(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第189話

トロピカジャングルから来ることができる見えない橋を渡ると、グレートキャニオンというエリアに出た。乾燥した過酷な地域なのか水棲系デジモンが苦手としている気候のようだ。

 

「あーもう、あっづい!はやいとこアイスサンクチュラアリにいこーぜ!オイラ、ここ嫌いだぁ〜!!海も川もないし、水辺が全然なぁい〜!!」

 

ぐったりとしながら丈の肩の上でプカモンが伸びている。ダイノ古代境でお目当てのデジゲノムが封印されている石板を無事発見した一行は、賢のデジヴァイスにそのデータをアップデートしてから、ファイル島にはびこるブラックガスを止めるために3つのうち、あと2つをエリアをまわる途中だった。

 

最初にいった闇貴族の館は、オーバーデール墓地の先にある。だからまたバケモンたちに襲われるんじゃないかと丈とプカモンはハラハラしていたのだが、人っ子一人いなかった。ただブラックガスが蔓延していただけだ。本来の主が自分の配下をすべて取り込んで選ばれし子供たちに敗北したからだろうか。

 

誰もいないなら問題ない。封鎖して、看板をたてて、ブラックガスが出ているから近づくなとデジ文字の看板をたてておくだけでよかった。闇貴族の館内は隈なく探したが誰もいなかったし、裏次元のデジタルゲートはミスティモンが封鎖してくれた。

 

そして、今に至る。

 

「まあまあ、オーガ砦が一番近いんだから我慢しようよ、プカモン」

 

「なんだよ、なんだよ、順番なんかどーでもいいじゃんか!」

 

「それはよくないよ、さすがに」

 

「プカモン、ごめんね。はやくここのこと調べよう。ディノビーモン、このあたりには、なにかいる?」

 

「ううん、この辺りからはデジモンの気配はしないみたいだよ、賢」

 

「え、本当に?なんでだろう?ここっていろんなエリアに繋がってるから、便利そうなのに」

 

「たしかにそうだね。お店のひとつやふたつあってもよさそうなのに」

 

「ああ、それはですねえ。このあたりには盗賊が出るから、みんな怖がって通らないんですよ」

 

「盗賊!?ならどうしてそんな危ない道を?」

 

「仕方ありません。盗賊団のアジトが裏次元への入り口なんです」

 

「な、なんてところにアジトを......そんなに強いのかい?」

 

「いえ?いつも追い出されてましたよ」

 

「ほんとになんでそんなとこにアジトを!?」

 

「ほんとにそうですよね、普通に考えるなら」

 

「落盤に注意!!」の看板のある山道に差し掛かったときだ。

 

「うえーん、おやぶーん!」

 

賢たちの前に現れたのは、まさにそのオーガ砦を拠点に活動している盗賊集団の下っ端たち、ことゴブリモンの群れだった。

 

「どうしたの?」

 

「どうしたもこうしたもねーよ!親分がここから吹き出した真っ黒なガスに飲まれて消えちゃったんだ!」

 

「なんだって!?」

 

「その親分てのは?」

 

「知らないで通ってるのかよ、お前ら!オーガモンだよ!」

 

丈とプカモンは思わず顔をみあわせた。

 

「オーガモン!?」

 

「あっ、違う違う、リベリモンだった!完全体に進化してたんだ、さっすがは親分!」

 

「リベリモン?なんだいそれ?」

 

「近くにいるなら、デジモンアナライザーにでると思います?」

 

「そうだね、みてみようか」

 

リベリモン

世代 完全体

タイプ サイボーグ型

属性 ウィルス

 

高出力エンジンを搭載したサイボーグ型デジモン。死の淵に追い込まれたデジモンが周囲のジャンクデータを取り込み進化したという。ジャンクから作り上げた体をより強く改造するために、他の機械系デジモンからパーツを略奪する無法者。

 

「足が車みたいになってますね」

 

