(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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後日談

★1999年9月1日水曜日

 

児童(特に6年生)の自主性と責任感を育てるために制定されたクラブを設立の手順は以下の通りだ。

 

まずはクラブを作る意義や約束事を話したうえで、 活動したいクラブを各学級で上げる。本来は  5月上旬。次に6年生全員で集まり、作りたいクラブごとグループになる。 名簿に年組名前を記入後、クラブCM・ポスターを考える。これは5月下旬が通例だ。

 

6年生で考えたクラブ決定後4年生に連絡。 希望のクラブが無い場合は5年生だけでクラブCM・ポスターを考える。 クラブオリエンテーション(クラブ勧誘) ビデオまたは体育館にて。 6月上旬クラブポスターと名簿を多目的室などに掲示 。

 

4、5年生が第1希望のクラブ名簿に記入 。6月上旬規定人数に達しないクラブの児童の移動や他のクラブとの合併、または移動がある。所属クラブ決定後、教師側 クラブ担当者を初めて決定する。

 

パソコン部をつくろうと思い立ったはいいものの、光子郎に立ちはだかったのはクラブ設立のルールだった。担任の先生に相談したはいいのだが、もらった手順のかかれたわら半紙をみるとなかなかに4年生が作るにはハードルが高かった。

 

大晦日には間違いなくデジタルワールドの危機がふたたび訪れることはわかっているのに、2年も待ってはいられない。未来は不変ではないことは予言の書と自分たちの旅路から知っている光子郎は、大晦日に危機がやってくるとは限らないのではないかと考えていた。それにゲンナイさんと密に連絡をとることを考えると、学校に帰ってきてパソコンを開くより昼休みにパソコンを使うことが出来ればなおいいのだ。パソコン部さえできればパソコンのひとつにデジタルゲートをこっそり繋いで学校からデジタルワールドに急行できる。いいアイデアだと思ったのだが。

 

落ち込む光子郎を見かねて、担任の先生は教えてくれた。光子郎がパソコンに詳しいことは一学期と夏休みの家庭訪問でわかっている先生はこっそり教えてくれたのだ。

 

お台場小学校もパソコン室が出来たからホームページをつくることになったのだが、誰も詳しくない。

 

保健関係は保健室の先生、児童のクラブ活動の様子などは運営委員会の顧問の先生、インフルエンザ情報などは自治体からの通達後に校長先生が作成することになったのだが、そもそもホームページの作り方もわからない。

 

だから先生の中でも情報機器に比較的なじみがある視聴覚情報担当の先生が作成している。ただ、先生もホームページの時間を取られるわけにはいかないので、最初のレイアウトを作ったら、あとは月一とか学期で一回とかで更新するといった感じになっていくはずなのだが、ホームページをつくるソフトが10月頃に入ってくるという。

 

クラブの紹介ページのための写真のデータ集めや生徒の名簿といったものを集めてくるからパソコンを使わせて欲しいと交渉してはどうかといったのだ。

 

実績を積み重ねていけば先生も職員会議で提案しやすくなるという。一緒にパソコン準備室に来てくれるというので、光子郎は先生と共に2階に上がったのだった。

 

お台場小学校は職員室にある「パソコン使用願」に必要事項と”使用目的”を記載して、クラブでの使用は顧問の先生、それ以外の使用は担任、もしくは学年の先生の許可印をもらってパソコン準備室に提出することになっている。

 

準備室の先生の指示に従い、パソコン室のパソコンを利用しなければならず、パソコン室の都合(メンテナンス等)もしくは、利用できるパソコンが無い(すべて使用中)の場合は使用できない。

 

自分のユーザー名、パスワードを入力してログインをして使用して、ユーザー名(学籍番号)パスワードを忘れた場合は、準備室の先生に尋ねる必要があった。

 

保存する場合は、決められた場所(U:)に保存する。それ以外の場所に保存した場合は残らないからだ。あるいは名前を書いたフロッピーかCDに焼くことになる。

 

一番最後に帰る人は、自分が使用していなくても、プリンターの電源、検疫パソコンの電源を確認して、電源が入っている状態だったら電源を切り、準備室の先生に終了の報告をする。

