。これならばデビモンの強化版たる必殺技は一時的にではあるが封殺される。

 

「さっきのお返しだ!ガルルキック!」

 

ワーガルルモンの強力な脚力から繰り出された蹴りが炸裂する。連撃がたたきこまれ、こちらに腕が伸びてくるのを察知したワーガルルモンはそのまま敵の仮面を足蹴にして空を飛んだ。

 

逆さまのデジタルワールドを背に、ワーガルルモンは重力に従い、一気に落ちていく。

 

「円月蹴りッ!!」

 

繰り出された衝撃をともなった蹴りは敵の仮面に叩きつけられた。砕け散る仮面。ワーガルルモンは念の為跳躍して敵から離れる。

 

守ろうと近づいてきていたギガドラモン軍団はパイルドラモンが牽制し、近付いたものは容赦なくデスペラードブラスターの餌食になった。

 

追撃とばかりにアトラーカブテリモンのホーンバスターが敵の腕に貫通し、そのままねじ切って放り投げる。トールハンマーが粉砕する。もう片方の腕はホーリーエンジェモンのエクスキャリバーによって跡形もなく消しとばされた。両腕をうしない、仮面を破壊され、暗黒の力の供給を断たれた敵の胴体がぐにゃりと不気味な揺れ方をし始める。骨がないかのようにぐにゃぐにゃになりはじめたその頭部には、まだ生きている真っ赤な目が4つ、選ばれし子供たちを見下ろしていた。

 

そして、全身から黒い物体が吹き出し、全身を覆ってしまう。そして不気味な心臓のような姿で選ばれし子供たちの前で胎動しはじめる。ギガドラモンたちの異変に気付いたのはその時だ。次々と悲鳴をあげて消滅していくではないか。よくみればあの黒い塊から幾重にも伸びた黒い蔦のようなものが伸びて、全てを吸収し始めたのである。おそらくあのデジモンに注入されていた暗黒の力が暴走しはじめたのだ。あっという間に食い尽くされていく味方。

 

そして、黒い風につつまれていく。その先にいたのは、やはりデジモンアナライザーでは解析することができない未知のデジモンだった。

 

「あれは......いかん、このままではあたり一体が焦土と化すぞ!」

 

あまりに異様な姿に及川のパソコンから戦況を見守っていたゲンナイさんが叫んだものだから、みんな振り返った。

 

「あれはジョグレスしようとして、エラーが生じておる。それを暗黒の力が無理矢理融合させようとしておる!これはまずい!」

 

ジョグレスという言葉を聞いて、その個体であるパイルドラモンは当事者ゆえか、すぐに理解できたようで顔を引き攣らせた。

 

パイルドラモン曰く、通常、ジョイントプログレス、通称ジョグレス進化は、2体のデジモン同士のデジコアが完全に融合し、新たなデジモンに生まれ変わる。だが、それは共通の先祖をもつ共通項があり、デジゲノム因子をもつ個体同士だからこそ可能な進化でもある。

 

デジゲノム因子もなにも共通項がないデジモン同士が融合しようとしたらどうなるか。普通はそもそもジョグレス自体できないのだ。ただ突然変異というかたちで誕生することもあるだろう、古代デジタルワールド期に現れた聖騎士デジモンたちのように。ただ、成功確率はとてつもなく低い。ジョグレスそのものが不完全になった場合、それは両者にとても危険な状況をもたらすという。

 

あの暗黒の塊がなにを生み出そうとしているのかはわからないが、必要なデジゲノムもデータも足りない中で無理矢理作り上げようとしているものだから、なおのこと負荷がかかっている。

 

今、あれはジョグレス前のデジモンたちのデジコアをそれぞれ保持し、非常に不完全な状態でその姿を維持している。デジタルワールドでは存在し得ないデジモンだ。まさにバグである。極めて不安定な存在のため、寿命が非常に短く、その存在だけでも空間を、時空を、歪めてしまう。

 

ただでさえデジタルワールドと現実世界の境界が限りなくあいまいになっている今、あんなものが降臨してしまったが最後、被害は甚大なものになるだろう。

 

「まだ予言の時刻まで時間があるが、そうもいってられん!このままではお前さんたちが全滅するのも時間の問題じゃ!」

 

あの暗黒の塊はゲンナイさんがホメオスタシスが本来管理しているはずのデジタルワールドの管理システムが放つバグを排除するプログラムを要請するほど危ないものらしかった。

 

「誕生だけは阻止せねばならん!暗黒の力はおまえさんたちもろとも抹殺する気じゃ!!」

 