「両手はクレーンとかみたいだなあ。これってやっぱり、機械型のデジモンとたくさん戦ったからかな?」

 

「レオモンもグラップレオモンでしたっけ?に進化したみたいだし、そうなのかも」

 

 

 

 

 

 

 

それは数時間前に遡る。

 

「ゴブリストライク!」

 

相手の体はたちまち破片となってくだけちる。しかし、多勢に無勢、こちらは一人、あちらは大群を組んでの襲撃だから埒があかない。倒しても倒してもキリがない。こうもうじゃうじゃ出てこられると、さすがのゴブリモンもじりじり追い詰められてきた。

 

「ちくしょう、逃げるしかねえか!?」

 

相手が黙って見逃してくれるわけがない。久しぶりの獲物だとばかりに相手は一斉に襲い掛かってきた。

 

「や、やべえ!」

 

気づいたときには遅かった。戦闘集団の先頭がすぐ近くまで迫ってくる。

 

「げええ!」

 

ゴブリモンは追い詰められて後退りした。周囲を取り囲まれてもはや絶壁ともいうべき壁をよじ登るほかに道はない。

 

「お、終わりかよ......こんなところで終わりなのかよ!」

 

死の恐怖より、八方塞がりな状況に追い込まれた自分が情けなかった。こんな雑魚的に圧殺されてしぬなんて。

 

「ぎゃあああ!」

 

その時である。敵の背後、僅かに覗く隙間からどこかでみた緑が視界を横ぎったのだ。ただ、どこからどうみても機械型のデジモンだから、オーガモンと違いすぎて最初はわからなかったらしい。

 

「なっさけねえ声出してんじゃねえよ、ゴブリモン。あいもかわらずよえーな、おい」

 

そこにいたのは世界の異変を察知して調査に向かったレオモンを追いかけて旅に出てしまったはずのオーガモンが進化したリベリモンだったのだ。実に4年ぶりの再会である。感極まる子分その1に気を良くしたのか、リベリモンは左腕から大量のミサイルを放ち、右腕の重機で敵の体を刻みながら粉砕した。

 

いずれも一撃だった。真正面の軍勢がまとめて吹き飛ばされていった。ゴブリモンはリベリモンの体に乗せてもらい、なんとか逃げ延びることに成功したのだった。

 

「おかえりなさい、親分!レオモンとの決着はついたんですか?」

 

「それがよぉ〜、どーもあいつあの塔の方にいっちまったみてーでな、会えなかったぜ。死にかけて、起死回生に進化できたはいいがこの体だ。ますます泳げなくなっちまってよ、仕方ねえから、こっちに帰ってきたってわけよ。あいつのことだ、ぜってーファイル島のために戻ってくると思ってな!」

 

どうやらホエーモンに乗せてもらって帰ってきたらしいリベリモンに、ゴブリモンはアジトにみんないるから帰ろうといったのだ。

 

「はあああっ!?おっま、馬鹿野郎!世界の危機になるたびに裏次元が出現してえらいことになってたの忘れたのか、てめー!引っ越しよろしくなっていったろ!なんでうごいてねーんだよ、4年もたってんだぞ!!」

 

「あっ、そういやそうでしたね!いやー、数百年前もだからすっかり忘れてました!」

 

「アホかー!」

 

「痛い!」

 

「だいたいなーんで誰も立ち入り禁止にしねーんだ、いつもなら俺たちアジトから追い出されてたろ!?」

 

「え?だって誰もそんなこといわねーから......」

 

「......まじか」

 

「マジです、大マジです、親分」

 

「..................そーか」

 

「親分?」

 

「ババァのやつ、とうとう年貢の納め時ってか」

 

「そーいや、ロゼモンいつになったら帰ってくるんすかね?世界がこんなことになってんのに」

 

「帰ってなんかこねーだろうよ、ヴァイクモンみてーにな」

 