 

パソコン使用を許可された場合でも、”使用目的”以外の使用をした場合は退出し、印刷は同一文書・同一作品等を1部のみ。同一文書・同一作品等を複数枚必要とする場合は先生の許可が必要。カラープリンターを使用する場合も先生の許可を得てから使用。USBメモリー等を使用する場合は、検疫パソコンでウイルスを検疫してから使用するといったルールが貼り付けられていた。

 

飲食禁止がでかでかと貼ってあるのは不届き者がいたからなのかもしれない。

 

光子郎からの申し出に自分の提案も上乗せし、説明してくれる先生の横で光子郎はお願いしますと一生懸命話した。今まで1度もここまでしゃべったことがないんじゃないかというくらいの勢いで話した。

 

どれくらい詳しいんだとか、なにができるんだ、とか具体的に技術の先生が聞いてくれたのが嬉しかったのもある。話題さえ提供してもらえればもう光子郎の独壇場だった。

 

実は夏休みを通じてデジタルワールドと連絡を取るための手段としてデジヴァイスの認証が前提の交流サイトとデジモン騒ぎに関する情報収集を兼ねて電波障害事件に関するオカルトの交流サイトをふたつ運営しはじめたところだったのだ。ゲンナイさんや及川さんの力を借りたのはここだけの話だがサイト自体構築したのは光子郎だから嘘は言ってないはずだ。

 

自分以外にパソコンに詳しい子供が現れ、しかもパソコン部をつくってホームページの一部を更新したいといいだしたことに技術の先生は思いのほか嬉しそうだった。

 

感心したように技術の先生は笑った。

 

「プログラムから自作してるとは思わなかったな。じゃあ、実績作りの手伝いをしてもらえるか、泉くん」

 

「あ、は、はい!ありがとうございます!」

 

「サッカーのない日でいいから、デジカメで写真をとったり、データを打ち込んだりしてもらえるか?できたらすぐ出来るように部員になりそうな子にも手伝ってもらえると話が通しやすくなるんだが。できたら代表は6年生でな」

 

「わかりました!声掛けてみます!いつからですか?」

 

「いつ?そ、そうだな......じゃあ空いてる昼休みか放課後にでも声掛けてくれるか。職員室かここで作業してるから。まずはクラブ紹介の写真をとってきてもらおう」

 

「わかりました」

 

前のめりな光子郎にちょっとびっくりしつつ、先生ふたりは余程パソコン部が作りたいんだなあとほほえましく思ったのだった。

 

「というわけなんです。お願いします丈さん!お願いできる6年生といったら、丈さんしか思いつかなくて」

 

というわけで、帰りの会が終わるなり全速力で2階から3階の階段と渡り廊下を走ってきたと思われる光子郎に6年生の教室の入口でめっちゃ大声で叫ばれた丈は目を丸くするしかないのだった。

 

「わ、わかった、わかったから、おちついて光子郎くん。息があがってるじゃないか、大丈夫かい?お茶飲む?」

 

水筒を渡された光子郎はこくこくうなずいて渡されたコップを一気にあおったのだった。

 

「よかったです、帰ってなくて。丈さん、受験で塾に行くって聞いてたから、話をするなら今しかないと思って」

 

「あはは、そうだね。日直じゃなかったらもう帰ってたかもしれない」

 

「日直だったんですか、よかった......」

 

「これに名前書いたらいいんだね?」

 

「はい、お願いします。もしクラブが出来たら、いざと言うとき役に立つと思うんです」

 

「なるほど、パソコン部かあ。うちの学校って兼部はありだっけ」

 

「はい、先生に聞きました。文化部と運動不足ならセーフだって」

 

「そうか、ならみんなで入ればいいわけだね」

 

「はい、そう考えてます。冬休みまでになんとか形にはしたいんですが」

 

「ならタケルくんと賢くんはいないから8人か、部員数は余裕だね」

 

「だと思います、たぶん」

 

「僕、あんまりこれないけど、6年生か5年生がっていうなら僕の方がたしかにいいね。副部長と部長、逆な気がするけど」

 

