(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第188話

「そうか、先代の子供たちにもパタモンが......」

 

ホーリーエンジェモンは息を吐いた。

 

「私は情けないよ、タケル。とてもね。気分が落ち込んでいるんだ、また私は仲間を傷つけてしまった。ホウオウモンのおかげで助かったとは言え、まただ。また、私は振るうべき力を間違えた」

 

「でも、あの時とは違って、頑張って止めようとしてたよね。ホーリーエンジェモン。みんな、みてたよ。アトラーカブテリモン、止めようとしたじゃない」

 

「当然だろう、あってはならないことを二度も冒そうとしたんだ、私は。ひとえに、私の力の無さが原因だ。実力がちゃんと伴ってさえいれば、もう少し上手く立ち回れたはずだ」

 

「うーん、でも、あの時は結界も貼ってたのに、ブラックガスに襲われちゃったし......どうしようもなくない?」

 

「そうかもしれないが」

 

「それよりね、僕うれしかったんだよ。ホーリーエンジェモン、ピノッキモンのデータ、ちゃんと綺麗にしてあげたから、ダークエリアに送れたんだよね?デビモンみたいに、ならなくて済んだんだよね?」

 

「おそらくは」

 

「それがうれしいんだ、僕。とっても」

 

「そうか......そうだな。あの時とは違って、私は間に合ったともいえるのか」

 

「そうだよ」

 

「......またパイルドラモンに先を越されてしまったようだが」

 

「......それは言わない約束だよー、気づかないふりしたかったのにぃ」

 

「みんなが頑張った結果、たまたまスーツェーモンの封印されていた南方の力が一番弱まったんだろうとはいえだ。そこに大輔とパイルドラモンが落ちるとか、すごい確率だな」

 

「ほんとだよね、しかもひとりであの塔壊しちゃうなんてすごいや」

 

「まあ、スーツェーモンからの支援が大きいだろうが......よほど今の選ばれし子供のパートナーにウイルス種が一体もいなかったのが不満だったのか......?ピヨモンから進化したんなら、最初はワクチン種だったんだろうに」 

 

「ホーリーエンジェモン、ちょっと怒ってる?」

 

「怒ってはいないさ、ふと疑問に思っただけだよ、タケル。同じ聖なる者としては、進化を否定する概念から暗黒の力を引き剥がした光とテイルモンもすごいとしかいいようがない」

 

「あはは。でも、スーツェーモンの封印が他より弱かったのって、もしかして、暗黒の力に操られてたデジモンって、ウイルスばっかりだったからかな?デビモンはダメだったけど、エテモンとかナノモンとか、ヴァンデモンとか、なんとか暗黒の力に食べられなくてすんだから?」

 

「ああ、なるほど。それはあるかもしれないな......」

 

「四聖獣から、力貸してもらえたりしないかなあ?」

 

「さっき、バイフーモンを封じていたスパイラルマウンテンを太一たちが破壊できたそうだからな、後少しだ」

 

「えーっと、バイフーモンは勇気と友情だっけ?」

 

「そうだな、さっきちらっと聞いた話だとシェンウーモンは誠実と知識らしい」

 

「じゃあ、チンロンモン?」

 

「ああ、おそらくは。奇跡と優しさをつかさどるべきデジモンはまだ生まれてないらしいから」

 

「チンロンモンってどこだっけ」

 

「東方らしい」

 

「東方......」

 

タケルは光子郎たちが話している後ろを覗き込んだ。

 

「どーしたの、光子郎さん」

 

「あ、タケルくん。実はね、今僕らがいるエリアはシェンウーモンが封じられている塔だそうなんだ。だから、動力源の原理がわかったから、どうにかできそうって話をしていたんだよ」

 

「ほんと?」

 

「うん、だから崩壊に巻き込まれてしまわないように、ファイル島へのゲートを開こうと話していたところなんだ」

 

「あれ、じゃあ、東側の塔はどうするの?チンロンモンが封印されてるんだよね?」

 

「それだよ、それを、話していたところだったんだ」

 

「え?」

 