リベリモンはそれだけいうとゴブリモンたちをアジトから追い出し、絶対に近づくなといってオーガ砦に向かってしまったという。ゴブリモンたちがみたのは、黒いガスが吹き出すその先にきえてしまったリベリモンの姿だった。

 

「へー、オーガモン......じゃなかった、リベリモンのやつ、いいとこあるじゃん」

 

「盗賊団なんてやってたんだね、知らなかった」

 

「オイラも知らなかったなー、トロピカルジャングルから出たことなかったからさ」

 

「ああ、うん。もし成長期だったとしても、きみなら絶対このあたりには来ないだろうね、プカモン」

 

「そうそう、よくわかってんじゃん」

 

「ええと、丈さんたちはリベリモンの進化前のオーガモンていうデジモンのことをよく知ってるんですね。仲間なんですか?」

 

「ああ、そうか。えーと、オーガモンっていうのはね、」

 

丈はさっそくデジモンアナライザーを見せながら、賢にファイル島での戦いについて話をする。プカモンはレオモンとライバル同士だということや、スカルグレイモンの騒動のときの共闘から因縁つけ始めたことなんかを話した。

 

「そっか......デジタルワールドって、いろんなデジモンがいるんですね」

 

「そうだね。僕らは、デジタルワールドを平和にすることが使命だけど、それってみんな仲良くするってことでもないみたいなんだ。難しいよね。ただ、仲良くするのも、喧嘩をするのも、そのデジモンが決めることで、ほかのやつらが操るのはなんか違うと思う。それをとめるのが、辞めさせるのが、僕らの役目なんじゃないかなあ」

 

丈たちはリベリモンが心配になり、オーガ砦に降りていくことにした。リベリモンはあいかわらずウイルス種のようだから、野生のデジモンである以上ブラックガスの影響を受けたらどうなるか、不安しかなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

嫌な予感は的中した。異変はすでに起こっていた。山々が根本から大きく揺らぎ、崩壊させるほどの規模であった。

 

崖を突き破り現れたのは、唸り声を上げて武器を振り回す、見上げるほど巨大なデジモンだった。

 

「肌が緑だし、骨もってるし......まさか、リベリモンがブラックガスで進化しちゃったのかい、あれ!?」

 

「究極体......そうみたいです、丈さん!」

 

賢は丈たちにデジモンアナライザーを見せた。

 

タイタモン

世代 究極体

タイプ 神人型

属性 ウィルス 

 

こことおなじ起源を持ちながら、次元を隔てた別のデジタルワールドにおいて、デジタルワールドの支配権をめぐる戦いでオリンポス十二神族に敗れたデジモン達の怨念から生まれた逆襲の巨神。

 

一人師団という異名を持ち、強大な身体に尽きることない怨念エネルギーを宿してオリンポス十二神族の首を求めて戦場を駆けぬける。大きな腕には大量の頭蓋骨が敷き詰められており、頭蓋骨すべてがそれまでに倒した敵から奪った力のデータである。 

 

「いけるかい、プカモン」

 

「よーし、いっくぞー!」

 

プカモンが自分の肩から飛び降りる。そして、光を突き破り、ヴァイクモンが現れた。

 

ディノビーモンとヴァイクモン、そしてタイタモンは激突した。ヴァイクモンの怒涛の攻撃は凄まじく揺れ動き、ディノビーモンはその俊敏さでもってタイタモンの武器を奪いとっていく。

 

もんざえモンはラブリーアタックでタイタモンの引き連れている怨霊たちを魅了状態にして足を止める。ミスティモンは火炎の斬撃を容赦なく投げつけ、その圧倒的な威力によってタイタモンの足場は崩れ落ち、見渡す限りの崖は倒壊した。続けとばかりに、ヴァイクモン繰り出す全空間に漲る雷光はタイタモンの目を焼き、瞬く間に視力を奪った。ミスティモンが追撃する。ヴァイクモンの雷から迸る火を増大させて形成された聖なる炎は、タイタモンをやき尽くさんばかりに構成している暗黒のデータを破壊して、その根源を成すデジゲノムすら焼き尽くしていく。