「形だけでも6年生の方が通しやすいって技術の先生がいってましたから、それでいいと思います。お願いします」

 

「そうかい?ならわかった。はい、これでいいかな」

 

「ありがとうございます!それじゃあ、これで!失礼します!」

 

「あれ、帰らないのかい?部活は明日からだろ?」

 

「グラウンドで太一さんたちが遊んでるから、声掛けてきます!」

 

「ああ、そっか。話は早い方がいいからね。頑張って」

 

「ありがとうございます。丈さんも受験勉強頑張ってください!」

 

「うん、頑張るよ。ありがとう」

 

あわただしく去っていった光子郎を見届けて、丈は職員室に日誌を届けるべく歩き始めたのだった。

 

光子郎が玄関先にやってくるとグラウンドでは教室の窓から見えたとおり、太一たちが大輔を混じえてサッカーをしているところだった。西日が眩しく、まだ蒸し暑い9月初めである。まだ日差しが暑いからと日陰が伸びる階段付近に見慣れた影があった。光と空だ。たくさんのランドセルが並んでいるあたり、見張り番でもしているのかもしれない。そこにミミが新しく加わったのは間違いなく真夏の大冒険により生まれた新しい繋がりからだ。どうやらミミだけ仲間たちが学年はわかってもクラスまではわからないことにショックをうけて、空たちから聞いて覚えようとしているようである。生徒手帳にメモしているのがみえた。

 

「あ、光子郎さん。こんにちは」

 

「こんにちは、光さん」

 

「太一たちならもうサッカーしてるわよ、光子郎くん。いく?」

 

「これが終わったらします」

 

「なになに、どーしたの、光子郎くん?」

 

覗き込んでくるミミに光子郎は名簿に名前を書くよういいながらパソコン部をつくるための実績作りをしたいから協力してほしいと頼んだ。

 

「明日から、朝や昼休みに部活紹介用の写真をとって、技術の先生に渡したいんです。撮らせてもらえませんか?」

 

「写ルンですでとるの、光子郎さん?」

 

「ううん、デジカメだよ、光さん」

 

「デジカメ」

 

「うん、パソコンに写真のデータを入れてホームページに載せるには、デジタルカメラがいいんだよ」

 

光子郎は説明しながら光たちに名簿をさしだした。3人ともすぐ書いてくれた。光子郎がなかなかサッカーに加わろうとしないことに気づいた太一と大輔は焦れったくなってきたのかよってきた。

 

「どーしたんだよ、光子郎。サッカーしないのか?」

 

「なにしてんすか、光子郎先輩」

 

「あ、ちょうどいいところに。実はですね......」

 

光子郎はさっそく名前だけでも書いてくれと太一と大輔に名簿を差し出すのだ。太一はサッカー部のキャプテンだし、大輔は低学年チームのレギュラーだから幽霊部員になるだろうし、朝練があるから昼休みしか手伝ってもらえないことはわかっていた。そういうことなら、と2人は書いていく。

 

「あとはヤマトさんなんですけど......」

 

「ヤマト?あー、あいつもう帰ったよ」

 

「ですよね。明日にしようかな」

 

「私が預かってもいい、光子郎くん。明日、ヤマトくんに渡しておくわ。書いたら光子郎くんに渡してってお願いしとくから。いつまで?」

 

「ありがとうございます、空さん。昼休みまでには欲しいです」

 

「わかったわ」

 

「よーし、それじゃあ遊ぼうぜ、光子郎。こっち人数足りなくて困ってたんだよ」

 

「えーっ、それじゃあサッカー部ばっかになるじゃないっすか!ずるい!」

 

「ばっかいえ!そっちはただでさえ3人も多いじゃないか!」

 

「えー」

 

「それなら太一さんのチームかな」

 

「えー!?光子郎さんの裏切り者ー!ハンデくださいよ、ハンデ!!太一先輩利き足で蹴らないでください」

 

「無茶言うな!」

 

ギャーギャーいいながら去っていく男子をみて、残された女の子たちは笑ったのだった。

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