「たまたまとはいえ、誰も塔の近くに落ちなかったでしょ?だからあそこだけまだどんなエリアなのか全くわからないんだ」

 

「チンロンモンは、四聖獣の代表格ともいうべき存在なんだ。希望と光を司るのがなによりの証だからね。おそらく、1番強い封印がされているはずなんだ。復活できれば、みんなの進化の光自体を強化してくれるはずだから。現に他の塔がゆるやかに崩れてひとつになろうとしているのに、あそこだけ全く動く気配がない」

 

「スパイラルマウンテンのプログラムは初期化されたはずなんだよ、明らかにおかしい。なにかあるとしかいいようがなくて。だから、ファイル島でみんなと合流してから、なんとかできないか話をしようと思ってたんだよ」

 

「そうなんだ......。ってことは、幼年期になってないみんなで行くってこと?」

 

「うん、多分そうなると思う。あの塔が倒されたら暗黒の力の戦況はかなり悪くなるから、ダークマスターズの最後のひとりが必ず出てくる。今でさえはじまりの街への攻撃はひどいみたいだから、究極体になれた僕らはそっちにまわった方がいいだろうって」

 

「えーっと、お兄ちゃんと太一さんと僕と賢くん?」

 

「うん、そうなると思う。任せてもいいかな、タケルくん」

 

「うん!僕がんばるよ、光子郎さん!大輔くんみたいに、チンロンモンの封印解いてあげる!」

 

「暗黒の力を浄化できるのは、ホーリーエンジェモンだけだから、頼りにしてるよ」

 

「ああ、任せてほしい」

 

「もう少ししたら、ゲートを開くんだ。空さんたちを呼んできてもらえるかな?」

 

「うん、わかったよ!いこう、ホーリーエンジェモン!」

 

「ああ。ところで、どこに繋がるんだ?」

 

「えーっとたしか、ビートランドでしたっけワイズモン」

 

「ビートランド?」

 

「え、どこそこ。僕たちいったことあったっけ?」

 

タケルたちがしらないのも無理はない。ビートランドは太一たちが行かなかった数少ないエリアのひとつだ。なにせ連れて行ってくれるはずのシードラモンの尻尾に焚き火の薪を事故とはいえ突き刺し、怒らせてしまったのである。

 

唯一の案内人と友達になれなかったために光子郎たちがその場所を知ったのは、今が最初というわけだ。

 

「もしかして、あの小島って、シードラモンがお迎えにきてくれるからあったのかなあ?ホーリーエンジェモン」

 

「そうかもしれないな」

 

「悪いことしちゃったね」

 

「知らなかったんだ、仕方ないさ。私だってトコモンのころは、恐ろしくてシードラモンには近づけなかったんだから。知ってたらタケルに教えていたさ」

 

「そうだよね、うん。今度あったら、謝らなくっちゃ」

 

そしてタケルが空を連れてくると、すでに準備はできていた。そして、タケルたちは5年ぶりにファイル島に足を踏み入れることになったのだった。

 

 

 

 

 

鬱蒼とした木々を抜ける。大きな大きな看板が現れた。

 

ネオンに照らされている大きな看板には、大きな拳マークがついている。なんだかとっても強そうな筋肉ムキムキの男の人の腕みたいなマークだ。

 

おもちゃの街くらい大きなエリアである。大きな建物がたくさんあって、どこからも明かりが漏れている。

 

ここにいるクワガーモンたちは知能が高いようで話せるようだ。ここは強さを求めるデジモンたちが集まる場所であり、ファイル島中から力自慢が集まるそうなのだ。ここはビートランド、虫型デジモンたちが運営する闘技場を運営しているエリアだという。

 

タケルたちが通されたのは立派な闘技場である。所狭しとイスが並べられている。両サイドには大きな入り口があり、控え室から会場に向かう入場口となっているようだ。観客の目の前を通るときのパフォーマンスも大事なようで、実況席と思われる独立した空間以外はすべて戦うものたちの為に用意された世界である。

 

「おっきいねえ」

 

「ほんとですね、おっきいテント」

 

「ファイル島全体から参加者が訪れるってのは本当みたいね」

 