 

ヴァイクモンがあたり一帯を凍りつかせてしまう。それにまきこまれたタイタモンは動けなくなってしまった。

 

「これでとどめだ!」

 

それは不発に終わった。

 

「魂魄芯撃(こんぱくしんげき)」

 

ヴァイクモンの叫びがあたりに木霊した。

 

タイタモンがもっている巨大な刀「斬神刀(ざんじんとう)」はスカルグレイモンの骨から削りだした骨刀で、刀に籠もる怨念が低い唸り声を上げているのだが、その一撃がなんとヴァイクモンの防具や体をすり抜け、そのままデジコアへ達し斬り刻んだのだ。

 

デジコアへの大ダメージに、さすがにヴァイクモンは動けなくなってしまった。まともにくらってしまったのだ、そのダメージは回復することはないだろう。

 

「幻刃無痕(げんじんむこん)」

 

タイタモンは好機とばかりにタイタモンに突き刺しえぐる。斬神刀を抜いた後もずっとえぐり続けられる幻覚に陥り、精神が死ぬまで苦しみが終わることはないようで、ヴァイクモンはいよいよ戦意が喪失してしまった。

 

「呼応冥軍(こおうめいぐん)」

 

タイタモンは斬新刀を振り上げた。両腕の無数にある頭蓋骨を媒介に、次々と幽兵が召喚されたかと思うと、ディノビーモンたちの前に立ち塞がった。そして、一斉に襲い掛かってきたのである。

 

一体ごとに強さが桁違いであり、手応えがあるはずなのに倒れる気配がない。どうやら配下は全て不死の幽霊軍団として敵勢を蹂躙するつもりのようだ。

 

これがタイタモンが一人師団と呼ばれる由縁であり、一体でも軍隊と同様に扱われるのは瞬時に大軍勢を召喚することが出来るためだということを賢たちは知らない。

 

「ヴァイクモンを離せ!」

 

ディノビーモンが叫んだ。そして、なんとか突発しようとタイタモンの斬神刀を回避し、群がってくる軍勢に向けて必殺技を放とうとした、そのときだ。

 

ディノビーモンの素体になっていた竜型デジモンを構成していたデジゲノムが、その仲間を想う心に反応した。リベリモンをタイタモンに変貌させたブラックガスに対する怒りとそれをぶつけるにはあまりにも自分に足りない実力に対する嘆きに反応した。思いについていけない体に対する苛立ちは、ディノビーモンのデジゲノムを汚染していた因子にも影響を与え始める。

 

そこに反応したのは、火の壁のプログラムだった。さらにデジヴァイスを経由し、優しさの紋章という増幅装置という濾過、さらに光がくれたなっちゃんのホーリーリングという浄化装置がその汚染を最小限にとどめ、かわりに行き場を失ったエネルギーはあるべき経路にゆるやかに路線変更していく。

 

そして、デジタルワールドでは存在し得ないとされていた存在へとディノビーモンをひきあげていった。その個体は本来、現代種であり、なおかつはるか未来に生まれるはずのデジモンだった。だが、進化ツリーは更新された。新たなる進化経路が切り開かれた。

 

光に包まれたディノビーモンの一撃は、タイタモンの斬神刀だけでなく、軍勢がいる空間ごと真っ二つにしてしまう。一瞬にして、部隊は壊滅した。

 

「ディノビーモン?」

 

賢のもっているデジモンアナライザーが更新された。

 

グランディスクワガーモン

世代 究極体

タイプ 昆虫型

属性 フリー

 

“深き森の悪魔”と呼ばれる邪悪なグランクワガーモンの一部の強者だけが進化した、このグランディスクワガーモンに出会うことがあったなら、ある意味幸運と言えるだろう。その存在は深い霧のごとく覆われ、昆虫型デジモンの中でも随一の希少種である。ウィルス種としてのプライドを持ち、一説ではウィルス種としての自らの正義を説くブラックウォーグレイモンと同盟を組む戦士とも言われている。両腕の『グランキラー』はどれほど硬い甲殻やメタルでも傷つけることが可能で、その傷を深くして最終的には敵を仕留めてしまう。必殺技は頭部の巨大な鋏で敵を締め付け切り裂く『グランディスシザー』。