考えうる限り、最悪の形で誕生しようとしているバグ、特異点。夥しい数のギガドラモン、メガドラモン、その中核にはデビモンを人工的に強化した人造のデジモン。四肢にはそれぞれのデジモンの面影をみることができるが、欠損している箇所は暗黒の力が補っているために、黒い部分が絶え間なく心臓のように拍動しつづけている。仮面を破壊された頭部には真っ赤な赤だけが煌々と煌めくばかりで黒く塗りつぶされているだけだ。

 

どんどん陣営を取り込み、肥大化していく暗黒の塊。

 

ゲンナイさんがなっちゃんに転送したのは、フロッピーのようなデータだった。 

 

「ホーリーエンジェモン、受け取って」

 

なっちゃんが光を投げた。その光はまるで粒子のようにホーリーエンジェモンのところへ飛来し、ひとつの矢となって出現する。

 

「これは?」

 

「ヴァンデモンさまをもとにもどすために取って起きたかったんだけど、そうもいってられないわ。予言の書にかかれたとおり、パートナーが世界で一番大切な人の心を射抜いたとき、その光と紋章の特性である選ばれし子供の精神的な特質が融合して、パートナーを進化させることができるの。お願い、あの子を助けてあげて。このままじゃ、消えちゃうわ、わたしたちもろとも、あのこも」

 

「お前さんたちの中で一番次なる進化の条件をみたし、なおかつ可能性が高いのはワーガルルモン、お前さんなんじゃ」

 

「つまり......」

 

「ホーリーエンジェモンが、お兄ちゃんを......?」

 

あまりにも大きな矢に、タケルは不安そうにヤマトをみた。

 

「本物の矢じゃないの?」

 

「いや、ふさわしい姿をしているだけで、実体は新しいデータのようだ、タケル。私たちパートナーデジモンは、選ばれし子供たちと精神的に特殊な繋がりがある。この矢がバグを排除するプログラムならばそれをつかってあれを倒せばいい。だがデジヴァイスにダウンロードするには時間が足りないようだ」

 

「紋章じゃだめなの?」

 

「紋章は子供たちのいいところから生まれるエネルギーを増幅させる装置なだけで、本質はあなたたちの心にあるの。大丈夫、心配しないで、タケル」

 

なっちゃんとホーリーエンジェモンを交互に見たタケルはヤマトをみた。

 

「大丈夫、そこまで教えてもらえたんなら、俺はやれる。心配するな、タケル」

 

「お兄ちゃん......」

 

うなずくヤマトに、タケルはしばしの沈黙のあと、その矢に手を伸ばした。

 

「タケル?」

 

「僕もやる。やらせて。これがみんなが助かる力になるっていっても、仲間を射るなんて、大変なことだもん。ホーリーエンジェモンだけにさせたくない。だって僕はパートナーなんだから!」

 

タケルの言葉を聞いて、みんな、顔を見合わせる。そして、うなずいた。みんな、タケルのところに近づいてくる。

 

「どうしたの?みんな」

 

「これが失敗したら大変です。だから、エンジェモンのときのように、エネルギーをひとつにしましょう」

 

「えっ!?でもでも、もしできなかったら!」

 

「その時はその時さ、1番年下の子にそんな大事なこと押し付けられないからね」

 

「お前ら......」

 

「おれ、信じてる。タケルならできるよ」

 

「大輔くん......」

 

「ヤマトさんが今まで俺たちの願い、叶えてくれなかったことあるか?」

 

「ううん、ない。いっかいもない」

 

「なら信じよう、お前のお兄ちゃんはなんだってできる、すごい人なんだろ?」

 

「うん!!」

 

そして、いつかのようにホーリーエンジェモンに、デジヴァイスから光が収束していく。エネルギーを奪われたほかのデジモンたちは退化していくが、念の為デジヴァイスの結界を展開して次に供える余力はあるようだ。

 

ホーリーエンジェモンとタケルが矢をつがえる。その先にはヤマトがいる。ワーガルルモンはヤマトとうなずいた。

 

そして、及川のパソコンから閃光が走る。逆さまのデジタルワールドを横切る。

 

新たなる力が友情の紋章に付与され、デジヴァイスが更新される。ワーガルルモンは光につつまれた。

 

 

それは選ばれし子供たちの前に初めて姿を現した究極体だった。たった一体を除いて。

 

「......だっ、めたる、メタルガルルモンだぁッ!!すごいや、だいしけっ!!ワーガルルモン、メタルガルルモンにしんかしたぁっ!!!」

 

「あっ、あれが、あれがメタルガルルモン!?メタルエンパイアに殺されそうになったときに助けてくれたっていうデジモンに進化した?あの?ほんとに?」

 