気をよくしたらしいクワガーモンが特別にステージにあがっていいといってくれた。イスを出してこないと上れない。ロープを飛び越えられなくてくぐり抜け、たくさんのデジモンたちが戦ったのだろう、ぼろぼろの床の上に立つ。ずっと奥には歴代の優勝者たちの写真と名前が並んでいる。

 

「あ、レオモンだ」

 

「オーガモンもいるね」

 

「こいつらはライバルだからな、いつもいつも派手に暴れてくれるから盛り上がるんだ」

 

「へー、そうなんだ」

 

「すごいねえ」

 

「こんなにずっと前からライバルしてるのね」

 

「最近どっちもご無沙汰だけどな。帰ってくるのか?旅にでてるらしいじゃないか」

 

「さあ?」

 

「あ、レオモンなら太一さんたちと一緒に帰ってきますよ。完全体になってるそうです」

 

「へえー!そりゃ楽しみだな!」

 

光子郎たちの会話を背に、タケルははしっこから順番に歴代チャンピオンたちの肖像画をみていく。知らないデジモンばかりだ。最近の方になるにつれて、今までタケルたちが会っていたデジモンの姿が見え始める。きっと数年以内のチャンピオンたちなのだ。レオモンもオーガモンも常連なのか何度も写真が並んでいる。

 

「あ」

 

「どうしたんだい、タケル」

 

「あれ、デビモンじゃない?」

 

「本当だな。ピッドモンが出てこなくなってるから間違いない」

 

「デビモンもここによく来てたの?」

 

「いんや、あいつはたまにしかこねーな」

 

「そうなんだ。つよい?」

 

「そりゃここで優勝するくらいは強いさ。選ばれし子供達よりは弱いけどな」

 

「そりゃそうだけどさ、天使に悪魔は勝てないだろー」

 

「事実なんだからしかたねーだろ」

 

「ヴァンデモンもいるんだね」

 

「そりゃいるさ、完全体なんだから」

 

「サーバ大陸に引っ越しちまってからは音沙汰ねーけどな。寂しいモンだ」

 

ここのクワガーモンたちは今の世界の状況を理解している個体とよくわかっていない個体にわかれているようだ。タケルはそっかあとだけつぶやいて、しばらく肖像画を眺めていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ケンタルモンと共にダイノ古代境にいったと光子郎のパソコンごしに、ようやく連絡がとれたピッコロモンが教えてくれた。ゲンナイさんはあいかわらずテレビ電話にすら出てこれないほどの痛みに苛まれているようだ。

 

「え、はじまりの街で集合ってことになってたのにですか?」

 

「丈先輩が?賢君がいるのに......」

 

「ダイノ古代境ってあれだよね?ブイモンが寝てたところ」

 

「先代の子供たちの冒険の記録があった場所でもあるな」

 

「あ、そうだっけ?なんでそんなところに?」

 

「賢たちが希望したからだっぴね」

 

ピッコロモンは簡単に経緯を教えてくれた。

 

ディノビーモンがなにとジョグレスしたのか。片方は賢のパートナーであるスティングモンなのは確定しているのだが、竜型の古代種か先祖を遡ればおなじデジモンにたどり着く古代種の因子をかなり強く受け継いだ現代種と言うことしかわからない。

 

スティングモン自体は古代種の因子が強い現代種のはずなのだが、どうやっても古代種の進化経路しかないあたり、かなり特殊な個体といえた。純粋な末裔であるブイモンが現代種であるウイルスに進化したのがその証だ。本来なら現代種であるウイルス種にスティングモンがいるのだから、そちらを選ぶべきだがその選択肢すらスティングモンを構成する因子は許さなかったらしい。

 

ブイモンのように後天的に選ばれし子供のパートナーになったわけではなく、賢のパートナーデジモンとして普通に200年前にデジタルワールドに誕生し、それをエージェントたちに保護され、優しさの紋章が作られた。だから、進化経路が古代種に固定されたのは、スティングモンの気質が大きい。

 