 

「グランディスシザー!!」

 

グランディスクワガーモンの巨大なハサミがタイタモンの体をズタズタに切り裂く。タイタモンを構成していた怨霊たちのデータはただちに浄化され、ブラックガスにより増大していたエネルギーを使い果たしたタイタモンは光につつまれる。そこには、気絶しているリベリモンがいたのだった。

 

 

 

 

「おやぶーん!」

 

リベリモンが意識を取り戻すと、盗賊団の子分たちが心配そうに見下ろしていた。かつて殺そうとしたこともある選ばれし子供たち(ひとり知らないやつがいるが)が、自分の傷の手当てをしていることに気づいて、信じられない、という顔をした。

 

「な、なんで、どうしてなんだ。どうして俺を助けようと......」

 

なんとなく、ブラックガスに飲まれたあとのことを覚えているらしい。

 

「はいはい、黙ってろよ、リベリモン。傷口が開くだろー」

 

何度もデジモンの手当てをしてきた丈も手伝いをしてきたゴマモンも慣れたものだ。

 

「だがよー......」

 

「君がどんなデジモンかは知らないよ、はじめましてだから。でも、完全体になれる実力があるなら、協力して欲しいな」

 

「けっ、それは脅しかあ?」

 

「しゃべってもいいけど動かないでくれよ」

 

「いだだだだ」

 

「ほら、いわんこっちゃない」

 

丈は手配された薬草をハンカチで包んで、リベリモンの腕にまきつけてやった。リベリモンはイマイチ、戦いにあけくれてきた毎日の中で治療してくれる意味が理解できないようで居心地悪そうにしている。

 

「礼だけはいうぜ、ありがとよ」

 

「そうだ、リベリモン。きみのことだから、レオモンのこと探してるんじゃないかい?」

 

「!!」

 

「だーから動くな!」

 

「ぎゃあ!」

 

「レオモンは、グラップレオモンに進化して、太一たちとはじまりの街に向かってるらしいよ」

 

「ほんとか!やあっと見つけた!!つうかあいつも完全体になってんのかよ!あいつが成熟期のあいだに決着つけようと思ってたのに!」

 

「ダークマスターズと戦ったらしいからね、究極体になれたきみでも勝てるかどうか」

 

「んだとー!?」

 

リベリモンはこうしちゃいられない、とばかりに立ち上がる。

 

「はじまりの街だな!?」

 

「そうだよ」

 

「よーし、待ってろよグラップレオモン!今度こそは決着をつけてやるぜ!!」

 

頑張れ親分!とリベリモンのあとを子分たちがおいかけていく。おいてきぼりにされてしまった。

 

「いっちゃった......」

 

「これでいいんだよ、賢くん。リベリモンはああでもいわないと力を貸してくれないからね」

 

「あ、そういうことですか、なるほど!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじまりの街のはるか上空を巨大な鳥が飛んでいるのが見えた。なっちゃんかとも思ったが、彼女は現実世界に迷い込んだデジモンたちの救出などに追われていないはずだ。

 

はじまりの街は、デジタルワールド中から命からがら逃げてきたデジモンで溢れていたのだが、そこにはタケルたちが出会ってきたデジモンもたくさんいた。5年という月日はやはり長いようで、進化したデジモンもおり、似たような姿ならまだわかるが全然違うデジモンに進化されるといよいよわからなくなってしまう。

 

「ええと......?」

 

さすがにわからない。タケルはデジモンアナライザーを鳥に向けた。

 

グリフォモン

世代 究極体

種族 幻獣型

タイプ データ種

 