「うん!ほんとのほんとだよっ!おれ、おぼえてるもん!メタルガルルモンだよ!!あれが、メタルガルルモン!!」  

 

チビモンがあまりにも早く見せろと急かすものだから、デジモンアナライザーで調べるのも億劫になった大輔は、ゲンナイさんの隠れ家から随時アーカイブに繋げられる光子郎のパソコンに向かった。

 

そこには、ヤマトを乗せて大空を飛びたったデジモンの画像と情報が詳細に載っていた。

 

メタルガルルモン

世代 究極体

タイプ サイボーグ型

属性 データ

必殺技

・コキュートスブレス

・ガルルトマホーク

・グレイスクロスフリーザー

 

たしかにチビモンのいうとおり、メタルガルルモンというデジモンで間違いないようだ。

 

いよいよチビモンを喜びが後から後から心の底から溢れ、心と体を満たした後、外に溢れ出る。嬉し涙が目の内ににじんでくるのを感じずにいられない。

 

古代デジタルワールド期に戦争に巻き込まれて死にかけたチビモンを助けてくれたデジモンと久しぶりに邂逅できたのだ。その喜びようは大爆発といった方が正しかった。

 

古代種はデジモンの中でも特に喜怒哀楽が顕著なデジモンだ。しかもチビモンは純粋種にして末裔である。一刹那の違いで死の界から救い出された人のように、驚喜に近い表情を顔いちめんにみなぎらせている。

 

メタルエンパイアと古代種の生存争いから発生した戦争の記憶から、あんまり態度にはださなくなったが機械型デジモンが好きではないはずのチビモンがここまで無邪気にはしゃいでいるのだ。

 

本当にチビモンは命の恩人であるあのデジモンが大好きなんだな、と大輔はつられてうれしくなった。

 

「あれが......」

 

「あれがメタルエンパイアとの戦争を終わらせたという英雄の一体ですか......」

 

「うん、そうだよ!そっかあ、ガブモンはメタルガルルモンのデジゲノムもってるんだぁ!ごせんぞさまにいたのかな?それともゲンナイさんがさっきあげたデータにあったのかな?どっちでもいいや!えへへ!」

 

それはガルルモンが全身を生体金属クロンデジゾイドメタルで機械化し、ミサイルやマシンガンを内蔵したサイボーグ型デジモンだった。今まさにヤマトを乗せて、ビーム状の翼を展開して超高速で飛行し、特異点の中心として降臨しようとしている敵の前に躍り出た。

 

デジタルゲートから噴出している濃霧がいよいよ迫りくるが、暗闇に隠れた敵をも鼻先のセンサーレーザーサイトで精確に捕捉することが出来るため敵は逃亡は不可能である。

 

青と黄色が基本の配色となっており、腹部の文様を合わせてガブモンと多くの共通点を持っている。メタル化をしても持ち前の俊敏さは失っておらず、まずは外装を剥がそうとひしめくギガドラモンたちを全身に隠されている無数の武器で敵を粉砕していく。

 

敵から一斉にギガドラモンたちの必殺技であるジェノサイドギアが放たれるが、背部から伸びたアームからビーム状のウィングを放出して超高速でネット空間を飛び回ることで、全て回避していく。

 

「すごい、すごいや!がんばれ、お兄ちゃん!がんばれ、ワーガルルモン、じゃなかった、メタルガルルモン!!」

 

「がんばれー!!」

 

メタルガルルモンはすべての攻撃を防ぎきり、口から絶対零度の冷気、コキュートスブレスを放った。一瞬にして暗黒の塊が凍りつきその全てを静止させる。子供たちの、デジモンたちの、そしてその場に居合わせ激闘を最前線で目撃した人々から歓声があがった。

 

「───────これで、終わりだ!!」

 

メタルガルルモンの装備されている全弾が発射され、暗黒の塊はいよいよ砕け散る。取り込んだギガドラモンたちのデジコアを食い尽くし、内側から破壊し、自己強化の糧にしようとしていた全てがもろとも砕け散る。

 

メタルガルルモンは知らないまま、敵の水面下でのさらなる強化の目論見を、完膚なきまでに叩き潰すことに成功する。

 

メタルガルルモンから打ち込まれたウイルスバスターのデジゲノムが暗黒の侵食を食い止め、残されたデータの残骸をダークエリアに転送するプログラムの一助として作用する。それは0と1のデータとなり、真上のデジタルゲートではなく、及川のパソコン、あるいは光子郎のパソコンに吸い込まれていく。

 

電脳世界に緊急事態が発生したときに出現し、その異常をいち早く消滅させる宿命を負っていたはるか昔に存在した英雄と違わぬ偉業をメタルガルルモンは成し遂げたのだった。

 

 

 

 

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