それゆえにディノビーモンになったのはよかったが、素体になったデジモンが全くわからないのは不安材料にしかならない。今はまだちゃんと自我があり、デジヴァイスのプログラムを通じて進化できているからいいが、この先は本当に未知数だ。

 

ブイモンさえできなかったことができるのか、わからないことは多い。

 

「だが、それでもボクは進化したい。ボクだけ完全体のままでは、お荷物になりかねない。今、この世界には究極体の敵しかいないんだから」

 

そこまで聞いてもなお、ディノビーモンの言葉は頑なだった。

 

「確かにそうだが......」

 

「賢の力になりたいんだ、やっと会えたんだから」

 

「ディノビーモン......ケンタルモン、どうにか安全に進化する方法はありませんか?」

 

「そうだな......方法は、あるよ」

 

「ほんとう?」

 

「ほんとですか!?」

 

「ディノビーモンの負担になってしまうけれど、さらにジョグレスを重ねて全体の情報量からみて不安材料である竜型のデジゲノムの割合を減らせばいいんだ。竜型のデジゲノムではなく、スティングモンと融和性が高い昆虫型デジモンのデジゲノムをいれる。そうすれば進化の条件はととのうはずだ」

 

「じゃあ......」

 

「ただね、残念ながら古代種の昆虫型デジモンはいないんだ。いや、いたかもしれないんだがデジタルワールドが保護できたデジモンの中にはいなかったといった方が正しいかな。絶滅したデジモンのデータはすべて補完できているわけではないんだよ」

 

「そんな......ディノビーモン、古代種にしか進化できないんですよね?」

 

「だから、その先はこの戦いの中できみたちが見つけていくしかないってことだ」

 

「僕たちが?」

 

「ああ、古代種のポテンシャルの高さはブイモンが証明しているからね。君たちが切り開いていくほかに道はない」

 

「どこにあるんだ、それは?」

 

「ダイノ古代境に封じられた遺跡にデジゲノムがあるはずだ。君たちがそこまで望むなら、案内しよう。ついてくるといい」

 

こうして、賢たちだけでは心配だからと丈たちもまたついていったらしかった。

 

「今、ファイル島を襲ってる敵は、裏次元から吹き出しているブラックガスのせいで暴れてるやつもおおい。その調査も兼ねてるっぴね」

 

「裏次元......そっか、そうだよね。今、裏次元がデジタルワールドと繋がっちゃってるんだね。もう閉じ込めてくれる人が誰もいないから......」

 

予想はできていたことだった。現実世界で今まさに結晶世界の事象が広がっているのだ、さかさまのデジタルワールドという光景として空から落ちてきている。まさに世紀末に相応しい世界の終わりが迫りきているのだ。デジタルワールドだけ無事なわけがなかったのである。

 

「なるほど......」

 

「ちなみにどこなの?」

 

「闇貴族の館とアイスサンクチュアリ、そしてオーガ砦だっぴね。闇貴族の館はウイルス種、アイスサンクチュアリはワクチン種しか入れないから、ミスティモンともんざえモンが同行してるっぴ」

 

「ああ、そっか。フリー種とデータ種じゃどちらも入れませんね」

 

「なら、大丈夫かしら」

 

「そうですね」

 

「そういうことなら、仕方ないわ。私たちだけでも先に始まりの街に行きましょう、心配だわ」

 

空の言葉にタケルはうなずいたのだった。

 

「エレキモン元気にしてるかなあ」

 

「きっと朝からベビーたちのために魚をとってきてるよ」

 

「そうだね!」

 

デジタルゲートの先は竜の目の湖手前の森の中、いわゆる迷わずの森。ホーリーエンジェモンがトコモンだったころ、ずっと住んでいた場所だった。竜の目の湖にてシードラモンに乗せてもらい、向こう側まで連れて行ってもらう。

 

「ありがとう、シードラモン。あの時はごめんね」

 

タケルがあやまると、シードラモンは首を傾げた。よくわかっていないのか、覚えていないのか。5年も前のことだからか。あんまり気にしていないようだった。そして、そのまま向こう側に帰っていった。ちょっと肩透かしだったがへんに覚えていて乗せたくないと拒否されるよりはよかったのかもしれない。

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