ヨーロッパの伝承に伝わる鷲(あるいは鷹)の翼と上半身、ライオンの下半身をもつ幻獣グリフォンの姿をした幻獣型デジモン。上半身に鳥、下半身には獣、尾には蛇の特徴を持ち、その翼で大空を飛び回る事ができるが、普段は砂漠地帯や洞窟に住むとされている。コーカサス山脈で黄金を守るグリフォンよろしく、高い攻撃力と俊敏さを買われてインターネット上で不法侵入を防いだり、機密情報を守る番人として利用されている。

 

超高周波の音波を放ち、敵のデータ構造を破壊してしまう『スーパーソニックボイス』が必殺技。

 

よく見ると口部分にも目のような部位があるが、『轡』のような装身具と思われる。

 

「えっと......いいデジモン、なのかな?」

 

「そうですね、きっとセキュリティシステム側のデジモンなんですよ」

 

「どうしたの、ホーリーエンジェモン?」

 

「いや、にしては纏う雰囲気が邪悪なような」

 

「そうなの?」

 

「だが、究極体なんだろう?5ねんもの間、ずっとはじまりの街を守ってくれていたのなら、いいデジモンなんだろう」

 

「うん、そうだね!」

 

タケルは嬉しそうに笑った。

 

「おーい、タケル!」

 

「あ、エレキモン!」

 

「ひっさしぶりだなあ、元気にしてたか?」

 

「エレキモンも元気そうでよかったよ」

 

「俺はもちろん、ベビーたちもみてのとおり元気だぜ。ここんとこ、一気にデジタマが増えちまってさあ、ベビーたちの世話がひとりじゃまわんなくて困ってたんだよ。手伝ってくれるやつらがいなけりゃもっと大変だったぜ」

 

「そうなの?」

 

「そうなんだよ」

 

タケルたちは顔を見合わせる。

 

「一気にって、どれくらい?」

 

「どれくらいって、みりゃわかんだろ?あんときよりデジタマの数すんごいことになってるぜ」

 

避難してきているデジモンたちに遊んでもらっている幼年期たちは、遊び相手が多いからかと思っていたが、やはりたくさんいるらしい。

 

「光子郎さん、やっぱりこれって......」

 

光子郎はうなずく。空も笑った。モチモンもピョコモンも嬉しそうだ。

 

「私たちがしてきたことは、間違ってなかったってことね」

 

「この光景がなによりの証ですね」

 

「そうだね!」

 

「ということは、やはり最後のスパイラルマウンテンは、絶対に壊さなければならないな。暗黒の力を進化を否定する概念から、完全に引き剥がさなければならない」

 

「そっか、じゃあ大事なお仕事だね、ホーリーエンジェモン。がんばろう!」

 

「すっげえな、あのでっかい塔、ぶっ壊して回ってたのお前らだったのかぁ。やるじゃん」

 

三つの方角からはすでにスパイラルマウンテンは瓦解して存在せず、封印から解放された四聖獣たちが少しでも暗黒の力の供給を絶とうとしてくれているのか、まばゆい光の柱が虚空を貫いている。残りの残骸は古代デジタルワールド期に形成された形を取り戻そうと渦を巻いているが、ファイル島がまきこまれる気配はない。

 

「えへへ、みんながんばってるんだよ、エレキモン」

 

「そっかあ、さすがは選ばれし子供だな!やってくれると思ってたぜ。そういうことならこっちこいよ。幼年期になってるやつもいるじゃねえか、腹が減っては戦はできぬだぜ」

 

「ありがとうございます、エレキモン」

 

「おじゃましまーす」

 

「懐かしいわ......5年ぶりだものね」

 

タケルたちは、久しぶりにエレキモンのいえにお邪魔することになったのだった。なんだかたくさんカボチャがあるが、ベビーたちに大人気のコンビの片割れがいつもくれるらしい。もしかして、もしかするのかな、と思ったタケルは、銀座のあの子たちを無事にかえせてよかったなと思うのである。なんかつくってやるから待ってろとリビングに通されたタケルたちは、そのテーブルにちょこんと座る幼年期のデジモンがいることに気がついた。

 

「ねえねえ、エレキモン。この子、なんていうの?遊びに来てるの?」

 

「んー?ああ、そいつはピピモンていうんだ。お前らのパートナーみたいに、いつまでたっても幼年期から成長期に進化しねーからずっといるんだよ。すっかりはじまりの街の古参だぜ」

 

「私たちのようにか?」

 

「進化したくないの?」

 

「変わった子やなあ」

 

緑のヘタがある、緑色のきのみみたいなデジモンだった。くりくりした黒い目が選ばれし子供たちを見上げている。植物型のデジモンに進化しそうな子だ。

 

「はじめまして、ピピモン。僕、タケルだよ。高石タケル。ねえ、もしかして、きみ、僕たちみたいなだれかを待ってるの?」

 

タケルの問いかけに、瞬き数回、ピピモンはタケルのところによちよちやってくるとじいっとタケルを見上げた。そして、にぱっと笑った。

 

「そうだよー、たぶん。そんなきがするの。前も待ってたんだけどね、会えないまま死んじゃったんだ。でも、またこうやって生まれてこれたから、きっと、また会いたいって思ってくれたんじゃないかなあ」

 

「それってもしかして......」

 

「ほんとにあるのね、そんなことが......」

 

「それって、及川さんのこと?」

 

タケルの言葉にピピモンは飛びあがった。

 

「ユキオのこと、知ってるの!?」

 

「知ってるよ!すっごい知ってるよ!だって僕も、みんなも、すっごくお世話になった人だもん!それにね、約束したんだ、僕。デジタルワールドが平和になったら、及川さんを連れてきてあげるんだって!」

 

「ほんと!?」

 

「ほんとに、ほんと!だからね、楽しみにしてて、ピピモン。僕たち、頑張るからね!」

 

「うん!!」

 

「なんだ、なんだ。ピピモン、お前も選ばれし子供のパートナーだったのかよ、それならそうとはやくいえよな」

 

エレキモンは出来立てのカボチャ料理を並べながらいったのだった。

 

 

しばらくして。

 

 

「そうか......ディノビーモンまで進化したのか」

 

さすがに究極体への進化は負担が大きすぎたのか、リーフモンという幼年期1にまで退化しているパートナーをつれた賢と丈が帰ってきた。

 

「また、私が最後なのか」

 

ホーリーエンジェモンがちょっと、いやかなり凹んでいるのは気のせいではないはずだ。

 

「でも、ボクはヴァイクモンさまのところでたたかってたし」

 

「いや、まあ、そうなんだが......」

 

「ボクは、バクダンもちだよ、ホーリーエンジェモン。はじめてしんかして、わかったんだ。紋章とホーリーリングがなんとかしてくれたけど、やっぱりジョグレスにつかわれたデジモンが、なにかわるいことしようとしてた。むりはできない。こわい」

 

リーフモンの言葉に賢は不安そうにパートナーを抱っこする。

 

「リーフモンのいうことが本当なら無理させたくないんだけど、そういうわけにもいかないし。困ったねえ」

 

丈はためいきをつく。

 

「なーに難しい話してんだよ。飯が不味くなるだろうが、はやく食え食え。冷めちまうだろーが!」

 

エレキモンに急かされる形で、丈たちはとりあえずご飯を食べることにしたのだった。

 

「リーフモンになっちゃったってことは......」

 

「3人で行くことになりそうだな。メタルガルルモンも、ウォーグレイモンも浄化する力はないのだから」

 

「そうだね、リーフモンに無理はさせられないし。がんばらなくちゃ」

 

「本当にそうだな、責任重大だ。はじまりの街を見て、改めて思うよ、タケル。私たちは本当に失敗は許されないんだ。救いたいと願ったんだから、なおさら」

 

「そうだね」

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